第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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前回でラインハルトが、『ギンガナムの首』をスカウトしようとしていますが、これはそうしとけば、とりあえず、自分を積極的に殺しにくるのはいったん保留するだろうという意味もあります。
久々にN・ロック氏登場。






GQuuuuuuX season2 第10話 アナハイム動乱~会談前夜

N・ロックのオフィスは、アナハイムムーン本社の中層部にあった。

 

いまのところまだあった。

 

支社長室と比べれるのはもちろん、ある程度の地位のあるアナハイム社の幹部としては拍子抜けするほど質素だ。

 

デスクに、椅子に、ソファ。

 

泊まり込むことも想定して、「ゼブンイレムーン」のパック惣菜が、並ぶ棚があるが、近々の引越しを見込んでいるので、品揃えは一時期に比べてかなり寂しくなっている。

 

壁には配信コンテンツのスケジュール表と、いくつかのモニター。

 

そのひとつには、編集中の動画が一時停止されたまま映っている。

 

「昨夜はすまなかったな。」

メインのモニターに映る氷の美貌をもった青年がそう言った。

 

「いえ。」

N・ロックは、部下からのメッセージチャットを捌きながら返した。

クワトロ・バジーナとの会見は、昨晩の予定で彼がセッティングしていたのだが、ニューヤークからの客人を迎えるために、急なキャンセルが入ったのだ。

「さっそくにゼロ・ムラサメがお役に立てたようでよかったです。

実は、わたしも会談のセッティングに下層街の『開拓者のキッチン』を予約していたのですが……。」

 

ラインハルトは笑った。

「そうか。きみもあの店のファンか。」

 

「いささか、不便な場所にはなってしまいましたが。

グラナダでもオススメの店舗のひとつです。まずアナハイムムーンの関係者にはまず出くわさない。」

 

「キルヒアイスに連れられて何度か行っている。」

ラインハルトは認めた。

「酒も料理もいい。」

 

「先ほど、ゼロ・ムラサメから話は聞きました。

女王派の行動部隊はたんなるゴロツキですが、やっかいなものたちが、バックにいるようですね。」

 

「ゼロ……ムラサメ博士の傷の具合はどうだ? 」

ラインハルトはその美貌も相まって冷徹な印象をあたえるが、決してひとの心がないわけではない。

自分のために戦ってくれたものへの情はある。

 

「さっき、ランチを一緒に取りました。

レアステーキを平らげてましたよ。なんでも血を流したあとは同質の食物で補うのが正解だそうです。」

 

「彼女はなにものなのだ、N・ロック?」

ラインハルトは尋ねた。

「謎めいたムラサメ研究所の所長とは彼女のことなのか?

それにしては、強い。そしてあまりにも戦いに慣れすぎている。」

 

「まあ、ある種の“超人”であることには間違いありません。そして“強化人間”については悪名高いムラサメ研究所における最高峰の研究者です。」

 

「社内資料には目を通した。アナハイムムーンがニュータイプ部隊を設立するときに、メンバーの“強化”をゼロが担当した、と。」

 

「その通りです。

さらに、アン、ドゥー、トロワ、フォウ……ムラサメ研究所で確認されている強化人間たちは、全て彼女の手によるものです。」

 

「そして彼女自身は『ゼロ』を名乗っている。」

ラインハルトは面白そうに言った。

「彼女を強化したのは誰だ? あの身体能力は人間の域を越えている。」

 

「わたしの知る限りでは、ムラサメ研究所で最初に強化されたものが、彼女です。」

 

「わからんな。」

ラインハルトは眉の間に皺をよせた。そんな表情でさえ、芸術家の手による至高の彫像のように美しい。

「言動に奇矯な所はあるが、あの身体能力、そして自ら強化人間を手がけるほどの頭脳。その彼女がなぜ、ファーストではなく、「ゼロ」なのだ?」

 

「『失敗作』……そうゼロは自称しています。」

N・ロックは、視線を逸らした。

「これについては、彼女自身のプライベートな問題もありますので、わたしの『推測』は差し控えさせていだだきます。」

 

ラインハルトは頷いた。

「わかった。この話題をもし彼女の前で出すときには充分注意しよう。

しかし、よくシェーンコップと一緒に彼女を捕まえられたな。」

 

「ソドンに収監されていたときに、あの二人がマ・クベ中将と面談のためにズムシティに向かったことは、ソドンのスタッフから聞きました。」

 

「それは報告書にはなかったな、N・ロック。」

 

「とくに問われてはいなかったものですから。」

平然とN・ロックは答えた。

 

ラインハルトの笑みが僅かに恐ろしいものに変わる。

「まだ、ほかにも隠していることはありそうだな?」

 

