集中砲火の中、ヘビーアームズとサイコガンダムRは反撃する!
こんなモビルスーツの乗り方はイヤだ。
どんな乗り方?
えっーと、落下してくるモビルスーツに、30メートル離れたところから、気功の達人に吹っ飛ばされて、モビルスーツのコクピット辺りに、叩きつけてもらう!
トロワは、アナハイムのニュータイプ部隊『ガールズ』と面識がある。
なんでアイツらがいつもふざけているのか、トロワはわかった気がした。
ふざけてるしかない場面もあるのだ。
地上に比べれば落下は緩やかだ。
それでも自由落下しているモビルスーツの。
しかもコクピットに近いところに飛ばすためには、かなりの速度をつけねばならない。
その衝撃が体の一点に集中すれば、その部分の肉は裂け、骨は砕けただろうが、チェンの一撃は身体全体を『跳ばす』ためのものだった。
トロワはほぼ一直線に、ヘビーアームズへ叩きつけられることになった。
そして、モビルスーツというのは、基本的に硬いのだ。
息が詰まる。肋骨と、たぶん腕の骨にもヒビが入った。
それでも、叩きつけられた場所は、コクピットへの乗り込み口にほど近い。
トロワは手のひらをセンサーにかざす。
「パイロット認証……トロワ・ムラサメと認識。パスコードを」
「オペレーション・テメオ」
「照合終了」
コクピットのシートに座るより早く、ヘビーアームズを起動。
地上まではあと―――2秒か。
「姿勢制御。すべての武装コマンド解放。」
ヘビーアームズは。
バーニヤをふかした。落下速度が減速する。
「敵機確認。軽キャノン改だ。
攻撃を―――開始する!!」
ミサイルは使わない。
市街地への被害が拡大してしまうからだ。
もともと地域を面で制圧するのに向いた武装のヘビーアームズは、精密射撃には向かない。
だが、本来の能力に加え、『強化』されたトロワはやすやすとそれをやってのけた。
わざと派手に移動しながらの3連射。
3機の軽キャノン改の頭部をとらえた。
それぞれがバランスを崩し、墜落する。
何棟かのオフィスビルに被害が出たが、ここは「この区画は、ほとんど無人」というN・ロックの言葉を信じるしかない。
頭部はたしかに、メインカメラも含め、センサー類が集中している。だからクランバトルでも頭部破壊が勝利条件になっているのだが……
現実には、腕のいいパイロットならセンターをある程度潰されても、なんとか機体を動かすことは可能だ。
トロワが、致命傷を与えなかったのは……グラナダ市街地でのモビルスーツが爆発するという事態を避けるためと。
あとはまず自分を囮として、引きつけるためだった。
案の定。
闇に沈むような濃紺の軽キャノン改が、一機、急速に接近する。
こちらが、射撃主体の機体だと判断し、格闘戦に持ち込むつもりなのだ。
その判断は正しい。
シェーンコップが評したように、こいつらの腕は悪くない。
ヘビーアームズが射撃戦を重視した機体だというのもその通りだ。
だが、敵は、バイロットがトロワなのを知らない。
ムラサメの強化人間を知らない。
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サイコガンダムRは、静かに、ゆっくりとバルコニーに着地した。
ドゥーが以前使ってたサイコガンダムに比べると、機体の大きさは、通常のモビルスーツサイズに抑えられている。
本体内部に多数のメガ粒子砲を備え、外部装甲板を反射板として、射出できる。
ミノフスキークラフトによる地上移動に、Iフィード。
まさに動く要塞と言ってよかったサイコガンダムに比べると、サイコガンダムR(リファイン)はだいぶ性能を落としている。
ミノフスキークラフトやIフィールドが搭載できなかったのはもちろん、分離して射出できるのは、肩のバインダー部分だけだ。
ドゥーは、サイコガンダムRに駆け寄った。
「ゆっくり」
「静かに」
サイコガンダムRは着地したのだが言うまでもなく、それ以外のやり方で着地しようものなら、バルコニーが崩壊しかねなかった。
モビルスーツの重量というのは、そういものである。
もちろん、いくらゆっくり降りてもバーニヤは吹かさざるをえないので、一同はいったん屋内に待機していた。
ドゥーは走った。
トロワのヘビーアームズが、敵を引き寄せてくれている間に乗り込まなければならない。
懸命に走ったのだが。
けっこうもたもたして、見えたのだろう。
「ドゥー! すこし『押して』やろうか?」
後ろからチェンがとんでもないことを言うので、ドゥーは走りながらあわてて首を振った。
戦闘訓練をうけたトロワと一緒にされたは叶わない。
サイコガンダムRのコクピットに乗り込んで、ドゥーはやっとため息をつけた。
やはり遠隔操作はダメだ。
なんとか動かせるくらいで、とても思うようにいかない。
ドゥーにとって、モビルスーツは自分の「身体」に等しいものだったので、それが思うように動かせないのはけっこうストレスになるのだ。
いままで、使えなかったサイコミュ兵装も使える!!
