第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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「……というわけでソムさん。ぼくは今日のシャトルで
ヤンさんたちと一足先にグラナダへ行きます。
あとはマチュや、それにララァが連れてけと言うので。」
「危険はないの?」
「物凄くあります! ですが、こちらのメンバーを揃えれば揃えるほど、アナハイムは『敵』としてではなく、味方として取り込もうとするはずです。」
「わかったわ……彼女達のことは引き受けました。」








GQuuuuuuX season2 第7話 月面の嵐~それぞれの思惑

グラナダの一等地に、行政府に勝る敷地を占めるアナハイムグラナダ支社。

 

「ヤン・リーから返事が来ました。」

部下の女性が、N・ロックの前に報告書を置いた。

こんなものは、当然メールやチャットで報告できる。

だが、ネットを経由したものは、痕跡が残ってしまう。

わざわざ、紙の書類を使ったのは、それが残したくない情報だ―――ということを意味していた。

 

報告書は何枚に分けられている。

最初の1枚は、ヤン・リーからの手紙だ。

 

お招きに感謝する。

だが、ユリアンのテストパイロットへの起用については、学業を優先させたいので、本人とじっくり話がしたい。

 

あとは、シャトルの手配についてのお礼にと同行者を連れていく、旨の記載があった。

 

N・ロックは楽しげに笑った。

 

わざわざシャトルに五人分の席をとったのは、ヤンという男を試す意味あったのだ。

はたして、誰を連れてくるのか?

 

二枚目以降に、同行メンバーの名前とデータだ。

 

「ウォルター・フォン・シェーンコップだと!?」

 

「…はい。」

女性スタッフは頷いた。

「あの『薔薇騎士団』のシェーンコップ少佐です。」

 

もと連邦軍第一特務陸戦隊の精鋭ぶりは、よく知られていた。

同数、同程度の装備をもつ相手なら、『シェーンコップの騎士たち』は、無敵とまで言われた。

 

軍を除隊したあと、彼は昔の部下を集めて、傭兵団『薔薇騎士団』を組織した。

 

「薔薇騎士団のサイトを見ましたが、予約で再来年まで埋まっています。」

女性スタッフは言った。

「団そのものを動かすことは無理です。

今回来るのは、シェーンコップ少佐おひとりです。」

 

N・ロックは心の中でうめいたが、それを、表情に表すことはなかった。

いずれにしても暴力的なものに訴えるつもりは少なくとも今回は、ない。

 

だが、アナハイムムーンのなかには、このまま、ヤンを無理やりにでも月面に止めおいて、強制的にアナハイムムーンに組み込もう―――そんな無茶を言う者も少しはいる。

 

そういう輩どもの歯止めにはなるだろう。

 

うむ。いい人選だ。

 

次は、

オルビエル・ポプラン。

元連邦軍のエースであるが、モビルスーツをとにかく嫌い、軽キャノン配備後も、戦闘機で戦い抜いた、という変わり種だ。

彼もまた、戦後、軍を追われてジオン工科大学のネオ香港校に通っている。

 

しかし、これだけクセのあるものたちを、こんなタイトな日程で連れてこれるというのは、ヤン・リー元大尉はなかなかの人物には違いない。

 

3人目のアッテンボローは、たしか『ア・バオア・クー仮想戦』でヤンの副官を務めた男だ。彼はヤンと同じ大学に在籍していたから、これもまあ納得のいく人選ではあった。

 

4人目は―――

 

N・ロックは顔をあげた。

 

「このアムロ・レイってのはあのアムロ・レイかい?」

 

「まあ、同姓同名の別人である可能性に賭けますか?」

 

「オッズが100倍でも賭けないよ。

そうか、たしか“白い悪魔”はネオ香港に降りていたな。『仮想ア・バオア・クー』にも参加していたはずだ。」

うーん、と言いながら、N・ロックは席をたった。

何事かと、女性スタッフはその後ろ姿を、見送ったが、なんのことはない。自動販売機でコーヒーを買って席に戻ってきただけだった。

 

「―――コーヒーくらい、命じていただければいれますのに。」

女性スタッフはそう言ったが、N・ロックは顔の前で手を振った。

「いや、なにが飲みたいか、自動販売機の前に行ってからあれこれ物色するのが楽しいんだよ。」

 

腰を下ろしたN・ロックは、まじまじと報告書をもう一度見つめた。

にまにまと笑いは、込み上げてくるようだった。

 

「―――まっずいなあ! このメンバー。

全員欲しい!

