なんか参加してくれてるパイロットさんたちがノリノリで……作者ひいてます。
戦いは数だ。
そう言ったのは、ザビ家のひとり、ドズル・ザビ中将であるが、別にこのセリフは彼のオリジナルというわけではない。
単純に考えても、一対一より一対二のほうが不利であり、それが、一対三、一対四ととなれば、その差は加速度的に開いていく。
もっとも戦場においては必ずしもそうでは無い。
総数にいくら差があろうとも、その全てが直接攻撃に関わるわけではない。
局地的に一対一、あるいは戦力を集中することで、一時的にでも二対一をつくりだすことが出来れば、寡兵でも多数と互角に戦うことができる。
これが用兵の妙ではあるが、それで勝ち切れるか……というとまた別の問題がある。
兵が少ない側は、その乏しい戦力を集中して、局地的に有利を得ただけだ。
敵を打ち負かすことは、士気を高めるが、同時に疲労もたまる。
兵が少ない側は疲れた兵士たちを次の戦場に投下し続けなければならない。
今日ではそれは、武器弾薬の減少、推進剤の枯渇といった人間の『頑張り』ではどうにもならないものとなって現れる。
ジオンが、初動において、ニュータイプ部隊やビグ・ザムによって、連邦艦隊の出鼻をくじいておきながら、ここまで彼らを温存したのはそのためである。
「セイラさん、マチュ、ニャアン。
おそらくぼくが、艦隊を離れると同時に、クワトロさんたちが攻撃してくる。」
コクピットから、アムロは話しかけた。
「艦隊から離れずに、直衞に徹してください。」
「ならさ。アムロが直衞にまわってよ。」
マチュがコクピットに潜り込みながら言った。
「わたしたちが、『とんがり帽子』を叩くからさ。」
「あれに乗ってるのが、ララァならおそらくぼく以外じゃダメだ。」
アムロのモーションコクピットに振動が伝わる。
カタパルトに乗せられたガンダムが加速する。
「アムロ、行きまーす!」
ジオンのニュータイプ部隊はここで叩く。
セイラはそう呟いた。
……セイラとしてそう呟くのは勝手であるが、彼女は正式には、ジオン公国元首アルテイシア・ソム・ダイクンなのだから、あまり、兵士たちには聞かせたくないセリフである。
現場指揮官としては、失格宣言を出されてしまったセイラだが、戦場を。戦の行く末を見る目は持っているつもりだ。
セイラ。いやアルテイシア・ソム・ダイクンには見える。
この最終決戦の戦場における不確定要素。
ニュータイプという存在はここで、滅せなければならない。
ヤンはそう考えたからこそ、Nフィールドにホワイトベース隊がいることを喧伝し、クワトロたちをここに引き付けたのだろう。
そして、ア・バオア・クー防衛の指揮をとるシャリア・ブルもまた。
戦略家にとっては、ニュータイプそのものが異物なのだ。敵であればもちろん、味方であっても真っ先に抹消せねばならない存在がニュータイプだとしたら……
宇宙という環境に適応した人の革新を、人は自らの手で葬らなければないないのか?
いやそんなはずはない。
ニュータイプは、新しい時代への希望だったはずだ。
彼女は首を振った。金髪がさらさらと流れる。
……なにはともあれ、いまは勝つことだ。
「セイラ・マス。軽キャノン改、出撃します。」
「マチュ、ガンダム、出るよ!」
「ニャアン、出ちゃいます。」
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モニターに映し出される光点は、爆発の証だ。
ひとつ、輝く度に、モビルスーツや艦艇が沈み、ひとの命が消えていく。
これがシミュレーターの中でなければ、いまアムロが息を吸って吐く間にいったい何人の命が失われたのだろう。
アムロは微かに吐き気を感じた。
やはり……自分に軍人は無理だ。
あの輝きになるのも輝きの元凶を作るのもごめんだ。
チラリとサブモニターに目をやる。
ここからなら、もうア・バオア・クーは、モビルスーツ単体でもたどり着ける。
攻撃可能な距離だ。
そして、ソロモンは。
ア・バオア・クーと適切な距離を確保するため、ゆっくりと減速を始めている。
え……?
ラ
ラ
ラ……
アムロの視野の隅になにかが弾けた。
アムロはガンダムのバーニヤをふかす。
後方をビームが通り過ぎた。
ど、どこから?
敵はいない。
いや……アムロの後ろに周りこもうとする物体は。
それがビームを放った。
アムロの掲げた盾の一部を掠める。
“これが……ビット!!”
独立戦争で、シャア大佐が(つまりあの人が)赤いガンダムで運用していたニュータイプ専用兵器だ。
ミノフスキー粒子によるレーダー探知や無線誘導の範囲外からコントロールが可能であり、実際の歴史ではソロモンに集結しつつあった連邦艦隊を叩いて、叩いて、叩きまくり、ついにア・バオア・クーへの侵攻を諦めさせた実績をもつ。
もちろん。
単騎のモビルスーツでこれに対峙することなど、誰一人考えたものはいなかった。
“専用モビルアーマーがいるはずだ。
どこだ?”
