第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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めぐりあい宇宙ではないので、夜霧とブルースが聞こえてくる波止場での対決です。
あの名セリフも入れてみました。
クワトロさんはアムロの不殺を理解はしてくれましたが「倒すより残忍なんじゃね?」と思われたみたいです。
「白い悪魔」伝説、加速。
12話のララァの回想では出てこなかった赤ズゴックがいまのとこ、大佐の愛機です。



第15話 重力の井戸~めぐり逢い港町

モビルスーツの頭は単なるメインカメラではない。

さまざまなセンサー類もそこに集中している。

破壊されたら単にメインモニターが使えなくなるだけではない。

機種やパイロットの技量にもよるが、それだけで行動不能にさせられるのが、頭部破壊だ。

 

だが軽キャノンのパイロットは、かなりの猛者だったのだろう。

頭部を破損させられながらも後方に大きくジャンプして間合いをつくり、ビームサーベルを抜いた。

 

「遅い。」

 

赤い水陸両用モビルスーツの爪が開いた。内装のビームガンは正確にコクピットを貫くだろう。

 

閃光のごとく。

白いモビルスーツが割り込んだ。

 

あのモビルスーツだ。

 

赤い水陸両用モビルスーツのコクピットで、クワトロ・バジーナはうなった。

向こう側から。

シュウジ・イトウが呼んだ機体。

 

ガンダムに似たカラーリング。

ガンダムを簡略化したようなその姿。

 

「チイッ!!」

 

ガンダムもどきが邪魔で、軽キャノンを狙撃できない。

 

「なにをする気だ、アムロ……アムロ、だと?」

 

「下がってろ! シャア!」

 

謎のモビルスーツのパイロットははっきりとそう言った。まだ若い男の声だ。

だが、クワトロ・バジーナはなぜそれを以前にも聞いたことがあるように感じたのだろう。

いつか。

別の世界で、彼とアムロ・レイはそのような会話を交わしたことがあったのか?

 

向こう側のララァが来た世界では、彼は「白いモビルスーツ」に倒されたはずだ。

「アムロ」が「白いモビルスーツ」のパイロットならば、彼とアムロは敵同士だったはずだ。

 

そうならなかった世界も存在するのだろうか。

 

軽キャノンのビームサーベルを持つ腕が切断されて、宙に舞う。

それが地面に落ちる前に。

残る手足も瞬時に切断されて、軽キャノンは地面に転がった。

 

 

“なるほど……パイロットの命まではとらない。クランバトルのルールか。”

 

クワトロ・バジーナはその意味を理解した。

 

“しかし、なんというか。一気に倒してしまうよりよほど残酷な気がする。”

 

 

----------

 

 

「はあ? クランバトル!? 教導隊から依頼されての実戦形式の模擬戦だとっ!!」

ウォン・リーは、クワトロ・バジーナを好かない。

言葉の節々に元ジオンの軍人らしさはぷんぷんしているし、実際に彼のスタッフには元ジオン軍人を抱えている。

それなのに、元連邦軍大尉を自称する。

クワトロ・バジーナというのもどうせ偽名なのだろう。

 

その有能さを認めてはいる。

それだけにもったいない、と思うのだ。

 

「そうだ。わたしが不在にしていたために、事務連絡の行き違いがあったようだ。

クランバトルの形式を利用してのテロリスト対策訓練。

届け出をしなかったのは、こちらのミスだ。申し訳ない。」

 

そう言ってクワトロ大尉は頭を下げた。

 

「ティターンズ顧問ジャミトフ・ハイマン将軍の名前で、手紙ももらっている。」

ウォン・リーは言った。

「『テロリストが市街外れの港湾施設にモビルスーツを隠していた』という設定での訓練だったそうだ。

指揮にあたったバスク・オム少佐の演技が迫真すぎて、もしネオホンコン市民に不安を与えてしまったのなら、申し訳ない、ジオン公国所属のソドンにまで勘違いをさせてしまったことを重ねて陳謝する、と。」

 

多大の犠牲を払って休戦した連邦とジオンが再び戦うなどあってはならない。

クワトロのズゴック、ククルス・ドアンのザク、白いモビルスーツだけならまだましだが、ソドンのジークアクスが参戦してしまった以上、落とし所はこれしかなかった。

 

もちろんティターンズにとっても、だ。

 

影ではテロまがいの活動も行っているがあくまでそれは連邦軍内部のものだ。

教導部隊として位置づけられているので、予算も潤沢ではあったし、最新鋭機も優先して配備されている。

だが好き勝手になにをやってもいい、というわけでもない。

 

「状況は明らかなのに、双方が口裏を合わせてそれを覆す、というのか?」

 

「突き詰めてしまえば、政治的な問題になります。」

クワトロと同席していた青年が言った。

巻き毛のどちらかというと大人しそうな青年だった。

「連邦もジオンもモビルスーツの開発競争を激化させています。

火種はそこここに転がってるんだ。油を注いでやる必要はない。」

 

「かく言うきみのお父上もモビルスーツの開発については第一人者のはずだが?」

 

青年は困ったように視線を逸らした。

悪い人物ではない、ようだ。

若干おどおどした態度なのはマイナス材料だが、まだ二十歳そこそこと思えばそれも悪くない。

なんとなく、面接官のような気分にウォン・リーはなってきた。

 

これが本当にガンダム開発者テム・レイ博士の一人息子、「白い悪魔」アムロ・レイなのか。

 

「父はこれから、フランクリン・ビダン博士のところで、モビルスーツの開発に従事します。」

 

