第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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寂れたオフィス街。無人の建物。
最後はモビルスーツ戦で〆る気まんまんですが。
もう少し、バトル漫画にお付き合い下さい。







GQuuuuuuX season2 第10話 アナハイム動乱~襲撃2

クワトロ・バジーナは車から降りながら、周りを見回した。

 

出来たばかりの建物らしい。

車が着いたのは、地下駐車場の車寄せだった。

照明から床、壁、天井の照明に至るまで、どこもかしこも、ピカピカの新品だ。

 

だが、人気はない。

 

エントランスにホロノグラムの人影が現れた。

 

「ようこそ、アンダーグラナダオフィスサテライトビルへ。」

いくら自然なものでもAIによる音声は、なんとなくわかるものである。

だが、あえてそれは指摘しないのが、ビジネスの場所での礼儀とされている。

 

「ネオ香港のクワトロ・バジーナだ。同行のクラババイロットが二名、トロワ・バートン、ドゥー・アカツキ。」

 

ムラサメの名は、一般に忌諱される。

クワトロは予め、2人の強化人間のために、偽のIDを登録して申請を出していた。

 

「オーナー」

トロワがぼそりとつぶやく。

 

「なるほど。きみも感じることが出来るのか。」

 

「無論。会談の場所には武器は持ち込めないと言われていたので、無手で参上したが、正直後悔している。」

 

「おそらくは、ウェン・リーが言っていた月面支社の支社長の手のものだろう。」

 

年齢は離れていたが、うちに秘めた闘争に対する興味には似通ったものがあるようだった。

 

互いにニヤリと笑いあって、ふたりは歩みを進める。

ドゥーが、慌ててそのあとを追った。

 

「殺気はエントランスのなかからだな。」

 

「間違いない。すでに、暗殺者は中に潜り込んでいる。」

 

「ふたりともなにを言ってるんだよっ!」

ドゥーが息を切らしながら叫んだ。

 

「おまえも少しは危険の気配を察知できるようになれ。」

トロワが冷たく言った。

「モビルスーツ戦闘にも役立つ。」

 

「そりゃ、ボクだって、シャリア・ブルに撃墜されてからはホントヤバめのもんは、かなり探知できるようになったんだ。」

ドゥーは顔を歪めながら言った。

「でももっとヤヴァイもんがあるとそれにかき消されて、ほかのモンがわかんなくなっちゃうんだよ!」

 

「もっとやばいもの?」

トロワが聞き返したそのとき―――

 

廊下の曲がり角に、それは姿を現した。

 

クワトロとトロワは、目を見開いた、

 

見事な曲線を描く肢体を、白衣に包んだ女

―――ゼロ・ムラサメ。

 

「ずいぶんだなあ、ドゥーちゃん。」

唇か笑みの形に歪む。

「殺意むき出しの殺し屋よりも、わたしのほうがこわヤバくて、その気配にかき消されて、殺気も探知できないってか?」

 

ゼロが待っていたのはエレベーターホールだった。

半円形の空間に、八基のエレベーターが並ぶ。

だが、そのほとんどは稼働していない。

 

「会談に使うオフィスは、26階だ。このビルで使われているのはそこだけだな。」

ゼロは淡々と言った。

「で、わたしは、ずいずんと前からこの無人の建物のなかで、暗殺者と鬼ごっこをやっている。」

 

「なぜ、暗殺者はまだ仕掛けずにいた?」

 

トロワが、尋ねたが、ゼロはチッチッチと言いながら口元でも指を振った。

 

「ダメだよ、トロワ。自分で頭を使うことを覚えよう。」

 

「専務の会見の相手が誰か、見定めることか?」

 

「ちゃんとわかってるじゃないか!

実に良い子だ!!」

 

エレベーターが降りて―――ドアが開かれた。

 

扉はひとりの男を吐き出した。

 

上背はそれほどはない。

だが、鍛え上げた体躯をもつ男だった。

 

ゆったりとしたバンツに素足。

上着は袖がない。

その理由は、男の盛り上がった肩から胸への筋肉にあった。

 

袖を通すには、その腕や肩の筋肉を削ぎ落とす必要すらあっただろう。

 

「ゼロ・ムラサメか?」

男に緊張はない。むしろ楽しげに言った。

「随分としつこく追いかけてくれたな。俺は『ギンガナムの牙』」

 

「宇宙世紀であのセリフを言える機会があるとは思わなかったな。」

ゼロ・ムラサメは感慨深げに言った。

「……ここは、わたしに任せて先に行け!」

 

「いや、やるなら二人で片付けた方がいい。」

トロワが、前に出た。

 

その身体がブレたように、見えた。

 

月面の低重力下。

打撃はともかく、フットワークや拳法由来の歩法やどは、一から鍛錬し直さねばならない。

 

身体能力の高さは、ムラサメ研究所の『強化』によるものだとしても、このトロワという少年はいったい、どこでどれだけの訓練をつんだのだろう。

 

