第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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アナハイムの未来
月の未来
人類の未来
訪れる黒歴史を彼らは回避できるのか
グラナダの闇に陰謀が蠢く








GQuuuuuuX season2 第10話 アナハイム動乱~襲撃

「なにをやってるんですか!?」

まだ、若い男だ。

髪の毛をくしゃくしゃと掻きむしって、目の前の初老の男に毒づく。

 

「言ったとおりだよ。それ以上でもそれ以下でもない。」

初老……とは言ったが、それは彼が銀髪だからだ。量もたっぷりしているし、それを伸ばして後ろでまとめている。

顔にしわはなく、「若造」ではないが、ちょっといくつかはっきり答えることはできない。

 

「ラインハルトをぶち殺してしまえば、ことは終わるんですよ!?」

 

銀髪の男―――「ギンガナムの首」チェン・シャオロンは見向きもしない。

惣菜の入ったパッケージをあけると、チキンを一口。続いてビールを流し込む。

「うまい!! 実にいいな……『ゼブンイレムーン』のゴールドキッチンシリーズは!」

 

「首領!!」

若い男が叫んだ。

「アナハイムの支社長は、専務を殺してくれって頼んできたんです。」

 

「シェ・イェン。」

顔を上げずに、チェン・シャオロンは答えた。

「知らないのか。人間は死んでしまうと生き返らないんだぞ。」

 

「わかってますよ。」

シェ・イェンと呼ばれた男はうなだれた。

彼のボスの言葉に感じいったためではなく、彼を説得することの難しさを改めて実感したからのようだった。

「でもラインハルトは、生かしておいたらディアナ様の敵に回りますよ……」

 

「それはどうだろう。」

シャオロンは、また新しいパッケージを開けた。今度はビーフジャーキーのようだった。

むしむしと食べ、ビールを流し込む。

 

「俺たちは、ディアナ様と『会話』することは出来ません。てすがお声は聞こえます。

この月を―――清浄なる大地とし、人類の争いに巻き込まれないように、と。」

 

「それは彼女の願いであって、実際になにをどうすればそうなるかは、生きているニンゲンに任されているんだ。」

シャオロンはビールの缶を開けた―――それをシェ・イェンに差し出す。

「彼女と話すのは楽しいが、一緒に酒を組みかわせんのは残念だ。あの障壁を解除することはできないのか?」

 

「俺は技術者じゃない!

『ギンガナムの腕』であって、あなたの部下です!」

 

「わたしは部下やら門弟なんぞいらん。飲み友達に良さそうなのを近くにおいてるだけだ。」

 

なんとも手応えのない会話に半ば諦めつつ、シャ・イェンは頭を抱えながらビールを受け取った。

 

「あなたは、あなたでまあ、勝手に動いていただいて結構です。」

冷えたビールが胃の腑に流れ落ちていく。

イェンは少し落ち着いた。

シャオロンは、単なる彼らのボスではない。

彼はすべての技の伝承者。彼の意思をイェンたちかどうこうすることはできない。

「ラインハルトの一味は、俺たちで処理します。

かまいませんね?」

 

「積極的に邪魔はしないよ。」

シャオロンはいそいそと、新しいパッケージをあけた。こんどは焼売だった。手づかみで口に放り込んでから頷いた。

「うむ。冷えていてもなかなかだが、やはり温めたいな。」

 

 

「『爪』と『牙』を使います。」

シェは言った。

「あなたの言う強化人間とやらが、どれだけのものかは……」

 

「いえ、実際、強いよ、彼女は。」

 

「あなたも本気はだしていないでしょう?

それでもあなたを1度は退けた相手がいるのだから、こちらも2名使います。ひとりがその女の相手をしている間にもうひとりが、やつらを殺る。」

 

 

 

--------------------

 

 

 

「彼女が目覚めている、と?」

クワトロ・バジーナは、今日はスーツだ。

トロワもジャケットを羽織り、タイをつけている。

 

当初はアナハイムムーンのクランバトルの責任者であるN・ロックという人物と会う予定だったのだが、急遽、向こうの『専務』も同席することになったらしい。

そんなものに気圧されるクワトロではないが、それなりの礼節は大事にしていた―――むやみに喧嘩を売ることはない。

 

ドゥーは。

ドゥーは一応、ワンピースを着ている。そのうえからショートコートを羽織っていた。髪は―――スタイリストの手がはいっていつもよりはだいぶマシにまとめられている。

 

「話をしたよ。ムーンレイスっていう月の民の女王様なんだって、さ。」

 

「月面都市の人間の総称なら『ルナリアン』だな。」

クワトロは考え込みながら言った。

「ムーンレイス……という呼称は一般的ではない。」

 

「未来のひとらしいよ、ディアナさんは。」

ドゥーは言った。

「少なくとも彼女の認識のなかでは、そうだ。

ボクらのいるこの世界を『黒歴史』の始まりの時代だって言ってた。」

 

