第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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また、おっさんしか出てこない回です。しかも何回か続きます。
二次創作やifものは、あんまり元作品から離れても、と思うのでもともとの筋はそのままで。
なので、コウ・ウラキ対ガトーの設定も活かします。
ちょっと一捻りしてみました。





第16話 宇宙の孤蝶~狐

「ドレン中佐! よく無事で帰ってきたな。」

 

マ・クベは悪い上官ではない。

部下の命を無駄使いすることがない。

当たりまえのことを、と言うだろうが実際には敵を多く殺そうとするあまり、味方をそれ以上に減らしてしまう将は結構多いのだ。

そして。

 

「マ・クベ閣下。わたしは少佐でありますが」

「昇進だ。まだ内示ではあるが。

アルビオンを含む特務艦隊の司令官となる。人材不足のため、艦長も兼任してもらうがな。」

 

部下を出世させるのもうまい。

 

軍隊内における人事権は軍令部が握っている。ここは基本的に文官(または退役軍人)で構成されており、軍とは微妙に異なる価値観で昇格や異動を決めてくる。ココとうまく付き合うのは現場の軍人には至難の業なのだが、マ・クベはそれも実にうまくやってのけるのだ。

 

「デラーズ・フリートをどうするおつもりですか?」

とは老獪なドレンは口には出さない。

 

マ・クベは、かつて、ギレン派とキシリア派の間をうまく立ち回ったよう今回もまた、アルテイシア派とデラーズ・フリートの間をうまく泳ぎ切るつもりなのだ。

 

「トリントンのパイロットたちはどうだ?」

 

「ふたりともいいパイロットですよ。」

ドレンは言った。

「ただ、実戦経験はなさそうです。コウ・ウラキ少尉のほうは負傷から回復次第、アルビオンに転属を希望しています。」

 

「興味深いな。技術士官やテストパイロットはともかく、もと連邦軍がジオンの実戦部隊に転属希望かね?」

 

「戦闘で破損したゼフィランサスの修理と改装のために、技術協力の名目でティターンズにわたった技術者がいます。コウ・ウラキと彼女は恋仲だったらしいですな。」

 

「ガトーも罪なことをする。」

マ・クベは笑ったが不快そうだった。

そんなくだらん事でひとは争うのか、と言わんばかりだ。

 

「次のデラーズ・フリートの要求はなんでしょう?」

 

「ジオンの現在の艦艇数からすれば、デラーズ・フリートはまだまだ数的には圧倒的に不利だ。正面切って反旗を翻すことはできない。

おそらくは……地球連邦内部の過激派ティターンズと組んでなにかやらかすだろう。それはなんらかの示威行動、軍事行動に見せかけた出来レースのはずだ。

そのとき、やつらはわたしに介入されるのを好まないのだよ、ドレン。」

 

「そのように約定されているのですか? 」

 

これは危険な質問だった。

慌ててドレンは続けた。

 

「いえ、どんな約定も通じる相手だとは思えませんな。いや失言でした。」

 

「そうだな。やつらは実質、反乱軍であり、ジオン本国の軍をあずかるわたしとはなんの交渉の余地もないよ。

だがこれはむこうも同じだ。わたしがとんなに甘言をつかってもなびくことはないだろう。

つまり奴らがことを起こすときに本国の戦力を一時的に麻痺させるために、具体的な力が必要となる。」

 

「それが核バズーカを装備したガンダム試作2号機サイサリス、というわけですか?」

 

「恐らくだがな。だがサイサリスの核バズーカとそれを使うために必須な盾は、持って帰れなかった。」

 

「彼らはトリントンの技術者ニナ・パープルトンを連れて行っています。」

 

そうだな、とマ・クベは言った。

「だが、こちらの情報では試作ガンダムは4号機までプランが具体化しており、ニナ・パープルトンが深く関与していたのは1号機と3号機だけだったらしいのだ。」

 

「それでは、デラーズたちはいいツラのかわですな。」

ドレンはずけずけと言った。

「核バズーカとその砲弾、特殊構造の盾の製作にはたっぷりこれから時間がかかることになる。」

 

 

マ・クベはデスクのパネルを操作した。

 

「トリントンから資料を取り寄せてある。

試作4号機は強襲用だな。コードネームは“ガーベラ”だ。すでにアナハイムの別の工場で試作機がロールアウトしているそうだ。」

 

「厄介ですね。ゼフィランサスの宇宙用の改装機と合わせるとデラーズ・フリートに最新鋭のモビルスーツがサイサリスも含めてすべて渡ることになる。」

 

「単に優秀なモビルスーツならばそれはそれでなんとかなる。

こちらもゲルググの発展機もあるし、ビグ・ザムもある。やつらが暗礁空域から出てくれば、数で押し切ればしまいだ。」

 

