第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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トロイホースを追うクランたちに新たな敵が立ちはだかる。
武装を使い尽くしたクワトロたちはどう立ち向かうのか。
そして、戦場に新たな剣が舞い降りる―――






劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~月の支配者

ブライト・ノアは、アムロにとってなかなか苦手なタイプだった。

士官学校での成績はさぞかし、優秀だったのだろう。そして、カタブツで、たぶん上官受けもよい。

独立戦争後に、除隊または予備役に回されなかったというのはそういうことだ。

 

技術屋で、プライベートでもインドアタイプのアムロとは合うわけがない。

 

だがお互いにいい大人だった。

自機を失って、やっと帰還したアムロを労い、続けての出撃に頭を下げる余裕がブライトにはあったし、いろいろな事情からそれを仕方ないことだと我慢して従うアムロがいる。

 

出会ったのがもう5年も早ければたぶん、殴り合いくらいは起こしたかもしれない。

 

苦手でもお互いに認め合える。

あるいはそれがチームとしては理想なのかもしれなかった。

アムロは新型機のコクピットで考える。

 

リニアシートは、360度の宙を映し出す。まるでシートそのものが浮いているような感覚だ。

 

“トロイホースは月面に向かって進路をとっている。”

ブライトは、ブリーフィングルームで口早に語った。

“戦力としては、比較的ダメージの少ないゼク・アインを3機以上積んでいるはずとの情報が入っている。なので、百式とZETAだけだと手薄だ。アムロにも同行して欲しい。”

 

先行する戦艦に単独で追いつけるモビルスーツとなると可変機のみだろう。

 

実は健在な可変機はもう一機あるのだが、それを投入するとジオンのお姫様ももれなく付いてきてしまうので、まともな判断の出来る軍人には願い下げだった。

 

 

アムロは、ゼリーチューブを一口飲んだだけで、すぐに出撃することになったのだ。

 

「大丈夫かい、アムロさん。」

ZETAのジュドーが並んで飛行しながら、声をかけてきた。

必ずしもとっつきのよい相手ではないが、「仲間」と認めた相手にはそれなりに接してくれる。

 

「まあ、なんとか。」

実際には疲労よりも、テム・レイと苦心末作り上げた“ガムダム”が破壊されたことによる精神的なショックが大きい。

ちょうど、届いたテム・レイの“新型”に乗ってはみたのだが、まさか―――。

 

「トロイホースを捕捉した。」

クワトロの声は、いつもよりわずかに低かった。

「月面ルートだな……だが、妙だ。」

 

「妙?」

ジュドーが聞き返す。

 

「加速をかけていない。月面が目的ならもう暫くは、加速が必要だ。まして、こちらの追撃も予想されるはずなのに。」

 

アムロも気付いていた。

 

センサーが拾う熱源。

推進剤消費。

姿勢制御。

 

どれも——

整いすぎている。

 

「……すでに誰かとコンタクトした?」

思わず、口に出していた。

 

沈黙。

 

クワトロは否定しなかった。

 

「いまのアイツらと関係を持とうとする相手がいるわきゃないよ!」

ジュドーが言った。

 

連邦にとっては反乱軍。ジオンにとってはぺズンを不法占拠した相手だ。

月面都市群からもそっぽを向かれている。

 

全世界からテロリスト認定された旧ティターンズに、手を差し伸べるものなどいるはずもない。

 

だが……。

 

「なんだ? モビルスーツ……」

ジュドーが呟いた。

トロイホースを取り囲むように。

 

「多い。12機?……」

 

「しかも識別不能。新型だ。」

なにかに気がついたように、クワトロが。吐き捨てるように言った。

「10機を超える新型モビルスーツを運用できる組織など……」

 

トロイホースが目視できる距離に近づいた。

取り囲むモビルスーツは、モノアイを採用していた。

全体のフォルムはザクに似ていた。

右肩に2枚に別れた大型のシールド。

左の肩ガードからはスパイクが伸びている。

頭部は兜を被ったような重装甲に覆われていた。

 

