第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ここまでの整理。
希少資源の輸入権をかけたクランバトルは、大気圏内内での3対3のバトルで行われます。
参加は、連邦側が、ヤザン、ジェリド、ポプラン。
機体はギャプラン。
ジオン側は、ソム・エドワウことアルテイシア。
あとの2人はこの章でたぶん決まります。
機体は、ソムのレイダーと、改修済みのスパルタニアンです。






GQuuuuuuX season2 第9話 クランバトル~ダブル

 

「シャリア・ブル。長く不在にしました。

わたしの不在中になにか?」

 

サングラスをかけたり、前髪をあげたりするだけで、別人になりすましたつもりになるのは、この兄妹の悪い癖である。

平々凡々とした顔立ちではなく、とびきりの美形という特徴があるのだ。

まあ、多少の違いといえば、ソム・エドワウのときは、わずかに声のトーンが低い。

それにスーツやパイロットスーツなどが多いため仕草が若干だが、男性ぽくなる。

 

 

ジオン公王府直属艦隊司令官シャリア・ブル准将は、ソム・エドワウの顔をまじまじと見た。

 

「……なにをやっているのです? ミーア・キャンベル?」

 

ソム・エドワウは、降参した、とでもいうように両手をあげた。

 

「無理です、姫様。」

 

「そうだった。シャリア・ブルはひとの心が読めたわね。」

ドアが開いて、アルテイシア・ソム・ダイクンが姿を見せる。

こちらもミーアそっくりのスーツ姿だった。

 

「……おかえりなさいませ、閣下。」

 

「留守中ご苦労です。シャリア・ブル。」

 

このホテルは、ワンフロアとその上下階を、ジオンが貸切にしている。

とはいえ、重火器を使った暗殺も考えられるので、覇権国家の元首が滞在するには、充分安全とは言い難い。

 

公式な訪問ではないとはいえ、アルテイシアは毎晩のようにパーティやレセプションに顔を出しているのだ。

 

「こちらからの報告書には、すでに目を通していらっしゃいます。」

ソム・エドワウの姿をしたミーア・キャンベルは慎ましやかに言った。

 

「ソドンは昨日、ネオ香港に到着しているはずですが、半日どこにいらっしゃいました?」

 

シャリア・ブルの問いに、アルテイシアは一瞬、天井を見上げたが、彼の読心術に思い至ったのだろう。

 

「ヤザン・ゲーブルと会ってたわ。二人きりじゃなくてね。

腕のいいパイロットをスカウトできたのでそれを紹介してきたの。」

 

「それは興味深いです。」

シャリア・ブルは、じっとアルテイシアを見つめた。

その目が驚愕に見開かれる。

アルテイシアの心を読んだのだ。

「……なんで、連邦側のパイロットを発掘して、それを紹介するんです!?」

 

「オリビエル・ポプランはもともと連邦軍のエースよ。ジオン側からは出場させられないわ。」

 

「だからと言って……」

シャリア・ブルは座り込んでコメカミを抑えた。

ほっておけばいつかは人類の粛清に走る。

そう言って、一度は、シャア・アズナブルを亡き者にしようとしたシャリア・ブルではあるが、結局のところダイクン家は、程度の差こそあれ、みな同じ穴のムジナではないのだろうか。

 

「ヤザンから、今回のクランバトルは3対3の特殊マッチ。大気圏内での可変機によるバトルときいたわ。」

アルテイシアは多少、言い訳するような口調で言った。

「連邦はヤザンとジェリドしかパイロットが決まっていないじゃないの。

わたしたちもあまりずるずると滞在を伸ばす訳にもいかないし、そろそろ決着をつけたいわ。」

 

「あのですね。」

シャリア・ブルはなんとか冷静を保ちつつ言った。

「こちらはまだ、あなた以外のパイロットも決まってないのですが。

それに機体も。

ジオン所有の機体で、大気圏内を飛行できるのは、あなたのレイダーだけです。」

 

「それについては、手当が出来たわ。

……スパルタニアンを2級。ソドンに乗せて運んできているの。練習機用のリミッターを解除してマグネットコーティングまで施した改修機。かなり優秀なのは『白い悪魔』のお墨付きよ。」

