第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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いつまでもワンコではかわいそうなので、そろそろ名前を出しますね。
また長くなってしまいました。





GQuuuuuuX season2 第3話 錯綜する世界 白い悪魔と少年

 

 

ジオン友好使節団の滞在は、2週間程度になることが、発表されると、少なくともネオ香港では、歓迎ムード一色になった。

政治よりも経済を重視するネオ香港の人々は、これが金になるとすばやく判断したようであり、鬼畜ジオン許すまじ、のデモは主に、ネオ香港とは関係のない連邦軍基地回りで行われた。

 

ネオ香港大学の一学生が考案した仮想ア・バオア・クー戦は、この歓迎イベントの一環として大々的に宣伝された。

 

アムロのところには、別々のルートからパイロットとしての参加要請があった。

ジオン工科大学を通じて、と。

あとは、クランバトル方面からである。

 

「歴史のイフ……というものだよ。」

クワトロ・バジーナは、正式な依頼書をアムロに差し出した。

「サイド7で、わたし……いや赤い彗星が乗り込む前のガンダムにきみが乗り込んでいたら、世界はどう変わったか、という。」

 

「なにもかわりませんよ! そもそも、ぼくはちゃんとシェルターにいましたし、シャアってひとはちゃんと軍事施設だけを攻撃してたんで、ぼくがガンダムに乗り込む必要はないわけですし……」

 

「なるほど。」

クワトロは、顎に手を当てて、考え込んだ。

「……すると、お調子者で功を焦りすぎるきらいのあったジーンが、予定通り出撃していたら……」

 

「何かの間違いで乗り込んでも、ザクに撃破されて終わりですよ!」

 

「そうかな。

あの当時のガンダムの性能は、画期的なものだった。試算ではザクの主力武器であるマシンガンの直撃にも耐えたはずだ。

もっともありそうな想定は、きみの乗ったガンダムが、ザク2機を爆発させてしまい、コロニーの気密性に致命的な問題をもたらすという……」

 

「大惨事じゃないですか!」

 

「代わりに連邦は勝ったかもしれん。」

 

難しいところである。

アムロの父親は連邦軍の軍属であったし、彼自身も地球の生まれであったから、心情的には連邦よりではあるのだろうが、サイド7の壊滅……まわりの近しいひとが全員死んでなお求める勝利とはなんだろうか。

 

「今回は、賭けの対象にはしないので、マージンは発生しない。そのかわり対戦料をアップしている。時間的にも何時間も拘束することになるんだからな。」

 

「クワトロさんは赤字では?

あと、休憩は取れるんでしょうね?」

 

「シュミレーターを映像化して配信する権利をとった。

撃墜数による歩合はつけるから、あまり休憩時間が長くなると取り分は減るよ。」

 

自分の気の弱さをアムロは嘆いた。

ここまでお膳立てされてしまうと、いやとも言いきれない。

一応、あくまで仮想現実であって、危険はないわけだし。

あと、マチュとニャアンはけっこう参加にノリノリなのだ。

 

「……ララァと仲良くしてくれているようだが」

さり気なく、別れ際にクワトロは、口にした。

 

「ときどき、買い物に付き合ったりしていますが、気になるようなら……」

 

「いや。そんなことはない。優れたニュータイプ同士が惹かれ合うのは当然だ。」

 

惹かれ合う……か。

たしかに。なぜか今のアムロの周りにはタイプの違う美女が多いのだが。

誰に対して恋愛感情に近いものを抱いているかといえば……おそらくはララァだった。

 

「彼女とは“夢”の話をきいたか?」

 

「はい。白いモビルスーツ……たぶん、ぼくがあなたを落としてしまう。ララァはそれを避けるために何度も、世界をやり直す……」

 

「だが、わたしは負け続ける。」

 

「夢の話です!」

 

「わたしは、イオマグヌッソの現場にいたのだよ。“向こう側”からきたシュウジ・イトウとも話をしている。彼が呼んだ“向こう側”のガンダムは、きみとテム・レイが再開発した“ガンダム”に実によく似ていたよ。」

 

 

 

 

 

クワトロのオフィスを出て少し歩いたところで着信が鳴った。

 

ララァだった。

 

「これから時間は大丈夫、アムロ?」

「大丈夫だけど……いま、クワトロさんと例のシュミレーターの件で契約してきたばかりなんだ。」

 

「ちょうどいいわ。わたしもそのことで会って欲しいひとがいるの。

いつものカフェにいるわ。」

 

 

郊外に新設されたジオン工科大学ネオ香港キャンパスとは異なり、ネオ香港大学は市街地にある。

食事や休憩施設をすべてキャンパス内に収納しているジオン工科大学とは異なり、ネオ香港大学の周りは、学生向けの店がならび、ひとは多いながらも落ち着いた雰囲気が漂う。

 

アムロがカフェにはいると、奥の席で女性が手を振った。

ララァだ。

好んで着ている貫頭衣は、学生街では目立つので、シャツにジャケットを羽織っていた。

ふたりの侍女たちも一緒だ。いつもの目つきの悪いカンチャナに、アムロに似たくせっ毛ヴァーニ。

 

