第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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あくまでネオ香港大学で行われてるのは、仮想戦。お遊びなのですが、けっこう盛り上がっているようです。
ア・バオア・クー攻略戦。そろそろ佳境へ。






GQuuuuuuX season2 第4話 激突する世界~ホワイトベース隊

ゴップは、まだネオ香港にいる。

いくつかの予定はキャンセルした。

なかには重要なものもあったが、非公式ながら地球を尋ねてくれたジオンの元首を歓待する以上の大事があるとも思えない。

 

それに書類の決済だけなら、端末と秘書官がいればある程度進めることができる。

 

この日、秘書官が持ってきた具申書は、まったくもって意味のない内容だった。

レビル将軍の元帥への昇進について、である。

 

確かに、初戦で捕虜となりながら、脱出。

コロニー落としのショックて混乱する地球連邦をまとめあげ、継戦できたのは、彼の演説の功績である。

 

それは意味の無いことではない。

戦争には負けた。

だが、負けるにしても負け方、というものもあるのだ。

コロニーを落とされた時点での講和は、おそらく連邦政府の解体も含めた全面的な敗北になったはずだ。

 

一年間、戦い続けからこそ、連邦戦力の宇宙からの放逐、いくつかの重要拠点の占拠という形での講和が可能になった。

一年間が稼げたからこそ、ザビ家の内紛も引き出すことができた。

 

だが、結局、負けは負け。

そして、戦争が続いたために、散った命も多い。

 

だから、少なくとも、レビル将軍の元帥への昇進はない。

 

だが、連邦内部には、反ジオンの象徴として、レビル将軍を讃えるものも多いのだ。

ティターンズの暴走やニューディサイズの反乱の根底にあるのが、レビル将軍の存在だ。

 

人格的には、ゴップはレビルを信頼している。

 

軽薄に反ジオンの言動を行うことはないし、過激派であるジャミトフやエイノーからも上手に距離をとっていた。

だが明確に彼らを拒絶することもなかった。

 

とどのつまりは、アースノイド至上主義というべき一派のうち、過激派は一掃されたものの、穏健派はいまもレビルを担ぎ続けている。

 

年齢も含めて、そろそろ軍は退官の時期だ。

だが、そうなれば担がれるまま、政界入りするだろう。

そうなれば、やっかいだ。

実にやっかいだ。

 

ゴップにしてみればもう少し、現役を続けて貰ったほうがいい。

そのためには、元帥位を与えてご機嫌を取っておくのはひとつの手段ではあるのだが。

 

「レビル閣下の側近に、情報を流してくれ」

少し考えてから、ゴップは言った。

「内容は―――そうだな、ジオンへの希少資源の輸出解禁と引替えに、連邦軍の宇宙での戦闘艦の新造を認めさせる。

その一番艦に『ゼネラルレビル』と名付ける予定だと。」

 

「本気ですの?」

秘書官は―――ゴップは、顔とスタイルで選んだだけだったが、頭のほうも空っぽではなかった。

「その交渉は、クランバトルでの決着になるはずでは?」

 

「それはそれで。」

ゴップは答えた。

「要は、連邦軍中枢部がいまもレビル閣下に敬意を払い、ことあればそれを示そうと考えていることが、彼に伝わればいいのだ。」

 

秘書官は釈然としない面持ちだったが、手元の時計を覗き込んで言った。

 

「まもなく、ソロモンがア・バオア・クー宙域に到達します。

双方が、強行偵察部隊を発進させました。」

 

 

「それはぜひ、リアルタイムで鑑賞しないとな!」

ゴップはモニターを操作した。

「ジオンの部隊は、重巡チベとムサイ6。ドム12機か。

連邦は―――強襲上陸艦1隻にサラミス2だと?」

 

艦隊の砲撃力以前に、搭載できるモビルスーツ数が違いすぎる。というか、まともにモビルスーツを「搭載」できるのは、ペガサス級の強襲上陸艦のみなのだ。

 

「ミラクル・ヤンはなにを考えている?」

 

 

 

-------------

 

 

 

ヤンにしてみれば難しい駆け引きだった。

彼が恐れているのは、ニュータイプ専用機による遠隔攻撃である。

早期発見・迎撃のための、警戒網を崩すにはまだ早かった。

 

