第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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舞台は地球へ!!
再びクラバにエントリーすることになったマチュたちに、挑む『白い悪魔』の正体は!
慣れない重力下での戦闘に苦戦するマチュたちに勝機はあるのか!?
暗躍するポメラニアンズ。謎の赤いモビルスーツを駆るクワトロ・バジーナの正体は!
「大佐、わたし用のモビルスーツも、欲しいです。」
「じ、冗談ではない!」
波乱の第15話、スタートです。


第15話 重力の井戸

「ども。はじめまして、だね。クワトロ・バジーナ“大佐”。」

「わたしは元連邦軍の大尉なのだが。」

「うちの情報網じゃ、もっぱらそう呼ばれているよ、大佐殿。」

 

サングラスをかけた二枚目は苦笑した。

 

「正直、うちの『白い悪魔』に会わせろって依頼はずいぶん多くてね。」

アンキーはモニターの中の二枚目の坊やを睨んだ。

「まえにいろいろとあったシャリア・ブルの旦那の頼みだから話は聞いてやるけど、いつ会わせてやれるかはなんとも言えないよ?」

 

「わかっていないな。ポメラニアンズ。」

笑みさえふくんだ口調は、どこかアンキーをからかうような調子さえあった。

 

「わかってないのはそっちだろ?」

アンキーは言い返した。

「わたしはサイド6公認のクランバトル運営委員会の理事だからね。

いまさらジオンの圧力でなんとかしようとしたって…」

 

「アンキーっ!!」

 

とんでもない顔が割って入った。

赤いショートカットの髪。印象的な大きな瞳。

 

「マチュか?」

アンキーはこの少女にかつて金庫の金を強奪されている。その一部はジオンから戻された。

 

「あのときはゴメンなさい、わたしシュウジと一緒にどうしても地球にいきたくって、」

「強盗がごめんなさいですまそうとするなっ!」

「まあまあ、」

 

背後からわってはいったのは、シャリア・ブル中佐だった。

 

「あまり喧嘩腰で対応されても。

我が軍の新鋭モビルスーツを勝手に持ちだしてクラバに使ってたのを黙認して差し上げてるわけですし」

 

「私たちが、持ち出したわけではないよ!」

アンキーは言い返したが、結局、パイロットを込みでジオンの新型を雇い入れたのはポメラニアンズである以上、まったく責任がないわけでもなかった。

 

「地球圏で、クランバトルをはじめたって酔狂なやつがいるってきいて、どんなやつかと思ってたんだが、こんなやつだったのかい。」

アンキーはフウッと紫煙をはきだした。

「どうやら、元連邦軍大尉というのはハッタリっぽいね。クワトロというのも偽名かい?」

 

「それについてはあまり詮索をして欲しくはないな。」

クワトロは言った。

「お互いに過去はあまりほじくり返されたくはないだろう。」

 

「そうだね。」

アンキーは破顔した。

いや、賛同の意味合いで表情を和らげて、にっこりするのが「破顔」ではあるのだが、その笑顔がなんとも邪悪にとれるのが、このアンキーという女であった。

 

「マチュも一緒なら言っとくことがある。」

アンキーは、なにやら手元の書類を探した。

「ああ、これだ、これ。

マチュ、あんたの指名手配は解除される。

アマテ・ユズリハ…外交官の一人娘なんだってな。

いやぶっちゃけ、わたしらのクラバがたまたまテロの時間にぶち当たっただけであのモビルアーマーと、あんたが関係してるわけはないと思ってた。

あとはわたしんとこからの現金強奪なんだが、被害届をだせない金、というのもあってね。

さっきもいったけど、ジオンがあんたのリュックを取り返してくれたんで金は大半戻ってる。

あとはそもそもクラバに参加してたこと自体が犯罪っちゃ犯罪なんだが。」

 

「クラバは合法化された。」

クワトロが言った。

「非合法時代に遡って罪を適用すると現在クラバに出場してるやつらを根こそぎ逮捕しなければならなくなる。」

 

「そういうこと!

なんでアマテ…マチュと呼んだほうがいいか?