「クランのモビルスーツ隊に告げる。」

一般回線を通じて、話しかけてきたのは向こうからだった。

「我々はアナハイムエレクトロニクス、月面守備隊である。

連邦の反逆者ジャミトフ一味の乗るトロイホースは我々が拿捕した。

このまま、アナハイム月面工場に連行し、武装解除。ジャミトフたちは連邦軍に引き渡す。」

 

「なに、勝手なこと言ってんの!!」

ジュドーが返した。

「そいつらの相手は俺たちなんだ。変な手出しは無用だぜ!?」

 

「……君たちは、ぺズン蜂起勢力相手にクランバトルをしていただけのはずだが?」

 

ジュドーの挑発に乗ることなく、相手の指揮官は冷静に返した。

 

「結果として、君たちは、ぺズンの勢力を叩き潰して、ぺズンを奪還した。実に見事だ。

しかし、反逆者を逮捕する特権は、ない。」

 

「でもこれは俺たちが……!」

 

「そうだな。これは早い者勝ち、という事だろう。」

新型モビルスーツのビームライフルの銃口は、間違いなくトロイホースを向いている。しかし。

「ここまで奮戦した君たちには不満も残るだろうが、まあ勘弁してもらうしかない。

なにしろ、こいつらは月面都市にも攻撃をしかけたテロリストだからね。

こうして早い段階で無力化しないと危険でしょうがない。

宇宙戦力のない連邦はともかく、ジオン公国も今回えらく動きが悪いようだ。

我々、アナハイムの守備隊が、月面の治安維持を担当しなければならないのは、まったくもって、納得しかねるのだが。」

 

声に冷笑が含まれているのは、ニュータイプではないアムロにもしっかり分かる。

 

こいつらは……ティターンズと通じている!!

 

「そこまでやるのか? アナハイム!」

クワトロが呟いた。

 

「それとも、この新型機“マラサイ”を相手にクランバトルでもしてみるかね。

モビルスーツ12機対可変モビルスーツ2機プラス重戦闘機1か。あまり、歩のいい試合とは思えないが?」

 

「クワトロ大尉!」

アムロは叫んでいた。

「高熱源体、急速接近! モビルアーマーです。」

 

「分かってる……識別不能……これは……ビグ・ザムの改良型か!!」

 

3機は瞬時に散開した。

対艦隊仕様のモビルアーマーのビームが今まで、3機のいた空間を通り抜ける。

 

「クラバがしたいのなら、そいつを相手にしたまえ。」

“マラサイ”隊の隊長は馬鹿にするように言った。

「もちろん、これは戦闘ではなく、クラバだ。だが、ひょっとしてコクピットまで破壊してしまったら、済まないね。

なにしろ、従来のビグ・ザムより機動性、武装ともに3割増し、だからね。」

 

 

マラサイに囲まれたトロイホースが戦場を離脱していく。

 

 

「くそっ! 逃がすか!」

ジュドーの乗るZETAのビームライフルは、割って入ったビグ・ザムに命中し……四散した。

 

「Iフィールドだ。」

クワトロは呻いた。

「ちぃっ……。実弾系の武装は使い切っている。」

 

アムロは重戦闘機を加速させた。

ビームの嵐を掻い潜り、ミサイルを発射―――そう、テム・レイが、送ってきた『新型』はこの重戦闘機だったのだ。

 

ジェネレーターの出力は、モビルスーツ並にあったし、メガ粒子砲にミサイルポッドと装備は十分だった……。

こんな化け物が相手でなければ!!

