第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ほのぼの回です。(そうかな?)






劇場版 GQuuuuuuX第二部 回天の宇宙~それぞれの「戦後」2

アムロは小さくなっている。

場所は、アーガマのブリーフィングルームである。

初めて会うムラサメ研究所の研究員だ、と紹介された初老の男女はどちらも険しい顔をしている。

その間に挟まれたアン・ムラサメは10代に入ったばかりに見える。

ヘルメットを外した顔をちゃんと見るのは、はじめてだった。

 

やせっぽちで、赤毛を三つ編みにしている。

反対側、つまりアムロ側に座ったゼロ、ドゥー、トロワ、それにアンキーを等分に見比べている。

そばかすの浮いた顔はけっして美人ではなかったが、強い意志を感じられる。

 

ゼロは、椅子に深く腰掛け、手元のタブレット型デバイスでなにやら数値をチェックしていた。

ドゥーは、ときおり、ガおっ、と言いながら、アンに盛んに牙を向いていた。

トロワはじっと腕を組んで身動き一つしない。

 

少なくともこの4人の強化人間のなかでは、アンがいちばん、マシなような気がした。

 

「バイタル、メンタルともに異常なし!」

ゼロはタブレットのチェックを終えると楽しそうに言った。

 

ぺズン要塞を内部から崩壊させた怪物は、休む間もなく、ぺズンからアーガマにトンボ帰りした。

そのとき一緒に連れ帰ったのが、初老の科学者マシューとマリラだった。

 

なぜ、このひとたちを?と、アムロは疑問に思ったが、彼らがアンを抱きしめて泣き出したのを見て納得した。

アン・ムラサメにとっては、彼らは必要なものたちだったのだ。

 

「さすがは“白い悪魔”だ。ゼク・ツヴァイとわたしのアンをこうも容易く打ち破ってくれるとは!」

 

「容易くでもないし、打ち破ってもいませんよ。」

アムロも乗機を失っている。

内容は相打ちに近い。

「それに、ゼク・ツヴァイのIフィールドが修理済みだったら。

たぶん相手にならなかったでしょう。」

 

マシューと呼ぼれた男性の方の科学者の表情がわずかに和らいだ。

「“白い悪魔”は随分と謙虚なのだな。」

 

「まったくだ。」

女科学者……マリラがため息をついた。

「これがニュータイプというものか……」

 

 

とにかく居心地が悪い。

 

ジュドーやカミーユは、ファやルー・ルカ、それにジュドーのシャングリラの仲間たちを誘って、グラナダに降りてしまった。

マチュやニャアンも一緒である。

 

ソドンはいったんサイド3に戻るらしい。アルビオン、リリーマルレーンとともにすでにぺズン宙域から去っている。

手酷い打撃をうけたアレキサンドリアは、アルビオンに曳航されて、ジオン本国でドッグ入りすることになるだろう。

 

ぺズンの後処理には、本国からコンスコン将軍の率いる艦隊が到着している。

重巡チベ改を中心に、ムサイが6。

それに輸送艦の群れを引き連れていた。

ぺズンに残った叛乱軍は彼らが逮捕し、ぺズンそのものも撤収されることになるのだろう。

 

もう民間企業であるクランが、なにか手出しをする必要はないわけだ。

 

アンたちが入ってくるまで、盛んにメッセージのやり取りをしていたアンキーだが、具体的になにをしているのなと思えば、新しいグラビアのためのスタジオとカメラマンの手配だった。

 

「そうか。」

マリラとマシューは顔を見合せて頷きあった。

「きみがゼロの言う“遊んでもいなくならない友だち”ということか。」

 

「いきなり、そこから入ってもアムロ君が困惑するだけだろう。」

ゼロ・ムラサメがふんぞり返る。

意味もなく。

年が上と言うだけで威張り散らかす中年には辟易するところがないでもないアムロだが、年上の相手に失礼な態度をとる者にもあまり敬意は払えない。

 

ゼロは年齢的には20代に見え、ふたりの科学者よりもはるかに年下に見えるが……

 

「まったく! 研究室に閉じこもってたやつらは常識を知らない。」

 

それをあなたが言うのか!?

 

「そうだな。順を追って説明しよう。」

男の方が言った。

「わたしはマシュー。こっちがマリラ。脳科学者だ。もともとムラサメ研究所の設立メンバーで、そこのゼロを強化したのも主にはわたしたちだ。」

 

「失敗したが、ね。」

マリラが忌々しそうに言った。

 

「厳密には失敗とは言えない。」

マシューが、ゼロを見やった。

「知力、筋力。あらゆる面でゼロを凌ぐ個体はその後作れなかった。」

 

「わたしらの言う“強化人間”は宇宙時代に適応した新人類のはずだ。

モビルスーツの操縦がからきしなわたしは、失敗作だろう。」

ゼロが、トントンとデスクを指で叩いた。

「わたしは、誕生してすぐ、こいつらの研究結果を検証した……まるでなってない。

肉体的な調整は一旦置こう。モビルスーツを扱うには精神的な枷を外してやることが重要だ。

特に、今後、モビルスーツの活躍場所が戦場ということになれば……」

 

