第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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さて、アナハイムムーンが仕掛けた劇の幕が上がります。
アムロたちは。そしてソドンで移動中のマチュたちは。
そして、比較的どうでもいいので、たぶん触れませんが、クワトロのクランバトル会場設営ははたして工期が間に合うのかっ!!






GQuuuuuuX season2 第8話 仮面喜劇~開幕

大気圏内での飛行に慣れたものにも、宇宙空間での移動に慣れたものでも、月面というのはまた別物だ。

空気の抵抗がないので、浮力を得るための「滑走」は必要がないし、意味もない。

かといって、6分の1とはいえ、重力は存在するので、たんに飛び出しただけでは、いずれ地面と激突する。

 

「いいですか、ポプランさん。斜め上に自分を持ち上げるつもりで、自分自身を『発射』してください……」

 

「こんな感じでいいか?」

 

アムロはため息をついた。

話が終わらないうちに、ポプランはアムロが言った通りに、飛行機形態のままのスパルタニアンを発進させて、上空を旋回しながら翼をふってみせた。

 

「悪くない……というか完璧です。」

 

「ありがとう。あんたの教え方が上手いからだよ。」

 

別に教え方が下手だと卑下するつもりはないが、ポプランの吸収が良すぎるのだ。

 

「グラナダの方向はわかりますか?

そのまま先乗りしてください。」

 

「あんたはどうするんだ?」

 

アムロは、スパルタニアンのバーニアを吹かした。

空中に浮き上がり……変形。

初めての経験だったが、スパルタニアンの変形機構は、いままで見た百式やZETAに比べればかなり簡略化されていた。

 

“欲を言えば、変形のスピードはもうゼロコンマ5秒は短くしたいな”

 

月の重力下とはいえ、人型になったスパルタニアンに「飛行」の能力はない。

バーニアをふかして地上に降り立つ。

 

「グラナダに行くのはいいがあんたはどうする?」

 

「ヤンさんたちのバギーと同行しますよ

……」

 

「モビルスーツをグラナダまで歩かせるのか?」

 

「いえ……」

アムロは軽くバーニアをつかって、スパルタニアンを浮かせた。そのまま、動いて見せる。

 

「ホバー走行か! そんな機能があるのか!?」

 

「地球の重力下だと、専用のジェットエンジンのない機体だとちょっと自信はないんですけど、月面なら……」

 

すごいな!

と、ポプランは言った。

 

アムロが止める間もなく、かれはスパルタニアンを変形させた。

真っ逆さまに落下するが、途中で軽々と機体を立て直して、無事に着地する。

そのまま、アムロのスパルタニアンの肩に手を触れた。

 

「……やはり、なにか仕掛けてくると思うか?」

 

「念のため、ですよ。」

 

「いいカンだな。俺も同じことを考えていた。

シェーンコップ少佐の武力を封じるには、いったん施設の外に出してから、バギーか、なにか出移動中に攻撃するほうがいい。」

 

「しかしそこまで、愚かですかね、アナハイムは。」

 

アムロはアナハイムの幹部といえば、ネオ香港のウォン・リーくらいしか知らない。彼はすこし怖いところもあるが、紳士で、聡明で。

交渉すべき相手を脅したり、身柄を抑えようとしたりするような真似をするとは思えなかった。

 

「あんたは、アナハイムムーンは、ティターンズなみにバカ揃いだと言った。

愚かなやつは損得を勘定せずに意趣返しにはしるだろう。」

 

まさか、とは思うがその可能性はゼロではない―――

 

「では、ポプランさんは空中から警戒を。

ぼくはバギーに付き添います。

ええっと、人型から飛行機型への変形は、バーニヤでジャンプ。高度を1000以上は確保したほうがいいです。

変形後の機体の向きには充分、注意して―――」

 

アムロが言い終わらないうちに、ポプランはスパルタニアンをジャンプさせた。

変形したスパルタニアンを旋回させる。

 

「…こんなもんでいいかな?」

 

「充分です……」

 

要するに、ポプランという男は天才なのだ、とアムロは理解した。クワトロのようなニュータイプ能力やヤザンのような獰猛なアグレッシブさはないが、その分安定しているといえる。

 

「そっちはどうだい、提督!?」

 

 

「……提督はやめてくれ、ポプラン。」

 

「順調ですよ!」

アッテンボローが答えた。

「グラナダまで2時間ってとこですかね?