ドゥーは、索敵しながら、バルコニーからその身を踊らせた。
トロワは?
敵のリーダーっぽいやつに、懐に潜り込まれて、戦闘中だ。
頭部を破壊されて墜落したほうにトドメを刺しに行くか。
ドゥーは、肩のバインダーを分離させた。
バインダーは、メガ粒子砲とソードを備えたビット兵器になっている。
はもともと宇宙空間用のものだが、サイコガンダムRのバインダーは、地上でも十分機動するのは確認済みだ。
まして、重力の低い月面なら!
損傷のない一機が、トロワに向かった。
さらにもう一機が。
クワトロたちのいるビルに向かう。
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「あまり見たことナイ、モビルスーツ、ネ?」
『爪』が、バルコニーから身を乗り出すようにして言った。
「『ガンダム』っぽいネ。新型なのカ?」
「ムラサメ研究所の強化人間用モビルスーツだ。」
クワトロが答えた。
「あまり、前にでるな。複数のモビルスーツが戦闘中なんだ。爆発に巻き込まれるどころか、バランスを崩したモビルスーツが落ちてきただけでも生身の人間には致命傷になる。」
その言葉に呼応するように。
ぬぅっ
濃紺に塗装された軽キャノン改が、目の前に現れた。
とっさに、クワトロは、『爪』を抱かかえて、床に伏した。
巨大なマシンガンの銃口がふたりをととらえた。
引き金が引かれる——
その瞬間、なにかが駆け抜けた。
銃声はなかった。
ずるり。
どす。
バルコニーの床が、音を立てた。
重いものが、落下した音だ。
マシンガンを握ったモビルスーツの腕、だった。
「な、わかるか?」
クワトロは、『爪』を組み敷くように庇いながら言った。
「あれが落ちてくるだけで人間は、ペチャンコになる。」
襲ってきたモビルスーツは、目前で固まっていた。
なにが起きたのか理解していなかったのだろう。
彼は。
手柄の一番乗りをしたつもりでいた。
迎撃用に用意されたモビルスーツはかなりの高性能機のようだったが、こちらは数が多い。
それぞれが、戦闘している間にターゲットを確実に屠る。
だが、現実は。
彼の軽キャノンクゥエルの腕を切り落としたのは、サイコガンダムのショルダービットだ。
ビーム以外にも、鋭い実体刃がついている。
高速で飛来したそれは、パイロットもわからないタイミングで、腕を切断したのだ。
もちろん。
腕だけしか切断できないわけではない。
両方の脚が。
首が。
次々と切断される。
そのまま。
濃紺の機体は落下した。
轟音とともに地面に激突すると、動かなくなった。
「ち、ちょっと、クワトロ!
アンタもわたしに求愛行動カ。」
クワトロの体の下で、『爪』が動く。
「ジツはわたし、今日はムチャクチャモテてるね! さっきもシェーンコップからサソわれてたコトよ!」
「ドゥー!!」
それを無視してクワトロは立ち上がった。
「よくやった! その調子で、残りのモビルスーツも掃討してくれ。
市街地への被害は最小限で、な!」
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機体が、動かない。
と言うか、両手両足を切断されてしまっては動かせる部分などそうはないのだ。
だが、破壊されたクゥエルのパイロット―――コードネームβワンはしぶとかった。
もともとはモビルスーツ戦は専門ではない。
彼のもっとも得意とするのは白兵戦だった。
コクピット内部に用意した銃器や刃物を身につけてから、クゥエルを降りた。
“確かエントランスは地下だ。そこから侵入できるはず……”
地下へおりる階段を探すβワンのまえに、二人の人影が現れた。
すさまじいまでの筋肉に覆われた男。
白衣にメガネの女。
「なんだ?
プロレスラーと女医がこんなところで、なにをしている?」
「わたしが医者に見えるのは、間違ってはいないけど」
「俺は一応、小遣い稼ぎに、マスクを被ってリングには上がってるぞ。」
「じゃあ、ほぼ正解か。」
完全武装のβワンをまえに、男女は緊張感のない会話を交わす。
なんでも構わない。
βワンは決めた。
目撃者は少ない方がいい。
こいつらは死体にかえる。
女のほうが面白そうに笑った。
男はいやそうに、首を振った。
「呆れるな。」
女は、四肢を切断されたモビルスーツを見て、さらに空を見上げて笑った。
マシンガンの火線が、夜空を飛び交う。
「こんなときにもクランバトルルールでやるのか?
なら、わたしらも付き合うか?」
「こいつを殺さずに無力化するってことか?」
男が、ごきり、と指をならした。
「それともアレか? クラバルールなら頭部は破壊していいのか?」
「それはわたしも考えたことがあるんだが」
白衣の女は真面目な顔で答えた。
「どうもそうすると自動的に命を奪ってしまうのでだめらしい。」
ヘビーアームズって、接近戦ようにナイフくらいはもってましたっけ……??