男性二人は初めてみる。

 

「急に悪かったわね。」

 

「いや。ちょうど用事が終わったとこだから……」

 

歳上の男性の方が立ち上がった。

中肉中背。穏やかな表情。

ネオ香港大学関連のひとだろうと、アムロはあたりをつけた。

学生なのか講師なのか、微妙な年齢ではあったが。

 

「はじめまして、アムロさん。わたしはヤン・リー。ネオ香港大学の史学科に通ってます。

今回のア・バオア・クーの仮想戦を立案しました。

こっちは、わたしの弟みたいなもので、同じくネオ香港大学で法学部のレ……」

 

「ハンドルネームはもういいでしょう? ユリアン・ミントです。」

少年のほうは10代の半ばに見える。

「“白い悪魔”アムロ・レイさんですね。お会いできて光栄です。」

 

もともと、ある架空戦記もののファンクラブで、知り合い、今回ララァがネオ香港大学に通う際にはいろいろ世話になった、ということらしい。

 

「ララァが架空戦記が好きだとは知らなかったよ……」

「たまたま、うちのカンチャナが」

「カンチャナが架空戦記のファンなのかい?」

「カンチャナが書いてるのよ。」

 

タイトルをきいてアムロは驚いた。

読んではいないが……

それが評判になっているのは知っている。

架空戦記ものが、一部の好事家の間で流行っているのは知識としてはあった。

主に、月面都市の一部やサイド6。

戦火には直接晒されなかったところに読者は多い。

多くは、密かに開発されていた超合金ZZで装甲されたモビルスーツMAZ001が、毎週ジオンが送り込んでくるモビルビーストと戦うというものか、その亜流で、最初の一章で彼は投げ出していた。

 

たぶんアムロがあと十歳若かったらハマっていたに違いないが。

 

カンチャナが書いたという物語は、自分のコロニー奇襲を受けて偶然、連邦のモビルスーツに乗り込むことになった主人公の少年が、エースパイロットとして連邦軍を勝利に導くというとので……

 

なるほど、ありえたかもしれない、とその手のマニアを唸らせるものがあるという。

なぜ、アムロが読まなかったかといえば、主人公の少年の名前がアレム・ロイというそうだ……

ライバルの名前はシャイ少佐だ。

 

腰をおろすとすぐに、ララァが言った。

 

「“奇術師”さんのシュミレーションのことはまずおいといて……」

「奇術師さん?」

「ああ、ヤンさんのハンドルネームよ。ついそう呼ぶくせがついてしまったの。」

 

そんなものなのだろうか。

目の前の青年は、たぶんクワトロ大尉と同年代だろう。

実直そうで、好んで嘘をついたり、相手を騙したりはとてもしそうになかった。

 

「急にアムロを呼んだのは“奇術師”さんから、ユリアンのことで、相談を受けたのよ。

わたしよりもアムロのほうが相談相手に相応しいと思って。」

 

それはどうだろう。

と、アムロは思った。

ユリアンは見るからに利発そうな少年だ。この年齢で名門ネオ香港大学に通ってるくらいなのだから、間違いなく飛び級もしているのだろう。

例えば、かれの将来のことなどなら、自分よりもクワトロか、あるいはいっそのことセイラさんにでも相談するのがよいように思う。

 

「……ぼくはただのクラバのパイロットですよ?」

とアムロは言ってみたのだが、なぜか全員が大きく頷いた。

 

「実は、ユリアンがクランバトルのジュニア部門にエントリーすると言っててね。」

できるだけ平静を装っていたが、ヤンの声には固さがあった。

「実戦とは違う、ということは理解しているつもりだが、親代わりのわたしとしては、勧めてよいのか迷っている。」

 

「機体はスパルタニアンですよ?」

ユリアンは抗議した。

「自惚れるつもりはないけど、初めて実用化された可変用練習機です。ほかの機体ならともかくアレにぼく以上に慣れてるパイロットは存在しませんよ?」

 

「デニムさんに聞いてみたのだけれど、スパルタニアンはかなり安全性の高い機体だそうよ。」

ララァが口を挟んだ。

「無理な操縦は、そもそも機体のほうが受け付けないし、ビーム兵器も使えないわ。

今回は、正式なジュニア部門をエントリーをはじめるにあたってのデモンストレーションのような試合で、そう言った意味でも無茶はさせないと思うの―――たとえ、アンキーさんでも。」

 

「ち、ちょっと待って? カネバン有限公司が主催なの!?」

 

それだけでも却下するのに充分の理由になる。

アンキーは……悪人ではないが、利益の追求には容赦をしない。

 

「機体はスパルタニアンに統一。もちろんビーム兵器はなし。当たり判定を導入……それなりに考えてはくれてるわ。」

 

「そもそもユリアンには、軍人になってほしくないんだよ。」

ヤンは苦しそうに言った。

「軍が不要な存在だとは言いきれないが、せっかく終わった戦争だ。

戦場以外で生きられる道があるのに、モビルスーツのパイロットを選ばなくてもいいんじゃないかと思うんだ。」

 