 

「パイロットは!?」

 

「あなたがいるでしょう? シャリア・ブル。」

 

無茶を。

と言葉が出かかったが、シャリア・ブルは堪えた。

もともと今回の希少資源を巡る外交問題をクランバトルで、決着させようとするのは、ある意味茶番である。

 

互いの主張のこじれから、「戦争」に発展しかねない問題を「クランバトル」に任せる。

その実行例をつくるために、連邦軍のゴップが仕掛けた出来レースだ。

 

地球側が輸出規制をかけた希少資源は、コロニーの建設、維持に不可欠なものであるが、実際には、月面都市を間に挟むことで、引き続き輸入は可能である。

 

「クランバトル」などという少し前までは非合法だった見世物に、外交問題の行く末を任せる。

通常ではありえないことだが、人類の持つ兵器はあまりにも進化しすぎた。

 

やろうと思えば、ジオンは、地球が荒廃……いや、ひとが住めぬ環境になるまで、質量弾を投下し続けることは可能だろう。

一方で、コロニーという人口環境は脆い。

核兵器によるテロなどが行われれば、どれだけの被害がでるか想像もつかなかった。

 

クランバトルによる決着。

そのありえない構造を一端で支えているのが、元首であるアルテイシア・ソム・ダイクンが自ら出場するということだ。

少なくともジオンは本気であり。

その勝敗による結果を受け入れるであろうことは、これをもって、万民に知らしめることが出来た。

ただし、出場登録は、ソム・エドワウ。

うわさはうわさとして、別名義での出場だ。

ならば、公王府直属艦隊の司令官である自分が、出場することは充分意味のあることなのだろう。

 

「……仕方ありませんね。ランバ・ラル殿には恨まれるでしょうが。」

シャリア・ブルはしぶしぶそう言った。

「それでもひとりパイロットが足りません。如何されるお積もりですか?」

 

「白い悪魔……アムロ・レイに出場してもらうわ。」

 

「彼はうんと言ったのですか!?」

 

「いいえ。きっちり断られています。」

 

話しが通じないっ!

 

これがダイクン家か。

シャリア・ブルはかつて見た木星圏の宇宙の深淵を覗き込んだような気分になった。

 

「でも試合が決まって、こちらの選手がまだ決まってないという危機的状況になればきっと助けてくれるわ……」

 

それは。

たしかにその「可能性」はあった。

だが、そもそも出場選手が決まらなければ、クランバトルは開催できない。

 

「……例えば元ジオン軍人で、かなりの腕をもち、積んだ金次第では、協力してもらえる人物がいれば、わたしのほうから交渉してもよろしいでしょうか?」

 

「ぜったいダメよ、シャリア・ブル閣下!」

あなたも読心術を心得ているのか、と言いたいほど、キッパリとアルテイシアは言った。

「アレと一緒に戦って、背中を撃たないでいる自信はないわ!」

 

それからブツブツと呟き始めた……

 

「そうか……なら、いっそ試合中の不慮の事故で……」

 

これはダメだ。

性格はともかく、腕の方は確かで、元ジオンパイロット。伝説のエース。

彼を引っ張り出せないなら。

 

そうか!

マハラジャ・カーンの次女が、ネオ香港大学に来ていたな……

 

 

 

 

---------------

 

 

 

「ヤザンの旦那。とにかくあんた、やることが性急すぎんだよなあ。」

ポプランはぼやいた。

「俺は昨日、グラナダから帰ったばっかなんだせ?」

 

「無駄口叩いてると、したぁ、噛むぞ?」

ヤザンは、この男が嫌いではない。

無鉄砲で、ギリギリの死線でも軽口を叩き、女好きで、しかも操縦が上手い。

「高度2万で、モビルスーツに変形する。

けっこう目が回るから気をつけろよ。」

 

「なんに、気をつけるんだい? 風邪をひかないようにか?」

 

ギャプランは、オーガスタが開発した可変機だが、大気圏内は専用ではない。

大気圏内で使用する場合は、高高度迎撃―――つまり専用ブースターで打ち上げて、落下しながら戦うことを想定している。

 