あんたの罪状は塾をさぼったことと、家出くらいだね。これは『ごめんなさい』で済むと思うんでご両親に連絡しておくんだね。」

 

「あ、」

マチュは視線をそらす。ぼそりと「ありがと」と言った。

 

「でもって、あらためて我がポメラニアンズにようこそ、『狂犬』マチュに『病み猫』ニャアン。」

 

「なんだそのリングネームみたいな呼び名は。」

クワトロが抗議した。

 

「みたいな、じゃなくてそのものだよ。」

アンキーは呵々(かか)と笑った。

「非合法時代も含めてメディアが解禁されてる。魔女とよばれたユニカムや古強者の黒い三連星。こいつらを倒したあんたたちはマニアの間じゃ結構な評判なんだ。

あんたらは今でもわたしのクランに所属してる。」

 

「そうなの?」

画面の外でニャアンが首を傾げた。

 

「なんだ、もう1人もそこにいるのか? なら話が早い。おまえらM.A.Vを組め。機体はそうだな、またそのジオンの新型をレンタルしてもらって」

 

「お断りする。」

即座にシャリア・ブルが言った。

「それとマチュくんとニャアンにはこれからしばらくは我々と一緒に行動してもらう。クランバトルに出場している時間はない。」

 

「ほかの仕事とダブルワークがしやすいのがクラバのいいところだよ、閣下。」

アンキーは調子よく言った。

「もしそっちのガンダムが使えないならうちで用意しようかね。もっとも空いてるのはゾックが一機だけだが」

 

「ゾックか!!」

 

「おやおや、ジャブロー侵攻用にごく少数生産されただけの水陸両用機をよくご存知で。」

アンキーはタバコを揉み消した。

「あんまり驚きもしないし、ゾックを即座に断らなかったところをみると、あんたらの今いる所は地球だね?

よし、わかった。じゃあ『狂犬』と『病み猫』の復帰第一戦は、クワトロ“大佐”。あんたに任すよ。

レンタル料は格安にしとく。あとで請求書を回しておくよ。なにぶんにもウィンウィンでやってきたいのでね。」

 

モニターが暗くなり、アンキーの顔が消えていく。輪郭がほやけ画面が暗くなったあともニヤニヤ笑いだけが残っているような気がした。

 

クワトロは振りかえってマチュたちに話しかけた。

 

「食えない女だな。だが交渉相手としては悪くはない。

シャリア・ブル…閣下。マチュとニャアンをわたしのクラバに出場させることをお許し願えますか?」

 

「わたしの作戦目的はお話したはずですが、大佐。」

 

「ああ、なんだっけな。あらためてきちんと伺ってはいないような気がするが」

 

「まずクワトロなる人物がわたしたちのよく知る危険人物ではないかを確認すること。もしそうならすみやかに抹殺せねばなりません。」

 

「物騒だな。」

クワトロは肩を竦めた。

「ほかには?」

 

 

「とあるコロニーのクラバでトップを独走する『白い悪魔』。その正体を探ることです。」

 

 

「いいじゃないか!」

クワトロはにこやかに笑って手を差し伸べた。

「我々は協力できそうだな、シャリア・ブル閣下。」

 

「シャア・アズナブルを亡き者にする方ですか? 自決でもしていただけると?」

 

「二番目の目的の方だよ。『白い悪魔』をわたしのクラバに呼ぼうじゃないか。パイロットとも話が出来るし、バトル後の損傷やメンテの名目で機体に触ることもできる。二番目の目的はわたしがいないと成立しないわけだから、一番目の目的は自動的に保留だ。」

 

マチュは。

せっかく指名手配犯から解放されそうなのに不満そうだった。

 

「なによ、『狂犬』って?」

 

ニャアンは座り込んで壁をカリカリしていた。

「なんで『病み猫』なの?」

 

 

--------------

 

 

モニターが消えたあと、アンキーは後ろを振り返った。

 

「どう? あれがクワトロ・バジーナらしいんだけど?」

 

「あ、ありがとうございます、アンキーさん。」

ごく普通の、いや若干気弱そうな青年にしか見えない。

クラバ無敗のチャンピオンはオドオドしたように口ごもりながら礼を言った。

「でもなんで“大佐”って呼ばれてるんですか?」

 

「ああ、なんだかとんでもなくいい女を連れてるらしくてね。」

 

「はあ…」

 

「それがジオンの高級将校用の慰安施設のナンバーワンだった女らしいんだよ。それを口説き落として連れ回ってるからついたあだ名が『大佐』。」

 

さすがに二枚目はとくだなあ。

と、このときのアムロの感想はそんなものだった。

 

