ちゃんとアムロがアムロになってるか、クワトロさんがクワトロさんか。ララァがララァか。
銀英伝キャラまで放り込んでしまいました。
ヤンはちゃんとヤンしてるでしょうか。
ビグ・ザムからメガ粒子砲が発射された。
先頭のサラミスの左舷が大きく抉られ、そのまま爆沈する。
ミサイルを抱えた突撃艇が前に出た。
だが、ビグ・ザムに随走するガルバルディ隊が素早い射撃で、それを撃ち落とした。
再び、ビグ・ザムのメガ粒子砲の掃射。
サラミスが。
マゼランか。
艦隊砲撃戦のつもりで突出してきた連邦艦隊には、直衛のモビルスーツもない。
次々と沈む連邦艦隊。
“させないっ!”
駆けつけたセイラの軽キャノン改と、イオのガンダムがビグ・ザムに近づこうと試みるが。
ガルバルディが2機。その前に立ち塞がった。
「ここは引け!」
図々しくも一般回線で、呼びかけるガルバルディ。
「ヤザン! ヤザン・ゲーブルなの?
なんであなたが、ジオン側にいるの!?」
「あのなあ……」
呆れ返った声でヤザンが返す。
「なんであんたが、連邦側にいるんだよ!」
ものすごく痛いところを突かれたセイラが、ビームガンを放つ。
かわしながら、ヤザンのガルバルディは急接近。
ともにビームサーベルを抜き放ち、切り結ぶ。
鍔迫り合いのような形で、両者は睨み合った。
「……とにかく! なんでいるのよ?」
モビルスーツ同士を触れ合わせた状態ならば、第三者にはわからないように会話ができる。
ここらは、ヤザンとセイラは阿吽の呼吸だった。
「おまえと敵同士なんてのも気味が悪いんで、ジオンで参加したんだ。面白そうな機体も多かったしな!」
ヤザンは言い返した。
「それなのに、なんでおまえが連邦側なんだよ!」
「わたしがいたら、シャリア・ブルが指揮を取りずらいでしょ!
わたしと戦いたくないのなら、あなたこそ引きなさい、ヤザン・ゲーブル。」
「そりゃダメだぞ、ソム・エドワウ。」
ヤザンは最初に出会った時に、セイラが名乗った偽名で彼女を呼んだ。
「Nフィールドに、ジオンの全戦力が集中している。
逃げ出さなきゃNフィールドは全滅だ。
つまり……おまえも誰かには確実に落とされる。」
「だからなによ! これは仮想戦だわ。
別に本当に死ぬわけじゃない。連邦軍の“戦鎚”を落としたことはさぞ、誉にはなるでしょうけどね……」
「問題はそこだ!
連邦軍のエース“戦鎚”セイラ・マスがアルテイシア・ソム・ダイクンであることはいずれバレる。そのときにおまえを撃墜したパイロットがどんな目にあうか、想像できるか?」
「い、いえ……」
セイラは黙った。
「べ、別になんの刑罰もないでしょうけど……
かなり気まずいわね。」
「だろ!? だから俺様が落としてやるんだよ!
それが一番まるくおさまる……」
セイラは押し黙った。
ヤザンの言っていることはわかる。
たしかに、“戦鎚”の退場方法としては悪くない―――
「ダメよ、ヤザン!」
朗らかにセイラは笑った。
同時にヤザンのガルバルディを蹴飛ばして、距離を作る。
(本人は嫌がるだろうが、それは彼女の兄、“赤い彗星”にそっくりだった)
「イオ! イオ・フレミング! こいつらはわたしに任せて。あなたはビグ・ザムを。
バーフェクトガンダムの武装ならやれるわ。」
「心得た!」
突然。一般回線のボリュームいっぱいに鳴り響くジャズのメロディ。
「戦場でジャズが聞こえたら俺がきた合図だぜ!」
躍り出るガンダムの前に。
「させるかよ!」
ジェリドのガルバルディが立ち塞がる。
「どけ!」
「ふざけるな! だれがどくか!
それよりもセトリを教えろ!