一瞬で間合いを詰めたトロワの回し蹴りが、『ギンガナムの牙』の脇腹に吸い込まれていった。

 

ドゥーはもちろん、クワトロも。

ゼロも。

そして『ギンガナムの牙』もまったく反応できなかった。

ように見えた。

 

 

鈍い音がした。

硬質のものを人体が叩いた時の音だ。

 

―――脇腹にヒットしたトロワの脚は、跳ね返された。

 

「けっこう使えるな、おまえは。」

『ギンガナムの牙』は頷きながら言った。

「骨は大丈夫か?」

 

トロワは、再び構えをとる。

 

いまの攻防で蹴った足を痛めたようだ。

だが、その闘志はいささかも衰えていない。

 

その首根っこを掴んで、ゼロ・ムラサメが、トロワを後ろに投げ出した。

その体をクワトロがキャッチする。

 

「まだやれる!」

 

「それはそうだろう。おまえは心臓が動いていれば、骨が折れようが戦える。

だがなあ。

わたしとしては自分の作った強化人間には自分の足で歩いて欲しいのだ。

そのあと大佐にだっこされて、会見会場に向かうのか?」

 

トロワはいやな顔をした。

ゼロの言葉が真実なのに気がついたのだ。

 

エレベーターへと向かうクワトロたちを『ギンガナムの牙』は止めようとしなかった。

 

「いいのか、いかせてしまって?

おまえの仕事は、専務の接触の相手を確認したのちに、専務を殺すことだろう?」

 

「すこし、変更されている。」

『ギンガナムの牙』は腰を落とした。

「それに、このビルに侵入したのは、俺一人ではない。」

 

ほう?

と、ゼロは首を傾げた。可愛らしく見えないでも、ない。

 

「任務の残りはそっちにまかせて、俺は俺のやりたいことをする―――」

 

「そうかい?」

 

渺。

 

吹くはずのない風が、ゼロの白衣のすそを踊らせた。

 

 

 

---------------

 

 

 

「『牙』のダンナはゼロと戦闘にはいったヨ……」

女の着る服は、マオカラーにチャイナボタン。

とは言え、本物の拳法家にはあったことのないシェーンコップには、そういう健康体操をするときのコスチュームにしか見えない。

色は真紅だった。

 

まだ少女と言ってよいかもしれない。

 

小柄で、髪を後頭部でお団子にまとめている。

 

「『牙』のダンナ、強いヨ。はやくゼロさん助けに行かないと、ひき肉ネ。」

 

二人がいるのは、N・ロックが借り切った26階の一室。

ここは小道具の倉庫のようだった。

 

ありとあらゆる「要らないもの」が置いてある。

 

「おまえこそ、ここで油を売ってていいのか?」

シェーンコップはたずねだ。

 

「ああ、命令少しかわったネ。

わたしたちの仕事は、アナハイムの専務サンと来訪者がなにを話すかも確認することヨ。

殺すかどうかはそれからの判断。」

 

少女は、脚を高くあげて、自分の頬につけた。

柔軟性を確かめるように、両脚でそれを行う。

体をひねり、くるりととんぼをきった。

 

「……でもおまえらは排除する。ジャマになるからネ。」

 

少女の動きは、閃光にしかみえなかった。

真紅の閃光!!

 

ドスン!

 

少女の体が吹っ飛んだ。

突進に合わせて、シェーンコップが叩き込んだ前蹴りの成果である。

 

「……あんたもツヨいね。」

起き上がりながら、嬉しそうに少女は言った。

「ワタシは『ギンガナムの爪』ヨ。

ワタシと戦ってシねる。とても名誉なコトネ。」

 

シェーンコップは。

 

少しずつ壁際に後退した。

 

スラックスが大きく切り裂かれ、血が流れ出している。

『ギンガナムの爪』と名乗った少女に蹴り出した脚を、彼女が切り裂いたのだ。

 

「シェーンコップ。ナマエ、きいたことアルよ。白兵戦の達人。でもアイテ悪い。」

『ギンガナムの爪』は顔の前で両手を掲げた。

爪の先も真紅に塗られている。いやそれを真紅に染め上げたのは、シェーンコップの流した血そのものか。

「ワタシ、全身がハモノ。殴ればその拳が。蹴れば脚が。切り裂かれるネ。いくらあんたが達人でも無手では勝ち目ナイ。」

 

「なるほど。」

と、あっさりとシェーンコップは言った。

「ならこんなのはどうだ?」

 

ボクシングに似たフットワークで、シェーンコップは『爪』に近づく。

笑って、『爪』は回転しながら、体を沈めた。

 

ボクシングならば、攻撃は手に限定される。

そして、下半身への攻撃をふせぐ術はボクシングにはない。

沈み込みながら回転しての蹴りは、空を切った。

 

シェーンコップがジャンプしたのだ。

 

だが。

 

たしかに重力の低い月面では、人間の筋力で数メートルの垂直ジャンプも可能だ。

だが、空中というのは実に始末が悪い。

 

方向転換も出来ない。姿勢制御も難しい。

 

ただの止まった的になるしかないのだ。

 

ヒュッ!

