第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ア・バオア・クーに接近するソロモンと連邦艦隊。
ついに、本格決戦の幕があがる!





GQuuuuuuX season2 第5話 宇宙要塞ア・バオア・クー~特務艦隊

ゴップは秘書官のいれたコーヒーを一口飲んだ。

ほろ苦いなかに、僅かな酸味。香りが口から鼻腔に抜ける。

 

顔とスタイルで採用した秘書官は、コーヒーを入れるのも上手かった。

 

ア・バオア・クーから発進した強行偵察艦隊は、艦船数もモビルスーツ数でも勝っていたが、連邦のモビルスーツ4機にものの数分で、蹴散らされた。

「ガンダム」が優秀なのか。

いや、パイロットの技量が桁違いなのだ。

 

ゴップは資料に目を通す。

 

“嗤う道化師”

狙撃手として名高いエースだ。終戦後は除隊してジャーナリストの道を選んだ。

 

“戦鎚”

ドズルのビグ・ザムを落とした近接戦闘の名手。ソロモン落しに参加したはずだが、行方不明になっていたはずだ。

 

そして、ガンダムの“白い悪魔”。

 

ゴップは賭け事は嫌いではない。

クランバトルもなんどもライブ視聴している。

だから、その噂もきいていた。

 

“嗤う道化師”と“戦鎚”の技量が際立っているため、“白い悪魔”の異常性がいっそう、目立つ。

強い、などというものではない。

比較するとしたら、ソロモン落としを止めるために特攻したときの“赤い彗星”と“灰色の幽霊”くらいだろうか。

 

“白い悪魔”は、テム・レイ博士の息子だったな……

連邦軍は必要な人材を、片端から除隊させてしまって、要らないものばかり残している!

 

ゴップは暗澹たる気分になった。

 

 

「このまま、視聴を続けますか?」

 

「次に、どちらかが艦隊を出したら教えてくれ。

ほかになにか、やっておく事はあるかね。」

 

 

「閣下が気にされていたグラナダでのクランバトルのジュニア部門のデモンストレーションですが」

 

「おお。結果が出たかね。」

 

「はい。ここに。」

 

秘書官は、手元のデバイスを操作した。

ゴップは驚いたように、秘書官の顔を見つめた。

 

「これは……詳細を見ることは可能なのかな?」

 

「もちろんです。」

 

「なにがどうしたら、こんなことになるのか、知りたい。いや、実際の画像が見たいな。

配信データを手配してくれ。」

 

そのとき。

 

モニターに新たな情報が動いた。

 

ゴップは、コーヒーカップを取り落としそうになった。

戦場の奇術師ヤン・リーが、指揮をとる会戦などは初めてである。

だが、これまでの戦績。戦術。最小限の戦いで、あるいは戦わずとも、敵を退かせるその手法から、なんとなくゴップは、このあと、互いに一定の距離を保ちつつ、要塞攻撃に優位な位置を、互いの艦隊にとらせるための陣取りの駆け引きが行われるものと思い込んでいた。

 

ジオン側の指揮をとるシャリア・ブルも、実際に艦隊を指揮したことはないはずだが、いかにも紳士然とした落ち着いた男である。

 

互いに小規模の艦隊を繰り出しつつ、陣取り合戦がしばらくは続く―――そう思っていた。

 

それが―――。

 

 

 

--------------

 

 

 

シャリア・ブルは、司令官『役』ではあるが、別に軍服など着ていない。

ここは、ネオ香港大学の一室だ。

学校のなかをうろうろしても目立たないような上質のスーツに身を包んでいる。

(まあ、例の変な仮面はつけてるので、否応なく目立つのだが)

艦隊を動かしたことのない彼は、ソドンのラシット艦長にも同席してもらっていた。

 

こちらは、「任務中」と心得たのか、軍服姿である。

 

「こう―――来るかね。」

 

「相手の、つまり我々の予想をはずすという意味では、有り得る手、です。

そもそも連邦は、ジオンの3倍近い戦力をもっているのですから、選択権はむこうにあります。」

 

「しかし。全軍で一斉にかかって、数で押しつぶすというのは、あまりに興にかける。」

 

「戦いは数です。そして勝ったもののみが、あとであれこれ語ることができる。」

 

なるほど、モビルスーツ乗りの自分とは、戦場を俯瞰する目はだいぶ異なるようだ。

シャリア・ブルは、ラシットを見直した。

 

「クワトロ・バジーナ。

ザンジバルと第6特務艦隊で、連邦の出鼻を挫けますか?」

 

「了解だ、シャリア閣下。だがNフィードを止めてもほかのところが突破されるぞ?」

 

「やつらは駆け引きなしに、全戦力をソロモンから発進させました。

ここで反発せねば、押しつぶされます。」

 

「了解した。」

 

 

 

--------------

 

 

 

 

「こう来るとは、意外だったよ。」

クワトロはコクピットのなかで笑った。

 

「漸減作戦が思うように行かなかったのは、ヤンの指揮が優れていたのだろう。いや……あの副官の青年もいい動きをしていた。

ああいった人材を使いこなせなかったのが、連邦の敗因だ。」

 

エグザベ・オリベは返答に困った。

相手を、独立戦争の英雄シャア大佐として話すのか、元連邦軍大尉でクラバオーナーのクワトロ・バジーナとして話すのかで、答えは変わってくる。

 

「艦隊指揮は、司令部に任せる。我々は、モビルスーツ群を蹴散らし、艦隊を撃破する。」

 

「了解しました。」

 

「クワトロ・バジーナ、ジオング、出る!」

「エグザベ・オリベ、キケロガ。発進します。」

 

 

ジオングは人型ではあるが、正史におけるこの時期では、脚部を欠いたまま、ア・バオア・クーの倉庫に眠っていた。

指先を含め、全身に多数のビーム砲を装備したこの機体は、脚部なしでも並のモビルスーツよりも巨大だ。

 

“さて……問題はわたしにニュータイプとしての素養がどの程度あるか、だが。”

 

「敵、モビルスーツ、来ます!