しばらくは、月面ドライブをたのしみますよ!」

 

だが、順調はドライブは小一時間で終わりを告げた。

 

 

「モビルスーツ6機。接近。」

上空を舞っていたポプラン機から、通信が入る。

 

「識別信号は?」

シェーンコップが尋ねた。

 

「スパルタニアンにはそんな機能はないんだ。いま光学画像データを送る。」

 

「……知らんな、この機体は。」

兜を被り、スパイクのついた肩当ての機体は、シェーンコップにも見覚えがない。

 

「…アナハイムムーンのマラサイです。」

アムロがうめいた。

悪い予感というのは、実によく当たる。

 

 

 

---------------

 

 

 

 

ユリアンが受けているのは、形としては、非常に緩い拘束である。

 

ユリアンは、アナハイムの技術者たちに、スパルタニアンについてのレクチャーを行う日々を続けていた。

 

外出は自由だし、実際に、ユリアンはあてがわれた宿舎から外出して、ジュドーたちと会ったりもした。

もちろん、通信も自由である。

アンキーからは、ネオ香港に帰還をどうするか、尋ねられたのだが、アナハイムが約束した報酬は、ユリアンにとっては目が飛びてるような金額で。

 

実際には。ユリアンはまだジオン工科大学の学生で、技術的な資格があるわけでも、正規のパイロットですらないのだ。

それに対して支払われる報酬は、はっきり言って破格だった。

 

ヤンとユリアンは、奨学金をもらっていたが、それは授業料でほとんど消え、生活費は、ヤンの貯金を切り崩している。

 

アナハイムムーンが提示した1ヶ月という期間とその報酬は、ヤンとユリアンの経済的困窮をしばらくは忘れさせてくれるほどの額だった。

 

レクチャーの合間には、N・ロックが2度ほどやってきて、また「返還義務のない」奨学金の話をした。

どちらもユリアンは、拒否した。

 

3度目にあったときに、N・ロックは、ヤンをアナハイムムーンに招いた、と話した。

ユリアンだけではなく、その保護者であるヤン・リーにも興味を持ったらしい。

 

ネオ香港大学で行われた「ア・バオア・クー」のシミュレーションは、ニュースにもなり、N・ロックの耳にもはいったようだった。

 

 

-------------------

 

 

 

「結局のところ、ぼくはコンテンツの制作者なんだよ。」

 

グラナダ第一宙港のラウンジである。

いわゆるシャトルへの乗船客用のラウンジであって、シャトルのチケットを持っていなければ、そもそも入ることも出来ないエリアにあったが、そこはアナハイムムーンの権力らしい。

融通はいくらでもきいた。

 

ヤンたちのシャトルの到着を待つあいだ、ユリアンは、N・ロック氏の雑談をきいている。

 

「けっこう業界じゃあ、名前は通ってるんだよ。得意なコンテンツのジャンルはなんだかわかる?」

 

「えっ……と、クランバトルですか?」

 

「残念!

ちょいエロ。」

と言って、N・ロックは、ガハハと笑った。

 

同席しているのは、アンキーと、白衣の女性。

くっきりと隈取の濃いメイクのアンキーとは対照的に、抜けるような白い肌に、整った顔立ち。

これが、強化人間を作り出した悪名たかのムラサメ博士だときいてユリアンは驚いた―――

 

N・ロックはなかなかの雑談の名手だった。

そして、監視の警備員もいない。

 

つまり逃げようと思えばいくらでも、逃げられるし、場合によっては、N・ロックに危害を加えることだって、可能なのだろうが、彼は気にもとめない。

 

話題は、N・ロックが企画中のコンテンツの話から、グラナダのグルメガイドと多彩に渡ったが。

 