デイヴ・ブルーベックの『Take Five』ははいってるのか?」
「なにを抜かす! 入ってねえわけがねえだろうが!」
「なんだと! じゃあ、ビル・エヴァンスの『Waltz For Debby』はどうだ?」
「そこを外してジャズ好きを名乗れるわけがねえだろうが!」
ガルバルディとガンダムは。
ビームライフルを撃ち合いながら、死闘を繰り広げる。
「ああ! もう!」
セイラは顔を歪めた。
「だから、俺に落とされろって?」
「残念でした、ヤザンくん。誰に落とされるかって選択だけどね。」
「……?」
「誰にも落とされないって選択肢もあるわよね!?」
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「エグザベ! ガトー!」
クワトロは呼びかけた。
Nフィールドになだれ込んできたジオン軍のために、マチュとニャアンは、そちらにかかり切りになっている。
「なんです?」
「こちらガトー。感度良好。」
「これより、わたしはソロモンに突貫し、その動きを止める。」
「やはり……」
ガトーは苦しそうに言った。
「やつらは、ソロモンを質量弾として、ア・バオア・クーにぶつけるつもりなのか……」
「な、なんだって!!」
エグザベが叫んだ。
無視して、クワトロは続けた。
「ジオングの推力では、ザクはついて来れない。きみたちに直衛を頼みたい。」
「了解した……しかし、どうやってあの小惑星の質量を止めるつもりですか?」
「ふっ……あんな石ころ、ジオングで押し出してやる。」
二人が黙り込んだのを見て、クワトロは慌てて続けた。
「冗談だ。
ソロモンの核パルスエンジンのノズルの片方だけを破壊する。そうすれば進路はずれるはずだ。」
「しかし」
ガトーは、少なくともエグザベよりは冷静だ。そして状況も把握できている。
「それでもモビルスーツが携行できる兵器で破壊できるような代物ではない。いったいどうやって……」
「ジオングをノズル近辺に着底させ、メインスラスターを爆破し、動力の核融合炉を誘爆させる。」
「それはダメです、大佐。」
ガトーは首を振った。
「命を犠牲にするような特攻や自爆はこのシミュレーターでは禁則事項となっている。」
「ほう? ずいぶんと人道的なAIなのだな。」
「逆です、大佐どの。実際にはなんの危険もないわけですから、禁止にしておかないと特攻と自爆のオンパレードになってしまう。」
「安心してもらいたい。そこは考えてある。」
クワトロは言った。
「ジオングは頭部だけでも飛行可能なのだ。
分離して、胴体の核融合炉を爆破させれば、禁則事項にはひっかからない。」
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ジオンの全軍は、Nフィールドに集結しつつある。
本来ならば、各フィールドから撤収するジオン軍に合わせて、追撃をしかける場面ではあるが、、ソロモン激突の余波から免れるために、連邦軍は前進をためらっていた。
併せて、ア・バオア・クー内部の戦力も出撃を始めていたから、Nフィールドについては、完全にジオンが、戦力面でも圧倒しつつある。
加えて、クワトロがとった巧みな戦術。
精鋭モビルスーツ部隊の攻撃で、艦隊を混乱させ、対ビグ・ザム用に実弾装備を施したモビルスーツを落とす。
これは完全に成功した。
いざ、ジオン艦隊内部に艦船に偽装したビグ・ザムが現れたときには、連邦艦隊は、ほとんど対抗するすべを持たなかったのだ。
頼みの綱である連邦のニュータイプ部隊も、クワトロが送り込んだ精鋭たちが引き付けて、足止めしている。
その状態に、さらに各方面に展開していた戦力がなだれ込んだのだ。
「まったく……! 俺たちがメシ喰って帰ってきただけの間になにがどうなってんだよ!」
ガンキャノンのコクピットで、カイがボヤいた。
彼のガンキャノンも、ハヤトの軽キャノンも「小破」認定であるが、「応急処置」で出撃可能となっている。
推進剤の補充や微細な調整はやってくれたようだが、ふたりとも肩部のビームキャノンは使用不能。
ハヤトに至っては、ビームガンの代わりに実弾のマシンガンを持たされている。
「Nフィールドは撤退命令が出ています。」
オペレーターはAIだ。
セイラのような物凄い美人では無いが、黒目がちの、若いが包容力のある容姿で、カイはどこかで見覚えがあるような気がした。
……そうだ。ヤシマ家のご令嬢に似ている。