ヤザンは、ブースターをもう一度ふかすと、ギャプランを変形させた。

ムーバブル・シールドバインダー内蔵メガ粒子砲がその主要武器だ。

おそらく、クランバトル実施の際には、機銃に換装させられるだろう。

つまり、武装がいくら優れていても、ジオン側が持ち込んでくるスパルタニアンとかいう練習機との違いはそれほどなくなってしまう。

 

「いいか! 無理に上下を意識しようとするな。オートバランサーが機体を安定させてくれる。周りを把握するのはそれからだ。

まず、敵を探して捕捉。そしたら、だ。

撃つんじゃなくて、回避行動にうつれ。敵も同じことを考えている……」

 

「―――あーと、こんな感じかね、ヤザンの旦那。」

 

ヤザンの注意をききながら、ポプランはその通りにやって見せた。

さらに。

 

飛行機形態への変形、モビルスーツへの変形。

なんどか繰り返す。

 

「スパルタニアンとはクセが違うな!」

ポプランはブツブツと言った。

「使える武装は……ビームサーベルはさすがにモビルスーツに変形しないと使えんか。

なあ、ヤザンの旦那。」

 

「……てめえはっ!

そんな腕前で、なんでモビルスーツへの配置転換を断ってやがった!?」

 

「そりゃあ、人型兵器なんて、こども向けのアニメの産物にのりたかねえだろ?」

 

「ジオンのザクがあれだけ、猛威を奮ったのを目の当たりにしてもか?」

 

「まあ、俺はセイバーフィッシュで、ザクもドムも落としたけどな!

……でな、ヤザンの旦那!」

 

「言いたいこたぁ、わかる。」

ヤザンは頷いた。

「ギャプランは、強襲用の機体だ。今回のクランバトルは、『落ちたら負け』。つまり無理に仕掛けなくても、飛行が出来なくなったら終いだ。持久戦はギャプランには不利だ」

 

人型に変形させたギャプランを、ポプランが寄せてきた。ヤザンのギャプランの肩に手を置く。

 

簡単に言うがどちらも自由落下の状態だ。

速度を合わせるだけでも並の腕ではない。

 

“このやろう、どこまで……”

ヤザンが心のなかでぼやいた。

 

「そして間違ってもジオンのリーダー機は落とせない。」

「なんだと! てめえ!」

「さすがにヤザン殿。ご存知でしたか。

俺をあんたに引き合わせたあのソム・エドワウってパイロットは」

「アルテイシア・ソム・ダイクンだ。」

 

ヤザンは認めた。

 

「間違ってでも、殺したら、えらいことになる。

クラバのルールもなにもあったもんじゃない。

ぜったいにジオンは報復するだろうよ。多分、もう一度、地上の人口を半分にするくらいには、な。」

 

「怖い怖い怖い。」

ポプランは笑った。

「なんでこんな試合をひきうけたんだよ、ヤザン。」

 

「そうまでして、『戦争』を止めたいっていう志しに少し惚れちまったのさ。」

ヤザンはうそぶいた。

「俺は、戦うことは嫌いじゃねえが、戦いたくない連中の生命までも犠牲にするのはあまり好まねえ。『戦争』っていうのは、どうしたって、非戦闘員の巻き添えが出ちまう。

ギレン、キシリア、デラーズ、ジャミトフ。

偉そうなことを抜かすやつは、みんなクソだったぜ。」

 

「アルテイシア・ソム・ダイクンは少しはましか?」

 

「ランバ・ラルやシャリア・ブルも含めてな。

そして、ジャブローのモグラ共もゴップが上手く、コントロールしている間は、地中のミミズで満足するだろう。」

 

「ふむふむ……」

ポプランは考え込んだ。

「……この件を、俺の知り合いに相談してもいいかな?」

 

「誰にだ? あんまり触れ回っていい話じゃねえぞ?」

 

「ネオ香港大学のヤン・リー元大尉殿だよ。あんたも、参加した『ア・バオア・クー仮想戦』の連邦軍司令官だ。」

 

 

 

 

 

 




という訳で、
アルテイシア&シャリア・ブル&ハマーン
VS
ヤザン&ジェリド&ポプラン
のクランバトルとなりました。ジ、ジェリド、大丈夫!?
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