その視線からアンを庇うようにマリラは身を乗り出した。

「ゼロはこの子から、記憶を奪ったんだ!!」

ほとんど、叫ぶようにマリラは言った。

「そして、モビルスーツで戦うことを“友だち”と遊ぶことだと、条件付けしたんだっ!」

 

「戦いへの忌避感をなくすには、悪くない方法だろう。」

ゼロは淡々と返した。

「実際に成功している。

ドゥーは、すこし違ったアプローチをしてみた。

自分自身をモビルスーツのパーツのひとつとして認識させることで、モビルスーツに搭乗することに安心感や一体感をもたせたのだが……」

 

「そ、そんな無茶な!」

 

「思った以上にうまくいった。

自分自身の“身体”であるサイコガンダムが爆散してしまったときに、ドゥー自身も死を選ぶかと思ったのだが、ちゃんと自分は自分として認識している。」

 

「ボクは“心臓”だからね!」

ドゥーは自慢げに言った。

このところ、体調がいいのか、呼吸補助のマスクはほとんどつけていない。

「いちばん、大事な部分が生き残ってれば、ほかのパーツは取替が効くんだ!」

 

「実際、ドゥーは売れたぞ?

ティターンズからサイコガンダムともともレンタルの依頼がきたんだ。

キケロガの超高機動とIフィールド内部からの零距離射撃は想定外だったが。

おかげで、その後も各方面から寄付が続々と集まり、研究所の資金は潤沢だ。」

ゼロは、恨めしそうにマシューとマリラを見た。

「ただ、ドゥーが撃墜され一時行方不明になってしまったことが引き金になったのか、マシューとマリラがアン連れて、研究所を逃げ出したのは計算外だった。」

 

「わたしたちのアンは戦争の道具じゃない!」

 

「そうだ。戦争なんてくだらない事に消耗されるべきではない。

近未来には、人類はすべからくニュータイプとなる。というより、ニュータイプでなければ、宇宙時代に適応できない。」

ゼロはデスクのうえの眼鏡を手に取り、かけ直した。それで多少なりとも自分の表情を隠す。

そんな目的だったのかもしれない。

「そのとき、進化できなかった大多数はどうなるのか。地球の環境変化とともに地上にしがみついたまま、滅んでいくしかないのか。それはあまりにも―――可哀想じゃないか!

わたしのように!!」

 

ゼロはぐるりと部屋を見渡した。

その眼光に、マシューやマリラも、強化人間たちも、アンキーでさえ、顔を伏せた。

 

「だから進化できなかった者たちを最小限の調整で宇宙に適応させる。それが強化人間だ!

断じて、戦争などという目先の所業の犠牲になるべきではない。

だいいち―――犠牲になってしまってはもうデータがとれないじゃないか!」

 

なるほど。

確かに、ゼロ・ムラサメは、なんというか……いろいろと残念なひとだ。

アムロは思った。

 

「でも、マシュー博士、マリラ博士。結局、アンはあなた方が連れて逃げた先でも“戦争の道具”にされたわけですよ。」

アムロの言葉に、ふたりはがっくりと首をうなだれた。

 

「たしかにな―――ドゥーの行方不明事件からティターンズとムラサメは嫌厭になっていたので…亡命先にはよいかと思ったのだが……」

 

「これからアンをどうするか、考えましょうよ。ゼロさんに恨み言を言うよりもよほど建設的です。」

 

「とは言っても、アンの条件付けを解除してしまえば―――もし、それが出来たとしても、そうしたら彼女は自分の行いを悔やみ、苦しむことになる。」

 

え?

と、アンは驚いたように顔を上げた。

「あれって、いけない遊びだったの?

その―――」

顔が赤くなった。

「オトナにならないとやっちゃいけないとか。」

 

少女の勘違いを、ほっておいて、アムロはゼロに、言った。

「この子は、あなた流にいえば“安定”してるんです。ただ、遊んだ相手がそのあといなくなってしまうことに孤独感を感じている。」

 

「それはしかたないんじゃないか?」

ゼロは言った。

「遊びは相手の撃墜で終わるわけなんだから。」

 

「アン! 遊ぶ時に相手のコクピットを壊さないように遊べるか?」

 

「うん?」

アンは顔をあげた。

「わざとそういうルールで遊ぶの?」

 

「そうだ、そうすれば、一度遊んだ友だちとまた遊べる。こうやって、一緒に話したり、お茶を飲んだりもできる。」

 

「友だちとお話ししたり、お茶を飲んだり……」

アンの目がキラキラと輝いた。

「とってもステキ。」

 

「アンは定期的にモビルスーツに乗せてやらねば、精神的な安定を保てない。」

マリラが怖い顔で言った。

「そんな都合のいい戦場がそうそう―――」

 

 

「まいどありぃ!」

アンキーが、にやにやと笑った。

「ポメラニアンズへようこそ!

優良なクラバ選手をゲットしたね。まあ、年齢制限の問題もあるから、姿は隠しておいて、リングネームでもつけるとしようか!?」

 

 

 

 

 




アンキーさん余裕のようですが、実は内心大ピンチです。
アナハイムなんて、大企業がクラバに出てきたらカネバンなんてふっとんでしまうわけで、んじゃあ、子飼いの選手のグラビアで稼ぐでもしないと、と準備をしてました。
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