「彼女のいた世界はどんなところなんだ?」

 

「1回、文明が全部、崩壊しちゃったあと。

ディアナは、月面で残った人類を見守りながら、長いコールドスリーブと短い覚醒を行ってる。」

 

「気が滅入る話だな。」

クワトロは言った。

「彼女がいまの状況をみて『黒歴史』とやらの始まる時代だと言ったのだな……」

 

「そう。だから、ボクはディアナが未来から来たって判断したのだけれど、すこし違ってるところもある。

たとえば、『始まりの一年』では、どうもジオンじゃなくて連邦が勝ってるぽいし、『白いモビルスーツは』スペースノイドを虐めた悪魔だって言われてるみたいだ。」

 

「いまでも彼は『白い悪魔』と呼ばれてるが?」

 

「アムロは別にスペースノイドを虐めてはいないよね?」

 

ならば―――

クワトロは思考を巡らす。

ララァが改変した世界。そのほとんどが、独立戦争は連邦の勝利となり、そのすべてで自分は白い悪魔に堕とされている。

わたしが生き残り、ジオンが勝利したこの世界は、おそらく、限りなく稀有な存在なのた。

 

「オーナー、迎えの車が来ている。」

トロワが呼びに来た。

 

クワトロをなんと呼ぶかは、周りのものたちの頭痛のタネであったのだが、トロワはうまく乗り越えた。

 

「では、行こうか。」

 

 

----------------------

 

 

会談の場は、アナハイムムーン本社では無かった。

 

新進気鋭ではあるが、まだ社屋を構えるには至らない。

そんな企業向けのレンタルオフィスである。

 

N・ロックは、アナハイムから独立後そこにオフィスを設けるつもりでいた。

そのために借りたスペースだが、まだ機材も運び込んでいない。

 

ソファやデスクだけ、とりあえずそろえた感丸出しの、いかにもな安物である。

 

「N・ロックさん……」

キルヒアイスの表情は少し険しい。

 

豪華な調度類などはなくても構わないが、これはアナハイム本社の専務とその友人を迎えるには、あまりにも粗末ではないか。

 

「いや、申し訳ないです。」

N・ロックは飄々とかわすことなく、素直に頭を深々とさげた。

「実を言うと、ソファもデスクも、ホンモノですらないです。撮影用の小道具です。」

 

「……」

 

「壊されても保険がおりるのか?」

ラインハルトは笑いを含んで言った。

「どうせ、また狙われるのだろうと。

そう思ってるな?」

 

「当たりです。」

N・ロックは答えた。

「ついでに申し上げますと、この一角は、オフィスビル街として再開発されたばかりなんですが、街の中心街から離れすぎていて、まったく人気がありません。

このビルも、オフィスを借りてるのはウチだけです。」

 

キルヒアイスの顔色が徐々にかわっていく。

 

「まさか、N・ロック―――あなたは」

 

「どんな状況でも襲われるのであれば、こちらにとって都合のいいタイミングで襲わせてやる―――とまでは考えていませんが。

少なくとも巻き添えを食うものはできるだけ少なくとしたいと。」

 

ニューヤークの貴公子は、思わず笑いだした。

一緒に、ラインハルトも唇を綻ばせる。

 

N・ロックの無茶ともいえる豪胆さを彼らは気に入ったのだ。

 

「このビルのセキュリティは?」

ラインハルトが尋ねた。

 

「最新です。登録しされた個人IDを持たないものは、なかに入ることもできません。」

 

「逆に言えば、IDさえ偽造すれば入り放題ということになるかな?」

 

「まあ……危険はないわけではありませんが。」

N・ロックは、たまにはこんなのも、と言いながら

冷蔵庫のなかから、曲線を描くガラスのボトルを取り出した。

なかの液体は黒っぽい。

 

「なんだそれは?」

蓋が王冠になっているから、炭酸飲料なのだろうが。

 

「コーラです。なかでも一番、美味いと言われている小瓶のコーラ!!」

 

ペットボトルでも自販機でも一緒だろう?

と一同は思ったが、とくに反論はしなかった。

反論してしまったら、この男のペースに完全に嵌められそうな気がしたのである。

 

「ああ、そうそう。武器の持ち込みについてのセキュリティもかなり強固です。銃はもちろん、刃物類も一切、持ち込めません。」

 

「しかし、N・ロックさん」

キルヒアイスは、自分の主たちのように豪胆にはなれないようだった。

「このまえ襲ってきた相手はまさに、素手の戦闘を得意とする者でした。ゼロ・ムラサメが食い止めてくれたからいいようなものの……」

 

「今夜も彼女はつめてくれてますよ。」

部屋のモニターのひとつに地下駐車場に入ってくる車が見えた。

 

 

 

 

 

 

 




続きます。
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