第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ゴップのもとを訪れるヤザン。
ア・バオア・クーを仮想体験するマシーン。
そしてあの奇術師が。
風雲急を告げるGQuuuuuuXseason2。





GQuuuuuuX season2 第2話 相反する世界~クラバとシュミレーター

外交交渉がまとまらぬ場合。

普通はそれでも交渉を続ける。それが自国にとって不可避であるのなら当然だ。

長い目で見れば、相手側の意思が変わることもある。あるいは、リーダーそのものが変わることもあるのだ。

 

そして、それに行き詰まった時に、最後の手段として、「戦争」が起きる。

なにゆえ、とんでもない戦費と人命を犠牲にして戦争などをおこすのだろうか。

 

それに変わるものとして「クランバトル」による決着を提示したアンキーを、ヤザンは愚かだとは思わない。

 

敵をぶち殺すのは当然である。

なぜなら、むこうもこちらをぶち殺そうとしているからだ。

だからといって、非戦闘員は巻き込まれないに越したことはないし、まして非戦闘員を攻撃目標にした戦闘行為などは論外である。

 

ヤザンは、今回のクランバトルそのものが、『クランバトルによる紛争解決』のモデルケースにするための茶番劇のような気がしている。

本来、それはガンダムマークⅡを次期主力モビルスーツとして、どこが採用するか、という決着として用いられるはずであった。

しかしペズン動乱がそれは有耶無耶にした。

 

ジオンはコスト面の調整が取れれば、ゼク・アインをゲルググの次の主力として採用するだろうし、ガンダムマークⅡはすでに、量産化モデルとして、アナハイムから、ザクの設計思想を取り入れたマラサイと、軽量・高機動モデルとしてバーザムという機体が提示されているときく。

 

代わりに今回、クランバトルによるはじめての外交決着のモデルにされたのは、ジオンが地球からの輸入に大半を頼る希少鉱物資源の取引だ。

 

ジオンとしては、喉から手が出るほどに欲しい鉱物ではあるが、地球側には、輸出しないことのデメリットだってある。

輸出が全面禁止にでもなれば、損害を受けるのは双方だ。

 

「ヤザン・ゲーブル大尉。ジェリド・メサ中尉。遠路はるばるご苦労だった。

かけてくれたまえ。」

 

ヤザンは、連邦軍の重鎮ゴップよりもその傍らの美人秘書官に目をやりながら言われた通りにした。

 

「ペズンでの活躍は、耳にしているよ。

ペズン叛乱には、連邦としては、関与していないことになっているが、よくやってくれた。

ああ……」

ゴップは、秘書から資料を受け取った。

「うむ。これまでの戦績もたいしたものだ。これまで、無名でいたのが、信じられんくらいだよ。」

 

「直属の上官に恵まれなかったものでね…………閣下。」

ヤザンは、ふんぞり返ってそう言った。

 

「そうだな。確かに問題のある指揮官が多かったようだ。

だが、そのほとんどが戦死や不慮の事故て亡くなっている。」

 

「ついてないヤツはいるもんですなあ、閣下。」

ヤザンは獰猛に笑った。

隣りのジェリドは、なんとか座ったはいいが、背筋をびんと伸ばしたまま不動の姿勢だ。

まあ、将軍などという殿上人にあったときはこちらが正しいのであるが……

 

「もう、気がついているようなので改めて、ということになるが」

ゴップは鷹揚に笑みを浮かべた。

「我々は近々、希少資源の輸出をかけて、ジオン公国とクランバトルを行う。」

 

「危ない橋ですな、閣下!」

ヤザンは返した。

「悪くすれば降下部隊を降ろされて、鉱山ごと接収されてもおかしくはない。」

 

「そこは―――たしかにイオマグヌッソ事変でジオンの戦力が大打撃を受ける前だったらとても出来なかった申し入れ、だと言うことは自覚しておるよ。

まあ、そんなわけで我々は、連邦を代表してクランバトルを戦う腕利きのパイロットを探している。

で、きみに白羽の矢を立てた……という訳だ。」

 

