第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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やっとはじまりました!
今回では終わりません。







GQuuuuuuX season2 第9話 クランバトル!!~開始!

キュベレイはそれほど、装甲を重視した機体ではない。

装甲の強化からの、運動性を補うためのジェネレーター強化、バーニヤ、プロペラントタンクの増設、更なる機体の巨大化、被弾面積の増大を補うための装甲の強化、重量を増した機体への運動性を担保するための、ジェネレーター周りの強化、増設バーニヤの設置、推進剤を補うためにさらなるプロペラントタンクの増設……

と、これはキリのない堂々巡りではあったが、キュベレイの設計思想はそこにはないのだ。

 

「それにしても一機を背負ってあれたけの加速と上昇速度を維持できるとは、テム・レイ博士の」『シルエットシステム』はたいしたものだ……」

マ・クベは、ハモンが出してきた赤ワインが気に入ったようだった。

酒量はもともと多くない彼は、慎重にグラスを口に運ぶ。

酔ってしまっていいような場所でも、状況でもない。

 

彼らの主人であるアルテイシア(いまは、クランバトル選手のソム・エドワウと名乗っている)が乗るレイダーは、シャリア・ブルのスパルタニアンに勝る速度で上昇中だ。

 

「可変機はコストの問題で、量産は難しい」

そう言ったシェーンコップの傭兵部隊は、護衛や人質の奪還などを得意とする陸戦部隊だが、兵器そのものへの造詣は深いようだ。

「単に移動距離を延ばす、武装を追加する。

そういった強化バックパックシステムは、幾度も交換された。だが、実質的に使い捨てだ。

テム教授の『シルエットシステム』はそれ大きく改善した―――だが、コストの問題は引きずったままだな。」

 

「いまのギャプランのようにか?」

ランバ・ラルはサーモンの切り身を口に運びながら言った。

 

連邦の可変型試作機、ギャプランは真っ直ぐに上昇していく。

 

鋭角で構成されたフォルムは、いかにも俊敏そうだが、実際には大気圏内専用の機体ではない。

稼働時間を少しでも伸ばすため、成層圏への「打ち上げ」にはブースターを使用することを申請し、許可されていた。

高度を確保した時点で、ブースターは、切り離されることになっている。

 

 

 

「ギャプランがブースターを切り離した。」

ゼロ・ムラサメは楽しげに言った。

「あれは3号機……だな。たしかジェリドの機体だ。」

 

「ジェリドやヤザンを知ってるのか、ゼロ?」

シェーンコップが尋ねた。

 

「ペズン討伐に駆り出されていたからね。

腕はよいよ。」

 

 

モニターの中で、ギャプランのブースターが切り離されて落下していく。

 

同時に、ギャプランを変形させた。

 

「速いな。」

ランバ・ラルは、思わず言った。

 

ギャプランの変形は、1秒を切っていた。

モビルスーツ形態に変形したギャプランが、そのまま上昇中のレイダーを射線軸に捉えた。

 

厳密には反則だ。

 

両方のチームが高度を確保して「試合開始」の合図がでないうちに攻撃は出来ない。

だが、相手をロックオンすることは?

 

―――反則ギリギリのアグレッシブさは、いかにも、ジェリドという男らしかった。

 

「スパルタニアンの変形速度は?」

マ・クベが尋ねた。

 

「リミッター解除後、マグネットコーティング付きで、0.9秒弱かな。」

ゼロが答えた。

 

「百式やZETA。テム・レイの手による可変機は、0.5秒前後のはずだ。

たかだか、ゼロコンマの性能差だが、戦場ではこれが大きい。」

意外ではあるが、マ・クベはパイロットの資格をもっている。大戦時には、出撃の機会こそなかったが、ギャンのプロトタイプ機を手に入れ、自分の艦に積み込んでいたくらいだ。

 