「たしかに。自分たちが動く時にこちらの艦隊を抑えにかかるには、完全に力不足です。

核バズーカのように単騎で艦隊に大ダメージを与えられるわけではない。」

 

ふん、とマ・クベは鼻をならした。

彼は再びパネルを操作してデスクのうえに立体画像を映し出した。

 

「なんです? これは!」

 

「試作ガンダム3号機だ。

単騎で艦隊と戦闘することを目論んで作られたモビルスーツだ」

 

それは。

まったくモビルスーツには見えなかった。

巨大なコンテナがふたつ。その間にモビルスーツを埋め込んでいるような。

 

「発想はモビルアーマーに近い。

高出力、大威力の武器も搭載し放題。

武器弾薬庫を背負って闘うようなもので継戦能力も実に高い。」

 

「防御面はいかがでしょう?

コンテナ部分の防弾性能が高いとも思えませんし、これだけでかければ、いい的では?」

 

「Iフィールドの搭載により、ビーム兵器にはほぼ無敵だ。接近戦や実弾兵器は弱点になるが、スペック上は並のモビルスーツでは追いつけないほどの加速性能がある。ミサイルでは追い切れないし、接近戦も仕掛けること自体困難だ。」

 

「……それは意外に攻略に手間取るかもしれませんね。」

ドレンは頷いた。

「これを事が起きた時に、こちらの艦隊を牽制する為に出してくる、と?

しかし、この機体を使いこなせるパイロットがおりますか?」

 

「デラーズ・フリートにはアナベル・ガトーがいる。彼なら試作3号機をも運用可能だというのが開発チームの結論だ。そして、開発に携わった技術者がいて、デラーズ・フリートが接収した浮きドックがあるならば製造はできるし、改めて特殊構造のバズーカや盾を制作するよりも彼らはそうするだろう。

ドレン中佐。

さて、そのとき我々はどのように行動すべきだろう?」

 

これはある種のテストなのか。

ドレンは考えた。

 

「数で潰そうとすれば、落とせたとしても、こちらの被害も膨大な物になります。

少数精鋭のパイロットチームか……あるいは同じコンセプトの兵器をぶつけて相殺してしまう。」

 

素晴らしい。

とマ・クベは言った。

 

「わたしも同じ意見だ。」

 

映像が変わった。

 

まるで十字架をたてたような異形のモビルアーマーは、ドレンも見るのは初めてだった。

 

「ギレン総裁の肝いりで、ビグ・ザムの後継機として内々に開発が進められていた。試作機だが有線クローアームによる擬似的なオールレンジ攻撃が可能だ。

防御力、機動性ともに試作ガンダム3号機に勝る。」

 

「新型……ですか?」

 

「ノイエ・ジール、という。

これを量産して国庫を傾ける気はない。だが今回のケースにはうってつけだ。

アルビオン所属の元連邦パイロット、コウ・ウラキ。彼にこれを託そうと思う。」

 

意外な名前にドレンは戸惑った。

「いえ、しかし! 彼はテストパイロットです。経験不足です。」

 

「要はむこうの試作ガンダム3号機が出てきた時に足止めしてくれればいいのだ。

ノイエ・ジールはニュータイプ専用機ではないが操縦に際して、パイロットに恐ろしく負担がかかる。おそらくは薬物による一時的な強化も必要だろう。

優秀なジオンのパイロットをこんなところですり潰したくはないのだ。

むこうは試作3号機のパイロットにガトーを出してくる。ならば彼に個人的な恨みのあるコウ・ウラキ少尉はまさに打って付けの人材ではないかね?」

 

「それでもジオンの象徴とも言うべき最新モビルアーマーを託すのは。

シャリア・ブル閣下はいかがでしょう。彼なら有線によるオールレンジ攻撃の使用にも長けておられます。」

 

マ・クベは顔をしかめた。

「公王府に打診はしたが、かれはいま特殊任務中らしい。しかもその際に予備役に編入されている。

政治的な駆け引きはむこうがうわてだな。」

 

 

マ・クベの元を退出したドレンは、考えるところがあった。

軍という組織にいる以上、出世は必要なものだ。

独立戦争中は、派手な活躍をしやすいモビルスーツパイロットばかりが昇進しがちななかで、ついに中佐か!

 

悪くはなかったがよくもない。

 

軍を追い出されたかつての同僚はどうしているだろう。

サイド7のガンダム脱出のときにともに“赤い彗星”のもとで働いたデニムやジーンは、クランバトルに関わっていると聞いたが……。

 

ドレンは頭を振って弱気な考えを追い出した。

 

よくはなかったが、悪くもない。

それで我慢するべきなのだ。

 

 

 

 

 




デンドロビウムを駆るガトー対ノイエ・ジールのコウ・ウラキ!
さて、サイサリスとフルバーニアン、ガーベラは誰に乗ってもらいましょう。
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