死と隣り合わせの戦い。
そこではクランバトルの常識は通用しない。
カクリコンの捨て身の戦術がアムロを追い詰めていく。
次回機動戦士ガンダム GQuuuuuuX、「重力の井戸」。
きみは生き延びることが、できるか。
まさか!
カクリコンは驚いた。
大型シャトルのハッチが開く。
現れたモビルスーツは見た事のない型式だった。
全体の色合いは、連邦が独立戦争時代、エース機のみに許したトリコロールカラーに似ている。
発進はスムーズで、パイロットはかなりモビルスーツに熟練している事が伺える。
おそらくは、ドゥー・ムラサメ自身だろう。
だがそのモビルスーツは、どこかの工房が売り込みを狙って作った試作品。それもあまり予算が潤沢ではない。コスト重視の型遅れ。せめて色合いで目立とうとトリコロールカラーにしたのだろう。
だがそれがなんだ。
「撃墜命令」を受けたのは貨物輸送も兼ねたかなり大型のシャトルだった。
まさか、モビルスーツを搭載しているとは思わなかったが。
大型なだけのシャトルは装甲もなにもない。
ただただ的がデカくなっただけだ。
発進途中のモビルスーツのツインアイがこちらを捉えている。
なるほど。
ガンダムに似せてみたのか。
売り込みのアイデアとしては悪くない。
だが、そのためにかえって、コストカットの痕跡が顕になってしまっている。
なんにせよ。
発進まえにシャトルごと落としてしまう。
ドゥー・ムラサメの存在を確認できなかったのは残念だが、命令は遂行できる。
ハイザックはビームライフルを装備している。
ジェネレーター出力はビームライフルとビームサーベルの同時使用ができない仕様となっていたが、カクリコンは取り回しや操作性のよさから配備されたばかりのこの機体を気に入っていた。
一応、M.A.V.は組まされているがとくに出番もないだろう。
ビームライフル、発射。これで終わり…。
だがビームは上方に逸れた。
優秀なモビルスーツパイロットであるカクリコンは理解した。
あの出来損ないのモビルスーツの頭部のバルカン。
その弾道が、カクリコンのハイザックのビームライフルを持つ手をはね上げたのだ。
ゆっくりと。
出来損ないがシャトルを離れていく。
まずそちらから叩くか。
操縦者がドゥーである可能性が高いのなら、それで正解だろう。
だが、ビームが発射できない。
カクリコンは唸ったが、なにがおきたかは直ぐに理解した。
ビームライフルを握るハイザックの指を、出来損ないのガトリングが破壊したのだ。もちろん偶然だ。
頭部のガトリングはそのような精密射撃を行えるものではないからだ。
僚機が加速した。ビームライフルをしっかりと構えている。
クソッ、手柄はやつのものか――。
構えたビームライフルが腕ごと爆散した。
いったいなにが。
いやシャトルから発進途中の出来損ないの攻撃には違いない。
いつ抜いたのか、出来損ないは、ビームライフルを手にしている。
ビームライフルの威力はまともなのだな。
カクリコンは思った。
彼がそう思ったときには、僚機の頭部が、爆発していた。
続いて両足が。
なんて射撃の腕前だ!
カクリコンは舌を巻いた。
発進した出来損ないが、加速する。
次の瞬間。彼のハイザックのビームサーベルを抜いたその腕を、出来損ないのビームサーベルがなぎはらっていた。
ばか、な。
出来損ないが頭部バルカンを発射してから。
3秒。
さ、最新のハイザック2機が行動不能!?
3秒も持たずにか!
出来損ないのモビルスーツ1機に。
最新のハイザック2機が?
ば、化け物かっ!!
カクリコンの思考はのちに、このときのことを思い出しながら再構築したものである。
そのときには、ひたすらティターンズ行きを免れた旧友のジェリドを罵り続けていた。
カクリコンはとっさに考えた。
ムラサメの強化人間は化け物だ。
こいつはここで殺す。
必ず殺す。
生命と引き換えでも。
ああ、カクリコン。
確かにムラサメ研究所の強化人間は、その精神の不安定さもふくめて、「バケモノ」と言われても仕方がないものもいる。
だがいま、お前が相手にしているのは――
うぉぉおっおっ!!!