「ふん。練習機と試作機の違いだね。大気圏内の飛行における安定性は、スパルタニアンのほうが優れてる。

ギャプランは、大気圏内では高高度迎撃専向きの設計だ。重力下での長時間の機動には向いていないよ。」

 

マ・クベは、グラスを持ったまま、モニターを見た。

 

「つまり——長期戦になれば、ジオン側が有利になる。そう見るか、ムラサメ博士。」

 

「まずもって、ジオンは距離をかせいで逃げ回ってるだけで、勝ちが拾えたはずだ。

レイダーにキュベレイを背負わせるなんて無理をしなければ。」

そう言いながら、くすり、とゼロ・ムラサメは笑った。

「それと、人体実験を繰り返すムラサメ研究所の所長『ムラサメ博士』なんて、いないよ。まあ、世間的にわたしがそれだと思われているけどね。

実質的に、あそこにわたしに逆らうモノはいないし、強化人間でもモビルスーツ開発でも、わたし以上に知見を持つものはいない。

だが、わたしは公的な意味での『博士号』なんてもっていないし、組織的にもあそこの所長ってわけでもないんだ。

……いよいよ、不味いことが重なって、ムラサメ研が廃棄にでもされたときに、責任をとるために、泳がされている……って見方もできる。」

 

「そうなったから、うちに来い。」

シェーンコップが、カラカラと笑って言った。

「腕のいい兵士はいつだって募集している。そいつがモビルスーツの技術者で、医療も出来るなら言うことはない。」

 

「連邦側は速攻を狙うと思うか。」

ランバ・ラルが言った。

 

「そうなるな。そしてジオンも、レイダーはキュベレイを抱えたままでは、不自由だ。こちらも速攻を仕掛ける、と。」

シェーンコップは、ワインのグラスを持ち上げた。

「お互いの意志が一致している。面白い判断だ。」

 

 

「クランバトル、クランバトル開始します。

試合開始まで、5、4、3、2……1!

スタートです!」

 

モニターの中で、レイダーが動いた。

 

まっすぐに、ジェリド機に向かっていく。

 

「速い。」

ランバ・ラルが、また言った。

今度は、感心の色が濃い。

「自ら囮となって、連邦側の出方をみるつもりだ。」

 

「国家元首が?」

 

「国家元首が、だ。」

 

ジェリドのギャプランの両腕から、機銃が放たれた。

 

分離!

 

レイダーの背を踏み台にしたキュベレイが、空中に躍り上がる。

下方に蹴られたレイダーは、わずかに高度を下げる。

 

その空間を、射線が走り抜けていく。

 

鮮やかな回避。

 

「射撃の腕はよいわね。あのジェリドというパイロット。」

ハモンが言った。

「普通の機動では回避しきれず、どちらかのどこかには被弾していたでしょう。」

 

「いいねえ、ソムもハマーンも。」

ゼロは、どこかうれしそうだった。

「よい試合になりそうだ。」

 

初撃を外したギャプランは飛行機形態に変形して、距離と高度を稼ぐ。

それに向かってレイダーとキュベレイの機銃が放たれるが、ギャプランは軽々とそれをかわした。

 

「あれが、ジェリド・メサか。」

マ・クベまでがなぜか嬉しそうだ。

ひとの上にたつものの例にももれず、彼もまた無能な味方より、有能な敵を好むクセがある。

 

「いい腕だよ。ポプランは見てないが、ヤザンとジェリドについては。

でも、はっきり言ってわたしの子どもたちの方が上だね。」

 

「姫もハマーンもニュータイプだ!」

 

「だが、実戦経験はまだまだだ。事実、ヤザンとポプランは、まだ動かない。」

 

そう。

ヤザン・ゲーブルとポプランのギャプランは、まだ打ち上げ用のブースターを切り離してさえいない。

 

「ヤザンたちがもっとも警戒しているのは、シャリア・ブルのスパルタニアンなんだ。

レイダーとキュベレイについては、それがどう動くか。なにが出来るのかをただ観察している。」

 

ゼロ・ムラサメの分析は正しい。

 

ランバ・ラルとマ・クベは心の中で頷いた。

キュベレイでの出撃を希望したのは、おそらくはハマーン自身なのだろう。

それを、レイダーをサブフライトシステムとして利用するという手段で可能にしたのは、だれの発想かは分からぬが、見事というしかない。

だが、実際に戦いの場になってみれば、素直にスパルタニアンを使った方がよかったに決まっている!

