第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ほのぼのと悪巧みをするおとなたち。
ちなみにこのデモンストレーションの撃墜スコアは、
ドゥー・ムラサメ...1(カミーユ機)
カミーユ...1(ドゥー機)
エルピー・プル...0
ジュドー...0
アン・ムラサメ…0(ジュドー機プラス1、エルピー・プル機味方撃破でマイナス1)
ユリアン...1(アン機)





GQuuuuuuX season2 第7話 月面の嵐~勝者

アナハイム・ムーン月面工場。

 

ガラス越しに地球が静かに浮かんでいるように見えるが、それは単なるスクリーンへの投影でしかない。

 

会議室は無機質で、音が吸い込まれるように静かだった。

 

長机の一角。

端末を閉じた大男が、ようやく顔を上げる。

 

N・ロックである。

 

「――で?」

短い一言だった。

「結論は出ているんだろう?」

 

対面に座る技術主任が、わずかに咳払いをする。

 

「今回のネオ香港大学のシミュレーションですか?」

「そう。ここに移動するまでの間にハイライトは見せてもらった。

なかなかの見ものだったけど。」

にんまりとN・ロックは笑う。

「クランバトルの代わりにはならないな。

やはり、人間は、実際に命をかけ、血が流れないと納得しない。」

 

「そんなものですか……」

 

「うむ。最後の無差別攻撃の挙げ句の強制ログアウト―――あれなんかは、たんなるバカ騒ぎ以外のなにものでもない。

自分が犠牲にならないと確信したとたん、ひとはとんでもない愚行に走る。

そんなものに―――世界を任すことはできないよ。」

 

とはいえ、

と、N・ロックはひといき入れて続けた。

 

「ショーとしてはこの上ない見ものだったし、続編もつくれそうだ。

ビジネスとして見るだけなら、クランバトルと平行してすすめられるくらいには有望だと思う。」

 

「ならば、やはりクランバトルへの参入は。」

 

「そうだ。予定通りすすめる。

クランバトルを支配することで、アナハイムは連邦やジオンに対抗するあらたな力を持つことができる。」

 

「しかしだな、N・ロック。」

もっとも上座にすわる人物が指先で卓を軽く叩く。

「フラナガンスクールの卒業生は、3名しか確保できなかったそうじゃないか。

きみの『ガールズ』をいれても数が足りん。しかも、アンキーはあれだけのハイレベルな試合を見せてしまった。

試合の質を下げれば、あっという間に、観衆に見放される。」

 

「ポメラニアンズがせっかく、リングを用意してくれたんだ。そこにあがりましょうよ。」

 

「それでは主導権が―――」

 

「それはあとからついて来ます。

始まってしまった興行は金を多く出したものが手網を握れます。

たしかに、今回の試合は見事でした。

ですが逆に言えば、アンキーはすでに最強の手札を切ってしまったと言える。

天然モノのニュータイプ二人と、まだ覚醒前なのに天才とかいいようのない才覚で、勝利をもぎとった少年。

それにムラサメの強化人間三人。

あれ以上のカードはもうない。

もし、今後アンキーがジュニアクランバトルを開催するなら、使えるコマがもっと必要になります。

それはつまり、わたしたちに付け入る隙が充分にある、ということです。」

 

技術主任も大きく首を縦に振った。

「たしかに!

デモンストレーションが成功してしまっただけに、アンキーは早急に次の興行を計画しなければなりません。

案外、むこうから協力を求めてくるかも…」

 

 

「わかった。きみの言う通りにしよう。」

上座にすわる男は、頷いた。

「必要なものを言いたまえ。」

 

 

「まず、スパルタニアンの製造ライセンス。

あれをこちらで買い取りましょう。スパルタニアンはそのままでも、充分使える。実際にリーグ戦を行うなら、選手に合わせて少しずつカスタマイズしてやるのも面白い。」

 

「わかった……ほかには?」

 

「人材です。ネオ香港大学の仮想戦闘を仕切ったヤン・リー。彼はぜひ、ユリアンとセットで欲しい。」

 

「元連邦軍大尉“奇蹟”のヤンか?

優秀なのは認めるが、使いこなせるか。連邦のソロモン落としに断固として反対して、軍を追われた男だぞ……」

 

「そうです。

そして、今回のシミュレーションバトルで、彼は自分が指揮をとれば、ソロモンをもっと有用に活かしてア・バオア・クーを堕とせることを証明してみせた。

くわえて、彼はいまユリアンの保護者のような立場です。彼を説得すれば、ユリアンもついてくる。」

 

「わかった―――然るべき報酬と地位を用意する。交渉そのものはきみに任せていいのだな?」

 

「それと―――」

 

「まだあるのかっ!」

 

「架空戦記『機動戦士ガンダム~行きて帰りし夢物語』とその続編の版権を。

出来れば作者の『フロド』付きで。」

 

この意味不明の要求に、さすがにN・ロックの上司も考え込んだ。

 

「うむ。あれはたしかに面白いし、わしもファンではあるのだが。フロドはペンネームで何者かはわかっていない。

そもそも、その業務とあまり、公私混同は」

 

“おまえも読んでるんかい!”