「ふむ。その情報は聞いている。あそこもアナハイム・エレクトロニクスの資金は入っているからな。」

ウォン・リーは言った。

「で、きみは? クランバトルなんぞまともな人間のやることじゃないぞ?」

 

クワトロ・バジーナが苦笑いをした。

 

「ぼ、ぼくは父の仕事が落ち着いたので、奨学金をとって、技術を学べる学校に進学したいと思ってます。

クランバトルは学資や生活費の足しになればいいか、と。」

 

「だ、そうだぞ、クワトロ“大佐”。」

 

「あなたまでわたしを、大佐よばわりか!」

 

「トリントンでの大活躍は耳にしている。」

ウォン・リーは相手が嫌がっているのをわかった上で続けた。

「ガトー……“ソロモンの悪夢”と演習機でやり合って勝ったそうだな。」

 

「ホントですか!」

アムロはびっくりしたようにクワトロの顔を見た。

 

「クランバトルの無敵のチャンピオンには自慢するのは恥ずかしいがな。」

クワトロはそう言ったが、アムロはいやいやと手を振った。

 

「ぼくのやってるのはクラバ……ルールのある試合です。実戦の経験は一度も……」

 

「なら。さっきティターンズのモビルスーツを蹴散らしたのはなんなのかな、アムロくん。」

「あ、あ……あれは、ですから実戦形式の演習ですね。クワトロさんもティターンズも言ってた通り。」

「なるほど!

ウォン支配人。どうやらアムロくんも同じ意見のようだ。」

 

ウォン・リーは呆れたようだった。

 

「気が合うのだな、きみたちは。」

 

「まだ会ったばかりだが、そうなれればうれしいな、アムロくん。」

 

「そ!それはもちろん!」

アムロは勢い込んで言った。

「そう言っていただけて光栄です。あの“ソロモンの悪夢”に打ち勝ったパイロットに!」

 

「厳密には勝ったわけではない。」

クワトロは、きびしい顔で言った。

「トリントンが用意したモビルスーツでまともに武装していたのは一機だけだった。相手はガトー少佐の機体以外にも、ゲルググが三機。

ソドンが介入してくれて痛み分け、というところだったな。

……まあ、これ以上詳しくは話せないが。」

 

ウォン・リーは渋い顔ではあったが、クワトロの判断はひとつの解決策として、アリではあった。

彼の所属するアナハイム・エレクトロニクスにもティターンズからの資金提供は少なからず受けている。

 

特にさっき名前のあがったフランクリン・ビダンの研究所もそうだ。

 

そこでは次の世代のフラグシップ機となる「ガンダム」の開発が進められている。

完成すればその機体は、おそらくそれは資金提供と関わりからみて、ティターンズへの供与となるのだろう。

今度、テム・レイ博士はその開発の中枢を担うことになるのだから、ティターンズとしてもアムロをむやみに敵視するわけにはいかない。

 

なにしろ彼をテロリストよばわりしたのがそもそも、完全にティターンズ側の誤解なのだから。

メンツさえ立ててやれば、いったんは手を引くだろう。

 

“落としどころか。”

ウォン・リーは渋々頷いたのだった。

 

-----------

 

予想より早いクワトロの帰還で、アムロの軟禁は解かれた。

いやそのまえに半ば強引に、エグザべ中尉に連れられて、自分の機体を見学に連れ出されていたのだが。

 

アナハイムの支社を出たふたりを迎えたのは――。

 

「うおおっい! おっそいよ、シャアさん、天パ!」

「さ、寒い…天気の予定表ではこんなに寒くはならないはずだったのに。」

「ニャアンさん。ここは地球です。天気は予定ではなく予報のレベルです。」

 

マチュ。

ニャアン。

そして

「ヒゲマンだって、寒いって言ってたじゃん。こんなに待たせた以上、シャアさんを血祭りにあげるって。」

「……そんなことを言いましたか?」

 

シャリア・ブルはスーツのうえから、短い丈のジャケットを羽織っている。なかなかのダンディぶりだが、仮面がすべてを台無しにしていた。

 

「わたしが言うのもなんだが、その仮面は浮くな。」

「……それを大佐がおっしゃいますか。」

 

それを無視してクワトロは、コートに身を包んだ美女に微笑みかけた。

 

「ララァ。またせたな。」

 

「いえ、マチュさんたちと着るものを買っていたので、けっこう時間がたつのも早かったわ。

……そちらが『白い悪魔』ね。」

 

果てしない深淵を覗き込むかのような黒瞳。

 

「は、はじめまして。ネオホンコンにお、お招きいただき……テム工廠の『ガンダム』パイロット、アムロ・レイです。」

 

「ああ。」

ララァは微笑んだ。

それはクワトロが難民キャンプに彼女を訪ねてくれたときに向けたものと、よく似ていたかもしれない。

「わたしはララァ・スン。

あなたが『そう』なのね。」

 




次回より新章第16話「宇宙の孤蝶」。
ジオン本国の様子にふれたいと思います。絶対兄コロスのアルテイシア、そこまでせんでものランバ・ラル、あれはアレで利用しましょう、そうだ、キャスバルにうちのハマーンを娶らせて姻戚に、のマハラジャ・カーン。 みなの思惑入り乱れる中、アルテイシアは思います。
“自分でヤッちめえばよくね?”
風雲急を告げる宇宙。デラーズ・フリートは!?
アルビオンは? コウが乗る機体がぜんぶデラーズ・フリートにいっちゃったよお。
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