しかし。

1 0機を超えるモビルスーツを抱える艦隊を見過ごす事もまた出来ない。

 

「アムロくん。マグネットコーティングは終わっているか?」

 

「まだ、テストはしてませんけど―――大丈夫です。」

 

「チベを中心とする艦隊が接近中だ。」

ヤンは静かに言った。

「強襲上陸艦を中心とする独立艦隊で、これに当たってくれ。相手の目標は強行偵察だ。

数が多い。無理をせずに5分持たせてくれ。」

 

ヤンはちらりと隣をみた。

副司令官―――もとい運営補佐のアッテンボローが、哨戒体制を崩さないように、各方面から戦力を引き抜いて、迎撃のための戦力を整えている。

何分がもてばそれは成功する。

 

 

 

「わかりました。」

アムロは答えた。

 

アムロは、すでに、モーションコクピットで待機していた。

マチュたちは、さっき二回目の哨戒から戻って、休息にはいっている。

すぐに発進できるモビルスーツは4機。

うち、有人操作は何機だろうか。

 

「アムロ、ガンダム、カタパルトへ。発進用意。」

 

オペレーターは、落ち着いた女性の声だが、ソム……いや、セイラの声ではない。機械合成だ。

ということは、セイラは自分も出撃するつもりなのだ。

 

通信用のモニターが光った。セイラかと思ったが違う。

映った男がにやりと笑う。

 

「……カイ! なんできみが!?」

 

「俺はジャーナリストだぜ。これだけ人気コンテンツに自ら参加できるチャンスを逃がすわけがねえだろう?」

 

「しかし……」

 

「俺はこれでも独立戦争じゃあ、二つ名のあるエース様だぜ? むしろこんな限りなく実戦に近いシミュレーションじゃあ、おまえやハヤトのほうが心配なんだがな!」

 

「ハヤト!?

ハヤトもこの仮想戦に参加してるのか。」

 

モニターが切り替わる。

以前、アムロと、M.A.V.を組んでいた青年は、ぎこちなく微笑んだ。

つい先日、彼はネオ香港のクランバトルで、ククルス・ドアンと戦い、負傷したはずだ……

 

「大丈夫なのか、と言いたいんだろ?

大丈夫じゃないよ。肋骨にヒビが入ってる。だが絶対安静ってわけじゃない……」

 

「無理をしなくても。入院費はクワトロさんからクランが負担するって聞いてるぞ?」

 

「稼がないといけないんだよ。」

ハヤトは無理やり笑みを浮かべて見せた。

「女房も子どものために、な。」

 

 

「面白いことをひとつ教えといてやるよ。」

画面が分割し、再びカイ・シデンのニヤけた顔が映った。

「俺たちが乗ってることになってる強襲上陸艦だが、どうも『ホワイトベース』って言うらしいぜ?」

 

「ホワイトベース?」

初めてきいたのに、どこかで聞いたことがあるような艦名だった。

 

「もし、シャアが奪取しなければ、ソドンにつけられていたはずの名前だよ。

つまり、あのとき、俺たちとともにサイド7にいたはずのフネだ。」

 

「カイ。記事は乗せる前にチェックさせてもらうわよ。」

ハヤトの顔が消え、かわりにセイラが映る。

 

「わかってますよ……というか、書いていいことといけないことは、よっくわかってるさ。」

 

「どうだか?」

 

 

オペレーターの声が響く。

「敵艦隊は、チベを中心にムサイ6。

モビルスーツの発進を確認しました。ザクではありません! 新型機のドムです。気をつけて!」

 

 

「アムロ、ガンダム、行きまーす!」

「カイ・シデン、ガンキャノン、出るぜ。」

「ハヤト、軽キャノン発進します。」

「セイラ・マス。軽キャノン改。出撃します。」

 

 

 

------------

 

 

 

モーションコクピットに伝わる振動は、モビルスーツが『加速』したことを表すための演出だ。

負傷しているハヤトに響かないか、アムロは心配した。

 

実際には、コクピットを模したシミュレーターは、ネオ香港大学のホールやミーティングルームのいくつかをつぶして、設置されている。

一応、連邦側、ジオン側で場所は分かれているが、別に同時に戦うもの同士が、隣り合わせのコクピットを使う必要も無いので、アムロは、たったいままで、カイやハヤトが参加してることを知らなかったのだ。