「軍の秘匿通信機能を使ってたけど、いまいるのはどうもトリントン基地だね。ついこのまえ、モビルスーツの持ち逃げ事件のあったところだ。」

 

「そんなことがあったんですか!?」

アムロは驚いた。軍事基地から兵器が持ち逃げできるなんてそんなこと有りうるのだろうか。

 

「あったんだよ。それでたまたまトリントンを訪問していたあのクワトロ『大佐』が追撃したんだとさ。それで相手に損傷を与えて、万全な状態での持ち逃げは阻止できた。」

 

「強いんですね、クワトロさんは。」

 

「強いなんてもんじゃあない。」

アンキーは楽しそうである。

「追撃した相手は“ソロモンの悪夢”アナベル・ガトーだ。しかもクワトロ“大佐”が追撃につかったモビルスーツは演習用で実弾は装備していなかった。」

 

「それで、どうやって勝てたんです?」

 

「そこまではわたしも分からないよ!!」

逆にアンキーは問い返した。

「おまえだったらどうする?」

 

そんな無茶な。

アムロは考えたが、どうにもいいアイデアはうかばない。

なにしろ、彼のなかではあくまでクラバはクラバ、実戦ではないのだ。

 

「無茶を言わないでください。

ぼくに思いつくのはペイント弾でメインカメラを見えなくしてから、重いものでもぶつけるくらいしか。」

 

「ちゃんと対処できそうだね。」

ケラケラとアンキーは笑う。

「で? なぜ急にクワトロ・バジーナ主催のクランバトルに興味を示したんだ?」

 

ええっと。

 

セイラさんからの手紙は、破り捨てた。

きれいに燃やしてなにも残らないようにした。

 

あのあと、番組への出演にそのあといろいろな媒体からのインタビューが果てもなく続いた。

 

そうこうしているうちに、アムロは腹がたってきたのだ。

なにがなんだかわからない。

セイラさん、いやアルテイシアからすれば自分はサイド7にいた頃(もう五年も前だ)の知り合いで、アムロなどはモブのひとりに過ぎなかったはずだ。

それに人を殺せと。

 

言うことが無茶すぎないだろうか。

 

たしかにクラバは先日までは非合法の見世物だった。

だがそこに参加しているからといって別にアムロは無法者でも人殺しをなんとも思わないゴロツキでもないのだ。

 

しかも。

書簡には宛名も署名も日付もなかった。

つまり、なにかあってもアルテイシアは知らぬ存ぜぬを決めこむことができる。

 

「アンキーさん、クワトロ・バジーナって何者なんでしょうね?」

 

「さあ? 本人もあまり過去には触れられたくないみたいだったし。」

 

アムロはゴクリと生唾をのんだ。

「あの…もしも、もしも、ですよ。クワトロさんがジオンの“赤い彗星”だなんてことは有り得ますか?」

 

アンキーはきょとんとしたようにアムロをみつめた。

 

「否定材料も肯定する根拠もない。」

アンキーは言った。

「そもそもシャアは仮面を被ってて素顔を公衆のまえでは晒していない。

都市伝説の通り、彼がもしも、ダイクン家の長男キャスバルならば、金髪碧眼はあってるな。年代もあいそうだ。だが世に金髪碧眼の男性の20代がどのくらいいると思う?」

 

「そのなかで、“ソロモンの悪夢”を模擬戦仕様のモビルスーツで退けることができて、しかも二枚目はどのくらい?」

 

アンキーはうむむ、と唸った。

 

「可能性は否定できない…のかもね。

でも以前、イズマコロニーのクラバに現れた赤いガンダムに乗っていたやつは、少なくともシャアではなかったよ。」

 

そう言ってつけかけたタバコの火を灰皿で揉み消した。

 

「クワトロのクランバトルにブッキングしてやるから自分の目で確かめて来るんだね。案外向こうから話しかけてくるかもよ?

『きみはシャア・アズナブルという人のことを知っているかね?』

とか言って。」

 

からかわれたと思ったアムロは憮然とした。

なんとなくそのセリフは自分用ではない気がしたのである。

 

 




クワトロ大尉をなにに乗せようか迷っております。
いまさらザクは型落ち感があるし、ソドン搭載のギャンとゲルググはもうパイロットが決まってます。でも彼の性格上、クラバのマッチメイカーやりながら自分も絶対に出場したがると思うんですよね。
赤く塗ってね。
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