第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ペズンは、戦場ですらなくなろうとしていた。
守る者は去り、奪う者もまた去ろうとしている。
残されたのは、破壊のための破壊と、帰る場所を失った兵士たちだけだった。
だが――
戦争は、まだ終わらない。





劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~ぺズン陥落

ゼロとエイノーが司令室にはいると同時に、男はさっと立ち上がって敬礼した。

 

「シナプス中佐。」

呆れたようにエイノーは言った。

「トロイホースの艦長たるきみがこんなところで何をしている?」

 

その十倍、呆れた声でベテランの戦艦乗りは返した。

冷たい視線は、エイノーの金属のガントレットとブーツに向かっている。

「提督が、スーパーヒーローのファンだとは知りませんでした!」

 

年齢は40過ぎ。

もともと、エイノーがその仲間たちとともにぺズンに来た時に強襲上陸艦トロイホースの艦長を務めていた男である。

 

「ジャミトフたちは?」

 

「スーバーヒーローのお出ましにとっくに逃げ出しましたよ。

わたしはここに残されました。

やつらはトロイホースで逃げ出すつもりです。」

 

「君なしでトロイホースを?

いや、しかし、そもそもぺズンの宙港はモビルアーマーの攻撃で使用不能になっていたはずだが。」

 

ずうううん。

 

重い衝撃に、エイノーはバランスを崩した。

さっと、ゼロ・ムラサメがその身体を支えてくれる。

 

「出入口を塞いだ残骸は、爆破して吹き飛ばす、と言っておりました。」

 

「無茶な! そんなことをすれば、ぺズンの宙港は二度と使えなくなるぞ?」

 

「それでもいい。というかそのほうがいいのでしょう。」

諦め顔でシナプスは言った。

「自分が手に入らない玩具は壊してしまった方がいいと。まったくとんでもない御仁ですな。ジャミトフというお方は!!」

 

「ほかの兵は?」

 

「提督がなぎ倒した衛兵以外、という事ですか?

ジャミトフとバスクが連れていきました。

従わないものは、わたし以外は武装解除されて閉じ込められてます。」

 

大きくため息をついて、エイノーは腰を下ろした。

 

「……とんでもないことに巻き込んでしまったな。きみにもしものことがあったらコーウェン中将に頭が上がらん。」

 

「まったくです。エイノー提督といえば、頭の硬い、手堅い戦術で名高い方だ。それが柄にもない救国の志しなんぞ、いい加減にしてもらいたいものです。

それにしてもなぜ、ジャミトフとバスクにここまでやらせてしまったのです?

あなたが指揮をとっていれば、こんな事態にはならなかったでしょうに。」

 

「名声欲、というやつだよ、中佐。」

老いてもたくましかった肩ががっくりと落ちている。

「ある意味政敵であったジャミトフをも抱き込んで使いこなす。そういう度量のある人物だと思われたい、という欲だ。

気がついたときには、ジャミトフとバスクにがっちりと指揮権を握られてしまっていた。」

 

「カーラから連絡だ。」

ゼロがインカムに向かってなにやら話しけていた。

「工場ブロックは、元からぺズンにいた技術者たちが制圧した。

もう、ぺズン内部にティターンズはいない。」

 

「なるほど。

では、クランに掲げる白旗の準備でもするか。ムラサメ博士。きみはもともとクランの意を汲んで動いていたのだろう?」

 

「まあ、そうとも言えるかな。わたしはポメラニアンズのアンキーとは仲がよくってね。」

うれしそうに、ゼロ・ムラサメは言った。

「あのクランバトルというのは、テスト運用に最適なんだ。わたしの作ったモビルスーツやわたしの作った強化人間の。」

 

 

----------

 

 

ペズン外郭、宇宙空港区画。

 

本来ならば複数の大型艦の出入りも可能な空洞は、いまや瓦礫に閉ざされていた。

 

その奥で巨体が沈んでいる。

 

地球連邦軍強襲上陸艦――トロイホース。

 

「前方、残骸の爆破準備完了!」

 

「よし……ただちに」

 

ブリッジに緊張が走る。

 

「しかし、この爆薬の量では、ほかの気密区域にも被害が」

 

「構わん」

バスク・オムは即答した。

「トロイホースの発進が先だ。」

 

 

「“もう使えん施設”だ。」

指揮官席のジャミトフが冷たく言った。

「使えんものは、敵にも使わせん」

 

ただ、静かに前方モニターを見ている。

 

次の瞬間。

爆発とともに、空港区画が崩壊する。

 

係留フレームが裂け、補給ドックが砕け、内部の気密区画が連鎖的に破裂する。

 

ペズンは、もはや拠点機能を失い、ただの、死んだ岩塊へと変わっていく。

 

「航路、確保!」

 

「推進最大。残骸は体当たりで押し切れ」

 

巨大艦が、瓦礫へと突入する。

装甲が軋み、外部センサーが次々と死んでいく。

 

だが、進む。

 

止まれば——終わりだ。

 

 

クランとの戦いに赴いたモビルスーツ各隊からはすでに連絡が入っている。

まだ戦い続けている隊もあるが、ほとんどはダメージを受けて撤退に移っていた。

 