ゴップはデスクのうえで手を組んだ。

口元には笑みが浮かんでいるものの、眼光はいよいよ鋭い。

 

“ジャブローのモグラは知恵と牙のある肉食獣だ”

そんな言葉が、ヤザンの脳裏を過ぎった。

 

「と、ここまではきみもすでに理解しているようだな。

オークランドのギャプランを所望したそうじゃないか?」

 

「可変機ははじめてじゃないんでね、閣下。」

ヤザンは肩をすくめた。

「それに、ギャプランは次のテスト予定の機体だったんだ。一緒に片付けてしまうのは悪くないだろう?」

 

「ハイザックでは力不足……そう言っていたそうだな。」

 

ヤザンの笑みはこんどは苦笑である。オークランド研究所を尋ねたことはともかく、会話の詳細まで筒抜け、とは。

 

「だったらマークⅡはどうかね。アーガマにはすぐに動ける機体があるだろう?」

 

「……根本的なところなんですがね。」

ヤザンは、強かに切り込んだ。

「連邦としちゃあ、このクラバは是が非でも勝たないと不味いわけですか、閣下?」

 

ゴップの顔から、一瞬笑みが消えた。

 

「……当たり前だろう……」

 

「希少鉱物の輸出規制といえば、困るのはジオン……単純にそうもいかんでしょう?

輸出の収入がなくなるわけですから。

違いますかね、閣下?」

 

「なにが、言いたいのかね……」

 

「このクラバ自体が、『紛争解決としてのクランバトル』を実績として残すための出来レースだと言いたんだよ!」

 

ジェリドがおどおどと口を挟んだ。

「ホントは思ってないと思うんですけど、これてもし、アルテイシア・ソム・ダイクンが死んだり、大怪我をしたりすれば、即戦争になってしまうんしゃないか……って言いたいだけだと思います。」

 

ゴップは、一瞬、言葉の意味を反芻したあと、ずるり、と椅子から滑り落ちそうになった。

 

ヤザン・ゲーブル。

一筋縄ではいかない人物なのは把握していたが、これほど、とは!!

 

「確かに、な。」

ゴップは、秘書に録画録音を止めるように合図した。

「もしアルテイシア閣下にそんなことがあったりしたら、それはクラバに負けるよりもまずい。

クラバはクラバでも、どんなルールで戦えばいいのかは、まだ結論が出てないのが現状だ。」

 

「そうなんだ?

で、俺からの提案だ。落ちたら負け……ってのはどうだ?」

 

「どういう意味だ!?」

 

「アルテイシアがクラバに持ち出す“レイダー”は大気圏内飛行可能な可変機だ。

俺たちが用意するギャプランも可変機。

大気圏内も飛行できる。

本来のクラバルールと違って、相手を破壊する必要はねえ。

先に飛べなくなって落っこちたほうが負け、でどうだい、閣下?」

 

「お、落ちたら」

ゴップはゴクリと喉を鳴らした。

「パイロットは死ぬだろう?」

 

「それがそうでもない。」

ヤザンは言った。

「高高度の戦いなら、実際に推力を失って落下を初めてから、地上に激突するまでは案外時間がかかるものなんだ。

キャッチ用のドダイを空域に待機させておけば、充分、救助が間に合う。」

 

「なるほど……」

ゴップは腕を組んだ。

「なるほど。ジオン側に提案してみよう。」

 

「俺の名前を出していいぜ、閣下。悪いようにはならねえはずだ。」

 

 

 

-----------

 

 

 

 

「どうも、モビルスーツのコンテストは延期になりそうなんだ。」

翌朝、アムロが登校すると朝のホームルームで、「軍曹」は浮かない顔だった。

もと、連邦軍の下士官だったらしい。

ジオン工科大学ネオ香港キャンパスには元軍人やメカニック上がりの学生が珍しくない。

 

