第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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虚構と現実。
クランバトルと仮想現実。
奇術師と赤い彗星。
すべてが交錯するパーティルーム。
ごめんなさい。また会話回。


GQuuuuuuX season2 第3話 相反する世界~荒鷲と美姫

「灰色の幽霊」シャリア・ブルは、独立戦争の英雄である。

長く、中佐に留め置かれていたが、それはギレンとギリシアの政争に巻き込まれないために、距離をおいたからだ、と人々には理解されている。

今回、ジオン公王府直属艦隊が新設されると同時に、准将に昇進。艦隊司令官となった。

部屋に入ると同時に軽く、一例した。

 

続いて入ってきたのは、佐官の礼装を身につけた軍人である。

およそ外交の場には出てきたことのない女性佐官だ。

 

「“ソドン”のラシット艦長です。」

ゴップの秘書官が耳打ちした。

「その後ろの若い男女は、ソドンの尉官のようです。数合わせと……あとは護衛のつもりでしょう。」

 

次に現れた女性の姿に、会場は感嘆の嵐に包まれた。

公式の場には、いささか露出が多すぎるドレスだが、彼女が着ると下品な感はまったく、ない。

ジオン公国元首アルテイシア・ソム・ダイクンは、唇を綻ばせ、会場に手を振った。

 

歓喜の声は最高潮に達した。

 

改めての市長の挨拶からはじまる乾杯までの儀式は、滞りなくすすんだ。

アルテイシア・ソム・ダイクンの名は紹介されなかったが、これは彼女が「お忍び」で地球に降りたからだと解釈された。

 

乾杯が終わると、連邦の要人たち、ネオ香港の財界のものたちは、ジオンからの来賓一行を十重二十重に囲んだ。

「アルテイシア・ソム・ダイクン」は、彼らを上手にもてなした。

―――悪く言えばあしらった。

 

彼女は微笑みとウィットに富んだ会話を途切らすことはなかったが、なにか具体的な約束はなにひとつ行わず。

これからはじまるクランバドルにおいても、なにも有用な情報を与えなかった。

 

 

--------------

 

 

クワトロ・バジーナとそのパートナーは、その輪から少し離れたところで、ヤン青年と、シュミレーターについての興味深い話をきいた……乗り込む機体は、実際に当時配備されていたものだけてはなく、技術ツリー上で開発過程にあったものも可能らしい。

 

つまり、本来「ゲルググ」になるはずだったザクの後継機「ガルバルディ」や、ザクとのコンペに破れたヅダ、さらには、宇宙戦仕様のズゴックなどといった“ゲテモノ”も使えるというのだ。

 

「わたしは、ジオン側の機体に興味を惹かれるな。」

とワイングラスを片手にクワトロは言った。

「ビットが使えないとなると、最強の機体はなんだろうか。」

 

ヤンはそうですねえ、と考え込んだが手元のデバイスに一機のモビルスーツを表示した。

 

「未完成品……とあるが?」

「キケロガに似た有線サイコミュを搭載した新型機です。

ニュータイプ……おそらくはシャア大佐を想定して設計された機体なのでしょう。

実際には、モビルアーマー用のビットを流用したガンダムが予想以上の性能を発揮したため、使われずじまいでした。」

「脚がついていない……」

「実際にア・バオア・クーの格納庫にあったこの段階で出撃は可能だったそうです。資料にジオンの技術者の発言が残っていました。

『宇宙戦闘においては脚なんて飾りです! 偉いさんにはそれがわからないんだ。』と言ってたそうです。」

 

二人は、互いに顔を見合せた。

 

一瞬の沈黙。

 

ふっ。

クワトロが先に笑う。

 

「“奇術師”を名乗るだけのことはある―――わたしが、この機体を選べばそれはわたしがニュータイプだと言うことを自ら認めたことになるからな!」

 

「試すつもりはなかったのですが」

ヤンは困ったように頭をかいた。

「結果的にそうなってしまったことはお詫びします。

“レトリィバァ”が、ララァさんがニュータイプだと言うので、ひょっとしてパートナーのクワトロさんもそうではないかと思い……」

 

「よかったらこれからは、友人として話さないかね?」

クワトロはグラスを掲げた。

「きみは実に興味深い人間だ。

ぜひ、お近づきになりたいな。」

 

 

--------------

 

 

一方。

アルテイシアの背後から、最後に、隠れるように会場に入ったスーツ姿の女性には、誰も注目しなかった。

サングラスをかけ、赤毛のショートカット。

整った顔立ちではあったが、本人も目立たぬように心がけていたので、いずこからも離れた壁ぎわで大人しくワインを嗜んでいたのだが……

 

「おひとりかい? お嬢さん。」

声をかけたのは、かなり高級なスーツをだらしなく着崩した男だった。

もちろん、男に言わせれば着こなしをアレンジした、となるのだろうが……

 

赤毛のウィッグを被ったソム・エドワウは、周りの注目を引かない程度の声で叫んだ。

「ヤザン・ゲーブル! あなたがなぜここに?」

「クランバトルの連邦の代表だよ、俺とジェリドは!!」

 

