ビームサーベルと実体剣についてのお話しを長々と書きました。
実体剣はカッコ良いのですが、じゃあビームサーベルダメなの、ということにならないようにバランスをとってみましたが……
0079。
連邦のV作戦により誕生したガンダムはたしかに画期的な機体ではあった。
ビームライフルはもちろん、近接兵器としてのビームサーベルもまた。
それはザクの装甲をやすやすと切り裂いた。
ジオンの開発陣はこの時点で大きく遅れをとったと言ってもよい。
ザクの後継機として、開発中だったドムの、その重装甲は主に実体弾を想定したものだったのだ。
とにかく、装甲で弾幕を受け止めつつ、メガ粒子砲をかいくぐって、敵艦にバズーカを打ち込む……それが、ドムのコンセプトである。
連邦も早晩、モビルスーツを投入することは予想されたが、それは、ザクの改修タイプ程度の予想であり。
ジオンとしては、ザクの改修とドムの投入。
そして、練度に優れたジオンのパイロットで、それに十分対抗出来ると、見なされていた。
もし。
ジオンのシャア・アズナブルが、サイド7でガンダムの奪取に成功していなければ。
独立戦争の勝敗は逆になっていたかもしれない。
かくもビーム兵器は画期的な代物ではあった。
だが、それでも接近戦用に実体剣を装備する機体は存在する。
もともとビームサーベルは、ジェネレーターからのエネルギーの供給が不可欠なのだ。
そして、機械にはまた故障もつきものである。
なにが、あろうとも「使える」兵器。
例えば単機で、敵陣深く侵入し、破壊活動を行うようなコンセプトの機体には、弾丸を打ち尽くし、エネルギーも底を尽きようとしていても使える最終的な切り札として、実体剣を装備するものは意外に多い。
そして。実体剣のもうひとつのメリット。
それは、剣そのものが持つ「重み」である。
単純にデメリットと思われがちな「重み」であるが、それをうまく使えば斬撃の速度を倍加することができる。
実際に、一撃の重みを考えれば、実体剣に軍配が上がるケースは往々にしてあるのだ。
“むろん……デメリットもある。”
闇に溶け込む濃紺の軽キャノン改が、振りかざすのは、もちろんビームサーベルた。
対するトロワは―――実体のナイフが一本のみだ。
速度と角度が充分に条件を満たすならば、最新素材のモビルスーツ装甲をも切りさける。
だが注意すべき点もあるのだ。
例えば、ビームサーベルと切りむすべば、トロワのナイフは融解するだろう。
また、急所以外の場所になんどもナイフを突き立てれば、ナイフのほうが刃こぼれするかもしれない。
“腕はいい。”
トロワは、相手を観察する。
彼の知る軽キャノン改よりも、盾は小型で、全体にスリムな印象受ける。
武器もビームライフルではなく、実弾のマシンガンを使っていた。
“都市部や人口密集地における鎮圧用の機体か……”
トロワはあまり感心しない。
民間施設や、民間人に被害を出さないように戦闘を行うなら、そもそもモビルスーツは、その任に適さないのだ。
「よくかわすな!」
一般回線で、相手が話しかけてきた。
なるほど、訓練はつんでいるが、プロの軍人ではなさそうだ。
軍人は任務中に、敵と必要のない意思疎通をしようとはしない。
“……ということは、アナハイムムーンの保安部か。
おおかた、金と地位につられての蛮行だ、ろうが”
背後からもう一機。
同色の軽キャノン改が接近する。
そうか。
話しかけたのは、こいつから注意を逸らすためか。
たしかに。
たしかによく訓練されている。
“だが、しょせんアマチュアだ。”
前後から迫るビームサーベルの斬撃。
トロワはヘビーアームズを、前方に倒れ込むように回転させた。
回転の勢いを利用したヘビーアームズのアーミーナイフに、前方の軽キャノン改の手首が、半ば切断される。
それだけでは、致命傷にはならない。
手首ごとビームサーベルを失った小隊長機は、とっさに後退しながらマシンガンを構え直そうと―――
そこに、ヘビーアームズのカカトが降ってきた。
頭部と。
無事な方の腕の肩口が破壊される。
ヘビーアームズの回転は止まらない。
そのまま、一回転。
アーミーナイフは、今度は足元から切り上げる一閃となって、後ろから襲いかかる軽キャノン改を腰から、首もとまで切り上げた。
ナイフが折れた。
回転かかと落としに使用した脚部のバーニヤは損傷している。
だが、これで十分。
ヘビーアームズが両腕を広げた。
腕にマウントされたバルカンが、それぞれの軽キャノン改のまだ無事な部分。
脚を、腕を。
穿いていく。
グラリ。
二体の濃紺の巨体が、倒れていく。
ただ、撃ち抜いただけではない。
関節部分や動力パイプ。
モビルスーツが「動く」ために不可欠な部分を正確に破壊したのだ。
バルカンは速射性に優れた武器で、そのような精密射撃は得手ではないはずだ。
だが、ヘビーアームズの操縦者は、トロワであり、彼はムラサメ研究所の強化人間だった。
偶然?
