「ガトー殿! ここはわたしが!」
グレーのガルバルディが、マチュとガトーの間に割って入った。
「シン・マツナガ!」
ガルバルディは、ビームライフルはもちろん、ビームサーベルも備えた当時の最新鋭機である。
試作機はロールアウトしていたが、“赤い彗星”の奪ったガンダムを量産化したゲルググが次世代機として決定したため、日の目を見ることはなかった。
「この!」
柄の両側にビームの刃を形成したガルバルディは、くるくるとそれを回転させながら、マチュのガンダムと切り結ぶ。
「ニャアン! 天パを援護して!」
「無理だよ、マチュ。」
「なに言ってんの! 有線ビーム砲なしのキケロガなんてとっとと片付けて……」
「わたしもビームライフルないんだよね……」
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「同士って……ソロモンの激突を止める……って意味ですか?」
アムロは尋ねた。
「あなたの言ってることは、理屈は通ってますけど。ここはシミュレーターのなかで、現実におきていることじゃないんです。同士なんてそんな大袈裟な言い方……」
「ならば、言いかえよう。
わたしは実際に、ニュータイプが戦争の道具にならない世界を作りたい。そのために、きみにも力を貸して欲しい。」
「アムロ! そいつは、」
「もちろんです。」
アムロは、セイラを制してあっさりと言った。
「そのためになにをするつもりなのでしょうか?」
「……地球の重力に魂を引かれたものたちは、この瞬間にも環境を汚し、次の戦いへの準備をすすめている。連邦の腐った上層部を一掃し、地球環境を保全し……」
「それじゃ、カンチャナの仮想戦記の『シャイの逆襲』ですよ。」
いいひとなんだけど、ララァの言う通り、いろいろとクセのあるひとなんだなあ、とアムロは思った。
「ニュータイプの戦争の道具にさせたくないなら、もっとわかりやすい方法がありますよ。」
「……それはなにかな、アムロくん。」
「戦争を起こさないことです。」
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ララァは。
遠くを見ていた。
ああ。
アムロとあのひとがそばにいる。
敵同士としてではなく。友人として。
ここがわたしの居場所だ。こここそがわたしの世界だ。
大佐も、わたしも、死ぬ事がなく。
ここを「定着」させる。
そのためには。
「上書き」が必要だ。
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「……いまは、ソロモンを止める。
それでいいな?
これをゲームとしてみた場合には、もはや勝敗は決着している。
ア・バオア・クーからの避難を促す、というのも、もし事がこうなったら、わたしはこのように行動するだろうというシミュレーションに過ぎない。実際に失われる人命はなく、被害は、AIの計算のなかにしか存在しない。」
「だめ……です。」
とんがり帽子は、この上なく不吉な影のように宙を疾走った。
「アムロ。あなたはここで、わたしたちと戦うのです。」
モビルアーマー本体のメガ粒子砲は、健在だ。
その巨体に似合わぬ軽快な動きも。
マグネットコーティングを施したアムロのガンダムは、辛うじて、その攻撃を避けた。
「やめろ、ララァ!」
「ココ・シャロン! いまはそんなことをしている場合ではありません!」
こいつらの意見が一致するのはいつぶりだろう。
「わたしは……この世界を、護る……」
ララァのなかに、膨大な量の『ララァ』が流れ込む。
その意識のなかでは、『世界』は『大佐』のことであり、ひとりの命と全宇宙は等価値であった。
「この世界を保全する。この世界を生かす。
そのためには、わたしたちが戦うことが必要なのです。あのときのように!」
「チイィ!」
クワトロは攻撃をためらった。