「そうなんですか?」

入校したてのアムロには、このクラス対抗戦にそこまでの思い入れはない。とはいえ、あれこれと、彼もアイデアを出したたモビルスーツではある。

「急にどうしたんです?」

 

「ネオ香港大学から、シミュレーターを使った大規模会戦の再現をやりたいので、協力してほしいという申し出があってだな。

それそれのモビルスーツの動きまで、シミュレートするらしい。足りない分はAIを使うが、パイロット経験者には実際に操縦者として参加して欲しいそうだ。」

 

なるほど。

アムロは頷いた。

いま流行りの架空戦記ものを、実際にシミュレーターのなかで再現してみようというわけか。

確かに面白そうな企画ではある。

 

「題材になるのは、連邦軍がソロモンを落としたあと。

シャア大佐のビットによる超長距離攻撃による残滴が行われず、そのまま、連邦軍がア・バオア・クーに侵攻したと仮定してのシミュレートというわけた。」

 

「ということは、ビットを装備したガンダムもなし、ですか。」

 

「そうだな。それ以外は、ほぼ史実通りだ。おそらくは、艦艇数、モビルスーツ数ともに連邦がジオンを上回っている想定のなかでの決戦となる……っておい、どこに行く?」

 

「いや、授業がはじまる時間なんで、教室に移動を。オンライン参加ができない課題なんで。」

 

「おまえにも、当然のごとく参加依頼が来ているぞ?」

 

「当然のごとく、お断りします。」

 

 

はっきり言うとアムロは怖かったのである。

さすがに自分のパイロットとしての技量が卓越していることは、自覚している。

そして、ひょっとすると『ニュータイプ』

かもしれない、と。

 

だが、あくまでその技量はクランバトルという「試合」の上であった。

実戦……ほんとうの殺し合いに、自分のモビルスーツ操縦を使うのはたとえ、仮想空間でもいやだったのである。

 

帰りがけにマチュやニャアンも合流したアムロは、買い物に付き合ったあとで、フードコートで夕食を共にした。

アムロから、『仮想ア・バオア・クー攻略戦』の話をきいたマチュは、呆れたように首を振った。

 

「あのさあ、天パ。いまさら実戦がどうのって言うんだったら、この前までやってたニューデイサイズとの戦いはなんだったのよ?」

 

「あれは、クランバトルだよ。」

アムロは、ハンバーガーとポテトとドリンクを前にうかない顔である。

「ちゃんとライブ配信されてて、対戦料も歩合も振り込まれてるだろ?」

 

「むこうが本気で撃ってきてても!?」

 

「そりゃ、反則をするやつらは一定数いるからね。」

 

現実逃避するアムロをマチュ睨んだ。

「……ちなみにわたしは参加するけど?」

フライドチキンを口に運んで、豪快に肉を削ぎとる。

 

「わたしも参加します、天パさん」

ニャアンの前にはラーメンとチャーハンが置かれている。

 

「なんで!」

 

「面白そうだから!」

マチュは、ガラスにヒビのはいったスマホを取り出して、アムロに見せた。

「ほら、けっこうニュースでも話題になってるよ! ちょうど、ジオン公王府直属艦隊も来てるし、イベントしては申し分ないから。」

 

「ジオンの偉い人が来てるのにこんなことをしたら、神経逆撫ですることになるんじゃあ……」

 

「逆! 逆だよ、天パ。こんなことも出来るようになるくらい、今は平和なんだってこと!!

……そりゃあ、ジオンが負けたりしてれば、大問題だけと、ね。」

 

「ニャアンはなんでまた参加することにしたんだ?」

 

ぞぞぞぞっ。

と、ニャアンは答えた。

いや違う。これは、ラーメンをすする音である。

「……『這いよる混沌』としては、厄介事になりそうな案件には進んで首を突っ込むべし。」

 

「なんだい『這いよる混沌』って。」

 

「わたしのクラスの名前。」

 

なぜそんな名前を?

