第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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戦争は、常に正面から来るとは限らない。
陽動、分断、各個撃破。
その全てを理解した者たちが、静かに牙を剥く。
ニューディサイズ別働隊。
ゼク・アイン五機。
攻撃目標――アーガマ。






劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~それぞれの戦い2

 

アーガマに、接近するゼク・アインは5機。

クワトロ大尉とジュドーは、ニューディサイズの月面攻撃部隊を急襲。

毒ガス兵器の破壊に成功したが、まだ帰還していない。

 

ブライトは命じた。

「各モビルスーツ発進準備。ニューディサイズの攻撃部隊を迎え撃て!」

 

「ニャアン、でちゃいます。」

 

相変わらず、気の抜けた声でそう言うと、ニャアンの機体はカタパルトから、放り出された。

もともとニャアンのリック・ゾックはカタパルトに固定するべき脚をもっていない。

 

だからほかの人型のモビルスーツに比べると「発進」ではなく「ほっぽり出された」感が強いのだ。

 

「ニャアン、相手は新型よ。できるだけアーガマに近づけないで!」

エマが叫ぶ。

 

「モビルスーツ隊は、続けて発進! カミーユ。準備は大丈夫?」

 

「マークⅡはまえにも乗ってますから大丈夫です。

危なくなったら……撃ちますよ?」

 

それはクラバルールを逸脱して相手を仕留めにかかる、という意味だ。

 

エマはヘンケン艦長をちらりと見た。

ヘンケンは頷く。

 

「……現場判断にまかせるわ。」

「大人はずるいな。」

 

少年はぶつくさと文句を言った。

 

「カミーユ、マークⅡ、でます!」

 

次世代機のあらたな指標として作られたガンダムマークⅡではあるが、ムーバブルフレームの完成度の高さ以外には、特に尖ったところのない、悪く言えば凡庸な機体ではある。

性能そのものは初代のガンダムや、その量産タイプであるゲルググを上回ってはいたが、トリントンなどで開発が進んでいた試作ガンダムに比べるとどうなのだろう。

 

戦略級の核バズーカに特化したサイサリス、拠点防衛用のデンドロビウムは、あまりにも運用に難があるとしても、例えばゼフィランサスは地上と宇宙でそれぞれバーニヤの全面改装を行わなければならない。

ガーベラもまた宇宙での戦闘特化型である。

 

そうすると汎用性と取り回しの良さで、ガンダムマークⅡは極めて優れた機体であると言えた。

ただし、ぺズンがオプションパーツも込で完成させたゼク・アインに比べるとどうか。

 

「ヘンケン、ブライト、発進許可を。」

カタパルトに待機中の女性の声だが、命令するのに慣れた口調だ。

 

「あ、ああ。気をつけてくれ、ハマーン。一応、名目上はあんたはエゥーゴの代表代行なんだからな!」

 

「ご心配なく……とはいいませんが、ベストを尽くしますよ。」

落ち着いた男性の声が、そう言った。

「元」ジオン公国公王府直属艦隊司令シャリア・ブルである。

 

「心配すんな! とっとと蹴散らしてソドンの応援に行くよ!」

叫んだ女傑は、シーマ・ガラハウという。

公王府直属シーマ艦隊の指揮官……元指揮官である。

 

ニューディサイズとの戦いにはジオン公国軍は出られない。あくまで戦うのは、アンキーが集めたクランバトルの選手たち、というのが建前なのだが、艦隊司令官だの将官や佐官がそう気軽に軍籍を離れてもいいものなのだろうか。

 

連邦軍のヘンケンには、ジオンのフレキシブルさに呆れるばかりである。

もっとも、そうして集められたクラバのパイロットの中には、ジオン公国の元首やその腹心、実の兄までいるのだから、歴史と伝統のない新興国家とはいえ、あまりにも、自由すぎないだろうか。

 

 

アーガマ側は、ニャアンのリック・ゾック。

ハマーンのキュベレイ。

シャリア・ブルのゲルググ改。

シーマのガンダムガーベラ。

カミーユのガンダムマークⅡ。

 

相手は新鋭機5機だから、本隊と戦闘中のヤザン隊やソドンの盾となって前進したアレキサンドリアのような数の不利はあまりない。

ないように見えるが決定的な違いがひとつある。

 

それは守られるべきアーガマが、戦闘艦としての武装をもっていないことだった。

 

