第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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銀英伝キャラからもうひとり出場願いました。
魅力的なキャラクターが多い銀英伝ですが、あまり出し過ぎると収集つかなくなるので、恐る恐る。






GQuuuuuuX season2 第4話 激突する宇宙~司令部にて

アムロは、モーション・コクピットから降りると、背伸びをした。

 

彼の主戦場は、クランバトルだ。

もともとは、非合法のイベントだったため、実際の試合時間は、軍警察が介入するまでのほんの数分で決着することが多い。

何十分もコクピットに閉じ込められるのは、デラーズ紛争やペズン事件で、経験はしているものの、慣れたとは言い難い疲労感がある。

 

場所は、ネオ香港大学のイベントスペースだ。

かなりの広さがあるスペースには、アムロがいままで入っていたモーション・コクピットがたくさん置かれている。

 

この「仮想ア・バオア・クー」が一大イベントとなったためか、クワトロ大尉が手配したクランバトル選手以外にも、パイロット養成コースに通う学生や、元軍人からの応募もあったらしい。

 

アムロの右隣のモーション・コクピットが開いて、降りてきた男は、肩を落として、項垂れていた。

 

ああ、落とされたのだな……

と、アムロは思った。

別に仮想世界のことであり、自機が撃墜されようが、パイロット本人には痛くも痒くもないのだが、この敗北感は拭いきれないものがあるようだ。

もっとも、本当の戦闘ならば、敗北感を味わうまもなく、宇宙のデブリの一部になってしまう可能性のほうが高いのだが。

 

「あ……ひょっとして、“白い悪魔”のアムロさんですか?」

男はアムロを見つけると、そう話しかけてきた。

否定も出来ず、アムロは頷いた。

 

「い、いやあ、私、アムロさんの大ファンなんですよ。

私はあっさりやられちまいましたが、アムロさんは頑張ってくださいね。」

 

「連邦軍の方ですか?」

 

「元、です。いまは普通に商社に務めてます。いやあ、哨戒任務のつもりですが、いきなり、長距離狙撃されて……」

 

去っていく男の背中をなんともいえない気分で眺めていると、脇からサッとタオルが差し出された。

 

「あ、ソムさ……」

「いまは、セイラ・マスよ。顔をふいて。

軽くなにか食べに行きましょう?」

 

「いや……補給が完了次第、また出撃しないと。

ララァのキケロガがまた来たら、艦隊そのものが崩壊してしまう。」

 

「やっぱり……あなたから見ても、ココとニュータイプ専用機は脅威だと思うのね。」

 

「そうですよ。艦艇に、モビルスーツだって20機近く落とされてるんです。あれじゃあ、ア・バオア・クーにたどりつくまえにボロボロにされてしまう。」

 

アルテイシア……ソム・エドワウ……セイラはこまったように笑った。

 

「たしかに、第2波の漸減攻撃は心配だけど、すぐに出撃はムリよ。」

 

「補給は30分もあれは終わるはずですそうしたら……」

 

「あなたのガンダムは、修理プロセスに入ったわ……アムロ。」

 

え?

危ない一撃もあったが、アムロはララァからの攻撃をすべてかわしていた。

なんでガンダムが。

 

「あなたの操縦のせいよ、アムロ。」

セイラは、眉間にしわをよせて言った。

「キケロガのビームの連射をよけながら、有線ビーム砲を一機撃墜。

素晴らしいものだけど、肘の関節がダメになってるわ。」

 

アムロは憮然とした。

たしかに、肘に警告エラーが出ていたのはわかっていたが、それがそこまで深刻なものだとは思わなかったのである。

 

「あなたの操縦に、機体がついていけてないのよ。こんなことはいままでもあった?」

 

「いえ……ぼくの“ガンダム”はもともとガンダムから性能を落とさずにコストダウンさせた機体でしたからそんなはずは……そうか!」

アムロは、気がついた。

「マグネットコーティング! 独立戦争の時代のガンダムにはあれが、施されてません!」

 

小走りに急ぐアムロをセイラは追いかけた。

 

「どうするの? 独立戦争のときになかった技術はシミュレーターに反映できないわ。」

「もとになる理論は、もう提唱されてたずです。ヤンさんに、直談判してきます。」

 

途中で、マチュとニャアンにすれ違う。

 

「あ、天パ! 姫さんも参加してたんだ!……ってなんで連邦側なの?

