第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ヤン対シャリア・ブル。
互いに相手の腹の読み合いが、続きます。
もともと、ジオンの数倍の戦力を用意した連邦軍。
もっともジオンもキシリアによるグラナダ戦力の出し惜しみもなく、ビグ・ザムも3機はつくってるようです。
あとジオングもエルメルもあり。ブラウ・ブロはないけどキケロガあり。
ちなみに今回は、別にガストで書いていたわけではありません。











GQuuuuuuX season2 第5話 宇宙要塞ア・バオア・クー~乱戦

ネオ香港大学の一室。

 

シャリア・ブルは、コンソールパネルに自分のカードをかざした。

直ぐに飲み物が運ばれてくる。

 

「ごちゅうもん、おませいたしましたにゃん」

 

たいしたカラクリではない。

車輪で自走する機械が、自動販売機で飲み物を取り出し、持ってくるだけのサービスだ。

 

パネルの部分に猫の顔がニコニコ笑っていて、上部に猫の耳を思わせる三角の物体が鎮座している。

 

「ありがとう。」

シャリア・ブルは律儀にそう言って、飲み物を手に取った。

 

「どういたしましてにゃん。ごゆっくりどうぞ。」

 

「なんです、あれは……」

ソドン艦長ラシットが、振り返りながらあきれたように言った。

 

「昔、レストランで流行った配膳ロボットだ。」

シャリア・ブルは、後ろ姿を見送りながら言った。

 

「昔……准将が木星に行かれるよりも前でしょうか。」

 

シャリアは吹き出した。

 

「いや、個人的な体験による“昔話”ではないよ。本当に昔の話だ。人類が宇宙に進出する前。地球上だけで100億近い人間が暮らしていた時代だよ。

そのころ、一部の地域では、働く者に金を払わないことが、コストダウンになり、企業の発展につながると考えられていたんだ。」

 

「効率よくひとを使う……ではなく、ひとを使わない、ということでしょうか?」

およそ、人まみれの軍隊生活の長いラシットにはかなり、疑問に感じる考え方だったようだ。

 

「そうだな。実際に手を使う、体を使う、頭を使う。そういったことは機械に任せてしまうのが、最先端。効率のよいやり方だと思われたんだ。」

 

「ならば、人はなにをするのです?」

 

「利益を享受するんだ。そういう立場にたまたま居座ったものだけがね。

そして、その地位から、あれは不要、あれは間違っていると主張を行う。」

 

「それは連邦政府が行った宇宙棄民を思わせますね。」

鉄面皮なラシットには珍しく、不愉快そうに彼女は顔をしかめていた。

「当時から連邦政府は腐っていた……ということでしょうか?」

 

「残念ながらそれも違う。

まだ『連邦政府』などない。

地球上の様々な地域が『国』を主張し、それぞれが独自の法を持ち、通貨を発行し、軍隊を保持していた。そんな時代だ。」

 

「中世……のお話ですか。それに比べれば」

少しはいまはマシになっているだろう。

そう言いたげなラシットであったが、シャリア・ブルは笑って首を振った。

 

「どうだろうな。

人間の習い性というものは、たぶん人類が『社会』というものをもったときからそう大きくは変わっていない。例えば、我らの偉大なる総帥ギレンの行動などは、ヒットラーに実によく似ている。」

 

「誰です、それは。」

 

「中世の独裁者だよ。ギレンがデギンの暗殺を決意したひと言を知っているかね?」

 

「オフレコの情報ですが、軍の内部ではよく噂に。准将はずっと、特務についておられたので、ご存知ないかもしれませんが。

……公王が総帥を『ヒットラーの尻尾』と呼んだことです……ああ、それが准将のおっしゃるヒットラーなのですね。

わたしはまた、どこかの神話にでも出てくる悪魔の名前かと……」

 

「実在の人物だよ。世界を相手に戦争を始めた……までは、それまでの愚かな指導者にはよくある行動だったが、保護すべき自国民までを、独自の文化をもっている、あるいはそういった文化をもつ民族の出自である。そういった理由で虐殺まではじめてはな……」

 

シャリア・ブルは、グリーンティーを飲み干すとまたモニターに向かった。

 

「さて、ア・バオア・クーだ。

ここを抜かれればおそらく、講和条約として、ザビ家の退陣が要求されることになるだろう。

仮想世界とはいえ、我々はザビ家とギレン総帥の地位の安泰のためにもうひと頑張りしないといけないわけだ!」

 

 

ラシットも笑った。なかなか歪んだユーモア感覚ではあるが、こんなおしゃべりのできる指揮官は悪くない。

あくまで、これは仮想世界のなかの模擬戦ではあるが、仮に本当に戦闘が起こっても、シャリア・ブルが同様に振る舞えるであろうことは確信できた。

 