ただし今回は、クランたちも無傷ではない。

確認しているだけで、可変機3機を撃破しているし、ガンダムマークⅡも一機が大破。

重巡アレキサンドリアは、撃沈こそ免れたが、自力で航行できなくなるほどの損傷を与えている。

 

クランにとってもギリギリの戦いだったのだ。

 

その証拠に、ニューディサイズのモビルスーツ隊が撤退を始めても追撃はなかった。

 

ぺズンが無事ならば、補給と修理を行って今度こそ……

 

そんな風に考えていたバスクであるが、ちょうど戻ってきたモビルスーツ群をみて、言葉を失った。

50機を超えた機体で、帰還できたのはその半分もいない。

そして、戻ってきたその半分も全てが傷つき、

なかには、ほかのモビルスーツに曳航されて、かろうじて浮いているものもいる。

 

「完全稼働可能なゼク・アインのみ、トロイホースに着艦せよ。」

 

「バ、バスク少佐。残りは……」

 

「動けるもの、武器が使えるものは、ぺズンに対し攻撃開始!

彼処はいま、残虐無類の扇動家、ブライアン・エイノーに占拠されている!」

 

ど、どういうことだ!?

 

さすがにモビルスーツ隊にも動揺が広がった。

なかにはショックのあまり、動力バイプが外れるザクもいる。

 

彼らは善戦した。

そして、かろうじて全滅を免れ、本拠地にたどり着いたのだ。そこがすでに敵の手に落ちているとは。

 

……え?

敵?

エイノー提督が?

敵?

 

モビルスーツパイロットのなかにはエイノーが連れてきたもともとのメンバーもいる。

ジャミトフが引き込んだ元ティターンズもいるが、彼らとてエイノーとジャミトフがともに手を組んで連邦軍の腐敗と、ジオンの専制打破に立ち上がったものだと信じていた。

 

「説明をいただきたい。」

 

トロイホースのスクリーンに映ったのは、三十代の精悍な将校の顔。

ブレイブ・コッド大尉である。

 

ガンダムマークⅤは、ほとんど装甲に無事な部分がないほど、無数の傷を受けていた。

スラスターの一部も損傷し、ビームライフルやサーベル、インコムユニットなど武器を尽く失っていた。

 

バスクがコッドを睨む。

「やつが、あの悪魔の科学者を引き込んだのだ。

あの――ムラサメ博士を!」

 

ムラサメ研究所。

強化人間を扱う研究施設のなかでも、悪名の高さでは5年連続トップに君臨する。

だが、そこのトップである「ムラサメ博士」なる人物を知るものは以外に少ないのだ。

ひとつには、インタビューや様々な記事にはまったく出てこないことがある。

具体的に何歳で、どんな風像で、どんな論文を書いて、どこの学校を出て……まったくわからないまま、ある種の「妖怪」じみた存在として、認知されている。

 

コッドもこれには、顔をしかめただけだった。

 

「……そのムラサメ博士がぺズンに来たからなんだというとですか。」

 

「やつは恐るべき武器を持ち込んでいたのだ。輝くガントレットとブーツだ。エイノー提督は、それを身につけ、警備兵をちぎっては投げちぎっては投げ……」

 

「……コミックの話ですか?

ひょっとして緑の巨人はいましたか?

雷光を発するハンマーをもつヤツは?」

 

「ち、違う! すべて本当のことだ!

ムラサメは、ボウガンの矢を指で止めて投げ返し、おまえはもう死んでいる、と。」

 

どう解釈したものか。

コッドは考えたが、どうにも合理的な解釈はできなかった。

いっそ、バスクが酸素欠乏症にでもかかっている可能性を考慮した方がよいかもしれない。

 

だか、哀れなコッドは悩んでいるヒマもなかった。

元ティターンズのパイロットたちは、バスクの命令ならば盲目的に従うように、刷り込みされているのだろう。

彼らは、残った武器を持ち上げ、残り少ない推進剤を使ってよろよろと、ぺズンに進んでいる。

 

エイノー提督がどのような形で、ぺズンを占拠したのかはわからないが、すでにぺズンは廃墟に近い。

宙港部分は修復も出来ないほどに破壊され、たんなる空洞となっている。

対空兵器も彼が視認できる限り、すべて破壊されている。

こちらのモビルスーツもスクラップ寸前だが、ぺズンにも対抗手段はない。

そもそもこれ以上攻撃を加えたら、居住ブロックの機密性も保てなくなる。

 

だが、ぺズンの表面に、わらわらと現れたものがある。

 

モビルスーツ……

いや、歴戦のコッドにも見たこともない異形も群れだ。

 

それは、かつて「ぺズン計画」と呼ばれた試作機であったが、連邦軍のコッドには、まるで百鬼夜行にしか見えなかった。

 

 

「ぺズン防衛部隊より通達」

通信が割り込む。

「ここはクラン管理区域である。武装解除の上、投降せよ。」

「さもなくば――」

ガッシャが、ハンマーを肩に担ぐ。

「少し遊んでやることになる。」

 

 

 

 





このぺズン動乱はまだ、裏があります……というか、ジャミトフさんたちがバカすぎるので、黒幕でもつくらんと。
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