 

吐息とともに、繰り出された手刀。その目前でシェーンコップの体はさらに上方へと持ち上げられる。

 

天井を走る配管。

そこにシェーンコップは指をかけていたのだ。

 

タイミングをずらしたシェーンコップは、上空かれ『爪』に攻撃を仕掛ける!

 

突きの間合いを外された『爪』は、横殴りの一撃を放った。

彼女の鍛え上げた指そのものを猛獣の爪に見立てた攻撃である。

 

当たればどんなに鍛え上げた肉体であっても、肉は裂け、骨は折れる。

 

シェーンコップは。

 

手を差し出した。

『爪』の放とうとした一撃がトップスピードき達する前に、指と指を絡める。

反対の手も。

しっかりと指同士を絡めたまま、『爪』を床に組み敷く。

 

「なんだ、コレ? 求愛行動カ!?」

『爪』はむっとしたように言った。

 

「自分で戦える女は嫌いじゃないが。」

シェーンコップは、嘯く。

「もう少しお互いよく知り合ってからにしないか?」

 

「賛成ネ!」

 

シェーンコップの体がふっとぶ。

いや、あまりの濃厚な死の予感にみずからとんだのだ。だが、完全には流せなかった。

『爪』の膝を打ち込まれた下腹部から、冷たい波動が全身に広がっていく。

 

「ここまで、ワタシの手中ネ。」

起き上がりながら『爪』は言った。

「なんでも切り裂くワタシの手刀みた人間は、デキるヤツほど、密着してのサブミッションを仕掛けようとスルネ。

でもワタシ、脚でも『浸透勁』撃てるのコトよ。」

 

「なるほど……今まであまり味わったことの無いダメージだ。」

よろよろと立ち上がったシェーンコップの口から、ガッと血を吐き出した。

 

「離れても接近しても磐石か……」

 

「諦めるネ。」

『爪』は言った。

「大人しく寝てればイノチはとらないといてやるネ。」

 

「たしかに素手じゃあ、相手が悪すぎる。」

シェーンコップは、傍らに置かれた小道具の鎧にもたれかかった。

それは中世前期に貴族たちが身につけた金属鎧を模したもので……その腕には、長い柄のついた斧が握られていた。

シェーンコップはそれを手に取った。

 

「それ、玩具ヨ?」

『爪』は呆れたように言った。

「頑丈には作ってあるけど、刃がハイッテナイヨ。

そんなモノでワタシに挑む。正気とチガうね!」

 

「こいつは薔薇騎士団、お気に入りの武器でな。」

シェーンコップは立ち上がる。

「おまえさんが、自分の五体をコントロールするのと同じくらいには使いこなせるんだ。」

 

 

--------------

 

 

クワトロたちを載せたエレベーターが26階で止まる。

 

「やあ。きみたちがラインハルトの客人かね?」

 

ゆったりとした服を身につけた男が、三人を迎えた。

 

「……失礼だが、あなたは?」

 

「オーナー! 下がれ!」

トロワが、クワトロを庇うようにまえに出た。

「こいつは―――さっきの『ギンガナムの牙』と同じ匂いがする!」

 

男は、感心したように拍手した。

 

「すごいすごい。その若さで大したものだ。さぞ精進したんだろう。もって生まれた体質に頼りすぎる『牙』や鍛錬嫌いな『爪』に見習わせたいくらいた。」

 

「おまえたちは、ラインハルト専務の対立派閥の刺客か?」

クワトロが冷静にたずねた。

 

「そこに雇われている。だがそれはディアナを奉じるものとして、便宜上そうしているだけで、別に配下ではないよ。」

 

「わたしは、ネオ香港のクワトロ・バジーナ。

お前を伺えるだろうか、老師よ。」

 

「チェン・シャオロン。『ギンガナムの首』だ。

いろいろと話もしたくてな。

会見に同席させてもらうよ?」

 

 

 

「チェン・シャオロン。」

ドゥーのよびかけに、『ギンガナムの首』は、驚いたように小柄な少女を見返した。

 

「ああ。ディアナの廟であった子だね。なぜここに?」

 

「これから、クランバトルの打ち合わせらしいよ。ボクとトロワが選手なんだ。ねえ、トロワの脚を診れる?

さっき、エレベーターホールで、『ギンガナムの牙』とかいうヤツを蹴飛ばしたときに痛めたらしい。」

 

 

 

 

 

 

 

 




風は涼しいのですが、ジワジワっと地面から暑さが伝わってきます。
夏ですね。
『牙』と『爪』の名前が決まらんかったです……
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