ア・バオア・クー戦に投入されていたらどんな展開になりましたでしょうか?
「なんてやつらだ。」
アッテンボローは、コーヒーを一気に飲み干すと、空のカップをダストシュートに叩き込んだ。
マゼラン2。サラミス4。直衞モビルスーツ2。
それがものの数分で、消滅した。
さきほど、ホワイトベース隊が、ジオンの偵察艦隊にやったのをそのまま、やり返されたような形だ。
「あれがジオング……ですか。
火力おばけすぎる。それにキケロガって、あんな風に高機動を活かして接近戦を仕掛けてくる機体でしたっけ?」
「キケロガのパイロットは、現役ジオン軍人のエグザベ・オリベ中尉だよ。」
ヤンは答えた。
「キケロガはついこの前まで現役で活躍していたモビルアーマーだからね。戦術についてはむこうがくわしいんだろう。」
「ベガサス級3番艦を中心に組み直した艦隊を、Nフィードに投入。
ジオングとキケロガ、それにモビルスーツ部隊を壊滅させた謎のモビルアーマーはいったん退くようですね。」
「それが正解だろうな。とにかく、ジオン側は、自分たちは無傷で。しかもこちらには出血を強いなければならない。」
ヤンは、顔をしかめている。
これはあくまで、仮想世界。シミュレーションだ。
だがこれが、現実のものとなったとき、はたして彼に味方にこれほどの損害を生じさせる決断が出来るのだろうか。
「Sフィールドでも被害拡大中!
クソッ! 艦隊から奇襲でも受けたような火力です。」
「後方待機の実弾仕様のガンキャノン隊を前へ。」
ヤンはゆっくりと言った。
「ビグ・ザムだ。待ち伏せされたようだね。」
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Sフィールドはもともと「汚い」空間である。
デブリも多い。
人造物の成れの果て以外にも、資源採掘用に軌道上に運ばれた小惑星の破片などが、多く散らばっている。
そのひとつ。
岩塊なかで、男は時をまっている。
名をハーディ・シュタイナーという。
叩き上げの軍人であり、それ以外の職業がちょっと想像がつかない風貌だ。
だが、終戦後の軍縮の嵐のまえに、彼もまた軍を追われた。
紆余曲折の結果、たどり着いたのがクランバトルである。
暮らし向きはそう悪くはない。
今回の仮想戦に彼が参加したのは、もちろん金と。
ここでなら、クランバトルでは扱えない機体を操縦することが、できだからだ。
岩塊のなかにこもって、丸1日。
リアルなら勘弁してほしい状況だったが、ここはあくまでシミュレーションのためのモーションコクピットだ。
コクピットからでればそこは、ネオ香港大学のキャンパスだ。学生たちの白い目に晒されながら、一服したり、食事をとったりも出来る。
「来たか!」
ハーディ・シュタイナーはコンソールに指を走らせた。
厚い岩盤があるとはいえ、探知を逃れるために、動力は最小限に落としている。
(という設定になっている)
これを、起動させるには、まず「火を入れ」てやる必要がある。
「融合炉臨界……メインジェネレーター起動確認、シムテム正常、オールグリーン……」
わざわざ口に出しているのは。こんな作業は、パイロットであるハーディ・シュタイナーが本来やるべき業務ではないからだ。
「各部チェック、完了。異常値なし」
シミュレーターの中なのだから、ここらはAIがやってくれてもいいだろうと思うのだが。
「偽装岩盤強制排除」
この作業には、彼の心の少年の部分を大いにくすぐるものがある。
「ビグ・ザム、発進!!」
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「なぜ、艦隊は、メガ粒子砲の一斉発射を行うんだろう。」
ヤンはぼやいた。
「すでにあの機体は、モビルアーマーのビグ・ザムであり、Iフィールドを装備しているので、長距離のビーム攻撃は効果はない。
現代の我々の知識ではないよ。独立戦争時点でも、連邦軍はソロモン攻略戦でビグ・ザムと対峙しているから、その知識は充分あるはずだ。
なぜ、無駄な主砲の斉射をやめて、ミサイル攻撃を優先しないのだろう。」
「ネオ香港大学のシミュレーターのAIは、優秀ですよ。」
この分野については、そちらのゼミにもはいっているアッテンボローがくわしい。
「ここのAIは、かならずしも合理的な判断ではなく、もしその場におかれたら、人間がどう行動するかを予測して、それを表現するんです。
つまり、人間は、巨大な敵に奇襲を受けたら、まず反射的に、自分の持つ最大武器をぶつけたくなる。」
「それで、メガ粒子砲の斉射か。」
ヤンは呻いた。
岩塊に偽装したビグ・ザムは3機いた。
主砲、副砲あわせて、発射されたビームは、まるで空間そのものを薙ぎ払うかのよう。
マゼランが。
サラミスが。
次々と轟沈していく。
直衛に上がっていたモビルスーツもなで斬りだ。
ビームガンやビームキャノンは、ビグ・ザムのIフィールドに阻まれ、逆にビグ・ザムのメガ粒子砲に蹴散らされて、次々と爆散していく。
艦隊は、やっと攻撃の主体をミサイルに切り替えた。
ビグ・ザムは無理をせずに後退にはいる。
もともと稼働時間の短い機体なのだ。
ここで、刺し違えるよりも、いったん後方に下がって補給をうけ、再出撃を狙った方が、費用対効果はうえだろう。
「勝ち逃げはさせない。」
アッテンボローが言う通り、対ビグ・ザム用に実弾仕様に武装変更したガンキャノン隊が到着した。
ビームガンをバズーカに持ち替えた艦隊所属のモビルスーツ隊もあとを追う。
ビグ・ザムの推力は桁違いだが、その分、本体は重く、推進剤の使用量もとんでもない。
おそらく、補給地点をどこかに設けているはずだ。ならば、送り狼よろしく、後退するビグ・ザムをつけて、そこも一気にたたく。
数発の砲弾が、後退するビグ・ザムをとらえた。
致命傷には程遠いが、損傷を与えている。
いける!
アッテンボローは拳を握った。
こちらの損害はバカにならないが、ビグ・ザムを沈め、補給基地―――おそらくは空母ドロスを破壊できればお釣りがくる。
だが。
ビグ・ザムの影から、ジオンのモビルスーツ隊が躍り出た。
ザクではない。
ドムでもない。
それらを混ぜ合わせたような姿をしている。
「ビグ・ザムに……直衞モビルスーツ部隊だって!?」
そして、それらのモビルスーツは、ビームライフルを装備していた。
速射性、連射性では、ガンキャノン隊のキャノン砲や軽キャノン改のバズーカを凌駕している。
とくに先頭にたったグレーに塗られたモビルスーツパイロットの操縦技術は、抜群だ。
ガンキャン1機を、撃墜し、そのまま接近。
取り出したビームサーベルは柄の両側に刃を形成した。
有効な近接武器のないガンキャンを。斬って斬って斬りまくる。
「な、なんだ? あれもニュータイプ?」
「シン・マツナガ大尉だな。
白狼と呼ばれたエースパイロットだよ。」
ヤンの指がコンソールを滑る。
「それからあの機体は、“ガルバルディ”だな。
シャア大佐が、ガンダムを奪取しなければ、あの機体が“ゲルググ”になったはずだ。
ザクの正統後継機種だよ。」
アムロは、ペズン編の最後で、ほぼ単騎でビグ・ザムを落としておりますが、あれはZZだったので。
ファースト時点の素ガンダムだと、ビグ・ザムはキツイかもしれません。