交錯する光。
これはもはや、クラバでも。いや戦場ですらないのか。
強化人間とニュータイプ。
世界の未来はどちらに託されるのだろう。
「要するにだ。頭部破壊というのは、たいていの場合、センサー類が集中しているから、そのあとのモビルスーツの行動もままならなくなるので、勝負の決着、としているわけでな。」
アンキーは、ふんぞり返っている。
なんでかわからないが、艦橋でいちばんえらそうにさえ見える。
「アムロが言ってたな。『たかがメインカメラをやられただけだ』と。
だったらそうなんだろ。わたしらが止める権限はない。おまけに。」
ようやく戦闘空域にたどりついたドローンが中継しだしたゼク・ツヴァイ。
その巨体は無傷ではない。、背面に取り付けられたスラスターや増設プロペラントタンクはほとんど破壊され、肩に取り付けられた追加武装のハッチはフッ飛んで、なんだかスマートになったような印象さえ受ける。
だがその闘志はいささかも衰えてはいない。
ビームスマートガンと機銃を両手に持ち、アムロのガンダムを追い回す。
「お相手も自分の勝ちで、こいつを終わらせる気は毛頭ないようだ。ならば続けるしかないね。」
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「……速すぎる」
誰かが誰かが呟いた。
ドローンの中継をみたクラバファンのなかには目の肥えたものも少なくない。あるいは元パイロットもいたのだろうか。
数値上の機動性能ではない。
操縦でもない。
“読み”だ。
ガンダムが撃つ。
ゼク・ツヴァイが避ける。
ゼク・ツヴァイが撃つ。
ガンダムが、すでにそこにいない。
実戦を知るものにはありえない運動性で、
2機のモビルスーツは駆けちがう。
ガンダムのビームライフルは幾度か、ゼク・ツヴァイを捉えている。
盾は二撃目で破壊され、本体のビームコーティングもそうそう直撃に耐えられるものではない。
だが、そのサイズ。重量、装甲の厚さで致命傷を免れている。
ゼク・ツヴァイの機銃は、いくどかガンダムの装甲に穴をうがち、だがビームスマートガンだけは直撃を避け続けていた。
「メインセンサーに片脚を失って、なんであんなに動けるの!?」
コモリの顔は、ありえないものを見たかのように蒼白だ。
「ガトー少佐のディープストライカーはこちらに急行しています……ですが、間に合いそうもありません。」
ラシットが言った。
「ソドンではなく、アレキサンドリアの応援に向かわせます。」
「アレキサンドリアには、たったいま、アイツとジュドーが到着したようね。」
アルテイシアが返した。
「ヤザン隊の援護に回ってもらってください。
アーガマは敵の攻撃を退けたそうよ。
そのまま、アーガマ隊にアレキサンドリアの応援に回ってもらう。」
あとは。
あとは、ここをしのげれば。
艦橋の全員が祈るように戦いを見つめた。
「マチュ、援護は出来ないの?」
アルテイシアが、インカムにささやいた。
「わたしでは止められない。」
ジークアスクのコクピットでマチュが答えた。
「大丈夫……白いモビルスーツが勝つわ……って、ガンダムが言っている。」
ガンダムの右脚部装甲が剥離する。
左腕の肘関節が動作不良を起こしている。
胸部装甲に走った焼け焦げが、内部フレームを露出させている。
ゼク・ツヴァイの右腕外装が裂け、肩部追加武装は完全に沈黙。
背面の推進ユニットは完全破壊、もはや脚部のサブスラスターを残すのみだ。
それでも。
止まらない。
「アッハッハッハッハッ!!」
アンは歓喜の笑いが宇宙に響く。
「楽しい、楽しい、楽しい、楽しい!!」
ゼク・ツヴァイの機銃掃射を浴びたガンダムが、ゼク・ツヴァイの作り出した「霧」……「眠りの妖精の森」に逃げ込む。
詰んだ!
そこは確かに視界もレーダーも熱探知も効き辛い特殊な空間だったが、アンの強化人間としての超感覚なら、相手の場所くらいは感知できる。
ビームスマートガン。
機銃。
残ったありったけのミサイルポッドが開く。
全てを、叩き込む。
そうでなければ、このお友だちは満足してくれない。
そんな気がしたのだ。
アンは、強化人間として植え付けられた本能のままにありったけの攻撃を、ガンダムに叩き込んだ。
アムロもまた、「霧」のなかから、ゼク・ツヴァイの位置を察している。
強い。
そして硬い。
ビームはあと一発。
一撃で、行動力を奪うにはこれしかなかった。
ゼク・ツヴァイの全能力が。
そのパイロットの全意識が。
攻撃だけに向かう瞬間を。
アムロはガンダムの右手を高くあげた。
ビームライフルの射線は相手をその真っ先に捉えている。
周りでミサイルが爆発した。
銃弾があらたな孔を穿つ。
全て無視して、アムロは引き金をひいた。
アンは絶叫した。
「これでぇ!
終わりイ!!」
ゼク・ツヴァイが、ビームスマートガンを発射する。
ガンダムの肩口から腰部へ。
ビームが貫く。
閃光の中で、ガンダムの半身が溶解していく。
だがアムロはすでに、コクピットから身を踊らせていた。
“父さんのガンダムが……”
仮に残骸をサルべージできても、修復は叶うまい。それだけの徹底的な破壊だった。
宙を見上げる。
霧の向こうで爆発が起こった。
最後に撃った一撃が、ゼク・ツヴァイを撃墜したのだ。
クラバルールに従って、これまでパイロットの命まで奪うことはなかったが。
これが本当の戦場……ってことか。
アンは、コクピットを分離させた。
ゼク・ツヴァイの爆発に巻き込まれたが、ヘルムコングロマリットの安全設計を取り入れたコクピットはそれに耐えた。
なんていう!
なんて素晴らしい!
なんてステキな。
アンは、ふと霧の中を覗き込んだ。
え……
まだ「いる」の?
コクピットのハッチを開く。
ノーマルスーツの簡易型バーニヤのスイッチを入れる。
まさか。
まさか。
まさか。
アムロにとっては完全に不意打ちだったと言ってよい。
宙から降ってきた少女がいきなり彼に抱きついたのだ。
「あ、な、たが!センセの言ってたひとなのね!」
アムロの胸に顔を埋めながら、少女は泣きじゃくった。
「遊んでもいなくならない友だち!!
ほんとにいたのね?
これでもうわたしたちずっと一緒だよ!
また一緒に遊ぼうね!!」
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「どういうことなの……」
アルテイシアが呆然と呟いた。
「ライバル出現ってことですよ。」
コクピットのマチュがこっそりささやいた。
「油断してると、M.A.V.もパートナーの座ももってかれるかも!
……と、ガンダムが言っている。」
ジークアクスの目が一瞬輝いた。
マチュたちの困惑を楽しんでるようにも、「いやそんなこと言ってないけど」と抗議したようにも見えた。
さて、ぺズン編もそろそろ終盤です。