 

仮想の宇宙空間に、ビームが走る。

狙いはそれているが、相手のドムがビームバズーカ装備の後期型であることがそれで、わかった。

 

「早い!」

ハヤトが呻いた。

 

「早すぎんだよ。こういう時は……」

カイのガンキャノンが制動をかけて、ドムに相対速度を合わせる。

「慌てたほうが負けなのよね。」

 

 

ビームがガンキャノンの前方を通過した。

 

次の瞬間、カイのガンキャノンのビームライフルが発射される。

仮想の宇宙空間に火球が生じた。

 

「一機いただき!」

 

「カイ! ハヤト! 敵は数が多い。囲まれないように。セイラさんはぼくから離れないでください。」

 

―――実戦経験はないはずなのに。

セイラは、言われた通り、アムロのガンダムを追いかける。

マグネットコーティングは、あくまでも関節の動きをスムーズにするようサポートするための装備だ。

それでモビルスーツの速度そのものが速くなるなどありえない。

 

だが、現実にセイラの軽キャノン改は、ジリジリとガンダムに距離を開けられている。

 

 

「アムロ……ドムに抜かれるわ。後方のホワイトベースが危険よ。」

 

「大丈夫。こっちを追ってきます。」

 

ドムの半分。6機がアムロとセイラを追ってくる。

そのうちの一機がまた爆散した。

カイのビームキャノンによる砲撃だった。

 

「セイラさん。回避運動を」

 

言われるままに、セイラは、軽キャノン改を横滑りさせた。

空いた空間をドムの放ったビームが駆け抜ける。

 

 

2機のドムを立て続けに葬ったカイだが、突進するドムに間合いを詰められた。

重装甲だが、盾やビームサーベルを持たないガンキャノンには不利な距離だ。

だが。

 

カイは構わず、アムロたちに向かったドムに、狙いを定める。

キャノン発射!

 

今度は、当たらなかったが、アムロとセイラに迫るドムの勢いを押さえる効果はあった。

 

その間に、ガンキャノンの目前にドムが迫る。

そこはもうすでに近接戦闘の間合いだった。

 

まずいか!

 

ヒート剣を振りかぶったドムが迫る。その前にハヤトの軽キャノンが割り込んだ。

 

軽キャノンには盾もビームサーベルもない。

 

だが、ヒート剣のさらに内側に、軽キャノンが潜り込む。

そして肩から体当たりするように、ドムをかち上げる。

それは、八極拳の「貼山靠」のようにも見えたが、地面のない宇宙空間では、全体重と踏み込みを衝撃へと転換する「震脚」はありえない。

 

だが、ドムは吹っ飛んだ。

単なる体当たりでは、有り得ない勢いである。

 

“バーニヤの移動角度で『震脚』を再現してやがるのか?”

カイは、ヒュウと口笛を吹いた。

“あとで、ハヤトにインタビューしてやろう。これで一本書ける。”

 

さらに2機のドムが迫る。

 

そこに。

落雷のようにビームライフルの狙撃が降ってきた。

2連射。

 

ドムの一機は、バズーカごと両腕を。

もう一機は、左の肩から、左の腰までを削ぐそうに破砕されている。

だが、爆散はしない。

 

「クソッ、アムロが。」

神の裁きの雷の如き、攻撃を行ったのは、上空に位置するアムロのガンダムだ。

「まだ、クラバルールを守ってんのか?

ここは戦場……しかも仮想空間だぞ!?」

 

接近するドムをハヤトに任せて、カイは三度、アムロとセイラにむかったドムに狙いを定める。

 

“誤射だけは気をつけねえとな。仮想空間とはいえ、ジオンのお姫様を落としちまったらシャレにならねえ”

 

 

 

セイラは、息を飲んでいる。

 

攻撃は、己の意識の外からくるものが、一番避けにくいのだ。

だから。

カイとハヤトに対峙するドムを、アムロが。

自分とアムロに向かってくるドムを、カイが狙撃する。

 

ひとつの理屈ではあるが、現実には、そこまで仲間の腕を信頼できるだろうか。

長距離の狙撃には、意識をそちらに集中させねばならない。

そして、目の前には敵が迫っているのだ。

 

 

ドムのビームバズーカは、過渡期の存在だ。

図体はでかく、連射速度は、遅い。

ビーム「ライフル」ほど、小型化出来なかった妥協の産物である。

 

かわしながら、セイラは軽キャノン改のビームガンを打ち返す。

狙撃中のアムロのジャマはさせない!