 

それこそ、先ほどゼロが言ったように、ギャプランの飛行時間限界まで逃げ回っているだけで、勝ちが転がり込んで来る可能性は高いのだ。

 

外交問題を解決するための初めてのクランバトル。

その立ち上がりは意外に静かだった。

 

飛行形態に変形し、距離をとったギャプランに、レイダーもキュベレイも追い打ちをかけない。

レイダーもまだ飛行形態のままだ。

 

武装としては、レイダーには打撃武器である『トゥールハンマー』とクローアームがあるはずだが、前者は飛行形態では使えず、後者も接近しないと使えない。

そして、稼働時間はともかく、短時間での加速、旋回、上昇などの性能では、ギャプランはレイダーを上回る可能性がある。

 

「キュベレイの腕には、弾倉のスペースはそれほど確保出来ないはずだ。ただでさえ、命中率の悪いマシンガンが得意な『弾幕をはる』という撃ち方が出来ない。」

ムラサメ研究所は、強化人間だけではなく、その機体までも開発している、という。

このゼロ・ムラサメを名乗る女のモビルスーツの知識は、ランバ・ラルやマ・クベから見ても的確だった。

 

「双方とも積極的に仕掛けたはいいが、双方とも手詰まりか。」

 

「ん? キュベレイが!」

シェーンコップが、身を乗り出した。

 

キュベレイが、自由落下しながら、バーニヤを吹かす。完全に飛行は出来ないが、向きをかえたり、瞬間的になら上昇もできる。

腰のスカートが展開した。

 

発射されたのは

 

「ファンネルだ。」

ゼロが、静かに言った。

感情は抑えていたが、その目が、かすかに輝いていた。

「重力下で制御する方法を身につけていたか」

 

「重力下でファンネルが飛ぶとは……」

マ・クベは、グラスをテーブルに置いた。

「ハマーン嬢は、相当修練を積んだのだな。」

 

「飛ばすだけなら飛ぶだろう。」

ゼロは言った。

「だがどうやって攻撃する? もともとあったエネルギーキャップ式のビームは使用できない。実弾に変更していてもほんの数発撃てば終わりだ。そもそも狙いをつけられるのか?」

 

 

------------

 

 

「ジェリド! 距離をとれ!」

ポプランが一般回線で叫んだ。

 

「ファンネルは、重力下ではそう長くは飛べん。推進剤はあっという間に消耗する。」

そう言いながら、ヤザン・ゲーブルは、自分のギャプランを人型に変形させた。

発射された機銃が、ファンネルの一基をとらえて撃墜した。

 

「単発の弾丸じゃ、撃墜判定はとれえねえ!」

ジェリドが叫び返す。

飛行形態で距離をとる。

 

ヤザンとなんどもシミュレーションした戦いでは、ここでファンネルを使う相手は、こちらを取り囲むようにファンネルを展開させるはずだった。

わざと半包囲させてから、それを置き去りにして急加速。本体を叩く!

 

ギャプランの変形速度と加速ならそれが出来るのだ。

 

「ヤザンの旦那! ジェリド!