「だから、軍人じゃないて、クランバトルのパイロットですよ。

安全性は高いし、一試合くらいなら……」

 

「ユリアン。これは難しい問題でね。」

アムロは言った。

「人間には欲があるんだよ。アンキーのポメラニアンズは、パイロットを大事にしてくれるクランだ。

この場合、大事にしてくれるっていうのは安全性の問題じゃなくて、金払いがいいという意味なんだけど……」

 

「学費のことは、心配しなくていいと再三言ってるんですが……」

 

「それ以外にも、勝つことへの快感や名誉欲というものが、あります。

もし、ユリアン君が勝ってしまうと、次も、その次も……と、試合に出ることになってしまう。」

 

なるほど……と、ヤンは目の前に置かれた紅茶のカップを回すように撫でた。

 

「負けてしまえば、いいんですが、残念ながらパイロットが負傷するケースは、勝つより負けたときが多いんです。当たり前ですが。」

 

「一試合だけ! それは約束します。

クランバトル『なんか』にのめり込みは……あ、すいません。」

 

“白い悪魔”の前でクランバトル下げをしてしまったユリアンは、アムロにモゴモゴと謝ったが、アムロはかえって頷いてみせた。

 

「ぼくもクランバトルは、モビルスーツの研究資金稼ぎに、始めただけなんだ。

将来の希望は技術者で、いまはジオン工科大学に通ってる。」

アムロは彼に出来る範囲の厳しい顔で、ユリアンを見つめた。

「それでも始めてしまうとなかなか辞められなくなる。

まわりの期待とか……一緒に戦う仲間とか、ね。

例えば、ユリアン君が一試合だけと言っても、M.A.V.を組んだ相手が、やめさせてくれない場合もある。」

 

「今回は3対3のチーム戦になるそうです。M.A.V.は組みません。」

 

「そこらへんは同じことだよ。きみ以外の二人がこれからも一緒にって言い出したら、ユリアン君は断れるのかな?」

 

「アムロさんもぼくのクラバ出場には反対なんですね……」

いくぶん、がっかりしたように彼は言った。

 

「いや。ぼく自身がクランバトルのパイロットでしかもずるずると試合を続けている以上、完全に否定も出来ない。まあ、生涯をかける仕事じゃないことだけは確実だから、とりあえず目先のリスクを指摘しておくだけにするよ。」

 

ヤンは笑った。

 

「おかしいです……かね?」

 

「いや、実際に戦争を経験していないはずのアムロ君が、わたしと同じような考えをもっていたのが、嬉しくてね。

クランバトルの“白い悪魔”は戦うことに慎重なんだな。」

ヤンは楽しそうだった。

「ひょっとして“白い悪魔”という異名もあまり好んではいませんか?」

 

「当たりですね。」

アムロは正直に言った。

この人物の前では、正直でいたい。

そう思わせる人徳のようなものが、ヤンには感じられた。

 

「もし、きみが15歳で、モビルスーツに乗って戦うチャンスがあったどうするか伺ってもいいかな?」

 

「逃げ出しますね。」

きっぱりとアムロは答えた。

 

「“フロド”の小説のアムレ・ロイは果敢にガンダムに乗り込んたことになってるが?」

 

「それは、スキニーがワイドバギー曹長の命令を無視して、民間施設も巻き込んだ攻撃を始めてしまったからです。」

カンチャナが口を挟んだ。

「流れ弾が、アレムの避難していたシェルターを、直撃。友人の家族にも死者が出ました。

友人が安全に逃げられるように、彼は仕方なくガンダムに乗ったんです。」

 

カンチャナの物語が、あまりにもリアリティをもっていたので、思わずアムロは、カンチャナの書いたという物語りを読みたくなった。

―――いやダメだ。アレム・ロイにシャイ少佐。ワイドバギーとスキニーというのは、たぶんデニムさんとジーンさんだろう。とても真顔で読めない。

 

「安全性はぼくのほうからも、アンキーさんに確認してみますよ。」

アムロは、言った。

「参加選手が気になります。

可変機をまともに使えるジュニア選手が、ユリアン君以外にいるのかが疑問なんです。

相手が下手すぎるとかえってアクシデントが起きやすい。

クランバトルの選手にはそれなりにくわしいつもりなんですが、可変機を使えるパイロットなんてカミーユとジュドー。

もし強化人間も候補にいれてよいとしても、ムラサメ研究所のドゥーとアンくらいしか思い浮かびません。」

 

ヤンとユリアンは、互いに顔を見合せた。

 

なにか不味いことを言っちゃった!?

アムロは焦ったが、ヤンがゆっくり口を開いた。

 

「……驚いた。

今回のデモンストレーションの参加メンバーそのものだ。

ユリアンは、カミーユとジュドーと一緒に戦う。相手は強化人間。アン・ムラサメ、ドゥー・ムラサメ、エルピー・プルだよ。」

 

 

 

 

 

 




そういえば、ララァは仮想ア・バオア・クーに参加するのかな。


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