ここでララァを撃墜しても、それは別段、ララァの身に危害が加わるわけではない。
あくまで、シミュレーターの中だけのことだ。
それでもララァを攻撃してしまうのとを、彼の全身が拒否している。
それはまたアムロも同じだ。
もう、ララァを殺したくはない。
現実でなくても、だ。
ビームライフルがあれば、とんがり帽子を部分的に損傷させて動きを止められたかもしれないが、すでに彼のガンダムは、戦いの中でビームライフルを失っていた。
「わたしが!」
セイラが、鎖のついた鉄球を取り出した。
ドズルのビグ・ザムを葬ったハンマー。“戦鎚”の異名の元にもなった兵器である。
「無駄よ!」
セイラの軽キャノン改の機動力では、とんがり帽子に追いつけない。
ハンマーは空を切った。
「まずい……早くソロモンのノズルを破壊しないと。
―――もう時間がない。」
「大佐! あなたもアムロやアルテイシアと戦うのです。この世界を存続させるために。わたしたちの未来のために!」
「待て! 待つんだ、ララァ。
いまのアムロくんは敵では無い!」
「それでも、です。あのときを再現することで、この世界を『定着』することが出来る!」
「なにを……なにを言っているのだ、ララァ!?」
とんがり帽子のメガ粒子砲が、ジオングの腕を破砕し、軽キャノンの脚を吹き飛ばした。
「大佐! まだですか!」
ガトーが叫んだ。
マチュの腕前は、とくに近接戦闘におけるそれは化け物だ。
ガトーと、シン・マツナガ。2人がかりでも抑えこめない。
互いに攻撃手段を失ったキケロガとパープル塗装のガンダムが、ぐるぐると翔け違いながら、口喧嘩を続ける。
ダメだ。
誰かが、ソロモンの核パルスエンジンを止めないと、
「うおおおおおおっ!!」
巨大な影が突進してきた。
ここまで、セイラの軽キャノンとシン・マツナガのガルバルディを曳航してきたハーディ・シュタイナーのビグ・ザムだった。
「ジャマです!」
とんがり帽子のメガ粒子砲が、その巨体に突きさり……霧散した.
ビグ・ザムのIフィールドの効果である、
「この、わたしが!」
ビグ・ザムの主砲に輝きが宿る。
いや。それは通常の主砲発射とはあきらかに異なる輝きだった。
「もともと、特攻兵器として設計されたビグ・ザム。」
ハーディ・シュタイナーは笑う。
「リミッターを解除した主砲発射ならば、要塞の核パルスエンジンとて!」
そう。
最大出力での主砲発射ならば、通常の三倍の威力がだせる。
だが、主砲は融解し、ビグ・ザムそのものもその後、数分間は行動不能となる。
「主砲最大出力発射用意。
エネルギー充填開始。
セイフティーロック、解除。ターゲットスコープ、オープン。
電影クロスゲージ明度20。
エネルギー充填120%
対ショック、 対閃光防御。
最終セイフティー、解除。
……ビグ・ザム、主砲、発射ぁ!」
それは。
軍事的にはほとんど意味の無い機構であった。
そもそも発射プロセスに時間がかかりすぎ、その間はIフィールドもふくめ、丸裸の状態になる。
そして、発射後は、ビグ・ザムは使えなくなる。
その引き換えに、相手の戦艦が沈んだとしても、ビグ・ザムの建造コストを顧みれば、ほぼほぼ引き合わない。
だから、実際に、戦中も戦後も使われることはなかった。
一種の自爆特攻ではあるが、シミュレーターのAIも見逃したような裏設定である。
だが、この場合には有効だった。
有効すぎた。
ハーディ・シュタイナーの渾身の一撃は。
見事に、ソロモンの核パルスエンジンに命中し。
その噴射ノズルの
『両方』
を停止させた。
クワトロが意図したように。あるいはヤンが予想したように。
片側だけなら、それはソモロンの軌道をずらす効果があっただろう。
だが、『両方 』を同時に破壊してしまっては。
宇宙要塞ソロモンは、そのままゆっくりと。
前進するしかない。
慣性のままに。
ア・バオア・クーへと向かって。
次話で「第6話 激突」は完結します。