と、アムロは思ったが、そう言えば彼のクラスは火蜥蜴(サラマンダー)と名乗っている。

授業そのものとは、特に関係ないからこそ、結束力を高めるために、クラス(ニックネームをつけるのだ。

 

「ちなみにマチュのクラスは?

なんて名乗ってる?」

 

「キマイラ小隊」

 

もうこれは、どう足掻いても仮想ア・バオア・クーに参戦せざるをえないクラスネームである。

 

マチュとニャアンはかなりやる気であるが。

それでもアムロはなんとなく、この仮想ア・バオア・クー戦には気乗りがしなかった。

有り得ないことだが、彼はどこかでア・バオア・クーの戦いを実際に体験したような気がしていたのだ。

光の渦に飲まれていく艦隊。

いとも簡単に散っていくひとの命。

 

あそこには『戻りたくない』。

 

 

--------------

 

 

ララァは、モニターの向こう側の人物に向かって微笑んだ。

相手は困ったように、頭をかいている。

照れている―――

その態度は、ララァにとっては好ましいものだった。

 

「ありがとうございます。わたし、ネオ香港大学の聴講生に応募いまします。」

 

「そうですか、それは……お役にたててよかった。」

画像の青年は、ほっとしたように言った。

半日かけて、彼がネオ香港大学のキャンパスを案内してくれてから、何日もたっていない。

 

「史学を中心にカリキュラムを組むつもりです。またご相談いただけますか?」

 

「もちろんです。」

 

青年とララァは―――相変らず、互いをハンドルネーム……「奇術師」と「薔薇姫」と呼びあっている。

 

「……そう言えば、カフェではじめてお会いしたときに、ア・バオア・クーの攻略の話をしたのを覚えてますか?」

 

奇術師がそう言った。

 

「ええ……たしかそんなお話をしてらしたわ。」

 

「あれをうちのゼミの教授が面白がりまして。“レトリィバア”か余計なことを話すから……」

 

彼が“レトリィバア”と呼んだのは、いつも彼が連れている少年のことである。

ギリハンサムの部類にひっかかる「奇術師」殿とは違って、文句なしの美少年であり……しかも、間違いなくニュータイプだ。

 

「たしかに、歴史を学ぶひとなら、興味がありますわよね。」

 

「こんど大規模シミュレーターを使って大体的に行うことになりました。

モビルスーツの一機ごとにパイロットを振当てるような……」

 

「それは、大きなイベントになりそうですね。ちょうどジオンの偉い人もいらしてますし。」

 

「そうなんですが、うちの学校にはパイロットの教習過程がなくて」

普通の大学にはまず、ない。

「ジオン工科大学ネオ香港キャンパスにも声をかけてるんですが……」

 

“マチュは乗りそうね……で、マチュが参加するならニャアンも出たがるでしょう。でもアムロはどうかしら”

 

ララァの思いをよそに、奇術師は話し続けた。

「……ひょっとして……間違ってたらすいません。“薔薇姫”さんはニュータイプではありませんか?」

 

ララァは首を傾げて、なぜ?と言った。

奇術師は目に見えて恐縮した。

 

「いえ……“レトリィバァ”がそんなことを言ったもので……あの子のカンはよく当たるんですよ。

もし、そうなら、パイロットとして参加してみないか誘うつもりでした。」

 

「お招きありがとう、奇術師さん。」

ララァは低く笑った。

「わたしは無理ですが、わたしの知り合いにモビルスーツの操縦が大好きなひとがいるわ。

学生ではないけど、興味をもつかもしれない。誘ってみても大丈夫?」

「もちろんです。」

 

 

 

 

 

 

 




なにをやろうとしてるのかと言うと。
仮想シュミレーターのなかでのアムロ対シャアです。
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