「敵は数が多いわ。ホワイトベースの直衛。お願いするわね。」
「あいよ、任されて!」
安請け合いをして飛び出したカイの目の前に、ミサイルが迫る。
「うおおっ……と!」
ビームライフルでそれを撃破したが、迫り来るミサイルはそれで終わりではなかった。
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狂犬と病み猫神は、苦戦していた。
倒しても倒しても、敵が雲霞のように湧いてくる状況は、ふたりにも未経験である。
しつこく、挑んできたエグザベとガトーも乱戦のなかで、見失っている。
「まずい。ビームライフルのエネルギーがもう残り少ない……」
「こっちは推進剤が、本来の意味での『ヤヴァイ』よ、マチュ。」
いったんホワイトベースに戻るべきか。
だが、敵がそれを許してくれるのか……
そのとき、白い颶風が戦場を駆け抜けた。
頭部を。
腕を。
メインスラスターを。
切断されたザクやドムが、制御を失ってくるくると回転する。
「マチュ、ニャアン!」
「天パ! 遅い!」
「天パさん!」
ふわり。
と、巨大なモビルアーマーが現れた。
「大丈夫? マチュ、ニャアン。」
「なんでララァさんまでいるの?」
「とりあえず、わたしとアムロの勝負は今回、引き分けってことになったの。」
あってはならないことを平然と言うララァに、やっぱこのひとはヘンだ……とマチュは思った。
「“奇術師”さんは、ソロモンを質量弾としてア・バオア・クーにぶつけるつもりだわ。」
マチュは息を飲む。
彼女もまた、ソロモンを前線基地として、ア・バオア・クーに対抗するための存在としてしか、考えていなかったのだ。
「わたしはそれを止めにいくの。」
「ど、どうやって!?」
「“とんがり帽子”は伊達じゃない!」
アムロは、妙な不快感に苛まれた。なんとなく、セリフを取られたような気がした―――のであるがもちろん、気のせいだ。
「マチュたちも一緒に行く? ならわたしの機体につかまっていいわよ。」
「いいの!?」
「あのひとはもう向かってるわ。わたしたちは、ソロモンを止めたいし、あなたたちはそうなっては困るでしょう? いずれにしてもあそこに行ってから決めることになるわ。」
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「Nフィールドから、こちらの戦力は離脱中です。」
アッテンボローは言った。
ヤンはため息をついた。
すべてが―――うまくいくものではない。
ア・バオア・クー周辺に、敵戦力を集結させ、そこにソロモンをぶつけることで、艦隊戦力ごとア・バオア・クーを喪失させる。
それが目標だったが、予定よりも早く、クワトロとシャリア・ブルに気づかれた。
結果、ジオンは衝突と反対側となるNフィールドに全戦力を待避させ……Nフィールドの連邦軍は圧倒的に不利な体勢のまま、戦闘を続けざるを得なくなった。
「ビグ・ザムをなんとか出来れば、脱出は可能なのですが……有効に動けるのは、セイラ・マスとイオ・フレミングだけです。いま直衛のガルバルディと交戦中。ビグ・ザムに近づけません。」
「アムロくんやマチュたちは?」
「情報が入ってきません。ああ……ビットを操るモビルアーマーとの戦闘は一段落しているようです。」
「クワトロ氏はどうしているんだろう。」
「現場からの目視情報ですが、キケロガとドム一機ととも戦場を離脱しました……どこへ行ったのでしょう。」
「まあ、だいたいは分かるよ。」
ヤンは冷たくなった紅茶をすすった。
「ソロモンを止めに行ったんだ。」
「どうやって? あれだけの質量のものを」
「核パルスエンジンのノズルの一方だけを破壊してやれば、進路をそらすことは出来るだろう……」
そのとき、モニターのひとつが光った。呼出音が断続的に響く。
「誰かな、こんなときに……」
ヤンはぼやいたが、画面に映った人物を見て、流石に驚いた。
連邦軍の実質的な最高責任者といってよい。
政界にも太いパイプを持つ大立者。
ゴップ将軍だった。
ゴップは。
丁寧に頭こそ下げたが、敬礼もせず、椅子から立ち上がりさえしない相手を睨んだ。
「これが、きみの当初からの目的だったのかね?」
単刀直入にゴップは尋ねた。
「ア・バオア・クーにソロモンをぶつけてしまうという。地上への質量弾の投下は南極条約違反になるが、宇宙ではそうではない。
独立戦争のころから、この構想があったから、グラナダへのソロモン落としに反対したのかね?
