第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ここに書くべきことではないのですが、スマホが紛失。
更新ができませんでした。
昨日の夕方、洗濯籠から救出。けっこうあわてましたです。
舞台は、ニューヤーク。
フリードルフ邸襲撃事件の後始末です。






GQuuuuuuX season2 第13話 軋む音~夜明け前

 

フリードルフ卿は、途中で終わってしまったディナーのかわりに、かれのお抱えシェフのつくったサンドイッチをいくつか、腹におさめた。

アンネローゼも彼に習う。

 

セントラルパークを臨む高級コンドミニアム。

 

ここの存在は、親戚たちには知られていない。

かれの隠れ家といってもよい物件だった。

 

警備もフリードルフ家のものではなく、専用の警備会社が請け負っている。

一族の内々でこの手の任務を担当してきたハイネ家が、裏切った以上、むしろその方が安全だった。

 

「怖い思いをさせたな、アンネローゼ。」

 

孫ほども若い妻に、そう話しかけるが、彼女は気丈にもしっかりとした目で彼を見返した。

 

「大丈夫です、あなた。

これは―――いつかは起こることでしたから。」

 

なるほど。

あの弟の姉なのだ。

 

フリードルフはしみじみと思った。

 

胸元の携帯端末が鳴った。

 

リッテンからだった。

 

「なにかね?」

「閣下! いまどちらに?」

「お望み通り、地獄にいるよ。いま番卒がわたしのために、鉄を真っ赤に焼いているところだ。」

「お戯れを……」

 

 

映像は許可しない。

間取りや窓から映る光景で、場所を特定されてしまうかも知れない。

 

「ところで、刺客はもう打ち止めかね?

ラインハルト君の用心棒たちをなんとかするには、数があまりにも少なすぎたようだが。」

 

リッテンの顔色は青ざめている。

 

「閣下! 閣下はなにか、誤解をされているようです。」

 

「誤解? さっきモニターに写った君自身の口から、わたしとアンネローゼ、それにラインハルト君の暗殺計画の一部始終をきいたのだが」

 

 

リッテンは口早に言った。

「恐れながら、この一時間ほど連絡用の回線がジャックされておりました。

わたしを騙ったなにものかが、閣下のお命を狙ったのでしょう。ハイネ家の忠誠は閣下のもとに。」

 

「暗殺者共は、ひとりとして命を落としてはおらん全員拘束してある。

モビルスーツのパイロットも機体を損傷させて海に落としただけなので、いずれ、逮捕できるだろう。」

 

端末の画面に別の者が割り込んだ。

 

「ああ……すまない。急ぎの要件なようだ。

では、リッテン君。逃亡の準備か、釈明の用意をしておきたまえ。」

 

連絡を寄越したのは、エッシェンバッハ市長だった。

 

「フリードルフ卿!

夜分に申し訳ない。しかし……」

 

「大丈夫だよ、市長。

生命を狙われたのだが、こうして無事だ。

護衛に化けた殺し屋に、モビルスーツ部隊の強襲まであった。

ラインハルト君とその友人のおかげで、いまはアンネローゼと、安全な場所に避難しておる。」

 

「……」

エッシェンバッハ市長は黙った。

 

元より、頭の回らぬ男では無い。

 

 

「……やれやれ。

今しがたガルマから報告を受けたところです。なんでもネオ香港から同行したクワトロ大尉なる人物から、モビルスーツの模擬戦を行うよう打診されていたのだが、申請を出し忘れていた、と。」

 

「モビルスーツの模擬戦?」

フリードルフは小さく叫んだ。

「ニューヤークの上空でか!?」

 

エッシェンバッハ氏はため息をついた。

 

「これは、あなたの結婚記念日のイベントの一環だと、説明がありましたが、そのご様子ですと、ガルマのガセのようですかな?」

 

「クワトロ・バジーナ……そうだった。

思い出した。たしか、ネオ香港のクランバトルの興行主だったな。たしかにそんな話はきいていた!!」

 

アンネローゼが面白そうに笑った。

それを横目で見ながら、フリードルフは続けた。

 

「わたしとしては市街地に損害が出ないように配慮するよう依頼したよ―――実際にそうなったようだね?」

 

「では。この件は、フリードルフ卿もご承知の件であり……たまたま、ガルマが届出が遅れた、ということでよろしいでしょうか?」

 

「うむ。それ以外の解釈はない。

総監にもそのように伝えてほしい。」

 

「……かしこまりました。しかし」

画面の中のエッシェンバッハがニヤリと笑う。

「お命を狙われたばかりのだというのに、今宵はずいぶんとお元気ですな。」

 

「そう見えるかな?

