第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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ついにこの世界のヤンとラインハルトが顔を合わせます。
世界はどう動くのか。ふたりの関係はどうなるのか!






GQuuuuuuX season2 第13話 キラキラの果て~出会い

 

奴が近づいてくるのはわかっていたが、マクレーンは無視した。

ラフなパイロットジャケットにサングラス。

ブーツの音が軍靴に似ていた。

 

マクレーン自身も、独立戦争のときには兵隊に引っ張っられたクチだ。配属は北米で、当時のジオン軍の総司令官殿が、早々に宥和政策を打ち出してくれたおかげで命拾いした。

 

「奇遇だな……マクレーン警部補、だったかな。

なにをしている?」

 

「休暇中であります、クワトロ大尉殿!」

マクレーンは、嫌味たらしく敬礼をしてみせた。

もちろん、タバコはくわえたままである。

 

「そうだったな。」

怒り出すかと思ったが、美形のクランオーナーは、笑って返礼した。

「海でも眺めるのが趣味なのかな?」

 

「あんたこそ、こんな港湾部の倉庫街になんのようだ。」

マクレーンはタバコを捨てると、靴のかかとで揉み消した。

厳密には公僕がすべき行動ではないが、あたりは空いた酒瓶やタバコの吸殻で溢れている。

マクレーンひとりが気を使っても、なにが変わる訳ではない。

 

クワトロ元大尉は、自分の端末を取り出すと、画面をマクレーンに見せつけてから『セキュリティチェック』と書かれたアイコンをタップした。

 

『正規にインストールされてない位置情報アプリが動作中です。停止しますか?』

 

YES。

 

「油断も隙もない刑事さんだ。

メッセージに隠してこんなモノを送り付けてくるとは。」

 

「ニューヤークの条例では、手元の携帯用端末には位置情報アプリのインストールが、義務付けてられいるんだ。警察は必要に応じて、それを閲覧することが出来る。

まあ、有名無実の法律だがな……」

 

「しかし、きみはいま、停職中だろう。わたしの位置情報が捜査に必要とは思えんが……」

 

マクレーンは、クワトロから目を逸らし、次のタバコに火をつける。

「さっき、船便で着いのはモビルスーツだな。」

 

「正規に許可をとって、搬入した物資について、警官に説明する必要はないよ……」

 

「それ自体は、な。

だが、増援を送り込んだきたということは、あんたは、次の襲撃があると認めているってわけだ。」

 

「次の『興行』だな。」

クワトロはやんわりと訂正した。

「先日のデモンストレーションも含めて、すべてはクランバトルだよ。見せ物だ。」

 

「なら、世間を騒がせないように、前もって届出をしてくれ。次はいつなんだ?」

 

「そこらは、フリードルフ家の親戚筋のハイネ家が統括しているそうだ。

こちらには主導権はないのだよ。まあ、フリードルフ卿の結婚記念日までには行われると思うが。」

 

「俺は別に崇高な理想に燃えてる訳じゃない。」

マクレーンは、礼儀正しくクワトロにもタバコを進めたが、彼は断った。

「だが、目の前でなんかがおきれば、行動せずにはいられないタイプの人間なんだ。」

 

「そうだろうな。それは警官として好ましくもある。」

 

「……あんたはエッシェンバッハ家の依頼で動いているのか?」

 

「おいおい。捜査からは外されたはずだろう?」

 

「エッシェンハッハ家とはどういう関係だ?

いや、あんたが噂通りの人物なら、ガルマ・エッシェンバッハとは……」

 

「ガルマはわたしの友人だよ。わたしは彼の要請でニューヤークに来ている。」

 

 

 

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ニューヤーク空港は、いつだって混んでいる。

ウォン・リーは、アナハイムエレクトロニクスの極東支配人として、それなりの席を確保していたが、優先で降りることが出来る程度のもので、空港の喧騒そのものを緩和できるものではない。

 

「ウォンさん、こちらです。」

ラインハルトは自ら迎えに来ていた。

ウォン・リーとは旧知の間柄である。

 

派閥的には、ウォンは副社長派ではあるのだが、それは彼らの人間的な関係を著しく損ねるものでは、決してなかった。

―――要するに、グラナダの、月面支社長と保安部長が異常すぎたのだ。

 

「おめでとう……と素直に結婚記念日を祝う気にはなれないと思うが……」

 

「それは……」

ラインハルトは苦笑した。

「よく来ていただきました。」

 

「アナハイムエレクトロニクスを代表して、きみが出席する以上、わたしの出番はないと思ったのだがね。」

 

「わたしは、フリートルフ卿の義理の弟に当たるわけです。いわば身内です。

アナハイムからはべつの人物の出席がが必要でしょう。

長旅お疲れ様です。まずはホテルへ。」

 

相変わらず、この青年の所作、ひとつひとつが優雅で気品に溢れている。

 

ここまで、挨拶するタイミングすら掴めない甥っ子を睨みながら、ウォンはあとを追った。

 

突如発生したモビルスーツ戦のことなど、ラインハルトが知らぬわけはない。

聞きたくてたまらないのだが、いったんホテルに落ち着くまで堪えることにする。

 

迎えのリムジンに腰を下ろした時、ウォンは唐突に気がついた。

 

―――あの男がいない?

