この二次創作で、大佐がちゃんとカッコよく戦闘したのって、いつ以来だろう……
「フリードルフの館の地下にはシェルターもあるはずだ!」
リッテンは部下たちに命令する。
彼の仕事は、あくまで諜報である。暗殺やそのほか荒事のための人材は、その都度雇うことが多い。
「徹底的に破壊しろ。ビーム兵器も使用して構わんっ!」
「そいつは無理ですよ、リッテン・ハイネ閣下。」
傭兵の隊長は困ったように返した。
「ここは僻地のコロニーじゃない。ニューヤークですぜ。
そもそもクゥエルは」
「わかっている! 市街地制圧用の実弾仕様だったな。」
リッテンは手を振って、相手を黙らせた。
彼は、独立戦争時には連邦軍将校として、宇宙にあがったこともある。
いくつかの戦いには、参加もしている。
モビルスーツ戦の指揮は初めてではない。
「サブフライトシステムは問題ないか?」
「それは大丈夫です。」
彼が、アナハイムから横流しされた軽キャノン改市街戦仕様「クゥエル」は、港湾部の倉庫に隠してあった。
そこから、フリードルフ邸まで、延々と街中をクゥエルを歩かせる気はさすがにない。
歩くだけで、被害は拡大するし、そもそも時間がかかりすぎる。
ベースジャバーで、クゥエルを飛行移動させ、上空から攻撃。
ニューヤークの機動警察は、純粋なモビルスーツは保有していない。
街中での運用に合わせて、動力源を蓄電池に、サイズを大幅に小型化された人型機は象徴的な意味で導入されつつあるが、装甲、攻撃力ともに、モビルスーツには遥かに劣る。
最寄りのジオン基地、連邦軍基地から応援を求めても、絶対に間に合わない。
つまり、これは失敗のしようがない作戦であった……
「ニューヤーク宙港から、モビルスーツの発進を確認!」
部下の声に、リッテンは目を向いた。
「どこのモビルスーツだ?」
「所属不明機です。」
「ば、ばかな! なんでモビルスーツが、ニューヤークにいる?」
「これは……可変機と思われます!
こちらに向かって急速接近中!
こ、これは、通常のベースジャバーの三倍の速度です。」
「……シャアだ……赤い彗星だ。」
なぜそう思ったのかはわからない。
三倍以上の艦艇をそろえて、連邦がジオンに決戦を挑んだルウム戦役。
そこに彼は、ルナツー所属艦隊の参謀として参加していた―――
「ルウム戦役で5隻の戦艦がやつひとりに沈められた。」
逃げろ!
という言葉はかろうじて飲み込んだ。
「落とせ!
こちらも新鋭機だ。4対1だぞ!
やつを落とすんだ!」
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ニューヤークの機動警察は、決して無能ではない。
突如、発進したモビルスーツに対しては交信を試みつつ、最寄りの軍事基地に応援を要請した。
「こちらはネオ香港のクワトロ・バジーナだ。」
可変機のほうはすぐに応答があった。
若い男の声だった。
「なぜ、モビルスーツを発進させた!
市街地上空は飛行禁止だ、ただちに宙港に戻り、警察に出頭をもとめる!」
「それはおかしいな。」
可変機のパイロットは淡々と答えた。
「これは、クランバトルのデモンストレーションだ。
フリードルフ卿の結婚記念日のパーティの余興だよ。」
「そ、そんな届けは……」
「くわしくは、ガルマ・エッシェンバッハ市会議員にきいてくれたまえ。
それでは。」
通信は一方的に切られた。
呆然とする警務部長に部下が叫んだ。
「ベースジャバーの軽キャノン改が発砲しました!」
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“撃ってきたか……”
クワトロは、心のなかでつぶやいた。
腕は悪くない。
だが、市街地へ損害が出るのを、はなから無視している。
百式のブースターをふかして、高度を上げた。
足止めを置かれて、何機かが先に、フリードルフの屋敷に向かわれたら厄介だと思っていたが、その心配はなさそうだった。
“ここで、モビルスーツを爆発させる訳にはいかない―――となると”
クワトロの唇が、苦笑の形に歪む。
“クラバルールか…まあ、戦闘の言い訳もクラバだし、仕方ない、な。”
クワトロは飛行機形態の百式をローリングさせた。
左右をクゥエルの機関砲の弾丸がすり抜ける。
流れ弾が、地上に落ちて市街地に被害をあたえないように―――
そのために、クワトロは、彼らより上空に位置をとったのだが、それは即ち、クワトロからは相手を射撃しにくい、ということになってしまっている。
やりにくい。
クワトロとしては苦笑せざるを得ない。
地表は、一面の星空が輝いている。
そのひとつひとつが、人々の暮らしの営みであったり、あるいはそのけたたましいまでの経済活動を現しているのだろう。
コロニーならば。
市街地をぬければ、緑地帯や耕作地。
人口密度がぐっと減る場所がある。そういう風に設計されている。
だが、ニューヤークに灯る地上の星は、はるか遠くまで続いているかのようだった。
流れ弾、どころか、どこで撃墜しても市街地への被害が必至である。
クゥエルのパイロットたちの腕はいい。
連邦か。
ジオンか。
わからぬが、戦後の軍縮にあわせて、職を失ったパイロットはいくらでもいる。
さしずめ、クランバトルに参加するものもそういった出自のものが大半なのだが。
クワトロは、百式がをロールさせながら、四機のクゥエルの射線を外れる。
実弾の曳光弾が夜空を裂き、その幾筋かは百式を追い越して地上へと落ちていく。
クワトロは思わず舌打ちした。
「散開したか。」
敵は素人ではない。
四機が互いの死角を埋めるように広がり、一機が撃てば残る三機が退路を塞ぐ。
百式なら一瞬で距離を詰められる。
距離をつめて、ビームサーベルで。
だが──。
「撃破もまずいか。」
クゥエルを爆散させてしまえば、破片が地上にへ降り注ぐ。
“チイィ! アムロのようにはいかんか!”