カクリコンが選んだのは体当たり、だった。
確かに、もうそれしか道はなかった。
ビームサーベルは失われ、ビームライフルを握る腕も故障している。
つまり、たとえばクランバトルだったらこの時点で、カクリコンは戦闘不能とされ、相手の勝利は確定しているのだろう。
だが、これは実戦だ。
戦争?
いや戦争ですらない。
ドゥー・ムラサメを抹殺する。
必要ならば民間のシャトルごと破壊する。
それはもう軍事作戦とは言えないだろう。
ちくしょうちくしょうちくしょう。
おれは軍人だ。殺し屋じゃねえんだ。
そう己とティターンズを罵りながらもカクリコンは「命令」に従った。
ティターンズはそういう組織であり、彼はティターンズの一員だったから。
出来損ないが油断していたとは思えない。
あの射撃の腕前、あのビームサーベルさばき。
カクリコンのハイザックを接触前に撃破することは十分可能だったはずだ。
だが、出来損ないは胴体への攻撃を僅かにためらった。
ためらったように感じた。
体当たり。
残った右腕で相手の胴体にしがみつく。
そのまま、バーニヤを全開した。
そのまま何かに押し付ける、とか叩きつければ攻撃になるだろう。
だが、ここは軌道上だ。
押し付けるものの対象はなにもない。
強いていうのなら。
出来損ないの背後にあるのは、「地球」だった。
バーニヤやジェネレーターの出力はハイザックがうえだ!!
そのままカクリコンは、出来損ないを押し込んだ。
地球の。
大気圏へと。そのまま大気圏に突入してしまえば、モビルスーツはもたない。
これは最新のハイザックも一緒である。
ギリギリまで相手を押し込む。
重力に引かれて落下を始めた出来損ないを蹴りつけた。
その反動でハイザックは宇宙へと戻る。
ギリギリ。あと半秒でハイザックも地表へと落下を始めていた。
そして、蹴られた出来損ないは。
その機体を炎が包んでいく。
大気との摩擦熱だ。
「グラリスI! グラリスI!
回収してくれ。目標の乗ったモビルスーツを大気圏に落とした。任務は完了、こっちを回収してくれ。」
グラリスIは戦闘艦ではない。
モビルスーツ2機を打ち上げて、しばらくは軌道上に待機。その後、訓練を終えたモビルスーツを回収してまた大気圏突入。基地に戻るだけのシャトルである。
そういえば、出来損ないを載せていたシャトルは。
こちらはもう遅かった。
すでに出来損ないを射出したシャトルは大気圏に突入を始めている。
証人を残さない意味でもアレも落としたかったのだが。
ビームライフルが使えれば……。
だが、カクリコンも僚機のハイザックも出来損ないの攻撃でビームライフルを失っている。
“画竜点睛をかいたってとこだが、なんとか任務完了、だな。”
もちろん、カクリコンはこのとき、絶対に敵に回してはいけないヤツを敵に回していたことには気がついていない。
「アムロっーーー!!!」
クリスは叫んだ。無駄だとは思う。
大気圏突入の際の摩擦熱は、泣こうが喚こうがどうなるものでもないのだ。
あれほどのパイロットを。
こんなところで失ってしまう。
まだまだ少年っぽさの残る彼が。
こんなところで。
ティターンズ!!
なにが教導部隊だ。
ただのテロリストの集まりじゃないか!
クリスはこのとき、以前からブレックス准将に誘いをうけていた対ティターンズ組織への正式の参加を決意した。
「ティターンズ。」
ボソボソとドゥーがつぶやいた。
膝のうえに乗せられた拳が固く握りしめられていた。
「このウラミ、はらさでおくものか……」
その様子はすでにホラーのキャラクターを彷彿とさせた。
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アムロは完全に意表をつかれたといってもよい。
これはクラバではない。
メインカメラのある頭部を破壊したからといって、勝ちがきまるわけではない。
わかっていたつもりだった。
だから相手の攻撃能力を完全にそいだ。
それでも。相手は攻撃してきた。
こんな思いもよらない方法で。
やっぱり自分は甘いのだ。
アムロは落ち込んでいる。
だが、人生の最後にすることがただ反省するだけなのも癪に障る。
アムロは、前夜テム・レイからもらった新パーツのマニュアルを無意識に開いていた。
ああ。
父さん。
あんたやっぱり天才科学者だよ。
息子が父親を誇りに感じることがあるとすれば、それは理想の親子関係だろう。
アムロは父がガンダムに与えた新機能を、作動させた。
大気圏突入用の耐熱フィルム。
半透明のシートが広がり、ガンダムを覆った。
すでに危険な域にまで達していた装甲外部の温度上昇がストップし、少しずつ下がり始めていた。
「高度がある程度下がったら、パラシュートにしてさらに減速できるのか。そのあたりなら、もうバーニヤも使える。
地球に無事に降りれるぞ。」
記憶のなかの親父が、自慢そうに言った。
“こんなこともあろうかと”
いやそれはあんたのセリフじゃないはずだ!!