強襲迎撃どうだった? いっしょにランチしようよ!」

 

「ごめん、マチュ。これからヤンさんのところに行くんだ。」

 

「ヤンさんって、この仮想戦を考えてたひとだよね?」

マチュは、アムロたちと足取りを合わせる。

 

「マチュ……ご飯どうする?」

ニャアンが抗議した。

 

「こっちのほうが面白そう!!」

 

 

 

------------------

 

 

 

あくまで、これは仮想戦だ。

各戦場の様子は、可視化され、ライブ配信され、空前のな視聴数をたたき出してはいるが、ネオ香港大学は、日常を過ごしている。

パイロットとして参加しているものたちを捕まえて、インタビューを試みる記者も多数入り込んでいるが、通常に授業も行われている。

 

アムロたちは、「司令部」……ヤンやその仲間たちのいるミーティングルームは、別に護衛もいるわけがなく、アムロはノックして、普通に部屋に入った。

 

「やあ、アムロ。」

ヤン・リーは、軽く手を上げた。

「主力艦隊への強襲の撃退ありがとう。

下手をすれば、ア・バオア・クーにたどり着く前に、仮想戦が終わってしまったかもしれないところだったよ。」

 

「すいません、ヤン提督……」

 

穏やかな表情の青年の顔に苦笑が浮かぶ。

「きみまでユリアンのマネかい?

提督は勘弁してくれ。わたしはそんなに偉くはないよ。」

 

と言いながらと、いまの彼は仮想現実とはいえ、連邦艦隊を指揮して、ジオンの最終防衛ライン、ア・バオア・クーに挑もうとしている。

 

「提督」以外の何物でもない。

 

アムロも笑って、マチュたちを紹介した。

セイラを紹介しようとしたところで、戸惑った。

 

ミーティングルームには、優雅に紅茶を嗜んでいる先客がいたのだ。

 

クワトロ・バジーナ、である。

 

仮想現実を戦うものが、リアルで司令部を訪ねるものではない。アムロたちだってそうなのだが、クワトロ・バジーナはジオン側のパイロットとして参加しているので、なおさらだ。

 

驚いたように、クワトロはカップをソーサーに戻した。

「いったいなにがあったのだ、アル……ソ……」

「セイラ・マスと申します。初めまして、クワトロ・バジーナ。」

 

「ああ、あなたが“戦鎚”でしたか!」

ヤンが叫んだ。

「今回のイベントに参加いただきありがとうこざいます。

連邦のエースとして名前は伺っていましたが、どういうものか、写真や戦闘のデータがなくて……」

 

「ソロモン落としに最後まで反対されて、予備役に編入になったヤン参謀のお名前はきいております。」

セイラは優雅に微笑んだ。

「戦後は、連邦軍から距離をおいておりましたので。

お目にかかれて光栄です。」

 

「失礼ですが、クワトロ氏とは以前からのお知り合いですか?」

ヤンの助手らしい精悍な若者が、口を挟んだ。

 

セイラの形の良い眉が微かに歪んだ。

「『はじめまして』……と申し上げたのですが」

 

「そうですよ。『初めまして、クワトロ・バジーナ』とおっしゃいました。

まだ我々が紹介していないのに。」

 

セイラは優美に微笑む。

 

「クワトロ・バジーナ氏は、クランバトルの世界では有名ですわ。

今回の仮想戦では、パイロットの手配……いわば主催者側のひとりとしても、名を連ねているはず。

ここにいてもおかしくはない立場でしょう。」

 

「ほんとにそうですかね?」

 

「それくらいにしておいてくれ、アッテンボロー。」

ヤンが言った。

「いろいろと事情がおありなんだろう。

いまはそれをくわしく詮索する権利は我々にはない。

すみません、セイラさん。

ダグラス・アッテンボローは悪い男ではないのですが、もともとジャーナリスト志望だったらしく、自らの好奇心には忠実なのですよ。」

 

ヤンは、アムロたちに椅子を勧めた。

アッテンボローは飲み物を尋ねてくれた。

年齢は、アムロと同じか、少し上くらいだろうか。

ユリアンといい、このヤンという人物の周りには、よい人材が集まるようだった。

 

「ところでどういったご要件です?」

自分は自らいれた紅茶を飲みながら、ヤンが言った。

 

「わたしやマチュ、ニャアンはただのご挨拶です。

用事があるのは、アムロです。」

 

「アムロくんが?」

意外そうであった。

 

「なにかな? ギャランティの話ならわたしがきくが……」

「クワトロ氏はすこし黙りましょうね?」

セイラの笑みが引きつっている。

 

「マグネット……マグネットコーティングをガンダムに!!」

 

ヤンは驚いたようだった。

 

「い……いや、なんで突然そんなことを。

たしかに現代の最新鋭機なら、もれなく施されている技術だが、ア・バオア・クー……独立戦争時代には、まだない技術だよ。」

 

「モスク・ハン博士の論文は、V作戦と並行して発表されました。

理論的な基礎も、施工手順も確立してるはずです。」

ここらへんは、技術者であるアムロのほうがくわしい。

 

「そう……なんだね。

しかし、現実には、導入されるようになったのはごく最近だろう?」

 

「それはムーバブルフレーム構造と相性がよかったからです。

とくに最近開発されている可変機では、必須の技術となっています。」

 

