アルテイシアのM.A.V.が誰になるのか?
連邦側の参加選手は、こんなのになりました。
このところ、しょっちゅう、ズムシティのマ・クベ邸に呼ばれている。
これは望ましいことではない。
と、ドレンは思った。
優秀な指揮官の例に漏れず、彼はよい意味で怠け者であったから、船を降りたあとはゆっくり、羽を伸ばしたかった。
艦隊勤務のあとに、ジオン公国軍のトップから呼び出しがあるようなら、自分はいったいいつ休めばいいのだろう。
「……というわけで、このコロニーは少なくとも半世紀、外部との接触を絶っていた、と考えられる。」
しかも話は雑談だ。
最近、「発見」されたロストコロニーの話にである。
「それは、ニュースで見ましたが、正直なところ眉唾モノです。」
ドレンはずけずけと言った。
「文明的には、宇宙世紀の科学技術を失い、作業用モビルスーツの残骸を『神』として崇めていたそうではありませんか。
どうやってコロニーそのもののメンテが出来ていたのか、本当に自給自足が成り立っていたのか。
小官には疑問ですな!」
「初期型……というよりも、サイド建設のための準備基地だ。それと同時に人類が長期の宇宙生活に耐え得るかどうかを実証する実験棟としての側面もあったらしい。
現実問題として、現在主流であるシリンダー型のコロニーではそれほどの長期間は、同様な条件下におかれたコロニーでは、とてももたない。」
「技術もさることながらメンテに不可欠な鉱物資源ですか、問題は。」
ドレンはやっと、気難しい上司が持っていきたい話の方向がやっとわかった。
「しかし資源は、充分に備蓄があるのでは?」
「ジオンはあと10年は戦える……かね?」
独立戦争を描いた映画で、必ずマ・クベ役の俳優が口にするセリフを、本人からきくのは妙な気分だった。
「戦争状態なら。ほかに資源を使用しないなら、という条件下での10年だ。
実際にはこの数年で、荒れたコロニーの修復に大半の資源は使われた。」
「そのタイミングで、連邦からの輸出規制ですか。」
「そういうことだ。いまさら、あの地域を再占領することもできん。だからといって、連邦軍の宇宙進出など、交換条件を出すことも腹立たしい。」
そこで、マ・クベは口をつぐんだ。
おまえなら、どう考える?
と、その目が問うている。
大きなお世話だ!
俺は軍艦乗りなんだ!
政治の世界に足を突っ込ませるな!
「……月面都市。あるいはアナハイムエレクトロニクスを介しての輸入はいかがですか?
もちろん、連邦はそれも条文上は禁止するでしょうが、連中は、実質的に自治権をもっているようなものです。
コストは跳ね上がりますが、資源量は確保できます。」
ふむ。
と言って、マ・クベは尖った顎を撫でた。
「……よい案だ。
我らがアルティア姫が敗れた時の保険として、公王府に提案しておこう。」
「アルテイシア様が……?
どういうことです?」
「クランバトルだよ、クランバトル!
輸出規制の解除を賭けて、試合をするそうだ。
すでに、ソドンとグレイファントムが出発している。」
ドレンは内心冷や汗をかいた。
この上司の前では、正解を出すことさえ緊張を強いられる。
そして、正解を出してしまったからには、またここに呼ばれることになるのは確実だった。
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ブライト・ノアとヤザン・ゲーブルは、とことん反りが合わない。
性格的な部分もあるのだろうが、年齢も軍歴も地位もヤザンがうえであるにも関わらず、モビルスーツ運用チームのリーダーがブライトだという“捻れ”もその一因なのだろう。
「はあ? 地球に降りろってか?」
ヤザンは、ブライトを睨んだ。
「なんの権限があって、俺にそれを命令するんだ。あぁ? ブライト中尉殿?」
「ヤザン・ゲーブル大尉。あなたは連邦の軍人であって、軍からの命令には従う必要がある。」
ああ。
そう言えばそうだったな。
と、このある意味能天気な男は思い出した。
アーガマは外郭団体の所属とはいえ、連邦軍のモビルスーツテスト艦だったし、クラバの連中が去ったいま、まぎれもなくここは連邦軍の一部隊には違いない。
「わけのわからん命令はごめんこうむるぜ?」
そんなことが軍人に許されるはずも無いのだが、ヤザンは強気に言った。
「指示書は、ヤザン・ゲーブル大尉を地球連邦軍ネオ香港司令部に出頭させよ……というものだが、」
「わけがわからんな!!」
「これは、推測でしかないが、近々、クランバトルが開催される予定だ。」
ブライトは、傍らのモニターにニュース記事を映した。
「鉱物資源輸出規制解除。クランバトル方式で決着……これか?」
ヤザンは目を丸くした。
「ジオンと連邦で、クランバトルか?」
「そうだ。連邦を代表するパイロットを早急に選抜しなければならない。それに、ヤザン大尉、あなたが選ばれた、ということだと思う。」
「なんで俺が!?」
「連邦としては、現役の軍人から参加選手を選びたいだろう。出来れば人道的に問題を指摘されている強化人間などは使いたくないはずだ。
大戦中のエース級の多くは、予備役に入ったり除隊したりで、実戦を離れている。
……とすれば多少難があってもヤザン・ゲーブルを使う、というのは有り得る話だ。」
「……まあ、わかった。今回は、謹んで拝命しようか。
ジェリドを連れてくぜ?」
「ジェリド・メサを? なぜ?」
「あいつは俺とM A.Vを組んだことがある。だれと組まされるのか分からねえが、どこのだれともしらん馬の骨よりはマシだ。」
ブリッジに戻ったブライトに、アーガマ艦長ヘンケンが僅かに笑みを浮かべて話しかけた。
「ヤザンは降下を了承したか?」
ブライトは頷いた。
「なんとか、です。
ジェリドを同行させたいと言われました。テストパイロットの数が足りなくなります。エマ少尉をお借りすることになるかもしれません。」
「可変機は勘弁してくれよ! 動作が不安定すぎる。」
「いまテスト待機中なのは、ハイザックのカスタム装備です。
オークランドのギャプランは、ムーバブルフレームの再調整で実機が届くのはしばらく先です……」
ヘンケンは、まあそれなら……と、ブツブツ言った。
ブライトのような堅物にもわかるほど、ヘンケンはエマ・シーンに惚れているのだが、こういう過保護をエマは喜ばないだろうと、ブライトは思う。
「ヤザン大尉は、もっと駄々を捏ねるかと思ったがな……」
ヘンケンは言った。
「駄々は捏ねますが、状況判断ができない人物ではありません。」
ブライトは即答した。
「連れていくのもテストパイロットとして優秀なアポリーやロベルトではなく、ジェリド……というところもちゃんとこちらの事情もわきまえてくれています。」
「きみらは、お互いがいないところでは、相手への評価が高いな。」
ヘンケンの言葉に、「そんなものでしょうか」とやや不機嫌な口調でブライトは答えた。
ジェリドとヤザンは、ティターンズのしつこい勧誘から逃れるために、M.A.V.を組んでクラバに参加していたことがあります。
アムロにはこのとき一度破れています。