そっちはまかせた。」

ポプランの操縦するギャプランは、その機首をシャリア・ブル機銃に向けた。

 

 

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ファンネル内部に装填できる程度の口径と弾数では、現代の最新の装甲を施されたモビルスーツに、大きなダメージを与えるのは無理だろう。

 

「あれは、テム・レイも言っていた対ビット戦術だ。」

ゼロはうきうきとワインを手酌でおかわりした。

「可変機を、対ニュータイプという用途に想定した場合、あれが正しい。だが」

 

「ファンネルそのものを―――ミサイルに!?」

 

ランバ・ラル家の応接室を驚愕が支配する。

たしかに、射出したファンネルからの精密な射撃が不可能な以上―――『そのままぶつける』という選択肢はありうる。

 

だが、だれがそんな発想にたどりついたのだろう。

 

ランバ・ラルとマ・クベ。

ジオンの政治と軍を牛耳る大物2人が考えたのは「そんな人物がいるならぜったいに欲しい」だった。

 

「ジェリド機は回避し切れるのか?」

ランバ・ラルが、前のめりになった。

 

モニターの中で、ジェリドのギャプランが激しく機動している。

 

ファンネルは取り囲むのではなく、そのままジェリド機に向かってくる。

そしてそれは、ミノフスキー粒子下の戦闘では、ひさしくみることが出来なかった『誘導された』ミサイルだった。

 

そこに——スパルタニアン

シャリア・ブルだった。

 

「シャリア・ブル……。」

ランバ・ラルは、しばらくモニターを見つめた。

「しょせんは練習機であるその機体でそれをやるか。」

 

スパルタニアンが、ヤザンのギャプランの前に割り込もうとした。

そこにポプランの操るギャプランが機銃を浴びせる。

 

 

「援護を封じながら、機動する。」

マ・クベは、静かに言った。

「ポプランは、最初からそのつもりだったな。」

 

そしてレイダーは?

 

まだ飛行形態のままだ。

旋回しながら、ヤザン機に機銃を発射するが、腰がひけた射撃だ。あたりっこない。

 

本来ならば、機銃は牽制。

接近してから、その主兵器であるハンマーによる打撃を得意とする機体なのだが、いまはそれがやりにくい。

キュベレイが、自由落下状態にはいり、空域から離脱してしまえば、自動的に「撃墜された」と見なされるのだから、それを「拾える」状態にするため、飛行機形態を解除出来ないのだ。

 

 

ファンネルが迫る!

ジェリドは、機体を変形させた。

 

今度はモビルスーツ形態だ。

ギャプランの加速をもってしてもミサイル化したファンネルから逃げ切るのは不可能と判断したらしい。

 

腕の機銃を発射。

 

二基こファンネルが撃墜された。

 

ビームサーベルは装備されていない。

かわりにあるのはヒート剣だ。

脚部に収納しているのだが、柄からビームの刃を形成するビームサーベルとはことなりスペースの関係で刃の長さはだいぶ短くなる。

 

それをたくみに振り回し、さらに二基のファンネルをたたき落とした。

 

だが。

背後から直撃!

撃破判定はでなかったものの、かなりのダメージである。

 

「炸薬がないだけで、あれが直撃してるんだ。『判定』云々ではなく、直接にダメージがある。」

ゼロが言うとシェーンコップが返した。

「本当のミサイルなら、一発の直撃で、撃破だろう。」

 

部屋が静かになった。

 

ハモンが、ワインのボトルを手に取ったが、誰も気づかなかった。

 

ファンネルが、ジェリドのギャプランに、また命中した。

 

それでも、落ちない。

撃破判定はでないのだ。

 

「粘る。」

シェーンコップが言った。

「ジェリドの判断は悪くない。だがギャプランが盾を装備していないのが災いしたな。」

 

「一応、あの腕部の銃と一体となったシールドはあるようだが。」

ゼロが目を細めた。

「本体への直撃を避けることは出来のだろうが。盾として使えば、同時に唯一の矛である機銃も破損してしまう。

キュベレイのファンネル搭載数はいくつだ?」

 

「合計10基のはずだ。」

ランバ・ラルが、静かに言った。

 

「まだ……4基あるのか。」

 

 

 

 

 

 




ファンネルミサイルなんて、この世界のひとたちには初見なんだけど、ジェリドくん、けっこう粘る!
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