「いえいえいえ。」

N・ロックは手を振った。

「なにしろ……三日間、睡眠時間以外はずっと、彼らに『尋問』されていたわけですから。

一言一句、報告書にあげることは物理的にむりですよ。」

 

「なら、聞き方を変えよう。

報告書にはないことで、わたしに個人的に話しておいたほうがいい事はあるか?」

 

「そうですね。」

N・ロックは、マグカップのコーヒーに視線を落とした。話す内容よりも言葉を選んでいるようだった。

「ネオ香港大学での『仮想ア・バオア・クー戦』を企画運営したヤン・リーですが」

 

「うむ。もと連邦の軍人だな。ミラクル・ヤンの異名をとった将校だ。

戦略とモビルスーツシミュレーターを組み合わせた『仮想シミュレーション』を事業として立ち上げる案は、きみの報告書にあった。ヤン自身もぜひアナハイムに、スカウトするようにとも記載されていたな。」

 

「専務ご自身の評価はいかがです?」

 

「極めて高い、と言えるな。」

ラインハルトの不快げな渋面は解消されていた。

彼は有能なものが好きなのだ。

「もともと彼の名はきいていた。敗色濃厚な中をなんども逆転勝利を勝ち取った戦術眼もそうだが、その中で味方の損耗を最小限に抑えている。

とくに、見事だったのは、エル・ファシルコロニーの脱出劇だな。

建設途中のコロニーを制圧しようとしたジオン軍を手玉にとり、作業員とその家族をひとりも欠けずに脱出に成功したのは鮮やかだった。」

 

N・ロックは身を乗り出した。

「……彼を専務直属のスタッフとしてスカウトしてはいかがでしょう。」

 

ラインハルトは首を傾げた。

「アナハイム……にではなくてか?」

 

「残念ながら、いまのアナハイムは地球本社とアナハイムムーンの関係ひとつとっても彼を迎えいれることのできるほどの魅力ある組織ではないでしょう。

彼をいまこちらに引き込まなければ、いずれ連邦なり、ジオンなりが彼を自陣に取り込みます。」

 

興味深そうに。

だが、毅然とラインハルトは反論した。

 

「いまもわたしの周りにはひとはいる。」

 

「たしかに専務の『戦略事業推進室』の面々の話はきいています。」

N・ロックは淡々と言った。

「元連邦やジオンの軍人を中心に……軍事訓練や……モビルスーツ戦闘までも一流の人材揃い。

いったい金髪の小僧はなにを企んでいるのかと、副社長からはずいぶんと懐疑的目を向けられていたはずです。」

 

 

チリリ。

ラインハルトの眉間に稲妻が走った。

「わたしの前で、その言葉を口にするか? N・ロック?」

 

「それですよ。」

N・ロックはカラカラと笑った。

 

「それ?」

 

「ゆっくりと年功序列をまったり、ライバルを蹴落としながら次のCEOの座を狙うつもりはないでしょう。

専務のこれから行こうとしている道は多分に『覇道』となるはずです。

ならば、ともに語り、ときには全権を任せられる『相棒』が必要なのです。それこそ、『金髪の小僧』と時に罵ってくれるような仲間が。」

 

「ヤン・リーがそれだというのか?」

 

「実際に罵ってくれるかどうかは知りませんよ。

―――そうですね。そんな場面になったら、彼は、黙ってあなたから離れていくでしょうね。」

 

ラインハルトは、黙った。

N・ロックの言ったことは、彼にしても考慮するに値するものだったのだ。

 

やや、あってからラインハルトは首を振った。

 

「……だめだな。

いやきみの言葉を疑うわけではないが、もし、ヤンがそこまでの人物ならば、むしろわたしと戦う側に属してもらって、知略を競いたい。」

 

「ああっ!」

N・ロックは両手を広げた。

「そりゃ、ぜったいダメです。」

 

「なにがダメだ!?」

 

「彼は、恐ろしく『怠け者』なのですよ。

同じ程度の能力のあるものが、シリを叩かない限り、何処か大学にでも職を得て、定年までそこでゆっくり過ごすでしょうね。

助手から准教授、定年間際に教授に慣れるか、どうか。」

 

有能な怠け者―――それは軍を指揮するものの理想像だと言われていたが。

 

ラインハルトはしぶしぶ頷いた。

「……わかった。いずれにせよ、一度ヤン・リーには会ってみよう。

それよりまずは、ジュニアクランバトルだ。

クワトロ・バジーナ氏たちとの打ち合わせの予定は?」

 

「……やはり、専務もご参加されますか?」

 

「もちろんだ!

そのために、わざわざ昨晩に予定されていた打ち合わせを延期してもらったのだからな!」

 

 

 

 

 

 

 




ガンダムキャラが全然出てこないで、一話終わってしまうのはなんだかなーーーっ
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