第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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本編で第14話は終了。
ごちゃごちゃっとした説明回になってしまいました。ほぼアムロとカイの会話のみで4000文字オーバーという申し訳のないお話しです。
時系列はエキシビションマッチから数日後。
クランバトルがいよいよサイド6公認の正規競技として認められる日。この日に合わせてテム・レイとアムロ親子を特集する番組が組まれます。


第14話 白い悪魔~インタビュワーwith……

「こういうものなのか?」

と、第一声でアムロは尋ねてしまった。

インタビューはインタビューだ。

インタビュー自体を受けるのは、生まれて初めてなのだからあるいはこれが一般的なのかもしれない。だがはたしてインタビューというものは前もって打ち合わせが必要なものだろうか。

 

「あとで編集ができるなら、そりゃ、別に事前の打ち合わせなんてなくてもかまわないさ。ただこいつはライブ配信になるんでね。」

と、カイは言った。もう何年もあってないが相変わらずぼさぼさの髪で、一応スーツはきていたが、あまり似合ってはいない。

「それに少し話をしておきたかったのもある。久しぶりだしな。」

 

「それは、放送が終わってからでも。」

 

「あまいんだよ。この放送が終わったらおまえは一躍時の人だ。プライベートの時間がもてるのは、ざっと十日後になる。」

 

そう言ってカイは、スマホの画面を差し出して見せた。

 

インタビューの依頼、講演会、様々なイベントへの出演依頼、なかには著名な大企業からのモビルスーツの監修の依頼もある。

アムロはじっと画面をみつめたが、それは間違いなくすべて自分あての依頼だった。

 

「インタビューはまあ…わかるけど講演会とか監修は親父の仕事なんじゃないかなあ。」

 

「もちろんテム先生にも同じくらいの量の依頼は来ている。

おまえやテム先生に興味があってもこれまでは接触するにはおっかなびっくりだったんだ。

なにしろ、今日の『クランバトル運営委員会』の発足までは、クランバトルは非合法。出場するパイロットは犯罪者まがいの存在だからな。

なんで、とりあえずのスケジュールは、最初のインタビューと特番を担当するうちの放送局が仕切らせてもらっている。」

 

「まあ、それはしかたないけど。」

 

「言っとくがポメラニアンズのアンキー社長ともさっき会ってきた。あいつのもってるリストはこんなもんじゃなかったぞ?

ポメラニアンズが仕切ってるのは、こことイズマコロニー周辺のクラバだけだ。各地のクラバのマッチメイカーからまぁ数えるのもいやになるくらいの招待状が届いている。」

 

アムロは頭を抱えた。

 

先日のエキシビションマッチは、かなり広い範囲で放映され、とんでもない反響があったらしい。

 

アムロの操縦するガンダムそのものの評価もまたとんでもないことになっていた。

 

さすがはガンダム開発者のテム・レイだ。このガンダムもどきは単純にコスト重視のダウングレード機体ではなかったのだ。

ぜひ我社に、うちの研究所に、と就職口や資金提供の申し出も凄まじい数が届いたらしい。

だが、テムはばっさりと全てを断って、フランクリン・ビダンの開発チーム入りを表明していた。

 

彼のもってきた「ムーバブルフレーム」という技術に興味があった、といういかにも技術者らしい理由である。

もっともフランクリン・ビダンとの力関係も一気に逆転していた。

もはや、ここでテム・レイを迎えなければフランクリン・ビダン宛の各方面からの資金援助自体が打ち切られてしまう――そんな恐れまで出てきている。

 

すでにテム・レイは必要な研究設備、人員までフランクリン・ビダンに注文を終えていた。

注文、というか強制に近い。

設備はともかく、開発主任としてナガノなる若手の研究者まで要求したのはどうなのだろう――

 

フランクリンが情報提供したムーバブルフレームを使用したモビルスーツの設計書。そのなかでもっとも光るものがあったのがそのナガノなる技術者の手によるものだった…というのがその理由だが。

ワガママにもほどがある。

 

「そっちはおまえとテムさんで悩んでもらうとしてだ、な。」

カイは身体を屈めて、声を低くした。

「ちょっと耳に入れておきたい事があるんだ。」

 

めんどうなことだったら嫌だな。

と、アムロは正直にそう思った。

 

エキシビションマッチで戦ったクリスチーナ・マッケンジーからは、彼女のいる開発チームへの参加をしつこく勧められている。ちなみに工科大学への推薦入学と返済不要の奨学金付きである。

 

カミーユからは、クラバのM.A.Vへの立候補を受けている。

ハヤトというMAVを失ったばかりの身としてはとても有難いが、なにしろ命懸けのクランバトルである。

 

「夢を追いかけるのもいいけどハイスクールくらいはちゃんと卒業しておけ」という型通りの説教をしなくてはならず、アムロは自分で言ってて落ち込んだ。

 

そしてドゥー・アカツキ。

彼女がまたやっかいだった。

入院先の病院で、いまのところ症状は安定しているとはいうものの、延命のためには定期的な外科手術が必要らしい。

(根幹的治療にいては医者は口を濁した)

 

「わたしもくわしくは分からないわ。」

と、クリスチーナ・マッケンジーは顔を曇らせながらそう言った。

「たぶんモビルスーツ操縦のための強化処置を受けている。おそらくは悪名高いムラサメ研の被験者よ。

わたしのいる開発チームはアナハイム内にあるのだけれど連邦軍のかなり上のほうと繋がってるの。」

 

「まさか」

 

ティターンズ…と言いかけたが、クリスは首を振った。

 

「逆よ。テロをも辞さない彼らに批判的な立場のひと。ドゥーはある非合法任務の最中に大怪我をして入院をしていたところを保護したって。わたしはそう聞いてるわ。」

 