休戦条約により、地球連邦は宇宙での戦闘艦を所有することができない。

新造艦として作られたアーガマは、大気圏内外でのモビルスーツのテスト運用という名目で作られた。

 

なので、大気圏への突入、再離脱、あるいは地上での飛行のためのミノフスキークラフトと贅沢な性能をもっているものの、武器はない。

つまり、接近されれば最小限の対空防御もなく、撃たれ放題になる。

 

先頭をきって飛び出したのは、シーマのガンダムガーベラだった。

強襲用のモビルスーツ、という位置付けになる。

 

主な武装はビームマシンガン。中距離で複数の相手を制圧する。まさにこのような場面にうってつけ……だと、シーマは自画自賛していたが、問題はなくもない。

シーマの性格から、なにかを防衛するよりも敵を蹴散らほうにその戦い方はむいていたのだ。

 

突っ込んだシーマのガーベラを嘲笑うかのように、ゼク・アインは散開した。

 

完全にガーベラを置き去りにする形で、アーガマに殺到する。

 

その前に奇怪な昆虫のように羽根を広げた異形のモビルスーツが立ちはだかる。

ニューディサイズの兵たちには初めて見るモビルスーツだ。

 

「おちろ! 俗物!!」

 

その腰周りのユニットから、なにかが射出された。

 

ミサイル?

いや、それは回避しようとするニューディサイズのゼク・アインの動きを追尾する動きをとった。

 

熱源探知だけではできない有機的な動きで!!

 

戦闘濃度にまで散布されたミノフスキー粒子下では、無線によるコントロールには制限がある。

ゼク・アインのパイロットたちはそのような動きを行うものを教本で習っていた。

 

――ビット?

 

あの異形のモビルスーツはサイコミュ搭載の機体なのか!

 

そして、教本にあったビットよりはるかに小型でありながらそれはビームガンを備えていた。

 

「行け! ファンネル!!」

 

四方から殺到する小型のビット。

かわすことなどできるはずもない。

両肩。両脚を撃ち抜かれたゼク・アインは、戦闘力を失い宇宙を漂う。

 

「突撃! なにがなんでもアーガマを落とせ!」

 

その命令は正しい。

モビルスーツは、一部の可変機を除けば拠点から拠点への単独移動には適していない。母艦を沈めてしまえば、その行動は著しく制限される。

 

だが、ゲルググがその進路に立ちはだかった。

 

「蹴散らせ!」

 

ゼク・アインのミサイルポッドから、対モビルスーツ用のマイクロミサイルが発射される。

装甲の厚い戦艦ならともかく、モビルスーツならば一発で致命傷になる威力はあった。

 

それを次々と撃ち落としたビームは、ゲルググの持つビームライフルから放たれたものではなかった。

 

ほかにも敵がいる?

 

「インコムのビーム攻撃だ。かまわず突っ込め!」

 

一機のゼク・アインが頭部を破砕された。

 

さらに一機が、高速でターンしてきたガーベラのビームマシンガンを浴びて行動不能となる。

 

だが。

2機のゼク・アインは、ゲルググのインコム攻撃を突破した。

目の前のこの船を沈めさえすれば……

 

ガンダムマークⅡが突っ込んできた。

体当たりするように。

いや、実際に体当たりして、ゼク・アインの一機を弾き飛ばす。

 

残るゼク・アインは最後の一機。

 

ふよふよふよ。

 

さらに加速して、アーガマに突っ込むゼク・アインの横を、へんなものが通り過ぎていった。

一応はモビルスーツなのだろうが、人型とはかけ離れている。

 

一応、スラスターはついているようなのだか、その動きは飛ぶと言うより、漂っているに近い。

それは独立戦争時にジャブロー攻略用に少数生産されたゾックというモビルスーツだったのだが、連邦出身のパイロットに知る由もない。

 

その動きの鈍さに相手をせずにその脇を駆け抜けた。

 

アーガマは目の前だ。

ビームライフルを上げる。

 

たとえ体当たりをしてでも。

必ずしずめてみせる――

 

 

んぺ。

 

 

ドン!