軽キャノン改10! 軽キャノン4! ガンキャノン2!」

「ふむ……思ったより少ないな……」

 

クワトロは上空を見やった。

 

もちろん、視認は出来ない。

戦闘濃度に散布されたミノフスキー粒子下では、レーダーも範囲外だ。

だが。

―――いる。

 

「エグザベくん。予定を変える。我々はモビルスーツを相手にせず、そのまま後方の艦隊を叩く。」

「え、いえ、しかし!」

 

エグザベは躊躇した。

 

「モビルスーツ隊をそのまま行かせてしまったら、ザンジバルが。特務艦隊が。」

 

「敵のモビルスーツは」

見上げたクワトロの口元に、笑みが浮かぶ。

「あちらに任せる。」

 

-------------

 

 

「“灰色の幽霊”だ!」

「慌てるな。有線ビーム砲は、あの機体を中心に射出される。注意すれば避けられる。」

「もう一機は……新型か? 脚がない……未完成品を出してきたのか?」

 

Nフィードに侵入した連邦艦隊のモビルスーツには、クランバトルのバイロットや現役の連邦軍人も混じっていた。

 

「未完成品のほうは、図体がデカイ分、いい

的だ! キケロガの有線アーム一機につき、こちらも一機がへばりつくんだ。それで動きが止められる。」

 

モビルスーツ隊は、散開した。

そのまま、敵を推し包んで落とすつもりでいた。

 

だが、キケロガと未完成品は、その間を最大加速で駆け抜けていく。

 

「え……?」

 

気がついたときには、彼らは完全に抜かれていた。

 

「反転するな! 艦隊には直衞機も残している。俺たちは前進! あの2機を牽引してきた艦隊を叩いて、そのまま、ア・バオア・クーへ一番乗りを果たすぞ!」

 

 

 

 

 

 

ラ。

 

……ラ

 

……ララ

 

 

何人かのパイロットだけがその音を聞くことができた。

それはそのものが、ニュータイプの素養があった……そういうことになるのだろうか。

 

 

隊長格のパイロットが乗ったガンキャノンが爆散した。

 

「び、ビーム!? どこから!?」

 

ラ……ラ……

 

 

軽キャノンが。

運動性に優れた軽キャノン改が。

ガンキャノンが。

 

何も出来ずに次々と火球に姿を変えていく。

 

「クソッ! 有線アーム砲か。ほかにもキケロガタイプがいるのか?」

最後に残った有人機のパイロットの名はテネスと言った。

独立戦争時には、“魔女”シイコスガイと並んでスーパーユニカムと呼ばれた男である。

 

実際には彼は狙撃手であり、駐屯基地や艦船を撃破した場合、そこに「搭載されていたであろう」モビルスーツもカウントしいるため、そこまでのスコアはない、と陰口を叩かれることもある。

 

戦後は、パイロットコースの教官となった。

 

多少、割り引くにしてもベテランの、優秀なパイロットであることには違いない。

 

「見えない! 有線アームが見えない……」

 

ビームが掠め、盾が左手ごとふっとんだ。

 

僚機が(有人操作のものはすべて撃墜されAI制御のものしか残っていない)次々と爆散していく。

無駄弾は1発もない。

 

全てが致命の一撃である。

 

「ビット! ビットなのか!」

テネスは喚いた。

「運営! 反則だ! ビット攻撃を受けている。赤いガンダムがいるぞ!」

 

 

その言葉に呼応するように。

 

テネスの軽キャノンの前に、異形のモビルアーマーが現れた。

まるで、ヘルムコングロマリットの新作の帽子のようなそのデザイン。

 

 

 

コクピットで、ララァは嘲笑う。

 

「戦いって、怖くて嫌いだったけど」

 

舌がちろりと、唇をなめた。

 

「これじゃ、戦いでもないわ。

誰も死なないのなら。死ぬような思いをさせていたぶるのは―――悪くない。」

 

「お、おまえは! おまえは!!」

 

うん。

いいんじゃないの?

わたしにも赤い彗星とか灰色の幽霊とか。

なんか男の子が喜ぶような二つ名をつけて。

 

「と、とんがり帽子!!」

 

死ね。

 

ララァのモビルアーマーのメガ粒子砲が最後の一機のモビルスーツを消し去った。

 

 

 

 

 

 

 

 




テネスはこのあと、ララァとリアルな世界でも会うことになるのですが、いっかんして彼女を『お姉様』と呼んで懐いていたそうです。なにか琴線にふれる部分があったのかもしれません。
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