そんなことは有り得ない。
二体のモビルスーツが倒れた場所は、建物のない更地だった。
そこまで、計算して相手の接近を許したものが、幸運だけで勝つはずがないだろう。
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βワンは、決して油断をしていたわけではない。
得体の知らない二人組までの距離は10メートル足らず。
重力の低い月面では、一跳の距離だ。
そして、二人の佇まいは、少なくとも徒手の戦闘には慣れた者のそれだ。
別に一発必中を狙う必要はない。
身体のどこにでもいい。
弾丸をばらまけば、どちらか、どこかには当たる。
銃弾をくらって、動ける人間はいない。
キンッ!
狙った銃口をなにかがはね上げた。
手首になにかが当たり、痛みが走る。
思わず、銃を取り落とした。
パシッ!
ヘルメットのゴーグルになにかが弾けて、放射状のヒビが入った。
「指弾か。」
男のほうが、感心したように言った。
「大した威力だな。狙いも正確だ。」
女は、手を広げた。
小石……なにかの破片だろうか。
それが、パラバラと手のひらから零れた。
木の実や小石などを指で弾いて、相手を攻撃する。
古代チャイナの武術では、「指弾」と呼ばれる技だ。
「パイロットスーツには相性が悪い。」
女は、両手を広げた。
「あとはまかせた。」
「うむ。」
頷いた次の瞬間。
男の姿が消えた。
いや実際には消えてはいない。
ありえないほど、地面スレスレに身をかがめ、突進してきたのだ。
無手の格闘技にも精通したβワンは、かろうじて、膝を出した。
低い姿勢のタックルに対して、それはカウンターとなって、相手を葬るはずだった。
その動きをよんだように、男は膝に組みついた。そのまま。
技もなにもない。
βワンは、そのまま後ろの壁に叩きつけられた。
壁にヒビが走る。
いくらパイロットスーツを着用していても話にならない衝撃に、βワンは意識を手放した。
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「実体弾ならまだ被害は少ないのだろうけれども。」
ドゥーは、サイコガンダムRを飛翔させる。
迫る火線は三つ。
トロワに、頭部を破壊されて、落下した軽キャノン改のものだろう。
「都市のなかで、銃を乱射したらどこかのなにかにはあたっちゃうじゃないか!」
頭部のメインセンサーを失っているためか
射撃は不正確だ。
だが、逆に言えば光学モニターだけで、ここまで攻撃できるのは、かなりの腕だ、とも言える。
サイコガンダムの武装はビームライフルだ。
それは使えない。
ならば。
ドゥーは、ショルダービットを射出する。
3機の軽キャノン改の場所を捕捉する。
ビットが備えた刃は実体剣だ。
耐久力は無限ではないが。
3機程度のモビルスーツを無力化するなら、十分ではある。
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「『クゥエル』隊、通信途絶しました。」
保安員がそう報告した。
「ば、バカな!!」
保安部長が叫んだ。
「完全な不意打ちのはずだっ! なぜ、モビルスーツを準備している?