ソムはため息をついた。

「……こっちはまだ代表が決まってないのよ。お偉いさん方はこぞってわたしの出場には反対してるし、M.A.Vもココ・シャロンとアムロ・レイに振られたところだわ。」

 

ヤザンは、大勢のVIPたちに囲まれて愛想笑いを振りまいているドレスの女性にむけて、あごをしゃくった。

「ありゃあ、いったい、なんだ?」

 

「影武者よ。ミーア・キャンベル。」

 

「よく、似てるな。顔は整形でなんとかなるんだろうが、声も仕種もそっくりだ。

しかし、パーティも外交の場だろ。勝手にしゃべらせといていいのか?」

 

「意味のない会話なら、たぶんわたしよりも得意よ。ただ、選ぶドレスがちょっと露出が多すぎるのよね……」

アルテイシアは、ヤザンを見上げた。

 

ペズンでの戦いの最中はろくに話す時間もなかった。

 

なるほど。

 

連邦の代表はこいつになるのか。

たしかに、戦勝国のジオンですら、軍の規模としては縮小傾向にある。

連邦も名のあるパイロットは―――パイロットしかできない人間は、片端から首を切ったと聞いている。

 

アルテイシアは唇が綻ぶのを感じた。

 

「そう、あなたとジェリドが代表なのね。連邦にも目のよく見えるものがいたってことなのかしら。」

 

「どうなんだろうな。案外、くたばっても構わねえ人材だから、俺を指名したのかもしれんが。」

 

 

---------------

 

 

大半は意味の無い社交辞令。

お愛想。追従。

そんなものについやされたパーティのなかでいくつかの重要な案件が進む。

 

木を隠すには森の中。

重要な交渉事は、日常的な会話に紛れこませろ。

 

会話の端々に。

ゴップは。

シャリア・ブルは。

断片的に情報を紛れ込ませる。

 

「可変機の大気圏内での飛行能力については難しいものがありますなあ。」

少しでも関心のあるものなら、最新鋭のモビルスーツ談義は、かっこうの酒の肴だ。

とくに、その性能テストの場がクランバトルになり、実際にそれを中継で見たり、あるいは賭けたり(こちらは地域によっては犯罪になる)することが出来るようになったため、男女問わずに、会話は盛り上がる。

「単に、熱核ロケットをジェットに切り替えればよいというものではない。航続距離だけなら、アッシマーという機体が試作されましたが、兵器はビームライフルだけということで、試作機が数機作られたのみで開発は中止になりました。」

 

何人かの列席者が、物言いたげにウォン・リーを見た。

ウォン・リーは咳払いをした。

 

モビルスーツのことなら、とりあえずアナハイムにきけ!

……というのは間違いではない。

アッシマーのように、ほとんどアナハイムエレクトロニクスが関与していない機体にもそれは当てはまる。

 

「大気圏内での飛行を重視した場合、空気抵抗を考えて付属の携行武器は少なくなる傾向にありますな。

これはいたしかたないことです。

逆に大気圏内ではなく、宇宙での運用を中心に考えれば、アッシマーはかなり優れた機体に違いありません。」

 

「しかし、クランバトルに一度も登場していないが」

誰かが言った。要はそこまでの完成度もないのか、という意味だろう。

 

「それは主にサイズの問題です。」

ウォン・リーは言った。

「アッシマーは人型形態をとったときのサイズが巨大になりすぎた。

モビルスーツではなく、モビルアーマーの扱いになってしまうのですよ。」

 

「しかし、飛び比べ、ならば最後まで飛行していられそうですね。」

シャリア・ブルが楽しそうに返した。

思考がよめる彼には、ゴップの漏らした言葉で、連邦の提案しようとしているクランバトルの形が読める。

 

可変機による空中戦だ。

 

危険なようだが、案外そうでもない。

高度さえ、充分にとっておけば、失速後の救助は難しくないのだ。

そして、アルテイシアの“レイダー”は可変機である。

 

正確には、ヘルムコングロマリットのモビルスーツに、テム・レイ博士の強化パーツ“レイダーシルエット”を装着したものだが、大気圏内の飛行も行えるはずだ。

 

「いずにしても可変機ばやりは困っておるよ。

コストもさることながら、パイロットがいません。

結果的に数を揃えられず、主力として採用するにはあまりにもハードルが高すぎます。」

 

話題は、続いてネオ香港市の拡大計画に移った。

若い財界人の何人かが、アルテイシアのふりをしたミーア・キャンベルをダンスに誘い、ミーアは快くそれに応じた。

 

ダンスは少々、体を密着させすぎていて、眺めていたソム・エドワウは何度か顔をしかめるはめになった。

 

 

 

 

 

 

 




ここに、アムロたちをぶち込むとけっこうカオスになるのですが、やめときます。
アナハイムムーンのニュータイプ部隊の話とかも書きたいのですが、またオフザケ回になっしまうので考え中……
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