第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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「白い悪魔」伝説
・最新鋭機がマブを組んでも秒殺
・シャトルなんてチマチマしたもんで降りてられるか!と、サランラップ一枚で大気圏突入
・黒い三連星を瞬殺した。いや瞬殺どころか試合まえに倒した、というか踏み潰した
・そのまま豪華ホテルのスイートルームで豪遊。サンドイッチにパフェにラーメンを平らげる
・部屋に女の子をふたりも呼んだ。
・すごく若い子が好みらしい。






第15話 重力の井戸~ガンダムを駆るものたち

アムロは、軟禁された。

 

部屋はホテルの一室で、二間続きの立派なものだった。はっきり言ってしまうとトアールコロニーの彼の部屋よりはだいぶ豪華だった。

クラバ主催者の代理と名乗ったデニムという男は、アムロをどう扱っていいのか明らかに困っていた。

 

参加中のザクを損傷させてしまったのは、アムロのミスである。

だがトアールコロニーの『白い悪魔』が、ネオホンコンのクランバトルに参戦することは知らされていたらしく、どうもデニムは、アムロの登場を演出のために彼がわざとやったのだと理解しているようだった。

 

とんでもない!

 

シャトルで大気圏突入寸前に、テロリストの疑いをかけられて連邦軍教導隊を名乗る新型機に襲われて、大気圏に落とされた。

幸いにも簡易的な大気圏突入用の装備があったので、断熱圧縮による高熱を緩和できて、減速に成功した。

クラバの場所がネオホンコンなのは聞いていいたので、そっち方面に落ちるように角度を調整した。

幸いにもシティの近くに、モビルスーツがいる広場がみえたのでそこなら安全に「ガンダム」を降ろせると考えたので、そうした。

 

まさかそこでまさにクランバトルが行われていたとかは、事前の情報もなく大気圏に無理やり蹴落とされた状態でそこまでの余裕もあるわけが無い。

 

説明をすればするほど、デニムの視線は疑いに塗れていく。

 

「いま、ここのクラバの主催者のクワトロ大尉に連絡をとっている。」

デニムは、ようやく主に判断を丸投げするというアイデアを思いついたらしい。

「あんたが、『白い悪魔』のパイロットでアムロ・レイだということまでは疑っていない。 だが、いきなり衛星軌道上から落下して初戦の対戦予定の相手のマッシュを踏み潰しにくるとは、あまりにも非道すぎる。」

 

「だから誤解なんですよ!」

 

「そこの判断も含めて、クワトロ大尉が戻ってくるまで、待って貰えないか。

外出は我慢してもらうが、食い物はルームサービスを自由に使ってもらっていい。

クワトロ大尉は、明後日には、戻ってくるはずだ。

うちのクラバへのエントリーや報酬の件などはそこからくわしく話をさせてもらう。

あんたの機体……は、厳重に保管している。あんたの許可がでるまでは誰にも触らせないよ。」

 

そうだった。

クワトロと名乗る人物が、はたしてシャア・アズナブルなのかを確認しなければならない。

これはジオンの国家元首からのじきじきの依頼だ。

で、もしそうなら抹殺せよと?

 

つくづく依頼する相手を間違えている。

そもそもアムロはシャアという男に会ったこともないのだ。

クワトロと会ってもそれがシャア・アズナブルなのかどうか判断のしようがない。

 

かつて彼のいたサイド7はシャアに奇襲をうけ、その結果連邦のモビルスーツ開発は頓挫して、その開発に携わっていた父テム・レイはその後、冷遇されることになったのだからまったく関係がないとはいえないのだが。

 

アムロはばかばかしくなって、窓の外のネオンに目をやった。

 

アルファベット、漢字が入り乱れるネオンは、トアールコロニーでは珍しい。

 

なので次のデニムの言葉は聞きそびれた。

 

「……は呼ぶか?」

 

それには答えずに、デニムを見返すと、彼は名刺を放ってよこした。

 

「すまんが、大尉が戻るまで外部との接触は最小限にしてもらう。もし呼ぶんならここにしてくれ。

質のほうは保証するし、代金はこっちで持つ。」

 