ビットの動きをアムロはまだ捉えられていない。
僅かなカン―――眉間がビリリとする感覚だけで、ビットの攻撃を避けている。
初見ではとても出来なかっただろう。
だが、アムロには経験がある。
かつて、ハマーンの乗ったキュベレイが、暴走したとき。
制御不能になったエネルギーキャップ式のビット――ファンネルと戦ったことがあるのだ。
速度はあのときのファンネルのほうが早かった……と思う。
だが、ビットは数が多い。
アムロの感覚では、少なくとも6基。
それが、ガンダムの周りを取り囲むようにして、攻撃をしかけてくる。
さすがの“白い悪魔”もかわすのが精一杯だった。
“というか……”
「とんがり帽子」のコクピットに座るララァはこめかみを押さえた。
“なんでかわせるのよ。”
ガンダム本来の白を基調としたトリコロールカラーに塗られたガンダムは。
ビームライフルを手放した。
“な、なに? 諦めたの?”
そのまま、バーニヤによる制動を中止する。
“え……なら……”
ララァの瞳が燃える。
“ホントに落としちゃうんだけど”
ガンダムの前後左右からのビットの連撃。
ガンダムはゆらり。とわずかに動いた。
ビームがかすめ、盾の一部を破壊する。
するり。
とガンダムが後方に動いた。
その手が、背中のビームサーベルにかかる。
“えっ……!?”
背後から致命の一撃を放とうとしていたビットが両断されていた。
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「大佐。」
モニターに映った武人の表情は険しい。
男の名は、アナベル・ガトーという。
“ソロモンの悪夢”の二つ名をもつエースだった。
「なにかな、ガトー少佐。」
思わずクワトロはそう返してしまったが、これは正確ではない。
ガトーは、いまはジオン軍を離れて、月面のグラナダ、フォン・ブラウンを中心とするクランオーナー、ケリィ・レズナーのもとで活躍するクランバトルの選手だ。
そして、クワトロ自身は、元連邦軍の大尉で、ネオ香港のクランオーナーで……
「今回のシミュレーションに声を掛けてくれて感謝する。」
「こちらこそ、“ソロモンの悪夢”の参加には感謝するよ。
ビッグネームが参加してくれたおかげで、配信の視聴数は跳ね上がる。」
「ひとつ、頼みがあるのだが」
「可能なことならなんでもきこう。」
「……“狂犬”と“病み猫”もこのシミュレーションに参加しているはずだな。おそらくこの先のNフィールドにいる。」
「そうだな……ソドン級の強襲上陸艦『ホワイトベース』に乗っている……という設定のはずだ。」
「もし、彼女たちに遭遇したら、わたしに任せて貰えないだろうか?」
マチュたちになにか含むものでも……
と聞こうとして、クワトロは気がついた。
かつて、トリントン基地で、試作ガンダムサイサリスを強奪したガトーを追撃し、部分的に任務を失敗させたのは、マチュとニャアン……それに、クワトロ自身だった。
「いやそれだとまず、わたしに意趣返しをしないとならないのではないか?」
「大佐はいまは味方だろう。それに“赤い彗星”に破れたのならばそれは仕方がない。」
「許可しよう。だが、サイコミュなしとはいえ、彼女たちはニュータイプだ。手強いぞ。」
「承知のうえだ。」
「大佐!! 前方2時!
Nフィールドの哨戒モビルスーツ隊です。数は12。」
そう呼びかけてきたのは、ケリィ・レズナーだった。おい、おまえはクランのオーナー仲間だろう、なんでおまえまで大佐よばわりを。
いまのわたしはクワトロ・バジーナだ。
それ以上でもそれ以下でも……
「大佐! ビグロで血路を開きます。本体はこのまま、Nフィールドに突入を!」
トクワン!!
「大佐! 」
「大佐!」
「大佐殿!!」
なんでそんなみんなノリノリなんだ。
クワトロは若干引いている。
全員がエース級の活躍を見せながら、戦後は除隊に追い込まれたものたちだ。
(ガトーについては少し違うが)
「……2分で、哨戒大隊を排除する。全員ついてこい!」
「了解!!!」
アナベル・ガトーは、心の内に高揚するものを感じている。
“ソロモンの悪夢”
そう呼ばれながらソロモンを落とされ、尊敬する上司であったドズル・ザビを討ち取られている。
ソロモンでの2度の敗北は、ない!
そのソロモンは、すでに目視できるところにあった。
ゆっくりと。
減速しながらもそれは、ア・バオア・クーへ近づきつつあった。
ガトーさんの機体は、ビームバズーカ仕様のドム。ケリィさんはヴァル・ヴァロが終戦時に完成してなかったので、ザクに乗せられてます。ただし……彼の隻腕のハンデをなかったことにするリバース・P・デバイス搭載のサイコザクです。左手がクローアームの特殊仕様です。