―――なにぶんにもテンパって、無駄なことを次々に思いつく指揮官ほどやっかいなものはないのだ。

戦場においては即射殺に相当する「無能な働き者」というやつである。

 

 

「NフィールドとSフィールドは。なんとか撃退したね。」

 

「はっきり申し上げると、撃退とまではいきません。」

ラシットは姿勢を正して言った。

「適宜、損害を与え、敵隊列に混乱を生じさせました。与えた損害そのものは、連邦艦隊そのものから見れば軽微なものです。

彼らは、破損した艦艇やモビルスーツの救助を行い、隊列の再編成を行っているにすぎません。それにともなって、Wフィールド、Eフィールドの侵攻も、一時中断されていますが……」

 

「けっこうな大打撃を与えたつもりなんだけどなあ。」

 

「それで言うなら、我々もチベ1隻にムサイ6隻、ドム12機を失っています。比率でいえはこちらの方が損害大、です。」

 

その数字は正確では無い。

隊列を乱した連邦軍には、現在もジオンの別働隊が激しく攻撃をしかけている。

救助活動中の軍には、積極的に攻撃は行わないのが不文律だが、ジオンの命運をかけたこの一戦にそのまでの配慮は必要ないと、AIは判断したのだろう。

もちろん、連邦は後詰めの予備戦力も山ほどあるので、積極的に迎撃に出ている。

 

……損害は、ややジオンが多い。

パイロットの練度は、ジオンが少し上だが、これはザクと軽キャノンの性能差であろう。

ビーム兵器の威力は大である。

新鋭機のガルバルディは数が少ないのと機体への習熟度合いの低さから、目立った活躍を見せていない。

 

シャリア・ブルは、コンソールを爪先でトントンと、叩いた。

 

「で? ラシット艦長の意見は?

ここから、我らジオンが勝つ道はあるだろうか?」

 

「司令官が、言ってはダメな質問ですね。」

 

「では質問をかえよう。もしここから負けないですむ方法がある、とわたしが言ったら、きみはどう思います?」

 

「……頭がおかしい、かと。」

 

「我々には、クワトロ・バジーナ氏やララァさんを含むニュータイプ部隊がいる。

キケロガをはじめとするニュータイプ専用機もある。

対艦隊用に無類の強さを誇るビグ・ザムもある。それでも?」

 

ラシットはじっとシャリア・ブルを見つめた。

 

「……連邦艦隊に出血を強いることは出来るでしょう。ですが、部分的な戦術的勝利をいくら積み上げても、戦況そのものは覆りません。

連邦はいくら損害があろうが、進めば勝つ、のです。損害を厭う理由はありません。」

 

シャリア・ブルは、昏い笑みを浮かべた。

 

「と、並の将軍なら考えるところだ。

だが、相手の指揮をとるヤン・リー氏のことをすこし調べる時間があってね……」

 

頬杖をついて、次に頼むメニューを検索し始める。

 

「オススメは、ねおほんこんだいがくオリジナルブレンド、まっちゃあいすらてだにゃん。」

 

「ではそれで。」

 

「ごちゅうもんありがとにゃん!」

 

配膳ロボットとの有意義な会話を終えて、シャリア・ブルはラシットを振り返った。

 

「わたしは、全軍をジリジリと後退させる。最終的には、ア・バオア・クーの内部に敵を引きずりこんで、果てもない消耗戦を行うつもりだ。」

 

こんなときのシャリア・ブルの笑みはとても恐ろしく。

ラシットは、知らず知らずのうちに半歩下がっていた。

 

「“不敗の名将”ヤン・リー大尉の神経がそれに耐えられるだろうか。」

 

 

---------------

 

 

 

うっひょほおおおおぉっおっ!!

 

もんの凄い気の抜けた叫びが戦場に響く。

 

声の主はマチュだった。

 

クランバトルのパイロットとしては、二つ名のある名手であり、実質、実戦に近い修羅場も経験している。

単にパイロットコースを出ただけの兵士などと比べれば、技量はもちろん、経験だってケタ違いだ。

 

その彼女が。

 

うわわぁぁわわぁあっ!!

 

変な叫びを上げているのは、彼女がいま仮想世界で登場している『ガンダム』にマグネットコーティングを施したためである。

 

思考通りに、機体をコントロールしてくれるサイコミュとは異なり、それはまるでぬるぬると滑るような感触をマチュに与えたのだ。

 

うわあっ! こ、コントロール効かないィ!

 

悪夢である。

 

対峙するザクにとっては。

 

ありえない機動から、発射されたビームライフルの一撃が、一機のザクの胴体を貫いた。

 

「よ、よしっ! ひとつ!」

マチュは敏感すぎる機体を、なんとか宥めつつ、次のザクに狙いを定める。

 

ビーム発射!!