デニムはそれだけ言って、部屋を出た。

 

 

-----------

 

 

部屋を出るな。

とは言われたが、立ち上がったアムロが確認してみると別に外側からドアに鍵は掛けられていない。

 

あくまで、アムロは重要な招待選手であって、ザクを踏み潰したことについての保証問題だけなのだろう。

 

飲み食い自由で二日間の軟禁か。

 

ホテルは高級だし、そう悪い条件ではない。

故意ではないとはいえ、モビルスーツを一機、損傷させてしまったのは事実である。

 

アムロは、ルームサービスでサンドイッチと飲み物を取り寄せて、休むことにした。

とりあえず、明後日、そのクワトロ大尉とかが帰ってくるまではすることもないのだ。

 

だが、サンドイッチを食べ終わる前にドアホンがなった。

 

「誰ですか?」

と尋ねると

「『白い悪魔』が泊まってるのはここ?」

若い女性の声がした。

 

なにかルームサービスで頼んだもので届いてないものでもあったかな?

 

アムロは、ドアを開けた。

 

若い。というよりほぼこどもに見える。

ショートの髪を赤く染めていた。

おもわずじろじろと彼女を二度見してしまう。

 

タンクトップにショートパンツ。小柄だがすらりと足が伸びている。

少なくともホテルのスタッフでもクラバの関係者でもなさそうだ。

 

「はじめまして。」

ぺこりとおじぎをしたとたんにタンクトップの胸元が見えた。谷間はかなり、深い。

小学生かと思ったがもう少し年上なのかもしれない。

 

「は、はじめまして……」

その後ろから声がした。

 

こちらは背の高いほっそりした女の子だ。なんとなくおどおどしたような印象をうける。黒髪を長く伸ばしていた。

 

アムロは反射的に、デニムがおいていった名刺を思い出した。

「……を呼ぶか?」

ちゃんと聞いてはいなかったが、それは女性を部屋に呼ぶか、という意味だったのだ。

アムロが否定も肯定もしなかったので、デニムが勝手に気を利かせたのかもしれない。

 

たしかにクラバの出場者はこの前まで非合法だったこともあり、ワケありや荒くれ者も多い。そういったものたちの中には、一戦おわったあとに女性を求めるものも多かった。

 

デニムさん!勝手なことを!!

アムロの焦りはおそらくハイザック二機を相手にしたときより大きかっただろう。

彼女たちは、美人ではあったが、アムロにはそんな気はなかったし、なにしろ若すぎる。

 

「た、頼んでないです。」

アムロはあわてて言った。

 

はあ?

ショートのチビの方の眉がぴくりと動く。

 

「今日はいろいろあって……疲れてるんです。休ませてください。」

「そうは言ってもこっちはこっちではいそうですかって帰れないんだけどぉ?」

 

そうなのだ。

こういうところの女性はそうなのだ。

 

「いえ? ほんとに疲れてて。そのチェンジとかではなくって……」

 

「チェンジ?」

ショートカットはいっそう顔をしかめたが、長髪スレンダーのほうは意味を理解したようだった。

 

「あ、そういうのではない、です。」

上目遣いで、彼女はおどおどと言った。

「マチュ! なんでわたしたちがソドンからここに直行したのか言わないと。このひとはすごく勘違いを、している。」

 

そうだね、ニャアン。

と、マチュと呼ばれたショートカットは頷いてから。

 

アムロをまっすぐに見つめた。

意志のこもった力強い瞳だった。

 

「『白い悪魔』に会えと。ガンダムが言ってる。」

 

……

 

いっそうわけがわからない。

 

まさか。

ヤバいタイプのお嬢さんなのか!!

 

アムロはドアを閉めようとしたが、靴先がそれを遮った。

影から姿を現したのは、アムロと同世代の男性だった。

精悍な風貌である。

 

「部屋にいれてもらう。」

軍人、それも将校のように、ひとに命令するのに慣れた口調だ。

「話はそれからしよう。」

 

つ、美人局だ!!