金髪の小僧に、使えるモビルスーツなどなかったはずだ!」
保安部長と支社長は、呆然としている。
コンソールに向かった保安員が、答えた。
「……専務とN・ロックプロデューサーの面会は、地球のクラバオーナーだったようです。
デモンストレーションを兼ねて、モビルスーツを持ち込んでいたのだと思われます。」
「それにしても精々、1~2機だろうが!
こちらは6機いたんだぞ!」
保安部長が喚くのを、支社長は冷たい目で見据えた。
「……まあ、仕方がない。
次の機会を待とう。
おい! 保安員!」
「……はい」
保安員はのろのろと答えた。
「やつらが、身につけている位置確認端末に、コード『フルムーン』を遅れ。」
「……全員が応答ありません。すでにクゥエル隊は全員が無力化されていると思われますが」
「クゥエル隊ではないぞ。」
芝居がかった口調で、支社長は言った。
「やつらは、うちの工場から試作機を強奪したテロリストだ。脱出もままならなくなったテロリストが自爆して果てるのはよくある話だ。」
「し、支社長!!」
「証言するものが無ければ、こちらが提出したものが証拠となる。
アナハイムムーンの工廠から、テロリストが試作機の軽キャノン改『クゥエル』を持ち出し、市街地でテロを行った。
その際に、我社の保安部員6名が尊い犠牲となった。」
話しているうちに、この男は気分が高揚してきたようだった。
「試作機の部門は、その施設も含めて、金髪の小僧の管轄だからな。
市街地への被害は、やつの責任にできる。
どの程度の犠牲者が出たかな? 楽しみだ。」
そう言ってから、コンソールに向かう保安員を向き直った。
「おい、早く自爆コード『フルムーン』を送れ。」
保安員は立ち上がり。
ヘルメットを外した。
顎とこめかみ辺りに手を当てて、ゴキッとならす。
保安員の人相は一変していた。
まだ若い。
切れ長の目は、冷酷そうにも眠たそうにも見えた。
支社長と保安部長は、その顔を知っていた。
「ギンガナムの腕!!!」
「やれやれ。」
保安部に潜り込んでいた「ギンガナムの腕」シェ・イェンだった。
「この前、『命は大切にしろ』とあの人に言われたばかりなのに、もう教えを破ってしまうことになるとは。」
シェ・イェンは、一応は保安員として、腰にロッドを下げてはいたが、それに手をかける様子はなかった。
「あのひとも別に、殺人に禁忌がある訳じゃない。襲われれば容赦なく命を絶つのに。
気まぐれだな……まったく。これだから……」
「な、なにをする気だ! わ、我々は仲間ではないか!
ともにディアナ様を奉じる……」
「それもあのひとの気まぐれでね。まあ、何処とも知れぬ世界から流されてきた流浪の女王を『気に入った』だけの話なんだよ。
同じような意味でラインハルトも、あのひとのおメガネに叶ったようだな……
まあ、それ以上に、俺たちがラインハルト襲撃に出ているのを知っていて、モビルスーツ隊を出したな?」
「こ、こんなところで我々に手を出してみろ!」
保安部長が叫びながらティザー銃を取り出した。
「おまえは逃げられんぞ。いや監視カメラがある。すぐにビルの保安員が大挙して駆けつけてくる……」
「もう黙れ。」
バシッ。
ティザー銃からコードのついた銛が発射された。
シェ・イェンの指が、コードを引っ掛けて、銛のベクトルをかえる。
銛はさっきまで、シェ・イェンが向かっていたコンソールパネルに突き刺さる盛大に火花を上げた。
「裏切りへの報いを、痛みで分からせるほどの時間はない。」
シェはゆっくりと歩んだ。
硬直した支社長と保安部長の間を通り抜ける。
バシュ!
二人の頭部が砕けた。
シェは、少しも歩みをかえることなく、そのまま通路に出て、ドアを閉めた。
吹き出した血と脳漿が、部屋を濡らしたが、シェは返り血を一滴も浴びていなかった。
「支社長たちと本社の副社長との繋がりをはかせないまま殺してしまったのか!?」
と、シェ・イェンはこのあと怒られました。