第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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バトルが始まるまでに、引っ張りすぎなような気がします。アニメのGQuuuuuuXみたいにテンポよく進めたいんですが、あれも説明しないと、これの真意はこうだから、みたいなことを書いてると、とにかくバトまでが長く。一応、アニメを意識してるので、「~話」に一回はバトルシーンを入れようとは思ってるのですが。








GQuuuuuuX season2 第8話 仮面喜劇~天才と悪魔

「クランバトル、クランバトル。

これより、クランバトルを開始します。マラサイ6機とスパルタニアン2機によるハンディキャップマッチです。ビーム兵器使用可の特別ルールによるクランバトル。―――開始します!!」

 

月面の地平線は、地球のそれより近い。

 

見通しの良い月面でも、水平距離にして2キロ足らずで、地平線の向こうに消える。

 

マラサイ6機が、地平線の向こうから姿を現したとき、アムロはすでにスパルタニアンを人型に変形させていた。

 

「ポプランさん、高度を上げてください。2000以上。」

 

「了解。」

 

飛行機形態のスパルタニアンが、するりと上昇する。

迷いがない。

 

「アッテンボロー、バギーを右手の窪地に隠してください。」

単なる意趣返しなら、マラサイの目標は、一応の招待客であるヤンの乗るバギーではなく、アムロとポプランの乗るスパルタニアンになるはずだ。

 

「止めたら的になりませんか?」

さすがに心配そうに、アッテンボローが尋ねたが、ヤンが遮った。

 

「我々には直接の攻撃はないはずだ。危険なのはアムロくんとポプランだよ。」

 

スパルタニアンは、デモンストレーションでユリアンたちが乗った時からいろいろと改装は施されている。

だが。技術者によくあることだが、塗装はそのままだった。

 

ポプランのそれは、鮮やかなピンク。

兵器として見ればとんでもない色使いだが、実はこの色はパイロットにはわりと好まれる。

機体をピンクに塗りたくって“赤い彗星”と呼ばれたエースがいたからだ。

 

一方のアムロは明るいグリーン。

 

視認が重要な意味を持つミノフスキー粒子下の戦闘ではかなり不利なはずだが、アムロ自身も自分の“ガンダム”をトリコロールカラーにペイントしていたようにわりと派手な色は気にしない。

 

マラサイ6機が、二手に分かれた。

3機が上昇。ポプランのスパルタニアンへ向かう。

3機は、月面をホバー走行しながら、アムロ機に向かってきた。

 

手慣れている。

 

まえに、トロイホースの拿捕に向かった際に遭遇したときもそうだが、下手な軍人よりもみっちりと訓練をされている。

飛ばすだけで、推進剤を消費し、細かなメンテナンスも必須なモビルスーツ部隊の練度がそこまで高いということは、アナハイムムーンの軍事への金のかけ方を現していた。

 

自分に向かってくる3機のマラサイを無視するように、アムロはマシンガンを上空にむけた。

 

ガッガッガッ!

実際には真空に近い月面では、音はしない。

だが、マシンガンが躍動し、薬莢が飛び散った。

 

ガクン。

上昇中のマラサイの一機が、失速した。

 

新合金で形成されたマラサイの装甲は、その主要部分は、ザクのマシンガン程度ではうち抜けない―――はずだ。

 

だが、運悪く(とマラサイのパイロットは思った)銃弾がバーニアを破損させたのだろう。

マラサイは飛翔するピンクのスパルタニアンを諦め、地上のアムロへと標的を変える。

 

“チッ、まずいな。”

アムロは珍しく舌打ちした。

ポプランはたしかに天才的なパイロットだが、なにしろモビルスーツそのものが初めてだ。

そして、スパルタニアンはかなりのポテンシャルを秘めた機体ではある。

ジェネレーターの強化、増設まで含めれば、おそらくはZETAの簡易版のような位置づけで活躍できる機体だ。

 

だが、いまはビーム兵器を使えない2世代前のジェネレーター。武装はザクから流用したマシンガンを持たされているだけだ。

 

アムロとしては、ポプランにむかった3機のうち少なくとも2機を。出来れば全機を撃ち落としてしまいたかったのだが、試射をすることも出来なかったザクマシンガンの精度はその程度のものだった。

 

「ポプランさん! 少し持ちこたえてください! 機銃操作は、普通の戦闘機と同じですが、反動に注意して!」

 

鮮やかなビンクの機体が、急降下。

至近距離で発射されたザクマシンガンがマラサイのメインカメラとビームライフルを破砕した。

 

「……こんな感じでいいのか?」

 

「……そんな感じでいいです。」

 

ポプランという天才は、はたして教えがいがあるのかないのか。

 

ポプランと一対一で対峙することになったマラサイのパイロットは、別段、悲観はしていなかった。たしかにこいつは戦闘機には慣れているのだろうが。

長距離からのミサイル発射ですべてが決まるレーダー時代ではない。

有視界でのドッグファイトにおいては、モビルスーツは戦闘機にはるかに勝る。

 

迫るピンクのスパルタニアンの照準を外すように、マラサイを横滑りさせた。

 

弾丸は虚しく宙に消え、スパルタニアンがマラサイの傍らを通り過ぎる。

 

もう一度、マラサイに照準を合わせるために、戦闘機は大きく旋回するしかない。

一方で、モビルスーツはただ後ろを振り向くだけでいいのだ。

 

振り向いて。

撃つ。

 

彼の脳裏にはクラバのルールなどない。

ビームコーティング剤など施されていないスパルタニアンなら、どこに当たっても致命傷になるはずだ―――

 

振り返ったマラサイが目にしたのは、人型に変形したスパルタニアンが構えるマシンガンの銃口だった。

 

「……いやあ、変形機構ってのは便利なもんだよなあ。」

一般回線を通して、のんびりとした若い男の声が聞こえた。

 

く、クソっ!