アムロはパニックになった。

 

ち、地球は怖いところだなあ。

 

「なにか勘違いしているな。」

若い男は宥めるように言った。

「わたしはジオン公国軍特務戦艦ソドン所属の中尉エグザべ・オリベという。」

 

「ジオン公国軍が美人局!!?」

 

そ、そこまでジオンの財政は追い詰められていたのか!!

 

……

 

互いの誤解がとけるまでには20分以上の押し問答が行われた。

アムロはなんとか胸を撫で下ろしたが、今度はマチュやエグザべ中尉の機嫌が恐ろしく悪くなった。

 

軍人として自国の軍が女性の斡旋をやっていると思われたのは心外であったし、そういうところの女性に間違われるのは、女性にとっては愉快ではないからだ。

 

 

アムロは、またルームサービスを追加するはめになった。

マチュはパフェにソーダ。ニャアンはラーメンを頼んでいた。

 

悪い子たちでは少なくともないのだろうが、とアムロは思った。

恐ろしくマイペースだな。

エグザべ中尉と自分にはコーヒーをたのむ。

 

「思い出しました。

イズマコロニーのクラバでデビュー以来負け無しの『狂犬』マチュですね。しばらく噂をきいてなかったのですけど。ネオホンコンのクラバに参加するんですか?」

 

「そのあだ名はなんとかならないの?」

ぶつぶつと文句は言っているが、少し機嫌はなおってきている。

 

「むかしの格闘技のリングネームみたいなもので、周りが勝手につけるんですよ。ぼくだって『白い悪魔』なんて大げさに呼ばれて困ってます。」

 

「……あなたがアムロ・レイ?」

 

「はい。そうです。」

 

「あなたが、何度もシャアさんを殺してしまう悪い人?」

 

一瞬、セイラさんからの手紙のことが、ジオン公国軍に?

恐ろしい考えが頭をよぎったが、そんなはずはない。

とすると、マチュはやっぱり単に危ない子なのだろうか。

アムロはマジマジとマチュを見たがとてもそうは感じられなかった。

 

そしてマチュもまた。

 

よりにもよって、そういう女性に間違えられたにも関わらず。そしてなぜかシャアを何度も殺す悪い人と呼ばれたにも関わらず、アムロへの反応は悪くはなかった。

 

首を傾げながら、顔を近づける。

 

「……あなたは似てる。」

 

「なにに?」

 

「わたしのジークアクスに。」

 

困惑したアムロにエグザべ中尉が口をはさんだ。

 

「正式にはガンダムクァックス。ジオンがガンダムの後継機として試作した新型モビルスーツだ。

サイコミュ搭載の、な。」

 

軍人だけあって、その視線はアムロを射抜くようだった。

 

「我々はきみ、というより、きみの機体に興味がある。テム・レイ博士の作り上げた『ガンダムもどき』。あれにはサイコミュが搭載されているのだろう? 」

 

「エグザべ中尉。」

ニャアンが口をはさんだ。

「怯えている。そのやり方はやめた方がいい。」

 

「そうだよ、ロッカーオトコ。」

 

「怯えさせて導き出した情報は信頼性が低い。」

ニャアンは少し自慢そうに言った。

「キシリア様がそう言ってた。」

 

酢でも飲まされたような顔でエグザベ中尉は黙った。

 

「まあ、難しいことはあとでいいよ。今夜は『白い悪魔』に会えただけでよきとしよう。『悪い人』でもなさそうだし。」

マチュはうんうんと勝手に頷いた。

「あれこれ、判断するのはさ。大佐が戻ってきてからにしようよ。わたしたちもここのクラバに参加するんだし。」

 

「た、たいさ? クワトロさんは大尉でしょう?」

 

「ああ、クワトロ・バジーナってシャアさんの別名なんだよ。一応、ソドンのクルーやみんなには内緒ね。

でもまえにいたトリントンでは、なぜかみんな大佐って呼んでるんだよ。」

 

 

 

 

 




あっさり、クワトロ=シャアが分かってしまった、という。
でもまあこの情報はもう、シャリア経由で、ランバ・ラルやアルテイシアには伝わってますでしょうから。
アムロとしてはむしろあんまり知りたくなかった情報です。
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