うーん。

と、ヤンは唸った。

めんどくさいから断る―――という選択肢もあるのに、悩むのは、基本的にひとがよいのだろう。

 

「技術的には、独立戦争末期なら可能だ―――というのかな。

しかし、なぜ、ムーバブルフレームも可変機でもないガンダムにマグネットコーティングが必要なんだい?」

 

「……操縦に機体が追従しないのです、ヤン提督。」

セイラが言った。

あなたまで、提督呼ばわりか、とヤンは困ったように頭を抱えたが、その顔には大きな疑問符も浮かんでいる。

 

「……それはつまり、アムロくんの操作の方が機体の反応よりも早い、と?」

 

そんな馬鹿な。

と、口を挟んできたのは、アッテンボローだった。

「人間の反射神経よりも機械の反応が遅いなんてそんな」

言いながら、自販機で買ってきた飲み物を、各自に配ってくれる。

 

「先ほどのアムロとキケロガの戦闘の記録を見てください。」

 

セイラの言葉に、ヤンは拒否できないものを感じたのか、言われた通りにした。

有線ビーム砲によるオールレンジ攻撃。

 

次々と連邦の艦艇が撃沈され、迎撃に上がったモビルスーツもまた、キケロガの位置すら確認できぬまま、破壊されていく。

 

ビームの一閃。

 

キケロガがかわす。

同時に、接近してきたガンダムを敵と見定める。

 

有線ビーム砲を射出。

艦隊を相手に出来る戦力は、ただ一点。ガンダムだけに集中した。

 

正面から。

続いて左右から。

 

ビーム砲の連続攻撃を、最小限の動作でガンダムがかわしていく。

だが、それらの攻撃はすべて囮だった。

本命の一撃は、ガンダムの下方から……

 

第三者視点で戦闘を見れる今だからこそわかることだ。

だが、ガンダムは。

まるで、四基めのビーム砲が狙っていることをわかっているかのように、ビームライフルを下方に向けた。

 

キケロガがビーム砲を放つよりも早く。

 

ガンダムのビームライフルが、有線ビーム砲を破壊している。

 

……

 

「なんだよ……これは」

アッテンボローがつぶやいた。

司令室には、ガンダムがキケロガを撃退した。その数値データしか入っていなかったのだろう。

 

「さっすがは、天パ!」

マチュが叫ぶ。

「あ、姫さんもきた。」

 

セイラの操る軽キャノン改が増援に駆けつける。

ジオン側も、ガトーや「黒い三連星」のドムが駆けつける。

 

「黒い三連星」がジェットストリームアタックをかけた。

ガンダムは、沈み込み浮き上がる。

 

その動作だけで、攻撃をかわし、三機のドムを葬りさった―――

 

 

 

「キケロガのビーム砲を破壊したときの射撃動作で、ガンダムの肘関節が破壊されています。」

セイラが言った。

「そのあと、マッシュたちのドムを近接戦闘だけで撃破したのはそのためです。」

 

アツテンボローは真っ青になっていたが、それはアムロの戦闘に対するものではなかった。

 

マチュがセイラを「姫さん」と呼んだことで、なにかに気がついたのだ。

 

「あ、あんた、まさか……」

 

「それはあとにしよう、アッテンボロー。」

ヤンは静かに言った。

「まずは、マグネットコーティングをガンダムに施すことを認めるかどうかだ。

技術的には0079年末の段階でマグネットコーティングは可能だというのが、アムロくんの意見だね。

ただ、当時はムーバブルフレームも可変機もなく」

ヤンの唇が歪む。

「機体の追従性が問題になるようなパイロットもいなかったので、単に使われなかった、だけだ、と?」

 

「少し口出ししてもよいかな?」

クワトロが言った。

セイラが睨むが、構わずにクワトロは、ヤンが頷くのを待って先を続けた。

「わたしとしては、アムロくんの機体に限ってマグネットコーティングを認めてもいいと思うのだが」

 

「それは……なぜです?」

 

「ジオンは……アプローチは違うが、このときすでに、機体の追従性をはるかに高める技術を導入している……キケロガにも搭載されている『サイコミュ』だ」

 

「サイコミュが単なる遠隔誘導システムでないことは理解していますが……」

ヤンは納得出来なさそうな表情で、クワトロを見返した。

 

「今回の仮想戦で、敵同士として戦うことになった、我々だが……

わたしが乗機として選んだジオングにはサイコミュが搭載されている。

これでは、アムロくんにとってあまりにも不利ではないか、と愚考するのだよ。」

 

だから?

と、一堂の顔に疑問符が浮かぶ。

 

「わたしとアムロくんは友人同士だが、ある意味ライバルでもあるのだ。

あまりにも彼が一方的に不利な条件のまま、彼に勝ちたくないのだよ!」

 

 

 

 

 




また余計なことをする三倍なひと……
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