第13話 鼓動   作:ATARU 2025

225 / 303
鋼鉄は軋み、拳は砕け、勝利は血の匂いを選んだ。
合気は舞い、鉄槌は叩き込み、勝敗は一瞬の業に収束する。
だが、これは終わりではない。
ネオ香港。
資源と利権と野心が渦巻く街に、次の火種はすでに落とされた。
静かに笑う者がいる。
動き出す影がある。
そして――まだ、立ち上がる者も。
次章。
鉄は冷え、策は熱を帯びる。
恐るべき乱入者が牙を研ぐ。






GQuuuuuuX season2 第2話 ジオン襲来~バトリング2

有利な状況。

ある時代の格闘技ならば必勝ともいえる体勢をとった!

 

だがハヤトは、実は舌を巻いている。

 

完全に視覚の外からの攻撃。

それに、ドアンはとっさに反応してみせたのだ。

 

ここで仕留める。

 

小指側の拳を使った打撃「鉄槌」は実は、初心者にも向いている。鍛えていない「拳」は案外と脆いのだ。

ハヤトは、「鉄槌」を振り下ろす。

 

それをドアンが。

かわす。

かわす。

また、かわす。

かわす。

 

いや生身の格闘に慣れていたとしても、モビルスーツをそんな風に操ることなど。

狙いが、メインカメラのある頭部に集中しているとわかっていても。

 

打撃に集中するあまり、軽キャノンの上体が前のめりになる。

 

グン。

と、同時にザクが腰をそらした。

 

軽キャノンの腰が浮く。

同時に、ザクの膝が股間を蹴りあげる。

 

もちろん、別にそこは別に急所ではない。

だが、ザクに馬乗りになった軽キャノンを跳ね上げるには十分だった。

 

ハヤトはとっさに受身をとった。

別に彼自身が直接痛みを感じるわけではないが、機体の損傷を抑え、コクピットへの影響を最小限にするにはそれが有効だった。

 

向き直ったときには、ザクが目の前に迫っている。

大きく拳を振り上げて―――

 

その技は「鉄槌」。

今しがた、ハヤトが使った打ち方だ。

もうそれをマスターしたのか。それともククルス・ドアンという男の知識の範疇だったのか。

 

全身の体重が、その拳に乗っている。

当たればいくら「鉄槌」の打ち方でも拳を壊しかねない。

だが、当たった部位もまた―――破壊される。

 

 

ハヤトは動いた。

鉄槌は軽キャノンの肩に触れた。

そのまま、滑るようにベクトルを変えられ―――

ザクの巨体が、地面に崩れ落ちる。

 

「なんだ!? あれは!」

「ドアンの旦那が勝手に転んだ!?」

「いや、あれはアイキだ。」

 

どの時代。どの国にも解説好きはいる。

 

「アイキだと!?」

「そうだ。

東の島国に伝わる一子相伝の暗殺拳。その奥義を見たものは“死”あるのみ。」

 

明らかに別のなにかと混同しているようなのだが、周りは感心して聞いている。

 

転がしたくらいでは、モビルスーツには致命的なダメージにはならない。

だが、コクピットはエライ事になるはずだ。

 

だが、何事もなかったかのように、ザクは立ち上がる。

そのまま、再び拳を振り上げて、軽キャノンに打ちかかる。

 

ハヤトはそれに手を添える。

再び、力の向きを変えられた打撃は、その勢いのままに、ザクを転倒させた。

 

間髪入れずに立ち上がるザク。

 

ハヤトは、間合いの内側に入った。

手を押し出し、踏み込むザクの頭を押すようにして、前進するザクの力を「回転」へと変える。

ぐるり。

と一回転して、地面に叩きつける。

 

無重力空間ならば、まだいい。

 

ここは地上で重力は発生している。

 

17メートルの巨体が倒れ、回転する。

コクピットのパイロットが無事であるはずがない―――

だが、ドアンは立ち上がる。

 

「こっちは正規のパイロット上がりだ。耐G訓練は反吐がでるほど受けている。」

ドアンは吠えた。

「何百回繰り返しても一緒だぞ、こんな投げ技などは!!」

 

いや。

効いていないはずはない。

 

合気の技が、よく「わざと」投げられているように見えるのは、実は受け身である。

技をかけるものの、意図した方向に飛ばなければ、骨が折れ、筋肉は断裂する。

 

ならば。

 

受け身の取れないように投げる。

 

「うおおおおおっ!!」

 

「あ、あれは!」

「知っているのか! カンチャナ!!」

「ええっと、あれはたしかお子様が喧嘩に使うぐるぐるバンチです。」

 

ハヤトは、冷静にタイミングをはかった。

 

「鉄槌」は連続して降ってくるが、リズムは一定だ。

とらえられる!

 

振り下ろされる右手を掴んだ。

体勢を崩しながら、相手が「飛ぶ」よりも早く関節を破壊する。

 

だが。

ザクは飛ばす。

逆方向に身体を回転させた。

 

当然。

右腕は肘から引きちぎれた。

 

な、なに?

 

呆然と。

引きちぎれられた腕を抱えるハヤトの視界いっばいに、もう片方の腕の鉄槌が広がった。

次の瞬間、メインモニターが真っ暗になる。

 

 

 

「軽キャノン、と、頭部破壊!!」

 

 

 

うおおおおっ!ーーーー

 

会場が吠えた。

 

「勝者! ククルス・ドアン!!」

 

「なにが!どうなったの?」

ラーメンのなるとを咥えたまま、ニャアンが言った。

 

「ドアンさんはわざと右腕を引きちぎらせたんだ。」

アムロは言った。

「もちろん、人間が自分の体でそんなことをしたら、激痛で動けなくなる。でもモビルスーツには痛覚なんてないから。」

 

ドアン!ドアン!

ドアン!!

ドアン!!

 

頼れる保安隊長の劇的な勝利に、会場が揺れる。

 

次の瞬間――

 

「まだだ!!」

頭部のひしゃげた軽キャノンが立ち上がった。

「まだ、たかがメインカメラをやられただけだ!!」

 

 

 

「……あれって、天パのセリフよね?」

マチュがアムロを見上げて言った。

 

「い、いや。たしかに言ったことはあるけど、べつにぼくの特許じゃないよ。」

 

 

「……なんか……」

マチュの目が輝く。

「燃えてきたな!」

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「現在、高度一万メートルです。」

コモリ少尉が言った。

「ソドン、グレイファントム。ネオ香港空港、第二ターミナルに着陸許可がでています。降下を続けます。

それと……」

 

「なにか?」

ソドンのラシット艦長は嫌な予感を感じながら、問い返した。

 

「……ジークアクス、発進シークエンスです。」

 

「ネオ香港には、アレがいたな。」

ラシットは全てを諦めたように、言った。

 

「ええっと、それから」

「まだあるのか!!」

「“レイダー”の発進許可要請が」

 

 

 

 

 

 




ううむ。地味だ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。