第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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オフザケ回です。






BluRay特典映像 Sの戦慄

アナハイムからの待遇は、悪くなかった。

用意された部屋は、豪華なスイートルームで、出された食事も悪くなかった。

ワインまでついていた―――しかもジャミトフの好みの銘柄だ。

 

部屋に鍵すらかかっていなかったが、廊下に出て10歩ほど歩くと、影からスっと保安員が現れた。

 

「バスクと会いたいのだが。

ほかの乗組員たちはどうしている?」

 

「明日の地球行きのシャトルに乗せて、連邦軍基地までお送りする予定です。」

 

「そ、そんなことをすれば、連邦内部の裏切りものたちに、罪をでっち上げられて殺されるだけだ!」

 

保安員は、はあ、要領を得ない表情を浮かべたが、インカムでどこかに連絡を取り始めた。

 

―――ああ、そうです。ジャミトフ閣下からのご要望です。

トロイホースのクルーは全員、月面に止めおくように、と。はい。

はい、わかりました。そのように伝えます。

 

保安員は向き直ると、ジャミトフに「ご要望通りにいたしました。」と伝えた。

 

「バスクに会いたい。」

ジャミトフはいらいらと言った。

「今後の打ち合わせもある。」

 

「そのことでしたら、間もなくアナハイムのディレクターが打ち合わせにお伺いすることになっておりますので。

バスク少佐は、別室ですでに打ち合わせ中です。」

 

「……それはわかった。」

本当はよくわかっていなかった。ディレクター?

どういう職種でなんの打ち合わせに来るのだ?

「だが、情報がほしい。ぺズンはどうなった? エイノーは? 連邦は? ジオンの動きは?」

 

「そこらの資料もお持ちしますので。」

 

保安員はジャミトフを自室に戻るように促した。表情は穏やかだが、右手が警棒のほうへじりじりと近づいていた。

ジャミトフは諦めて部屋に戻った。

 

それほど、長い時間待つこともなく、ドアがノックされる。

やったきたのは、まだ若い男だった。

スーツではない。一応ネクタイのようなものをしているが、ラフにカーディガンを引っ掛けている。

 

「どうも。」

その挨拶もなんとも軽くて、ジャミトフは男を睨みつけた。だが相手は平然とデスクの上にいくつもの資料を並べ始める。

備え付けのモニターだけでは足りぬ、ということらしい。

「ジャミトフ閣下には、アナハイムの販促活動に協力いただけないか、と。

その代わりに、閣下の罪状が軽微なものになるように全力を尽くさせていただくことを約束いたします。」

 

そう来るだろう、と言うことはわかってあた。

わかっていた……が、分かっていない。

販促活動?

なんだ?

 

「私どもの利益の中心というのは、やはり軍需品となりまして。大型艦船はドッグの関係でまだまだ、これからとなります。まず中心はモビルスーツです。

技術的なところはトップだと自負しておりますが、なにぶんジオニックなどとくらべると後発組になりますので、とくにジオンへの売り込みには苦戦しております。」

 

「何処の世にも憚る死の商人か。」

ジャミトフは吐き捨てたが、男は動じない。

「売上的には、コロニーの建築、補修と言った部分がはるかに大きいのですが、こちらは正直なところあまり、利益になりません。

また、これはスペースノイドの生活に直結する部分なので、アナハイムでもインフラの一種と理解しています。なので、多少なりとも赤字覚悟で、機材、人材を提供し続け無ければなりません。

となりますと、利益を確保できるのは、軍需部門にならざるを得ない。」

 

「具体的になにをさせたい?」

ジャミトフは体を仰け反らせるようにして、男を睨めつけた。

「言っておくが、わしの連邦軍や連邦議会に対する影響力はいまはないに等しいぞ?」

 

「いえいえ、そこまでは。

なにかそのジオン公国と連邦に緊張をもたらす様なコメントを発表していただければ充分です。」

いくつかシナリオを考えてきたのですが……

といって男は、モニターにタイトルを表示させた。

 

『非道の人体実験を許すな! 強化人間という名の人体改造!!』

 

いかがでしょう?

と言って男は資料を差し出した。

オーガスタ、ムラサメ。

孤児を攫い、体を切り裂き、薬物を投与し、心までも弄くり回す。

恐るべき、その実験の数々を、仮にジャミトフが糾弾するなら、こうするだろうという口調まで真似られた草稿だ。

 

「ジオンのニュータイプに対抗するための無理やり強化人間を作り出す。ここまで酷いことが行われていると閣下の口から証言していただければ、必ずやジオンからのリアクションがあるはずです。うまくすればここに書かれた研究所の解体を強要してくるかもしれない。」

 

なるほど。

それは、ジオンと連邦の間に緊張感をもたらすに違いない。そしてそれは新たな軍需の拡大を意味する。だが……

 