ゼク・アインはその背中をとんでもない質量で押された。

ただでさえ、全開まで加速していたゼク・アインは制御を失った。

 

彼の背中を押したのは白い粘塊だった。

 

彼はそのまま、念願どおり、アーガマに体当たりをしたのだが。

粘塊に包まれたその機体は、アーガマにピッタリと張り付き、機体そのものにもアーガマにもなんの損傷を与えることはなかったのだ。

 

ふよふよふよ。

 

ニャアンのリック・ゾックは1発しかない対モビルスーツ用トリモチ弾を発射したあと、ゆるゆると機体を回転させながら、両腕のクローアームをガチガチと鳴らした。

 

メガ粒子砲が本体に直接備えられているリック・ゾックにしてみれば、360度に警戒するためには、機体を回転させておくしかなかったのだが、例によってドローンからのライブ中継を見ていたクラバファンたちからは、ニャアンがまたあの奇怪な勝利の踊りをはじめたとしか見えなかった。

 

 

---------------

 

 

「第7ゲート、突破されました!」

 

なにをやっている?

ジャミトフは呻いた。

相手は、女と老いぼれの2人だろうが。

 

なぜ、それが止められずに、侵入を許してしまうのか。

 

「バスク! ここを脱出するぞ!」

ジャミトフは、立ち上がった。

「ここはダメだ。遺憾ながらぺズンは放棄する。」

 

「し、しかし閣下。どうやって?」

 

「トロイホースだ。宙港のトロイホースに移動する。」

 

「し、しかし。

港の機能は、以前やつらのモビルアーマーに破壊されていて、発進は不可能です……」

 

「発進を邪魔する廃材は、爆薬を仕掛けて吹きとばせ!!」

 

トロイホースを発進させるだけならアリな手だったが、そんな無茶をすれば、二度と宙港は修復不可能なほど破壊される。

 

「そうだ! ゼク・ツヴァイだ! ゼク・ツヴァイをソドンに特攻させろ。」

 

「い、いえ閣下! いまゼク・アインの本隊約20機が健在です。やつらのアレキサンドリアで、足止めを食っていますが時間の問題です。

彼らと連携させたほうが、確実にソドンを……」

 

「ヤツらのモビルアーマーはいまぺズンの外に陣取っているのだぞ。モビルアーマーの注意を引きつけるためにもここで、ゼク・ツヴァイを使う!」

 

 

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「ジェリド・メサのマークⅡ、中破!

自力飛行不能!!」

 

「メインエンジン出力低下!」

 

「ミサイル発射管、全損。誘爆の危険あり、ブロックを切り離します!」

 

重巡アレキサンドリアは沈みかけていた。

 

まだ致命傷には遠い。

だが、最寄りのドッグまで行くには曳航が必要だろう。

ガディ・キンゼーはいらいらと怒鳴った。

「ソドンはまだ退避行動に移らないのか!?」

 

「まだです。」

副官が答えた。

ジオン出身のアコースという大尉で、短い付き合いになったが、なかなかいい男だった。

「それどころか、援軍を寄越すと言ってます。」

 

「直衛のバニング隊のゲルググでも回すというのか?」

 

「いえ、レイダーを出すと。」

 

ガディ・キンゼーは天井を仰いだ。

地球連邦の軍人で思想的にはガチガチのアースノイド至上主義者で議会制民主主義の信奉者である

 

彼にも、奇矯な独裁者というものがそう悪いものではないと。

そのように思えたのだ。

しかし、いたらいたで実にやっかいな存在ではある。

 

「ゼク・アインは?」

 

「小破2。中破1。

対空機銃が全壊した左舷を中心に攻撃を仕掛けてきます。」

 

彼は昔見たアニメを、ぼんやり思い出していた。

こんなとき。

ギリギリのタイミングで、正義の味方が現れて、敵を蹴散らしてくれるのた。

 

彼は苦笑いを浮かべた。

 

ここは現実の戦場だった。

 

援軍が。もし仮にあったとしても現存するゼク・アインの数のほうが、クランの全機体よりも数が多いのだ。

 

艦橋の目の前に。

ゼク・アインが降りてきた。

そのまま、ビームライフルの銃口を向ける。

 

エネルギーの集束を現す光が銃口に見えたような気がしたがもちろん、気のせいだ。

ビームライフルの発射にそんなタイムラグがあるはずもない。

 

なるほど。

ダメージコントロールに優れたアレキサンドリアを落とすには、艦橋破壊が一番か。

 

ガディ・キンゼーは目を逸らさずにゼク・アインを睨んだ。

 

その瞬間。

 

ビームライフルが爆発した。

 

閃光が艦橋を包む。

 

「な、なにが!?」

 

「援軍! 援軍です。

クワトロ大尉の百式とジュドー・アーシタのZETAです!!」

 

 

 

 

 




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