第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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それはあまりにも強大であまりにも異常だった。
パワーが、装甲が、武器が。
アムロを追い詰める。





劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~わたしの最高の友だち2

その日の宇宙(そら)は、砕けた鏡のようだった。

 

残骸が、光を散らす。

その一つ一つを、アンは「景色」として見ていた。

なぜかアンはワクワクしていた。

 

これが終われば、あのイヤなティターンズたちとのお仕事も終わる。

 

それは確信だった。

 

 

「……いい日……」

 

ゼク・ツヴァイが、ゆっくりと姿勢を傾ける。

レーダーには映らぬ距離を保っているが、クランの艦隊は下方に展開している。

合図があれば、どの艦でもただちに撃沈できる。

 

アン・ムラサメはそういう位置をとっている。

 

「攻撃開始……目標……ソドン。」

 

信号が届いた。

頷いてアンは、ゼク・ツヴァイのバーニヤを全開にした。

 

艦を屠るのは「お仕事」だ。

でもアンは遊びたい。

 

「今日はね、遊ぶのにちょうどいい。」

 

推力、上昇。

 

重装甲の巨体が、ありえない加速で前に出る。

 

遊べるにしても艦を落としてからになるのだろう。

 

ここからの攻撃は、クランの艦隊からは捕捉できない。

ゼク・ツヴァイだけに可能な超高加速。

強化人間だけが耐えられるG。

 

「え!?」

アンの唇が釣り上がる。

「来る……わたしと遊んでくれるひとが?」

 

アンはビームスマートガンを持ち上げる。

 

接近するモビルスーツに向かって三連射!!

 

「かわしたの!?」

 

白いモビルスーツは流星のごとく、宙を翔けた。

ビームの火箭がそこから伸びる。

 

それは。

アンがゼク・ツヴァイを横滑りさせたその回避先を先読みするように。

サブアームが持ち上げた盾に当たり、火花を散らす。

最新のビームコーティングは、それを弾いた。

 

「あ、て、た?」

アンの頬が紅潮する。

「わたしに当てたの?」

 

砕けた鏡の破片が、二機の間を流れていく。

まるでこの日を祝福する紙吹雪みたいだ。

 

アンは、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……すごい。」

 

ゼク・ツヴァイの各部スラスターが、微妙に姿勢を補正する。

その動きは、重装甲機のものではない。

まるで巨大な獣が、筋肉だけで宙を泳いでいるみたいだった。

 

「本気で遊ぶよ……」

 

名前は知らない。

知る必要もない。

 

「でもきみはいいひと。」

 

スマートガンを両手に構え直す。

 

「最高の友だち……」

 

引き金を、絞る。

 

「シンデレラのガラスの靴」

 

放たれたのは、ただのビームではなかった。

出力を極端に絞った、細く、長く伸びる光。

 

回避を誘うための、罠。

 

だが――

 

白い機体は、逃げなかった。

 

ほんのわずかに姿勢を傾け、最小限の機動でビームをいなす。

そのにわずかな時間差で2射めが。

 

それを白いモビルスーツのビームライフルが迎え撃った。

ビームとビームが空中でぶつかり、プラズマが火球を形成する。

 

「……わあ」

アンは、笑った。

「眠り妖精の森。」

 

ゼク・ツヴァイの腰部コンテナが開く。

微細な金属片とデブリが、広範囲に散布された。

 

視界。

センサー。

推進計算。

 

全部を狂わせる、宇宙の霧。

 

その中を、アンは突っ込む。

 

「わたしを見つけて?」

 

強化人間の超感覚は、霧の中でも相手を捉えている。

 

だが。霧の中。

白い機体が、消えた。

 

――いや。

 

いる。いるのだが、考えられないような機動で、こちらの感覚を狂わす。

 

アンは、笑ったまま首を傾げる。

「そこね。」

 

背後。

 

振り向きざまのビーム。

だがそれすら、読まれていた。

 

白い機体は、霧の“流れ”を利用して、横へ滑る。

滑りながらに距離を詰める。

 

ゼク・ツヴァイの両手のビームスマートガンが必殺のビームを叩き込む。

おそらく、相手のモビルスーツの性能そのものは一世代前のものだ。ビームの威力はゼク・ツヴァイが上だ。

速度も。

ゼク・ツヴァイがさらに加速する。

 

ふわり。

当たった!と思った瞬間、まるで揺れるようにビームをかわす。

 

そして、放ったビームが、ゼク・ツヴァイの肩の装甲を削った。

 

装甲もゼク・ツヴァイが上。

 

両者の距離は接近しすぎていた。

白いモビルスーツがビームサーベルを。

ゼク・ツヴァイの隠し腕がビームサーベルを。

同時に切り込んだ。

 

反発する刃。

 

パワーもゼク・ツヴァイが上。

 

「……っ!」

 

初めて。

 

アンの呼吸が、乱れた。

 

サーベルが閃く。

 

ゼク・ツヴァイの左サブアームが、斬り飛ばされた。

 

火花。

破片。

警告音。

 

それでもアンは――

 

笑った。

 

「いい。」

 

ゼク・ツヴァイが後退しながら、全スラスターを点火する。

 

「すごくいい」

 

ミサイルポッドからミサイルを発射。

直接、白いモビルスーツを狙ったものではない。

その周囲で炸裂してミサイルは、炎の廻廊を作り出す。

 

「輝く小路」

 

そうして作られた炎の廻廊をまっしぐらに、白いモビルスーツに突進する。

 

スマートガンを乱射。

廻廊で仕切られた空間には、かわすための場所はない。

ないのに。

 

それさえもこのモビルスーツはかわすのか!