「これは……限りなく本当のことなのだが。」

「それはまったく荒唐無稽では閣下もそもそも糾弾がやりにくいかと……」

「まったくの事実であって、しかも連邦も資金提供の形で参加している。」

 

そして、実際のやりとりはバスク・オムに任せていたが、ティターンズもサイド6でキリシアを襲撃した際には、ムラサメ研究所とオーガスタからモビルスーツと強化人間を提供してもらってるのだ。

 

「それではこちらなどはいかがでしょう?」

 

『大量虐殺を許すな!』

 

民間施設に対する毒ガス使用を糾弾する内容だった。

 

「これなら、スペースノイドにも一定の支持を得られます。ザビ家指導のもとに行われていた作戦とはいえ、ジオンが行った所業のなかでもコロニー落としに肩を並べる大量殺戮です。」

 

「ううむ……」

ジャミトフは唸った。

たしかにこれならば、と思うのだが、つい先日、ジャミトフは月面都市エアーズへの毒ガス攻撃を命じている。

毒ガスそのものは、クラバのモビルスーツ達の攻撃で失われたが、パイロットたちは全員捕虜になっているはずだ。かれらの口から毒ガス攻撃についての情報がもれないと思うほど、ジャミトフは楽観的ではない。

 

「ほかにはなにかないのか?

糾弾演説には協力はしてやるが、もっとこう……フィクションかそうでないのかが曖昧で、こちらにブーメランが飛んでこないものを……」

 

ディレクターと名乗る男は困ったようだった。

あれこれと資料をめくったり、タブレット型のデバイスを操作していたが

 

「そ、それではこんなのはどうでしょう。

これなら、全くの空想の産物ですし、誰も本気にはしません。その分、これでジオンが怒ってくれるかというと」

 

「言ってみろ。」

 

「はい。」

モニターにタイトルが映った。

 

『地球連邦は反抗する! ジャブロー地下でわたしは見た!! 打ち上げ待ちの大艦隊を!』

 

「いかがでしょう? これはただの都市伝説で、ジオンからは一笑にふされて終わる危険性もありますが、これなら……」

 

ジャミトフは頭を抱えた。

 

「……それもホントの話しなのだあっ!」

 

 

 

 

 

 

「はい、しゅうりょおっーーっ!」

 

突然、ドアが開いて、別の男が入ってきた。黒いダウンを羽織った縦にも横にもでかい男だ。

目もでかい。鼻もでかい。口もでかい。

なかなかに濃い顔だちだが、態度まではデカくない。なかなか人好きするタイプの男である。

 

「終了です、終了。」

そう言いながらニコニコと笑う。その笑みが油断ならない。

 

「ええっと、ジャミトフ閣下、ドッキリです、ドッキリ。」

 

「な、なにが」

サッパリわからない。

 

「『何を糾弾しても全部自分に跳ね返ってきちゃうドッキリ』です。」

 

 

---------------

 

 

壁やら観葉植物のなかのカメラが、撤収されて、撮影は終わったようだった。

軟禁されている身としては監視用のカメラの存在は、ジャミトフも覚悟していたが、、「コンテンツ」として成立されられてるだけのカメラアングルを得るためには、複数のそれが必要だったのだろう。

 

「これをコンテンツとして配信すると言うのか!」

 

一応は、ジャミトフは、責任者らしき大男に食ってかかったが、相手は動じない。

軍人とも思えないが、海千山千、なかなかに胆力もある。

 

「ええ。もちろん不味いとこにはビーはいれますから大丈夫です。」

 

「納得できんな。責任者に会わせてもらおう。」

 

「閣下については、わたしが責任者です。」

あっさりと男は言った。

「アナハイムに協力いただければか減刑にご協力すると言ったのは、ウソではありません。

このコンテンツに引き続き、出演いただくことも『協力』に含まれています。」

 

ジャミトフは黙った。

 

男の言うことが本当なら。

言われた通りにするしかない。

 

「……バスク・オムと会わせてもらいたい。それと、ぺズンやエイノーについての情報がほしい。」

 

「そちらはすぐに手配します。基本的に自由にしていただいて大丈夫ですからね。それと、普通にニュースなどを閲覧出来るように部屋のモニターを設定しておきますので。」

 

ジャミトフは、ソファに座り込み、天井を睨んでいたので、男が部屋から出ていきながら、襟元のマイクに囁いた言葉までは聞き取っていない。

 

「……いや、よかった。

久々の逸材だよ。

うん、そう、ジャブロー地下施設の反抗艦隊の建造は事実だね。

連邦軍が頑として認めなかった“都市伝説”だけど、これで完全に裏がとれた。

その規模について聞きだすのは次からな。

ええっと……そうだな、『ゼロ・ムラサメのイライラ20』というのはどうだろう。」

 

 

 

 

 




アナハイムはこれから黒幕になって貰うつもりなのですが、キャラが浮かばないので、異世界から引っ張ってきました。
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