うん! そうだ。

“白い悪魔”は、ポメラニアンズからの貸し出しで、ネオ香港にいるんだったね。

彼からの到着に合わせて、カネバン有限公司のアンキーを呼べるかな。

ジュニアクランバトルとあわせて、アムロ君のうちへの移籍、それと従来のクランバトル運営への参加の意志も伝えておこう。」

 

「無茶苦茶です!」

女性スタッフは抗議した。

「それが出来ないから、アナハイムムーン主導でジュニアクランバトルを立ち上げようとしたんじゃないですか!」

 

「1ヶ月まえには出来なかった。だが『今』は1ヶ月まえではないからね!

ニューディサイズの蜂起で、クランバトルのトップの選手は現役のエースにも匹敵することが証明されたんだ。

だから、ぼくはね、クランのトップランカーはね、スターになるべきだと、思うんだ。」

 

 

 

 

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「いらっしゃい。」

アルテイシアは、にこやかに少女たちの一団を迎えた。

 

「お邪魔します、ソム。」

黒髪をお団子に結んだ女性は、同じ肌の色をした少女たちを連れている。

 

「ココ!」

アルテイシアの顔がほころんだ。

「その子たちがカンチャナとヴァーニね。よろしく。わたしがアルテイシア・ソム・ダイクンよ。」

 

ふたりの童女は同時に頭を下げた。

 

「フォウもお久しぶり!」

ララァにぴったりくっついている女性は、ムラサメ研究所の強化人間だ。フォウ・ムラサメという。

ララァを「お姉さま」とすることで、精神的な安定を得ているというが。どことなく幼児退行したような印象も受ける。

 

「マチュとニャアンも。」

 

「シミュレーターでは一緒だったし、なんども食事しましたよ?」

赤毛の少女が胸をはって、生意気にそう言った。

 

「イベントホールで一緒にサンドイッチをたべたのを『食事』にカウントするのかしら?」

 

「あのとき、アムロの分のサンドイッチをアルテイシア様がたべちゃってます。」

ニャアンが口を挟んだ。

 

「ずいぶん、変わったんだね。」

マチュは周りを見回しながら言った。

 

「それはいろいろ改装したからかしら……」

 

「滞在してもらう部屋も、独房よりもう少しマシなものを用意してある。」

ラシット艦長が声をかけた。

「公王府直属艦になったこたことで、内装に手をかけた。」

 

 

コモリが報告した。

「ゾック、ならびにロゼスパークル、サイコガンダムR、積み込み完了しました。」

 

「レイダーはやっぱり無理なのかしら……」

「連邦政府とクランバトルの交渉中ですからね。」

 

ラシットは、チラリとアルテイシアを見やった。

 

 

今日もアルテイシア・ソム・ダイクンは、パーティに、レセプションにと大忙しのはずだ。

シャリア・ブルは、彼女が引き合わせた御曹司殿へ、希少資源の輸入をかけたクランバトルに、スパルタニアンを採用できないかの打診を、今日中に行うつもりだ。

エグザベは、彼らの護衛のために地上に残る。

 

 

“まったく……ミーアがいると助かるわ。”

アルテイシアは、ラシットに頷き返した。

アムロから、相談を受けて、マチュたちを送り届けることを約束したのだが。

 

あれ?

いや、たんにシャトルの手配をしてくれという意味だったのだろうか。

まあ、いいか。

 

「各員、シートに着席。

目標、月面グラナダ。ソドン、発進する。」

 

 

 

 

 




マチュ、ニャアン、ララァ、フォウのいるソドンだと、たぶん重巡率いる艦隊とモビルスーツ10機が3分も持たずに消える世界です。
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