マラサイの装甲は、ザクのマシンガン程度なら致命傷にはならない。

こちらが多少ダメージを負っても……

 

ガンッ!

衝撃が加わり、全周囲モニターがブラックアウトした。

ガンッ!

両腕の指が破損。

ガンッ! ガンッ! ガンッ!

 

バーニア、メインスラスター破損。ビームサーベル破損、サブカメラ破損……

 

お、落ちる!!

 

 

戦闘力を失い月面へと落下を始めたマラサイを、もうポプランは見ていない。

足元の月面で行われているマラサイ部隊とグリーンのスパルタニアンの戦いを見ている。

ポプランほどの男が思わずつぶやいていた。

 

「……あれが、“白い悪魔”か。」

 

 

 

 

アムロは機体をジャンプさせた。

いままで、彼がいたところを、ビームの火線が走り抜けていく。

なるほど。

彼らはクランバトルのルール……パイロットは殺さない、コクピットを狙っての攻撃は避ける、メインカメラ破壊で勝敗決定など、を守る気はまったくないようだ。

 

「はやく、上空のスパルタニアンを片付けてこっちに合流しろ!」

隊長機らしい。一般回線で平気で指示を出してしまうところは、やはりプロの「軍隊」とは違うようだ。

アムロは、マシンガンを放った。

 

マラサイはかわしもせず、右肩のバインダーで受けた。

ダメージ……なし。

 

「αワン、ツー、左右から回り込め。

βツー、まだ動けるか? 援護しろ!」

 

βツーはアムロの射撃で、メインスラスターを損傷して地上に降りてきたマラサイだろう。

 

「隊長! βスリー、撃墜されました!

バーニア、メインカメラ損傷。戦闘続行不可能です!」

 

「なにをしている!」

 

「βツー、上空にてスパルタニアンと戦闘中……いや、メインカメラとメインスラスターをやられました。地上に落下します!」

 

「なにをやっている! 相手は生まれて初めてスパルタニアンを扱うパイロットだぞ?

まして最新鋭機マラサイがなぜ遅れを取るんだ!?

なにものなんだあいつは?」

 

ビームを掻い潜りながら、アムロはせっかくなので教えてやった。

 

「元連邦のエースですよ。“ハートのエース”ポプラン中尉です。」

 

「な!なんだと!?

それにしても、なぜスパルタニアンであんなに……」

 

「いや、もともと戦闘機乗りだったから、可変機構のあるモビルスーツのほうが使いやすいんじゃないですか?」

 

そう言いながら、アムロは、接近戦を仕掛けてきたマラサイのビームサーベルをひょいと身を屈めて、かわした。カウンターでヒートホークを首元に叩き込む。

メインカメラが、吹っ飛んだマラサイは、バランスを失い岩につっんで停止した。

 

 

「き、きさまも、連邦のエースかあっ!」

 

「いやぼくは、戦争には行ってません。クランバトルではじめてモビルスーツに乗りました。」

 

「ヤンの仲間か!? ネオ香港大学の」

 

「ヤンさんとは、最近知り合っただけですよ。」

 

「……名前は?」

 

「アムロ・レイ。」

 

呪詛と悲鳴が、回線を満たした。

 

 

 

-----------------

 

 

 

「何なんだっ! あいつらは何なんだ!!

いったいヤンは何を連れてきたんだ!?」

 

アナハイムムーン保安部長はわめいた。

もう彼にはそのくらいしか出来ることはない。

 

モニターのなかでは、両脚の関節を破壊され、指を破砕され、戦闘力を失ったマラサイに、ゆっくりと緑のスパルタニアンが近づいていく様子が写っていた。

ヒートホークを振り上げ。頭部を破壊。さらに両腕にヒートホークを振り下ろす。そこまでやって、ゆっくりと次のマラサイに取り掛かる。こちらは膝を撃ち抜かれ、片手を肩口から切断されている。

立ち上がることも出来ずに、後ずさるその手が、偶然、取り落としたビームライフルに触った。

 

「くそっ!死にやがれ、白い悪魔!」

マラサイのパイロットは、必殺の思念を込めて、ライフルを射とうとした―――マラサイの指はすでに破壊されていた。

「そ、そんな! 俺はもう死んでいるとでもいうのかっ? あっ、ペッ、ポゥッ!!」

 

モビルスーツを壊してるだけだから、へんな悲鳴とかはやめて欲しい。

と、アムロは心から思った。

 

アナハイムムーンが、クラバルールを守らないで、死んだフリから攻撃でもされるとやっかいなので、完全にマラサイが動けなくなるまで、機体を損傷させているだけだし、ヒートホークを使っているのは、マシンガンの弾薬が残り少ないからだ。

 

彼としては退屈な作業をしているだけなのだが、見ているものはみな思った。

 

悪魔!!

白い悪魔だ!

 

 

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「薔薇騎士団のシェーンコップ、“ハートのエース”ポプラン、“白い悪魔”アムロ・レイ。」

さきほど、研究所内でヤンたちを逮捕しようとして失敗した保安隊長が呟いた。

「どこかの勇者パーティでも連れてきたとでもいうのか?」

 

「“鬼”に“悪魔”まで従えてるんだ。」

ゼェゼェと息をきらしながら、保安部の部長が言う。

「どこぞのスライム魔王にでも例えるのがよいのか……」

 

 

 




マラサイはけっこう優秀な機体だったのに、かくして、ジオンにも連邦にも採用されることはなかった……
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