 

なかなかの二枚目で長身。ルビーを溶かしたような赤毛の若者だ。

いつもラインハルトについていた。

いまもたしか専属秘書として、グラナダに赴任したはずだ―――

 

「ラインハルト!」

 

「お気持ちはわかりますよ、ウォンさん。

ホテルにはクワトロも待機してもらってます。

そこで、まとめてお話しします。」

 

「そうではない!」

ウォンは、自分の声が険しくなるのを感じた。企業人として、彼はなにかを誤魔化されるのは大嫌いだったのだ。

「きみの秘書―――あのキルヒアイスはどうした!?」

 

ラインハルトの顔が一瞬、強ばる。

 

「彼のことを記憶に留めていてくれたのは、幼なじみとしては嬉しい限りですが…」

 

「彼の功績は、たしかにきみのそれに隠れてしまっているがな!」

ウォンは言いつのった。

「おそろしく優秀な若者なのはわかる。月に置いてきた―――いや、そんなはずはないな。

グラナダへはきみの『戦略研究室』の連中がすでに赴任している。

ならば、ニューヤークに幼なじみのキルヒアイスを連れてこない理由がない。」

 

「……負傷しているのです。」

ラインハルトは冷静をよそおってはいたが、悔しさが滲み出ていた。

「詳しくは、あとでお話しますが、賊に襲われました。姉上をかばって……」

 

「重傷なのか!?」

 

「命に別状はありません。ですが弾丸の当たり所が悪かった。神経を傷つけているため、再生医療が必要です。」

 

ウォン・リーの唇が歪んだ。

「それは、よかった。」

 

「よかった、ですか。」

ラインハルトの顔が、怒りの色に染まる。

 

「いえ、叔父が失礼をしました。」

口を挟んだのは、ウォンが連れてきた青年だった。

ラインハルトと同じくらいの年代の青年だ。

 

まずはクワトロ・バジーナとの合流を優先しようと、挨拶もせずにクルマに案内してしまったが、ウォン支配人が連れてきたと言うことは。

こいつがあの「ヤン・リー」なのだろうか。

 

「たしかに、命が助かったのはよかったかもしれない。だが完治までは時間がかかる。リハビリも続けなければならない。

それを『よかった』とは!」

ラインハルトの視線は、斜向かいに座るヤンに向かった。

炯々たる眼光がヤンを射抜く。

だが、ヤン・リーは、それをまるでそよ風のように受け流していた。

 

 

「叔父が『よかった』と失礼なことを申し上げたのは、単に生命が無事で、という意味ではないように想います。」

 

「ならば、どのような意味かな? 奇跡のヤン。」

 

妙な答えをしたならば、ウォン支配人の親族であってもただではおかない。

ラインハルトは無意識に拳を握りしめていた。

 

「失礼ですが、ラインハルトさん。

あなたはずいぶんと焦っているように見えます。」

 

「……そうだな。敵はフリードルフ家の親族どもだ。

暗殺者以外にも、市街地を巻き込んでモビルスーツ戦をしかけてくるようなやつらだ。

しかもわたしは、姉上だけではなく、フリードルフ卿まで守ってやらねば行かんらしい。

この手で。」

 

ラインハルトは己が手を見つめた。

 

「この手で葬ってやろうとさえ考えていた相手を、だ。」

 

「ラインハルトさん。あなたはやるべき事をきちんとやっている。

そのためにクワトロさんを同行させ、ついさっきわたしは、そのクワトロさんの依頼で“薔薇騎士団”のシェーンコップ少佐に助力を妖精しました。

彼は幸いにもニューヤークにいます。フリードルフ家の警護を引き受けてくれるそうです。」

 

「そうか―――きみが。それは助かる。」

怒りは怒りとして、ラインハルトは素直に礼を言った。

 

「やれる限りのことをして、さらにその上を求めようとしている。

わたしには僭越ながら、そう見えます。」

 

「人間のやれることには完璧はない。

やれることはなんでも―――」

 

「これ以上、動くのは悪手です。ふだんのあなたならそれがわかるはずです。」

 

「失礼だが、ヤン・リー。きみの武名は聞いているかが、わたしたちは初対面のはずだが?」

 

「あなたの話はきいています。

叔父から。クワトロさんから。N・ロックさんからも。」

 

「その情報からいまのわたしが焦っていると、判断したわけか?」

 

「そうです。やれることをやって、待つことができないあなたの状態は『焦っている』としか言いようが無い。」

 

「しかし……」

ラインハルトはすこし視線をそらした。

「盤面がいくつあっても、指し手がいないのだ。」

 

「それはなぜですか。」

 

ラインハルトは戸惑ったように、表情を消した。

それから俯くようにしてつぶやいた。

 

「……そうか。ジーク・キルヒアイスがいないからか……」

 

「叔父はあなたに、キルヒアイスさんの大切さに気づいてほしかったのだと思います。

キルヒアイスさんは単純にあなたの単なる秘書ではなく、ましてボディガードではない。

彼の怪我が、あなたがそれを気がつくきっかけになれば……『よかった』と。」

 

「ウェンさん。」

ラインハルトの口元に苦笑めいた笑いかうまれた。

「たしかに、とんでもない甥御さんですね。」

 

「わたしに言わせれば、勝手に軍を辞めて、学校に入り直すなんて、穀潰しですが、ね。」

 

 

 

 

 




次は、グラナダです。
そろそろアムロにも模擬戦をさせてやりたいなあ。
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