ガンダムにマグネットコーティングするよりも、アレックス使っちゃえば?というマチュの提案に、アムロは。
一方、キケロガでアムロに破れたララァは、例のアレを持ち出そうとします。
そりゃあ、マグネットコーティングが出来ればベストなんだけど、難しいかな……と、考えていたアムロであるが、30分もしないうちに、OKの返事がきた。
学生食堂で、ランチをしていたアムロたちのところに、ヤン・リーからの連絡が入ったのである。
「マグネットコーティングについてだが、現時点で装備された機体が見つかったんだ。」
ヤンは、なぜかうれしそうに言った。
「研究所でテスト中で、実戦投入は間に合わなかったんだが。
『赤い彗星』に奪われたガンダムの後継機種で、アレックスという。
現実の時系列で、独立戦争末期に存在していた技術なら、きみのガンダムに使ってもまったく問題はないだろう。
ただし、施工時間はカウントするよ。
ガンダムは、いまから8時間、出撃不能だ。」
アムロの顔がくもった。
言うまでもなく、またニュータイプ専用機による奇襲を恐れたのだ。
ララァのキケロガには損傷を与えたが……。
ジオンのエースはほかにもいる。
クワトロ大尉の新型だってあるのだ。
「3つの艦隊で3方向から包囲攻撃をする―――というと、聞こえはいいがね。」
ヤンは、機嫌よく話した。
「相手に積極的な意思があると、各個撃破されてしまう危険性もあるんだ。
実際に今回はそうなりそうだったから、先に艦隊を集結させたよ。
移動中のソロモン要塞を中心に、艦隊を集結。
早期警戒網を張り巡らせた。
これなら、ジオンが強襲をかけてきても返り討ちにできる。」
「艦隊を1箇所に集めてしまうのは……」
「うん、考えられるのは、コロニーレーザーと、ビグ・ザムクラスの機動兵器による特攻だね。だが、コロニーレーザーは、独立戦争末期の時点では稼働までもっていけてなかったので、今回の技術ツリーからは外している。
ビグ・ザムについては、稼働時間の問題があるから、もしやるとすれば艦船に曳航させて、戦域までもってくるんだろうけど……大丈夫。
途中で補足して、実弾装備のガンキャノン隊を向かわせることで、うまく処理できる。
実際に、ア・バオア・クー攻略にかかるまでに、そんなふうにして、ビグ・ザムを損耗してくれればありがたいくらいだ。」
「天パ! いいアイデアがある。
マツケンに頼んでアレックスを譲ってもらおうよ。」
マチュが、言った。
「クリスチーナ・マッケンジーさんにかい?
それはいくらなんて図々しすぎると思うんだけど……」
「それは無理だよ、アムロくん。」
ヤンはいくらか悲しそうに言った。
「いや、モビルスーツの貸し借りがダメということはないんだよ。
ただ、アレックスは試作機でね。一機のみしかないんだ。」
「ほら、やっぱり無理だよ、マチュ。
アレックスをクリスさんから取り上げるなんて……」
「そうじゃない。アレックスは喪われた。
キケロガの強襲で沈んだサラミスに搭載されていた。パイロットのクリスチーナ・マッケンジーさん諸共にね。発進する間もなかったんだ。」
ヤンとの通信が切れたあともしばらく、アムロは呆然としていた。
クリスチーナ・マッケンジーさんは、最初にアムロの才能を認めてくれたひとりだった。
地球に降りるさいにいろいろと骨をおってくれたのも彼女だった……
「お久しぶり、アムロ。一緒の席にいいかしら。」
声をかけられた相手を見て、アムロはコーヒーを吹きそうになった。
「く、クリスさん!
や、ヤンさんからサラミスごと沈められたってきいて……」
「もう、そんな情報が出回ってるの?
なにも出来ないうちに退場って。
それはちょっと恥ずかしいわね……」
「まあ、おまえの分も俺が活躍するよ。ゆっくり香港観光でも楽しんでくれよ。」
そう言った連れの男は、クリスの夫、バーニィさんだ。
そ、そうだ。
あくまでも、キケロガと戦ったのも、サラミスが沈んだのも仮想世界での出来事……
アムロには、なにかこのア・バオア・クー戦が恐ろしくリアリティをもって迫ってきていたので、マグネットコーティングを司令官……じゃなくて、運営に直接お願いするという反則スレスレを仕出かしてしまった。
「よ、よかった。なんだか、クリスさんが本当に亡くなったような気がして……」
「勘弁してよ! たしかによく出来たシミュレーンだけどね。」
クリスは笑って、ずいぶんと綺麗どころに囲まれてるようだけど、と言った。
「マチュとニャアンは、まえにも紹介したかな? M.A.V.を組んだこともあるクランバトル仲間です。いまは一緒にジオン工科大学に通ってる。」
ふわり。セイラが立ち上がった。
「わたしは、セイラ・マス。
“戦鎚”と言った方が通りがいいかしらね。」
「あんたが戦鎚!?」
バーニィが叫んだ。
「ドズル閣下のビグ・ザムを落とした?」
「まあ、わたし一人の力ではなかったけどね。」
セイラは少し微笑みながら言った。
アムロは、内心ヒヤヒヤした。
ここで、セイラが、アルテイシアだとバレてしまうと大変なことになる―――いややってることは、公王陛下のワガママで通るのだが、貴賓席で見学している替え玉の存在もバレてしまうことになるのだ。
バーニィとクリスは、ニューディサイズ討伐で活躍したソム・エドワウのことは当然知っているはずだが、それを目の前の美女と付き合わせはしなかった。
「いま、ちょうどヤン提督と話してたとこなんだよ。」
マチュが言った。
「提督!? ヤン大尉も出世したわね。
しかも除隊したあとで!