「保護するって? せっかく保護した相手をまた戦いに駆り出すなんて…」

 

「違うわよ! もともとエキシビションマッチはきいてなかったし、あくまで出場したのはモビルスーツのジュニア大会。

ドゥーは心理的にも強い条件付けを受けていてね。自分をモビルスーツの構造の一部だと思い込まされているのよ。定期的にモビルスーツに乗せてやらないと精神的に崩壊をおこすわ…」

 

 

まったくめんどうなことだらけなんだから、なにがあったか知らないがこれ以上は勘弁して欲しい…。

だが、カイはそんなアムロの心を見透かすように、ニヤッと笑った。

 

「このまえ、俺はジオンのアルテイシア議長にインタビューしたんだが…」

 

「ああ、ニュースを見たよ。

よくあんなインタビューが出来たねって親父と感心してたんだ。

ぼくらより少し歳上なだけだろう?

いままでどこでどうしていたのかも含めてミステリアスだし、それに」

言おうか言うまいか、アムロはちょっと迷った。

「…すごい美人だよね。」

 

「セイラさんだ。」

 

は?

アムロはポカンとして、カイの顔をみつめた。

 

「セイラ・マス。ほら医学実習生でサイド7にいただろう。」

 

たしかに。いた。

 

あまり口をきいたりすることはなかったが、居住区が近かったのと、アムロたちの通う学校とセイラのそれが近かったので、互いに顔くらいは知っている。

 

たしか、シャアの襲撃のあと負傷した連邦軍兵の看護に駆り出されてそのまま、治療につきそう形でサイド7をあとにした。

後日、正式に軍医として連邦軍に採用されて軍属になったときいている。

 

「え、そのセイラさんが。アルテイシア陛下とどういう」

 

「だから、アルテイシアがセイラさんだ。ちなみに陛下呼びはしてほしくないそうだ。公王制は廃止のご意向らしい。まあこれは政治的には正しいな。ザビ家の手垢に塗れた『公王』なんて名称は使わない方がいい。」

 

「そ、そ、そ、そんな!

なんで、セイラさんがなぜ?」

 

そこはだな、と言ってコーヒーを一口のんで、カイは顔をしかめて、まぢい、と言った。

「なんでアルテイシア様が、と言うべきなんだろうな。

まあ、こまかいことはわからねえが、ザビ家による暗殺を恐れて名前を変えていたんだろう。」

 

カイは封をした手紙を懐から取り出した。

 

「セイラさんは俺たちのことを覚えてたぜ?

だからインタビューにも応じてくれたんだろう。ちなみにおまえがクランバトルで連戦連勝してることも知っていた。それでこれだ。」

 

「て、てがみ…」

 

「恐れ多くもジオン公国の元首からの親書だ。直接、おまえに渡して欲しい、とさ。

どうも側近にも知られたくない頼み事らしい。」

 

 

厄介事だ。

とんでもない厄介事だ。

アムロは恨めしそうにカイを睨んだが、この手の視線には慣れているのか、カイは平然と手紙を手渡した。

 

もう読まないなら読まないで厄介だ。

 

 

封筒には宛名も差出人欄もない。

 

封を切った中身も、無味乾燥な活字が並んでいた。日付も署名もない。

つまり。この手紙が本当にジオンの元首であるアルテイシアからのものだという証拠はなにもないのだ。

 

「俺は中身を見ていない。」

カイは肩を竦めた。

「もし、セイラさんがおまえに実は恋心をいだいていて、ラブレターをしたためただけなら別になにもいらない。

だが、もしそれ以外のネタなら差し支えない範囲で教えてくれ。記事にしたいんだ。」

 

手紙は。

 

残念ながらラブレターではなかった。

 

というか、アムロは、セイラさんがとんでもなく美人だったので覚えていただけで、むこうがこちらの名前まで覚えて居てくれただけでも光栄だ。

かなりよいところのお嬢さんなんだろうな、と当時アムロはそう思っていた。きれいなだけではなく、それくらい気品があったのだ。

僻地にあたるサイド7はそんな良家の子女が疎開代わりに移住したりもしていた。

あのヤシマ家のお嬢さんは、終戦後サイド6に移住していったがどうしているだろう…。

 

挨拶は簡単だった。

 

ジオンの元首になったことへの説明もとくにない。

 

依頼内容は。

意外にもクラバに関することだった。

いや、意外じゃない。

クラバに関係しなければセイラさんがぼくに用事なんてないよな。

 

アムロは心の中でため息をついた。

 

「どんな内容だ?」

カイが身を乗り出した。

 

「地球のネオホンコンで行われているクランバトルに参加して、そこのクランオーナーのクワトロ・バジーナさんって人に会ってほしいんだって。」

たしかに。クランバトルの有名選手であるアムロにしか頼めない内容だ。

 

アムロは少し落胆している。恋愛感情までは発展していなかったが、セイラさんはみなの憧れの存在ではあったのだ。

もう少しなにか、こう――。

 

「それだけか。」

 

「それだけ。」

 

それだけではなかったがその内容はとてもカイには言えない。彼がジャーナリストだからというわけではない。

ほかの誰にも口にはできない内容がそこには記されていた。

 

“クワトロ・バジーナを名乗る人物がもし元ジオンの赤い彗星シャア・アズナブルであれば彼を亡き者にして欲しい。”

 

 

 




ついにガンダムは地球圏に降り立つ。
アムロを待つ赤いモビルスーツとは一体何者なのか。
宇宙空間とはまったく勝手の異なる重力の元で、新たな戦いが幕をあける。
次回機動戦士Gundam GQuuuuuuX、第15話 。「重力の井戸」。
きみは生き延びることが出来るか。
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