実際、安全に降りることが出来るとしてもやるべきことは山ほどある。
海の真ん中に着水してしまったら。
あまり人里離れた山奥でもまずい。
あるいは逆に人口密集地に落ちたら大惨事となる。
ある程度、そこらは調整が出来そうではあった。
クリスたちの本拠地の場所はまだ教えてもらってはいなかった。
ジオンの支配する要衝地はまた面倒なことになりそうだ。
だとすればアムロにとって意味のある場所は――。
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場所はかわって。
サイド6。
イズマコロニーの高級住宅街。
そのコンドミニアムの一室で女性の悲鳴が響き渡った。
「あ、あなた!!
アマテが! アマテが!!」
テロに関係してたとの疑いをかけられ、指名手配となっていた娘の嫌疑は晴れた。
政府の高官であるユズリハ夫妻は、そのことを事前に知らされている。
メールが一通送られてきただけで、居場所も不明だった娘が帰ってきたのかと飛び出した父親の目の前に。
積み上げられた山のような荷物が。
カウチソファにギター、ウクレレ、カラオケセット、ミラーボール付きの照明器具、ダンボールに詰められた衣類はなぜか水着やリゾートウェアが多い。
そう言えば、荷物のなかにはビーチバラソルまであった。
添付のメッセージは。
“新しい引越し先が決まるまで預かっといて”
父親は添付メッセージの送信元を見ようとしたが、秘匿通信になっている。
外交官の彼はそういった方式のメッセージ送信に慣れてはいた。
送信元は隠されている。
隠されてはいるがいくつかのパターンもそこには存在するのだ。
前回のメッセージも同じパターンだった。
二回続けばほぼ、間違いは無い。
これはジオン公国軍。しかも、公王府に直結した秘匿性の高い任務中に使われるものだ。
「明日、カムラン補佐官に相談する。」
理由はわからないがアマテは、ジオン軍に囚われている。いや通信はさせてもらっているし、海で遊んだりしているのだから囚人ではないのだろうが。
これは政府から外交ルートで調べてもらうしかない。
「ま、まさか。アマテは悪い男にだまされて……」
衣類や日常品のはいった箱を引っ掻き回していたタマキは、水着を取りあげた。
明るいグリーンのそれは、明らかにアマテのものとはサイズが違う。
「……悪い女にだまされて???
ほんっとに、あの子なにやってるのよおおおっ!!」
ユズリハ夫妻が、突然愛娘から送り付けられた荷物に一喜一憂していられたのは幸いだった。
そのころ、無人となったユズリハ家のリビングでは、クランバトルのCMがちょうど流れていたのだったから。
“全宇宙のクラバファンのみなさま!!”
宇宙空間を舞台に巨人同士が殴る、蹴る。迫力のバトルはたぶんCGである。非合法だったクラバにそんなに映像記録をはっきり残す習慣はない。
“お待ちかね! デビュー以来無敗のあの新人がいよいよクラバに帰ってくるぜ。”
ドン!!
いや、たしかにクラバは合法になってすでに一部の人気選手は、有名なスポーツ選手のような扱いをされているが。
未成年だし。ここまで顔をアップにしても差支えはないのだろうか。
まだ十代の半ばに見える少女だ。ヘルメットは被っていない。なかなか可愛らしい容貌がはっきりみえた。まだ幼さは残るが意志の強そうな顔だちだ。
白を基調にしたパイロットスーツは身体のラインを隠せない。
童顔ではあるが、たわわなラインはなかなかのものであった。
“『狂犬』マチュのクラバ復帰が決定だああ!
詳細は近日! フニャチン野郎共は震えて眠れ!!”
なんとなく正史で不幸だった皆さんを救いたいという意図もあってはじめた二次創作ですが、ユズリハ夫妻も救わんといけなさそうな気がしてきました……