 

「ふ、ふたつ!!」

 

 

「……五つ、六つ……」

 

え?

見ると天パのガンダムが、バズーカを投げ捨てたところだった。

なにかと思ったが唯の弾切れらしい。

 

ビームライフルを構えると。

 

「7つ!」

 

「ち、ちょっと天パ!!」

マチュは叫んだ。

その背後からバズーカを構えたドムが近づく。

バズーカが発射されるが、ガードに入ったニャアンの『ガンダム』が、その弾を撃ち落とした。

 

次の一撃で、ドムの上半身が吹っ飛ぶ。

 

「ナイスフォロー、ニャアン!」

「ナイス油断! マチュ!」

 

コンビネーションがよいのか悪いのか分からないが、少なくともクランバトルとは違い、ニャアンはマチュの機体を盾にしたり、相手にぶつけたりはしない。

 

「八つ!! なにかな、マチュ。」

 

「わたしにも敵、残しといて。」

 

「九つ!……え、なんか言った?」

 

「あのさ、天パ!……ひとりで十機落とせばエースなんだよね?」

 

「十……え? なに?」

 

「……もういい!!」

 

 

 

--------------

 

 

 

 

「Nフィールドに投入したホワイトベース隊がよくやってくれてます。」

アッテンボローが言った。

本当は、個々のモビルスーツの活躍など、細かくチェックは出来ないのだが、艦隊再編成の間にしつこく仕掛けてくるジオンを、ホワイトベースだけでほぼ、完全に蹴散らしてくれている。

「ほかのフィールドも、ジオン軍が後退。合わせてこちらが進軍しています。」

 

 

うーん。

と、浮かない顔で、ヤンは腕を組んだ。

 

「なにか気がかりでも?」

 

「なんと言うか……敵に焦りが無さすぎる。」

 

「まあ、壊乱せずに整然と後退はしてますけど……」

アッテンボローは。モニターに映し出されたジオン軍の動きをチェックする。

「それは、ア・バオア・クーがジオンの最終防衛ラインって言う設定ですから、兵士の士気が高いのと……シャリア・ブル閣下の指揮能力が高いからなのでは?」

 

「ジオン側の損害が少なすぎる。まるでこっちを誘い込んでるみたいだ。」

 

「そうだとしても、なにも問題ありませんよ。当初の予定通り、ア・バオア・クーを包囲して、攻撃を続行するまでです。

というか、宇宙要塞の攻略でそこまでいったらもう成功なのでは?

艦艇、モビルスーツともに要塞内部に引きこもって出て来れなくなれば、それは初戦において連邦がルナツーに引きこもったの同じ……あ、すいません。」

 

その引きこもり先のルナツーで、参謀をしていたヤンは、穏やかに微笑んだ。

 

「まあ、『引きこもっていた』という表現はほぼその通りだな。ただ、ルナツーは結局、地上降下作戦やもろもろあって後回しにされただけで、最終的には攻略されたのだし、そもそも今回のルールでは、要塞内に敵戦力を閉じ込めただけじゃあ、勝利判定にはならないんだよ。」

 

「なら、力押し……ですか。」

アッテンボローは不満そうに言った。

「要塞内部まで、攻略するとなると、とんでもないコストがかかります。

敵はもちろん、味方もすり潰すような戦いですよ!?」

 

「……それは……したくはないねえ。」

ヤンは軍人上がりとは思えないような表情でしみじみと言った。

「もし……シャリア・ブル閣下が、こちらが嫌がるのまで読んで、後退を選んでいるなら、大したものだ。公王府の艦隊司令官なんかさせているのはもったいない。

稀代の軍師だよ。」

 

ふと、なにかに気がついたように、ヤンは顔をあげた。

 

「そうだ。クワトロ・バジーナ氏に連絡がつくかな。」

 

「敵陣営ですよ。やたらに連絡は……」

 

「いや、これはどちらかと言うと運営的な話だよ。

アムロ君……“白い悪魔”だけど。」

ヤンは、モニターの数字を呼んだ。

「連邦じゃ、5機落とせばエースだよ。すでにアムロはダブルエースになっている。

このまま、戦いがすすめば、スーパーユニカムになるかもしれない。」

 

「独立戦争を通じて……ではなくて、ア・バオア・クーのただ一戦で、スーパーユニカムなるかもしれないと?」

 

「そうなんだ。たしか、撃墜スコアに応じて、参加パイロットに報酬を払うと、クワトロ氏が言っていた。

とんでもないことになるけど、大丈夫か聞いておかないと!」

 

 

 

 

 

 




これで、何がなんでもシャアが、アムロを落とさないといけない理由が出来た……
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