どうなんだ、ヤン・リー大尉。」
「それは買い被りすぎです、閣下。
グラナダへのソロモン落としに反対したのは単に人道上の理由です。」
「そうかね?」
ゴップはにやりと笑った。
「いずれにせよ、きみを除隊させたのは、連邦軍の痛恨のミスだよ。
軍令部に佐官の席を用意する。復隊したまえ。」
「わたしは予備役ではありません。退役しています。」
「もう一度、きみを徴兵することも出来る。」
「徴兵法はジオンとの和平の際に効力を停止しているはずですが。」
「一般的な“徴兵”はな。
ただし、特記事項として、軍が特に有用と認めた技能を有するものは、これに兵役の義務を課すことが出来るというのは、現在も有効だ。拒否すれば懲役刑が待っているかもしれない。」
ゴップは宥めるように、笑ってみせた。
「人は己の才能を活かすことで、生きがいを感じるものだ。そこにいてもせいぜいが、歴史学科の准教授……定年間際に教授になれるかどうか、というところだろう。
それよりも、連邦軍に戻りたまえ!
きみは軍に向いている。戦略こそがきみの能力を最大限に発揮出来る場だ。
選択の余地はないぞ、ヤン『提督』。
もし、きみの保護している少年のことが心配なら、彼にも士官学校への進学を世話しよう。そっちにはグラナダのデモンストレーションの結果はきているかね? 彼の才能はずば抜けている。おそらく、いや間違いなく彼は、ニュータイプだ。きっと素晴らしいパイロットになる。」
ヤンは。
困ったように微笑んだ。
そう。
困ったように見えるのだが、そんな表情をうかべるときのヤンは実はたいして困っていないのだということを、アッテンボローは付き合いの中で学んでいた。
ヤンは、ゴップの問いには答えず、ア・バオア・クーの総司令部(シャリア・ブルのところだ)への通話と、さらに一般回線をひらくように頼んだ。
「あーあー、聞こえるだろうか。こちらは連邦軍『星一号作戦』司令部だ。ア・バオア・クーにて奮闘中のジオン軍すべてに告げる。」
口調は淡々としていて、煽るようなトーンは全くなかった。
「間もなく、ア・バオア・クーはソロモンの体当たりを受けて崩壊する。」
その意味が、全軍に染みとおるまで、ヤンは数秒、間を空けた。
「君たちは勇敢だ。よく戦った。だが、この膨大なる質量同士の激突は残念ながら個人の武勇でどうなるものでもない―――そして、わたしは勇敢に戦った諸君らに降伏もすすめない。」
ヤンはモニターの中のゴップをちらりと見やった、
なにを言い出すのだ、こいつは。
そう言わんばかりに、目を飛び出しそうにしている。
「逃げたまえ―――追撃はしない。一刻も早くア・バオア・クー宙域から離脱するんだ。
衝突の余波に巻き込まれれば、どんな艦艇もモビルスーツもひとたまりもない。
逃げるんだ。繰り返すが追撃はしない。」
ジオン軍は。
Nフィールドに集結し、そこの連邦軍を圧倒しつつあったジオン軍は。
一瞬で崩壊した。
ヤンは振り返って、ゴップを見やった。
「戦略、戦術の機微は、効率よく味方を殺すこと……などと、士官学校で習いましたが。」
静かにヤンは言った。
「結局のところ、わたしは弱虫なようです。場合によっては敵にもあまり死んで欲しくないのです。
―――こんな人間は軍人にはあまり向かないと思うのですが。」
いや、二言三言、喋っただけで、敵軍を崩壊させる将軍なら絶対欲しいわ!
とゴップは思った。