一方で、クゥエルの傭兵たちも舌を巻いている。
「なんて、機動力だ!」
飛行機形態から人型へ。
くるくるとその姿を変化させながら、自在に、その軌道を変化させる。
4機がかりで、弾を浴びせているのに、有効弾は1発もない。
「こちらアルタイル!
データ来ました。あいつは……“百式”です。」
「百式だとおっ!?」
隊長は呻いた。
「たしか、ペズンでも活躍したワンオフ機じゃねえか。まてよ、そうするとパイロットは―――」
「おそらくは、ネオ香港のクワトロ・バジーナです。」
ベースジャバーが大きく傾いて、隊長は転げ落ちそうになった。
クワトロ・バジーナ。
その名前は知っている。
地上におけるクランバトルを仕切る大物。
そして。
「赤い彗星とやりあえってか!!」
「もう遅いです。」
部下の声も泣き出しそうだった。
「いまさら、ゴメンなさいしても、リッテンから契約不履行を申し立てられ、悪くすれば闇に葬られます。
それよりも一か八か。」
そうか。
赤い彗星を落とした男。
その異名が、傭兵にとって、どれほどの勲章になるか。
「やるしかありません!」
「やりましょう、隊長!」
「“意外性の第六小隊”の異名をもつ我々です。」
ようし。
隊長は腹をくくった。
「ようし!
アルタイル、シリウス、ベガ。やつを落として、フリードルフ邸を破壊するぞ!」
「上手くすれば上手く行きますよ。」
アルタイルが言った。
「……やつはさっきから一発も発砲していません。
おそらくは、攻撃系統のシステムに異常があるに違いありません。」
アルタイルの言葉に、隊長の目が光った。
「そうか……!」
百式は、たしかに一発も撃っていない。
避ける。
かわす。
近づく。
だが、それだけだ。
「そういうことか。」
隊長は笑った。
「どんな名機でも故障はする。」
「まして、整備にも、とんでもなく手間のかかる可変機です!」
「ビームが撃てないなら、怖くねぇ!」
四機のクゥエルが、一斉に加速した。
これまで互いの間隔を保っていた隊形を崩し、百式へ雪崩れ込む。
距離を詰める。
近づけば近づくほど、百式の回避空間は狭まる。
一機が撃てば、もう一機が逃げ道を塞ぐ。
まるで猟犬の群れだった。
「ほう。」
クワトロは敵の動きを見て、小さく口元を緩めた。
焦っているのか。
いや。ちがう。
勝機を見たと思っている。
「こちらが撃てないと考えたか。」
その推測は半分は正しい。
撃てないのではない。
撃たないだけだ。
だが。
敵はそう信じた。
ならば──利用できる。
百式は大きく右へ旋回した。
港湾地区へ。
さらに、その向こうの黒い海へ向けて。
「逃げるぞ! 追え!
やつはビームが撃てねぇんだ!
今なら落とせる!」
隊長の叫びに、全機は最大加速で、百式を追尾した。
彼らの視界から、市街地の灯が少しずつ遠ざかっていく。
クワトロは計器を一瞥した。
高度。
風向。
海面までの距離。
そして背後の四つの光点。
「……これでいい。」
苦笑が消える。
代わりに現れたのは、戦場でしか見せないある種冷酷な笑みだった。
「では、見せてもらおうか。」
スロットルを一杯まで押し込む。
「市街戦仕様のモビルスーツの性能とやらを。」
「シャアだ……赤い彗星だ……」
のパオロ艦長は、GQuuuuuuX世界だと、シャアのビールサーベルで蒸発しておりましたね。
南無……