「……遅いな。」

と、N・ロックは時計を眺めた。

 

もうかれこれ1時間近く、ここで雑談をしている。

 

「なんて便なんですか?」

ユリアンは、掲示板を見つめた。

とくに、発着に遅れは表示されていない。

 

「いや、アナハイムムーンが手配したシャトルだから、あそこには表示されないんだ。」

N・ロックは、気忙しそうにタブレット型のデバイスを取り出した。

「遅延があれば、連絡はくるはず―――ん?」

 

その表情が、険しくなった。

 

「予定通り到着している?……」

彼は顔をあげるとぐるりと、ユリアン、アンキー、ゼロ・ムラサメを見回した。

「やられた! 保安部が、行き先をグラナダ宙港てはなく、うちの研究所に変更している!」

 

同時にアンキーの手元のデバイスも光った。

音声通信だ。

 

「……なんだ? いまわたしはアナハイムムーンと商談で……なに? クランバトルだと?

アナハイムムーンが勝手に、か?」

 

アンキーはじろりと、N・ロックを睨んだ。

 

「スパルタニアンの実戦テストを兼ねたクランバトル、だと。スパルタニアン2機とマラサイ6機のハンディマッチ。ビーム使用可の特別ルール……場所は?」

 

N・ロックは、手元のデバイスに月面の地図を表示させて、アンキーにみせた。

 

「なるほど。グラナダとアナハイムムーンの研究所の中間か……」

アンキーは、立ち上がって、N・ロックを怒鳴りつけた。

「どういうつもりだ?

ユリアンの保護者を説得のために呼ぶんしじゃなかったのか?

クランバトルにかこつけて暗殺するつもりだったのか!」

 

「ア、 アンキーさん、落ち着いてください。」

「ユリアン! おまえこそ、なにを落ち着いているんだ? お前の保護者が殺されるかもしれないんだぞ?」

「い、いや。こんな不始末を起こしておいてなんだが、その可能性は低いと思う……」

 

ダン!

と、アンキーの手がテーブルを叩いた!

 

「バカも休み休みいえ!

ユリアンの保護者も軍人上がりのようだが、一対多で囲まれてしまえば、そんなものは意味はない。それこそ……」

傍らの長身の女性を見上げた。

「ゼロのような超人でなければ、な。」

 

「ヤン氏は懸命にも同行者を連れているんだ。」

 

「そんなものに意味があるのか?」

 

「ひとりは、ウォルター・フォン・シェーンコップ。」

N・ロックの言葉に、アンキーは凍りついた。

 

「―――薔薇騎士団か……っ!」

 

「そうだよ。まあ、ぼくは軍事の専門家じやあないけれど、大隊以下の人数と装備で、彼と対峙するのは、憚られるね。」

 

まあ。

アンキーは、いったんソファーに腰を落としたが、すぐに

「……だから研究所内で拘束を諦めて、月面を移動中にモビルスーツで襲う算段をしたってわけか!

練習機のスパルタニアンでは、リミッターを外して実弾武装をしたとしても、最新機種のマラサイには……」

 

「同行者はほかにもいるんです。」

ユリアンはゆっくり言った。

彼も不安なのは違いなかった。だがヤンは少なくとも、アナハイムムーンがこんな無茶をしでかすことを予想していた。

そして、その為の人選をすませていた。

「ポプラン中尉……知ってますか?」

 

「名前はきいてる。『ハートのエース』ポプランだろ?

だが、戦闘機乗りだ。モビルスーツには終戦まで乗らなかった、と」

その目が大きく見開かれた。

「―――そうか、だから可変機のスパルタニアンかっ!」

 

「あと同行者はふたりいます。アッテンボローさんと」

 

「うん。きいている。ア・バオア・クー仮想戦でヤン君の副官を務めた若者だ。」

 

「あとはアムロ・レイ。」

 

ぽかん。

と、アンキーは口をあけて、今度こそ、ソファーに崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 




ポプランさんのモビルスーツ初戦闘!!
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