 

ドムの一機のもつバズーカに命中し、バズーカが爆発する。

制動を失ってくるくる回るドムに、カイのビームキャノンが炸裂した。

 

残るドムは三機。

アムロのガンダムよりもセイラを先に落とすことにしたのか。

 

最大加速度から接近戦を仕掛けてくる。

 

ヒート剣を腰だめに、突っ込んでくるドム。

 

しかも前後から。

 

彼らは勝利を確信しただろう。

軽キャノン改は、肩のキャノン砲をオミットし、機動力を増した改造型である。

ビームサーベルはそなえているが、そもそも白兵戦が得意な連邦軍パイロットなどいない。

 

もちろん。

 

セイラはハンマーを取り出した。

 

なにごとにも例外はあるのだが。

 

ドム―――それが有人機だったのか、AIによる自律機だったのかは不明だ。

セイラの渾身の一撃は、ヒート剣ごと腕を潰した。

その反動で、ハンマーを背後にぶん投げる。

 

背後から襲ってきたドムは、胸部を潰される。

 

もう一機は。

 

ビームライフルの閃光が宇宙を引き裂いた。

 

頭部。両腕。両脚。

四連射で、ただの浮遊ポッドと化したドムが漂う。

 

「セイラさん! 敵艦隊を叩きます。援護を!」

「カイたちは?」

「むこうはもう片付けました。」

 

白い流星は、通常の三倍の速度で、架空の戦場を駆ける。

チベが。

ムサイが。

 

のろのろと対空砲火を上げる。

 

「対」モビルスーツ戦の火力は、この時期のジオン艦にも大したものはない。

ソロモンで連邦が本格投入するまでは、モビルスーツはジオンのものだったのだ。

それでも。主砲が。機銃が。

白いモビルスーツ目掛けて、襲いかかる。

 

注意は、アムロのガンダムただ一機に向いている!

 

セイラは軽キャノン改を最大加速させる。

急速に迫るムサイの主砲に、ビームガンを叩き込む。

さらにすれ違いざま、艦橋に、ハンマーをぶち込む。

 

……あまりにも容赦なさすぎるだろう

 

シャリア・ブルや、ジオン本国で観戦していたランバ・ラルが頭を抱えたシーンだった。

 

ガンキャノンと軽キャノンからの火線が、さらに1隻のムサイを轟沈させる。

 

アムロは。

 

チベのエンジンをビームライフルで撃ち抜いた。

爆発は起きるが、船体そのものは爆散しない。

 

同様にムサイたちも。

メインスラスターやエンジン部分をうちぬいていく。

 

ガンキャノンの砲撃がさらに一隻のムサイを爆散させた。

 

 

---------------

 

 

「ムサイ3……撃沈。その他すべての艦艇が大破、または航行不能。」

シャリア・ブルは、苦い笑みを浮かべた。

全滅、だ。

敵に回したニュータイプとはこれほどのものなのか。

 

 

 

--------------

 

 

 

「戦闘終了だよ。通常哨戒体勢に移行。」

ヤンは、傍らのアッテンボローに声をかけた。

呆然とアッテンボローは、ヤンを見返した。

 

「5分で迎撃戦力を整えるといいましたが」

快活な青年の目が血走っている。

「3分!……たった3分で全滅?

12機のドムとチベを中心とする強行偵察艦隊が全滅!?

化け物か!!」

 

「ニュータイプは化け物ではない。人間だ。」

ヤンが静かに返した

「もし、アムロが化け物に見えたのだとしたら、それは『戦争』がそうさせたのだろうな。」

 

 

 

 

 

 




ふつうこの規模の艦隊なら、相手が弱ければ押し込むし、相手が強ければ引くだけなんですが、全滅。
相手が悪かったとしかいいようがない。
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