実際にはずいぶんと疲れたよ―――だが若いものたちと語らうのはよいものだ。」

 

 

通信を切ったあと、アンネローゼは、フリードルフにそっと手を重ねた。

 

 

「ありがとうございます。」

 

「なに。

四半世紀ぶりに自分の意志でなにかを決めたのだ。

疲れもするさ。

そうだ―――休む前に、ラインハルトくんたちが行った病院に連絡をとってみよう。

命に別状がないとはいえ、おまえをかばっての傷だ。」

 

 

------------

 

 

 

緊急医療体制というものは、いくら組織が充実していてもなかなか思うようにはいかないものだ。

受け入れられる病院があるか。

あったらあったで、担ぎ込まれる患者はいくらでも要る。

多くの場合、夜間の緊急医療なとというものは、数時間待った挙げ句、「命に別状はないようです。痛み止を出しておきますので明日またかかって下さい。」で終わるものなのだが、フリードルフの息のかかった病院は、もちろんそのようなことはなかった。

 

 

ただし、話の内容は喜ばしいものではない。

 

 

「再生……医療ですか?」

 

「そうです。」

医局長と名乗った年配の医師はそう答えた。

「処置のため、一日入院していただきます。そのあとリハビリに三週間。」

 

「それは無理です。」

キルヒアイスは言った。

「わたしは、グラナダで働いています、ニューヤークでの仕事が終われば、すぐに月に戻らなければならない。」

 

「処置は明日、ここでおこないます。リハビリは、グラナダ中央病院に紹介状を書きましょう。」

 

腹のなかでは、これでフリードルフに恩を売ることを考えていたのかもしれないが、少なくとも医局長は良心的に感じられた。

 

 

「式典には出られそうですが、しばらくは手が自由になりません。」

キルヒアイスは悲痛な顔で主を見あげた。

「殺し屋どもはかなり大きな組織で動いています。名乗りまであげた以上、このまま引き下がるとは思えません。」

 

「勘違いするなよ、キルヒアイス。」

ラインハルトはわざと難しい顔で言った。

「わたしは、ともに語らう友として、同士として、おまえ身近に置いているのだ。

腕っぷしを頼りにしているわけではない。

そもそも、自分の身くらいは自分で守れる。」

 

「アンネローゼ様がいらっしゃいます。」

 

ラインハルトは沈黙した。

 

「アイヤ、そこら辺は任せるとヨロシイ!」

イェが快活に言った。

「グラナダから応援を呼ぶネ。」

 

「日程的にはなんとか間に合うが、いいのか。」

 

「いいも何も、報告しないとチェンが拗ねる案件ネ。」

 

「しかし、」

 

ちょっと失礼、病室の手配をしてきます

と、言って医局長が腰を浮かせた。

自分が聞いてはいけない話なのを敏感に察知したのだろう。

 

ラインハルトは、名刺を差し出した。

肩書をみて医局長は、驚いた。

 

「アナハイムエレクトロニクスの、専務・・・」

 

「治療費や入院費は、アナハイムエレクトロニクスに請求してくれ。

今回の件は、フリードルフ邸でのちょっとしたトラブルだ。卿からどのように聞いているかは知らないが、キルヒアイスはアナハイムの社員で、事故は業務中におきたものだ。

アナハイムが責任をもつ。」

 

 

医師が去ったあと、ラインハルトはキルヒアイスに続きを話すように促した。

 

「イェさんたちは、ある種の超人です。それはわかります。」

痛み止めが効いているのか、キルヒアイスの顔色は悪くはない。

「ですが、人数が限られている。パーティ会場やパレードのような場所を守るには不向きです。」

 

「ダカラ、はじまる前に、相手を叩き潰しておくネ!!」

 

「これがフリードルフ家の親戚筋によるものだとすると、叩き潰すにも難しいでしょう。

ハイネ家だけでもいくつも傘下の組織をもってるはずです。

当代フリードルフ卿とアンネローゼ様を排斥しようとしている親戚はいくつあって`、どの程度関与しているのか。それを調べないことには、こちらから攻撃することは難しい。」

 

「そうだな。

今後のフリードルフ家の護衛の問題もある。」

ラインハルトは頷いた。

「我々が紹介できるアナハイムの息のかかった警備会社は、フリードルフ卿がいやがるだろ。

アナハイムはいまやひとつの権力組織だ。身辺警護をそこに任せるということは、フリードルフ卿がアナハイムの傘下にくだる、ということを意味する。」

 

「クワトロ・バジーナ氏に相談してみてはいかがでしょう。」

 

ふむ。

ラインハルトは眉にしわを寄せた。

 

「確かに相談する相手としては悪くないが」

 

「正直に申し上げます。アンネローゼ様のこととなると、ラインハルト様は感情面が先に立っていまい、判断力が曇る傾向がございます。」

 

かなりズケズケとして物言いだったが、ラインハルトは怒りもせず、苦笑気味の笑いを浮かべただけだった。

そうして言った。

 

「それは、お互い様ではないかな、キルヒアイス?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




山場のちょっと前で、舞台が変わったりしてもたつくのは、作者が「山場」をどう書くか、決められないからです。
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