 

両手を広げる。

 

「もっと遊ぼう」

 

コックピットの中で、アンは小さく呟いた。

 

「……まだ帰らないで」

 

 

---------------

 

 

「ソドンが敵の重モビルスーツの攻撃を受けている!」

ラシット艦長の言葉は悲鳴に近い。

「ぺズン攻撃にでたガトー少佐のディープストライカーを戻させろ。

この前に遭遇したやつだ。アムロが抑えているがいつまでもつかわからん!」

 

ソドンのブリッジで、アルテイシアはただ前を見つめていた。

戦術モニターでは、白い機体と重装甲機の戦闘が高速演算で再現されている。

 

だが――

 

彼女は、それを「見ていなかった」。

 

感じていた。

 

胸の奥が、ひどく冷たい。

 

「……マチュ。」

マイクに呼びかける声は、ジオンの元首のそれではなく。

「……何者なんだ、この重モビルスーツは?」

 

ジークアスクのコクピットで、栄養ドリンクを飲んでいたマチュは一瞬答えが遅れた。

「ゼク・ツヴァイ。“死に戻り”から情報は来てるでしょ。ゼク・アインの後継機で変形機構はなしにして、高機動と重武装を両立されるコンセプトで作られた最新試作機。

パイロットはアン・ムラサメ。ムラサメ研究所の強化人間。こっちはエロセンセの情報。」

 

「“死に戻り”がダリルで、エロセンセがゼロ・ムラサメのことね。」

 

マチュは、返事をしなかった。

額に汗が滲んでいる。

 

目は、モニターではなく――

もっと遠くを見ていた。

 

「……あれ」

マチュが、やっと声を出す。

「もう人じゃないかも。」

 

アルテイシアが息を呑む。

「強いとか、上手いとかじゃない……」

マチュの指先が、震える。

「自分がなにをしてるのかわかってない。」

 

沈黙。

ブリッジの誰も、言葉を挟めない。

 

「……楽しんでる。遊んでる。」

マチュの声は、ほとんど囁きだった。

「戦ってるんじゃない。殺そうとしてるんじゃない。」

 

ズズッ。

ドリンクをすする音。

 

「……嬉しくってしょうがないんだ。」

 

アルテイシアの喉が鳴る。

その言葉は、彼女にも理解できた。

 

戦場には、何度も立った。

狂気も、絶望も、見た。

 

でも。

 

これは違う。

 

もっと、純粋で。

もっと、空虚で。

もっと、子供みたいに残酷だ。

 

「……止められるの?」

 

アルテイシアの問いに、マチュは、すぐ答えなかった。

 

目を閉じる。

 

遠くの光を、探す。

 

そして。

 

小さく、首を振った。

 

「……たぶん」

呼吸が浅くなる。

「わたしたちじゃ無理。止めるためには殺すしかないよ。」

 

アルテイシアの手が、コンソールの縁を強く握る。

 

「……それ以外の方法で誰が」

 

マチュは、ゆっくり目を開けた。

その瞳は、少しだけ震えていた。

 

「……天パなら。」

 

モニターの中で。

 

白い機体が、炎の廻廊の中を抜ける。

 

「……あの人なら」

 

言葉が、そこで止まる。

 

確信しているのに。

それを言葉にするのが、怖いみたいに。

 

「……届く。」

 

それだけ、言った。

 

アルテイシアは、モニターを見た。

 

白い機体。

 

その動きは――

 

戦っているようで。

守っているようでもあった。

 

「……そう」

 

国家元首は、静かに言った。

 

「なら……信じましょう。」

 

 

-------------

 

 

 

ビームスマートガンをアムロは完全にはかわしきれなかった。

盾が砕けた。

左の膝から下を失った。

 

アムロのビームライフルは、ゼク・ツヴァイのビームスマートガンを持つ腕を吹き飛ばし、肩のラッチを抉りとった。

 

直撃は、アムロのほうが多い。

だが、武器の威力と最新の装甲がダメージを阻んでいる。

 

ガンダムの頭部バルカンが発射される。

 

ゼク・ツヴァイのミサイルが次々と爆発する。

その火炎の中に飛び込むようにして、アムロはビームサーベルを振るった。

ゼク・ツヴァイはかわそうとしたが図体がでかい分、避け損ねた。

背面に大きく張り出した補助スラスターやプロペラントタンクが両断され、ゼク・ツヴァイは爆発に包まれる。

 

“ やったか!?……いや違うか?”

 

ゼク・ツヴァイの隠し腕がビームスマートガンを発射した。

ガンダムの頭部が吹き飛ぶ。

 

「まだだ!……まだたかがメインカメラをやられただけだ!」

 

 




いよいよ、ぺズン編も大詰め!!
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