第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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モビルスーツで殴る蹴るすると、手とか足が壊れるので、とっても地味な組み技主体の試合になります。
シャアはよく蹴っ飛ばしてたイメージありますが、あれも直接ダメージというよりは、相手との間合いを取るためのものだったような気がします。




GQuuuuuuX season2 第2話 ジオン襲来~バトリング1

アムロは、殴り合いのクラバを見るのは初めてだった。

人型をしている以上、「殴る」という動作は可能だが、あまり現実的では無い。

拳の部分の装甲を多少厚くしても、装甲材そのものは、相手の体と同等であり、殴れば殴った拳がダメージをうける可能性がある。

 

手が壊れてしまえば、射撃武器や近接武器が使えなくなる。

リスクばかり多くて、効果が少ないのがモビルスーツ戦闘における「殴る、蹴る」だ。

 

いったいどんな試合になるのか。

 

「あの」ククルス・ドアンが、クランバトルの戦場にたつ、というのとで、スタジアムは満員だ。

当然、配信もしているから、そちらの収益も相当なものになるだろう。

もし、ハヤトのCクラスであることで、不当に収入が低くなるようなら、クワトロ大尉に相談くらいはしてみようと、アムロは思った。

 

 

 

 

ククルス・ドアンのザクはのっそりと立っている。

 

この試合は近接武器の使用も禁止なのでヒートホークを構えもしない。

 

両手はだらりと下げている。

 

 

なんだ、これは!

 

観客の中にざわめきが広がっていく。

 

ククルス・ドアン。

やる気があるのか?

 

 

ハヤトは軽キャノンである。

独立戦争時はともかく、いまではだいぶ見劣りする機体だ。

いまの連邦軍の主力は、これを改修した軽キャノン改である。

肩のキャノン砲を外し、連射に優れるビームガンと盾を装備した。

最新型では、ムーバブルフレームも取り入れ、運動性も上がっている。

 

ハヤトのものは単に肩のキャノンを外しただけの古いロットの軽キャノンだ。

 

少し腰を落としている。

両手は開いてわずかに前かがみだ。

 

ククルス・ドアンは構えない。

 

だがそれはイコール、次に何をするのか、まったく読めない、ということでもある。

 

すでに「クランバトルスタート」の合図は、かかっている。

 

空気が……重い。刻の流れが、遅い。

 

「むう……あの構えは!」

「知っているのか、カンチャナ!」

「ハヤトは、ドアンさんに組みつこうと考えてるようですね。」

 

安全性を鑑みて、スタジアムの中心に対峙するモビルスーツからの距離はかなりある。

カンチャナは双眼鏡を取り出していた。

 

「レスリングとかである足元をねらっての高速タックルです。

ドアンさんのザクを倒して……」

「そのくらいじゃ、モビルスーツは壊れないわよ!」

 

うんと年下の少女に本気になるなよ、とアムロは口をはさみそうになったが、マチュとカンチャナから同時に睨まれて縮こまった。

フリードリンクに軽食も頼めるVIP席である。

ニャアンはラーメンを食べている。

 

「モビルスーツそのものが壊れなくても、コクピットが揺さぶられます。」

カンチャナは再び双眼鏡に目をやった。

「当然、パイロットにもダメージが。」

 

アムロは、いまさらながら気がついた。

クランバトルは、相手の機体へダメージを与えるのが、目的だ。

だが、武器のないこの戦いでは、機体そのものへダメージを与えることは難しい。

つまり、ダメージを与える目標は、コクピットであり、パイロットそのものとなおる。

 

つまり――

この試合は。

機体ではなく、中身を落とす戦い。

 

アムロの背筋に、ぞくりとしたものが走った。

 

その瞬間。

 

ハヤト機の左足が、わずかに前へ滑った。

 

「来る!」

 

誰かが叫ぶより早く、軽キャノンが、地面を蹴った。

――速い。

速いだけではない。

まるで、本物の組み技に熟練した格闘者の動きだ。

人間の動きをトレースできるモビルスーツでも、通常ここまでの格闘動作は組み込まない。

 

鈍重な旧い機体が、低い弾丸のように間合いを詰める。

狙いは明白――

タックルだ。

 

アムロが思わず身を乗り出す。

軽キャノンの姿勢がさらに沈む。

狙いは腰ではない。

膝関節、股関節、足首。

 

すべてを連動させた、異様に滑らかな踏み込み。

だが。

ククルス・ドアンは―避けようとはしない。

 

わすかに半身になり、右足を前に出した。

その分、左足は後方に引かれ、重心は僅かに下がる。

 

ハヤトの軽キャノンは、膝を着くように転んだ。

いや、転んだのではない。

自ら膝をつくことで、姿勢をさらにひくく!

 

ついた膝を支点に、機体を鋭く回転させ、ドアンが後方に引いた左足を取りにいく。

 

ドアンのザクはリニアシートではない。

 

その視覚からは、ハヤトの軽キャノンは一瞬、姿が消えたように映ったはずだ。

だが、それでもドアンは反応した。

重心を沈め、踏ん張ろうとしたのだ。

 

ハヤトはザクの足首を掴み、極め、そのまま身体を捻るように回転させた。

踏ん張ったことが返って、悪い結果を産んだかもしれない。

 

 

バキバキッという音と共に、ザクの足首に、致命的な亀裂が走った。

倒れたドアンのザクに、ハヤトの軽キャノンが馬乗りになる。

 

「面白い技を使うな。」

ドアンは言った。

モビルスーツ同士が触れ合うことで、外には漏れないような会話が出来る。

「だが、ここからどうする?

対人戦なら、殴りつけるのだろうが、俺のザクもおまえの軽キャノンも同じ装甲材だ。殴れば、おまえのマニュピレーターが壊れる。

指が動かなくなれば、もう同じような攻撃は出来ん。」

 

対するハヤトの答えは。

 

軽キャノンは拳を握った。

拳。指の関節で撃つのではない。

手の小指側面をドアンに向けて、振り下ろした。

 

「おおっ! あの技は!!」

「知っているのね、カンチャナ!!」

「技の名は『鉄槌』。指の第二関節が当たらないので、指を痛めにくい。」

 

メインカメラのある頭部の破壊は、クラバの勝利条件のひとつ。

ハヤトの軽キャノンをそれを果たすために絶好の位置をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーん。なんだか、モビルスーツ戦と違う……
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