心の中で毒づきながら、N・ロックは続けた

 

「ネオ香港大学の仮想シミュレーションは、この物語を下地にしています。

これから、『ショー』として第二弾、三弾をしかけるときに権利を主張できるようにしておきたいのですよ。」

 

 

「シャアの漸減が失敗し、連邦軍がア・バオア・クーに侵攻するというシミュレーションは、なんども行われてきたはずだぞ。

今回は、モビルスーツのバトルシミュレーターと戦略級のそれを組み合わせたところが新しいとは思うが。」

 

「今回の仮想ア・バオア・クー戦での歴史改変は一点だけ―――シャアがガンダムを奪わずに、民間人の少年アムロ・レイが乗り込んでいたらその後の歴史はどう変わったか、です。それがフロドの架空戦記『機動戦士ガンダム~行きて帰りし夢物語』の発想そのままなのです。」

 

ううむ。

上司は黙り込んだ。

「アムロ・レイ…そうか。いま、クランバトルで名を馳せている“白い悪魔”だな。」

 

「どんな人物かはわかりませんが、この作者の『フロド』なる人物の構築した世界には、妙にリアルなものを感じるのですよ。

今回のような歴史ifものの大規模シミュレートの配信は金になります。

実質、わたしはジュニアクランバトルのほうには、うんと金をつぎ込むつもりですから、それを補う収益の柱として、このシミュレーションの配信を想定しています。

フロドの描いた世界線はイケますよ。」

 

そして―――

N・ロックは考えた。

『フロド』が望む世界そのものにも大いに興味がある。

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

チェリーパイだあっ!

アンが素っ頓狂な叫びをあげた。

いそいそとお茶の支度をしてくれた初老の夫婦は、ムラサメの研究員とのことだったが、まるっきりアンの家族のように見えた。

 

「ホンモノのチェリーを使ったから少し酸っぱいかもしれないよ。」

マリラと名乗った女性の科学者は、そう言って、パイを切り分けた。

 

一口食べて、ユリアンはこの美味しさに驚いた。

酸っぱいが、酸っぱすぎるところはない。

生地はサクサクと噛みごたえがよく、気がついたら皿は空になっていた。

 

「オカワリもあるぞ。」

焼きたてのパイを皿にのせてあらわれた男性は、マシューというそうだ。

脳科学者(それもムラサメ研の!)ということだが、どうみても農家のオヤジにしか見えない。

「気に入ったんならどんどん食べてくれ!

なにしろ、うちのアンを落とすという大金星を上げたんだからな。」

 

そうだった。

 

ユリアンは思わず俯いた。

その肩をジュドーが叩いた。

 

「まあ、試合だからな! 試合。」

「そうだよ! 食べて、食べて!」

 

アンは立ち上がると、パイのカットを始めた。

マシューとマリラがそれを微笑ましげに見守る。

 

「食いながらでもいい。聞いてくれ!」

アンキーが立ち上がった。

「ポメラニアンズは、正式にクランバトルジュニアリーグを開催することになった。」

 

「そりゃ、あれだけ成功しちまえば、やらないわけにもいかんだろ。」

アンキーの隣りの白衣の女性は、ゼロ・ムラサメという。

この2人の前には、少年少女たちとは違って、強めのアルコールがおいてある。

「だが、資金繰りは大丈夫なのか?」

 

「アナハイムに就職が内定していたフラナガンの卒業予定者8名のうち、5名が内定を蹴ったそうだ。報酬は満額出てるから」

 

「運営はどうするんだ? ポメラニアンズは手一杯だろう。」

 

 

「な、なんとかするよ! クワトロの旦那にヘルプをお願いしてもいいし…」

 

「あほか! この件については大佐殿は、商売敵だぞ! そもそも選手はどうするんだ。

プルとアンはともかく、ドゥーは大佐のとこの選手だ。トロワ、もな。」

 

「カミーユ、ジュドー?」

 

「ぼくは、グリーンノアに帰りますよ!

テム先生の新型のテストを頼まれてますし、学校だって」

「おれも、なあ。なんだかジュニアクランバトルって選手がいなくてめちゃくちゃ忙しくなりそうじゃないか。

ジャンク屋の仕事と学校に通いながらときどき、いままでのクラバに出てた方が、楽で稼げそう。」

 

アンキーの懇願するような視線は、ユリアンに向く。

 

「も、もともと1試合だけってお話で…それにぼくも学校がありますし」

 

アンキーはがっくりとうなだれた。

 

「……しかたない。」

「す、すいません。」

「組む試合の数をすこし減らそう。」

 

ぜんぜんわかってない!

 

「あ、アンキーさんって、話の通じないひとなんですか?」

 

「すこし違うぞ、ユリアン。」

ジュドーはゆっくり首を振った。

「もうけを諦めないひとなんだ。」

 

 

 

 

 




ほのぼの回のつもり。
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