第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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あらまた、おっさんばっかり。





BluRay特典映像 虜囚

食事は出されている。

色の異なるゼリーが、皿にへばりついたものが、三食。

重力が確保されていない宇宙船の内部では仕方がない。

味は――まあ、こんなものだ。

 

ブライアン・エイノーは捕らえられ、ジオンの艦艇に収容され、運ばれている。

 

心残りはいろいろあった。

特に、自分を信じて決起に付き合ってくれた部下のことは気がかりだ。

扉が開き、将校がひとり入ってきた。

 

紀章は中佐である。

 

軽く敬礼をしてきたので、エイノーも返礼した。

 

しばらく互いに見つめ合う。

 

「……ジオン軍アルビオン艦長、ドレンであります。エイノー閣下。」

 

「……アルビオンか」

エイノーは低く言った。

「クラン艦隊所属だったな」

 

「まあ、そうですな。

 一応、クラン艦隊の指揮を任されてはおりました」

 

「……なるほど」

値踏みするようにエイノーは相手を見つめた。

根っからの船乗り、といった風の男だ。

 

「形だけの司令官です。

わたしの権限は艦隊としてモビルスーツをぺズン宙域まで運搬するところまで。

実際に戦ったのはクラバのパイロットたちですし、指揮は連邦のブライトという若い士官がとっておりました。

なかなか優秀な男ですな、彼は。」

 

「……実際の指揮は、ジオン公王府がとっていたのではないのかな?」

 

独房は、多少はスペースがあり、小さなデスクと来客がかけられる椅子が用意されている。

その椅子をドレンにすすめながら、エイノーもその向かいに腰掛けた。

 

「リングネーム……クラバネームとでもいうのか。別の名前を名乗って、ジオンのお大物が参戦していたという噂もある。」

 

「そこらは公王府の公式見解を待ちましょう。

ですが戦術としてはアリだったように感じました。

モビルスーツの数が少ないクランとしては、ニューディサイズがどの艦に攻撃をしかけてくるのか分からないのが難点でしたが、攻撃はほぼ、ソドン一本だった。護る側としてはやり易い。」

 

「ジャミトフとしてはアルテイシア・ソム・ダイクン閣下を亡き者にすることで、さらなる混乱を巻き起こしたかったのだろう。」

 

「エイノー閣下のお考えは違う、と。」

 

「……もともとジオンからも連邦からも距離を起きたがっていたムーンレイスを統合して、月面に第三勢力を確立する。

そうすれば、連邦とジオンの間に全面的衝突はなくなるだろう。

しかるのち、ジオンの主導ではなく、あくまで連邦の指導のもとに宇宙移民を推し進め、地球の環境保全を図る。

そして、新しく誕生したコロニー国家と月面都市をまとめ、ジオン公国に対抗する。」

 

「……結局は戦争ですか?」

 

「必ずしも“対抗”は武力衝突は意味しない。経済的文化的な発展により、主導権が握れればそれでいいのだ。」

 

ドレンは、なんとなく助けを求めるように周りに視線をやった……だがここには、エイノーとドレンしかいない。

 

「連邦の軍事法廷でそれを主張なさるおつもりですか?」

 

「許されれば、だがな。反逆者で月面都市にテロをしかけた首謀者に発言の機会など与えられないだろうし、与えるべきではなはない。」

 

「実際の指揮については、元ティターンズ……ジャミトフ一派が握っていた、とパイロットたちからの証言もありますが?」

 

「私の子飼いの士官たちの証言では、信じてもらうのは難しいだろう……」

 

「そうそう。ぺズンの技術者たちの間でも閣下の評判は悪くないです。ジャミトフたちの乗っ取りに対し、自ら光り輝くガントレットとブーツを装着して立ち上がり、群がる衛兵をちぎって投げ」

 

「それはむしろ証言したものの正気が疑われることになる。」

 

「確かにその危険性はありますな。」

ドレンは考え込むように腕を組んだ。

「あなた自身は、連邦軍ならびに連邦政府の刷新もかかげていたはずだ。」

 

「そうだ。

特に連邦軍は、ティターンズとエゥーゴ、ふたつの派閥に分裂しつつあった。

早晩、軍事的な衝突が起こっただろう。

それは地上の一般市民を巻き込む凄惨なものになったはずだ。私はそれを止めたかった。」

 

「……なるほど。

一応の理屈は通ります。」

ドレンは頷いた。

「ですが、それを主張する場所は、連邦にはない、というところですか。」

 

「この宇宙のどこにもない。」

 

「ジオンはどうです?」

ドレンは身を乗り出した。

「あなたにその気があれば、ジオン公王はあなたの亡命を受け入れる準備があります。」

 

エイノーはなにを言わなかった。

確かにその申し出は彼を驚かせたはずだが、僅かに目を細めただけで、なにも言わずに、ドレンを見つめていた。

 

 

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チベ改のブリッジに戻ったドレンは、見るからに疲れ果てていた。

コンスコンはその様子にじろりと、冷たい視線を送った。

 

メインモニターに映し出された彼らの上官もまた不快そうに眉間に皺をよせいたが、こいつは普段からそんな風なので、本当に不快に感じているのかはわからない。

 

「なかなかの腹芸だったな。」

コンスコンが鼻を鳴らした。

サイド3でも名家の出身であるが、あまりにも運用が手堅いため、「臆病者」と陰で揶揄される。なにしろ、独立戦争当時、傷ついた戦艦一隻を仕留めるのに、当時最新鋭だったドムを12機も要求したというエビソードまで残っている。

だが、戦争が終わって、国家英雄的なパイロットや名のある将軍も次々と予備にされるなかで、現役の艦隊司令官なのが、マ・クベのコンスコンに対する評価をものがたっていた。

 

「……自分は……船乗りで。」

ドレンはぼやいた。

「こんな経験は、実践でも士官学校のカリキュラムでもありませんでした。」

 

「まあまあ、だ。」

モニターの中のマ・クベがそう言った。

悪いところがあれば具体的に指摘する男だったから、それは悪い評価ではない。

コンスコンも頷いたので、ドレンは驚いた。

 

「なかなか……思うようには動いてくれません。連邦にもまだまだ人材は居るのだ……と感じました。」

 

「当たり前だ。」

マ・クベは言った。

「人の厚みが違う。だが、その人物が、反乱という手段をとるしかなかったという。

その事実こそが重要なのだよ、ドレン」

 

マ・クベが部下の名を呼ぶことなどめったにない。

ドレンは心臓を掴まれたような息苦しさを感じた。彼もまた側近のウラガンのような地位を得たということなのか。

それははたしてよいことなのだろうか。

 

スクリーンから、胃の痛くなる顔が消えたあと、コンスコン中将が、肩を叩いた。

 

「自分は……こういったことは苦手であります、閣下。」

ドレンは思わず弱音をはいた。

「正直なところ、三倍の敵に囲まれたほうがまだマシな気がいたします。」

 

「同意見だな。だが、おまえの苦手な“そういうこと”ができるようになると、最初から三倍の敵と遭遇しなくてすむようになる。まあ、俺と違っておまえはまだ、十年は現役でいけるのだろう。

いい機会だ。少しはこっちの分野も学んでおくのだな。」

 

 

 

 

 




ジオンが勝ってる世界線なので、コンスコン中将も生き残ってるだろうという「設定」なんですがけっこういいヤツに描かれてますね、コンスコン。
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