 

「Iフィールドの内側に潜り込んで、ビームを叩き込む!」

ジュドーが叫んだ。

「クワトロさんとアムロは、トロイホースの追撃を!!」

 

アムロの重戦闘機が放ったミサイルは、ビグ・ザムの機銃網に補足され、次々と破壊される。

 

「ダメだ、ジュドー、こいつは対空防御も……厚い。」

 

「いったん、引くか……なに!?」

 

ビグ・ザムの脚部。巨大なクローが分離した。

一本一本の爪が別れて飛翔し、ビームを放つ。

 

すでに、トロイホースを連行する(あるいは保護する)“マラサイ”の部隊は遠い。

 

本来ならば、ZETAも百式も実弾兵器を備えている。

だが、さきほどまでの死闘で弾薬を使い果たし、最小限の推進剤の補充のみで、トロイホースを追ってきたのである。

 

 

“くっ……ビームサーベルが使えれば……”

アムロは呻いた。

しかし、重戦闘機にそんなものはあるはずもない。

 

ビグ・ザムは、ミサイルを発射した。

1発のミサイルが数十に分離して、アムロたちを襲う。

 

当たるかっ!

巧みにかわすが、こちらからの攻撃の手立てはないのだ。

 

さらに分離したクローからのビーム攻撃。

 

クワトロの百式を掠める。

 

 

 

そのとき―――

新たな高熱源体が。2機?

 

「アムロさんっ!!」

飛び込んできた少女の声は聞き覚えがあった。

 

「き、きみはたしか……」

 

「カミーユのクラスメイトのファ・ユイリィです。テム先生から、追加のパーツを預かってきました!」

 

追加パーツ?

 

それは、アムロが乗るものとは少しデザインの異なる重戦闘機。

 

さらにもう一機―――。

 

「こちらはテム・レイ工廠のルー・ルカです。」

別の少女の声が割って入った。

「アムロさん、プログラム“ZZ”を起動させてください!」

 

「なんなんだ、それって!」

 

「いいから、はやく!!」

 

ファ、ルー・ルカ、2人の乗る戦闘機からコクピット部分が分離していく。

 

 

コクピット部分を切り離したの機体が光の軌跡を引きながらアムロの重戦闘機の周囲へ展開する。

 

警告音。 自動接続プロトコル。

視界に走る膨大なシステムログ。

 

「……なんだこれは」

 

アムロは本気で嫌そうに呟いた。

 

――合体兵器。

 

配線は複雑。可動部は増える。故障点は跳ね上がる。整備も面倒。

そして、コストは三倍。

 

いいことが一つもない。

 

「父さん……!」

 

もともとテム・レイは、奇矯なところのない堅実な研究者だったはずだ。

だが、アムロとともに作り上げた“ガンダム”は性能でゲルググを上回り、製造コストも格安だったにもかかわらず、スポンサーからは評価されなかった。

それが、テムの性格をねじ曲げたのだろう。

 

百式、ZETAに始まる新型はいずれも、コストを度外視したものだった。

 

アムロは、パイロットとして、あるいは整備に携わるメカニックとしての視点がつよい。

そういった意味では、百式ですら言語道断なのに……!!

 

外側装甲が展開し、重戦闘機のフレームに噛み合っていく。 推進器出力が跳ね上がる。 ジェネレーター出力――限界値突破。

 

視界が、変わった。

 

リニアシートの周囲に、新しい機体の慣性制御が重なり、“重いのに軽い”という異様な感覚が走る。

 

「……動くのか、これ」

 

ルーの声が割り込む。

「起動完了!

いやあよかった! 成功して!」

 

「ダメなやつだろ、それ!!」

 

だがもう遅い。

ビグ・ザム改のクロー群が、こちらを包囲していた。

 

ビームが走る。

 

ZZのショルダーガードがそれを弾いた。

 

続いてクローそのものが鋭利な刃物として突進する。

それ自体がモビルスーツ並の大きさがあった。

 

回避できる方向は―――なし。

 

アムロはビームサーベルを抜いた。

凄まじい密度を形成したビームの刃が、クローを次々と叩き切る。

 

「なるほど! 3機が合体することで通常の三倍……」

 

「あなたが言わないでください!!」

 

やってくれたなあ! 親父い!

 

アムロの瞳が、燃え上がる。

正義の怒りをぶつけろ、ガンダム。

 

 

 

 

 

 





これがアムロが「もう親父には任せておけない」と自分で設計図をひくきっかけになるのですが、それはもうちょっとあとの話。
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