でもたしかに、彼が指揮をとっていたら、独立戦争の結果もかわったかもしれないわ。
……アムロたちは、ヤンをしってるの?
いや、ヤン大尉のほうがアムロを知ってたのかな。なにしろ“白い悪魔”だものね。」
クリスは少し、意地悪そうに笑った。
「もし、ヤン『提督』が指揮をとっていて、『白い悪魔』が連邦軍にいたら戦況はどう変わった……のシミュレーションになるわけか。
これは世間が関心を持つはずよね。」
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ララァは、絶望のあまり目眩を感じた。
キケロガの有線ビーム砲ではアムロの乗るガンダムを落とせない。
ララァが考えたのが、夢でみたビットを操ることができるモビルアーマーだった。
“赤い彗星”かガンダムを奪取しなかったこの仮想世界にもそれは実在していた。
エ✕メ✕という名前で!
急遽差し込まれた機体ではあったが、一応、赤いガンダムにビットを運用させる、というアイデアが出るまでは、技術ツリーに存在した機体ではある。
クワトロは、ヤンと直談判して、その使用を認めさせたのだが。
なんだこれは!
その形状は、現在のララァの乗機であるロゼ・スバークルの頭部だけをひたすら拡大したようだった。
でかい。
デカすぎる。
しかもIフィールドも搭載していない。
動きは大きさのわりには軽快であったが、装甲も大したことはない。
武器は二門のメガ粒子砲だけだ。
これでは、アムロのビームライフルのいい的になってしまう。
「利点はある。」
暗い顔で、バイザーを外したララァに、クワトロが言った。
「ビットそのものを機体内部に収納出来るから、ビットの航続距離も大幅に伸びる。
探知範囲外からの完全なアウトレンジ攻撃が可能だ。」
「……“白い悪魔”のガンダムにマグネットコーティングを施すことを容認したそうですね?」
ララァに飲み物を渡したあと、カンチャナは、クワトロにインタビュアーよろしくマイクを突きつけた。
クワトロは、アムロと並んでカンチャナが気を許している数少ない成人男性である。
それで、この喋り方とこの目つきなのだから、困ったものだ……とララァやヴァーニは思うのだが……
「うむ。こちらだけが、サイコミュ技術をもつているのも不公平感が、あってな……」
「このエピソードを新作に使わせてもらいますね。」
繰り返すが、カンチャナの目つきは悪いが、、クワトロに含むところはないのだ。
「今回はいきなり、映像化することで話がすすんでます。
ネオ・ジオン総帥になったシャイ大佐の小惑星落としを、アムレ・ロイが阻止するという……『シャイの逆襲』です。」
「どんな風に使うのな?」
と、クワトロか尋ねた。
「せっかく最新のサイコミュ技術を盛り込んだ専用機を作ったのに、公平に戦って決着をつけたいとかいうわけのわからない理由で、アムレにサイコミュ技術を渡してしまうという設定です。」
それはシャイ大佐がバカすぎる。
……本当に、クワトロに含むところはないのだろうか。
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宇宙空間に星とは違う輝きが生まれ。
また消えていく。
そのひとつひとつが、戦闘の証であり。
モビルスーツが。
あるいは、戦闘艦が、爆散して散っていく。
その印だ。
ソロモン周辺に集結した連邦軍艦隊は、戦闘艦船数、モビルスーツ数ともに、ジオンの三倍近い。
ジオンから奪取したソロモン要塞そのものを前進基地と化し、連邦軍はア・バオア・クー宙域へと近づきつつあった。
いち早く、ヤンが連邦軍艦隊を集結させ、哨戒を強化したこと、キケロガが初戦で、損傷したことで、シャリア・ブルの目論んだ漸減作戦はあまり効果を発揮していない。
歴史上、有り得なかった「if」が、この仮想空間で、起ころうとしていた。
さて、グラナダ、グラナダ。