第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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火器を使わなくてもセントラルパークで、モビルスーツ同士が戦ったら、公園の原状回復費用はとんでもないことになりますが、そこらへんはフリードルフ卿がなんとかするのではないかと。







GQuuuuuuX season2 第13話 キラキラの果て~ニュータイプに最も近い男

アッガイは、ゆらりゆらりとクローアームを振る。

左半身に、やや前かがみ。

日の落ちたセントラルパークに、周りのビルの照明で、先端のクローが時折、光る。

 

全身は暗い黒に塗装されていて、闇がその巨体を包み隠しつつある―――つまり、明るい赤にペイントされたクワトロは、それだけで圧倒的に不利なのだが、それを気にもとめないのが、クワトロ・バジーナである。

 

“ボクシングでいうデトロイトスタイルに似ているな”

 

通称「ヒットマンスタイル」。攻撃を重視した構えである。ガードは下げて腕をだらりと垂らすように構え、そこから手首をしならせて打撃を放つ。

その打撃は「フリッカージャブ」と呼ばれる。

通常のパンチより軌道を読みにくく、相手のガードをすり抜け、あるいはこじ開け、ダメージを蓄積させる。

 

“ならば、ガードを固めて、潜り込んでクローを打ち込む、か。”

 

ほんの資金繰りのためにはじめた『バトリング』形式の試合の知識がこんなところで役立つとは!

 

ゆらっ。

 

アッガイが動いた。

 

同時にクワトロもズゴックを、屈むようにして、ダッシュした。

頭上を伸縮アームのクローが通り過ぎる。

 

だが、素早く引き戻されたクローアームは、次の打撃を放つ。

 

人間ならば「首を振る」という動作をしたかったのだが、ズゴックは首から肩が一体化ひている。

体を傾けて、やり過ごしたが、掠めたクローが、火花を散らした。

 

アッガイの攻撃はとまらない。

 

攻撃は鞭の軌道をもっていた。

曲線を描いて、上から下から。右から左から。

変幻自在にクローアームが襲いかかる。

 

 

だが。

そのいくつかをかわし、あるものは自分のクローアームではじき。

ズゴックは前進を続けた。

 

かわしきれぬ、捌ききれぬ打撃が、ズゴックの装甲に傷を刻んでいく。

だが、至近距離にはいってしまえば。

 

伸縮アームの長いリーチは、かえって仇になる。

もう一歩。

 

真上から叩きつけるような打撃を、クワトロは突っ込んではずした。

クローさえはずせば、単なる『打』である。

この一歩の距離を潰せば、ズゴックのクローアームの距離に。

 

凄まじい衝撃が、ズゴックを襲った。

 

なにがおこった?

 

コンソールに叩きつけられたクワトロは、呻いた。

クローの部分ははずしたはずだ。

伸縮するアームの部分。それがズゴックの背を叩いただけのはず。

 

だが、うけた衝撃はそんなものではない。

ズゴックは、地に頭をめり込ませるようにして倒れている。

 

損傷は……

 

まだ、動ける。

 

だがそれは「動ける」レベルであって、次に同じ攻撃を受ければ、ただでは済まぬ。

 

そんな一撃だった。

 

それは―――ボクシングの技では有り得なかった。

 

 

 

-----------

 

 

 

 

「破軍道ネ!」

 

ソファに陣取ったイェが、ぼそりと言った。

 

「な、なんだ、おまえは! いつからここにいる!」

ウォンが叫ぶのをイェ・チャージーは、ジロリも睨む。

 

ラインハルトが苦笑しながら言った。

「ウォンさん。これは月面支社が新しく雇った護衛だ。

こんな見た目だが、腕利きだ。先日もフリードルフ家で襲われたときには命を救われている。」

 

イェは口もとを貸しながら、ホホホと笑った。

「こんな可憐な見た目でもワタシ、とても強いネ。」

 

「い、いつ入ってきた?」

「クランバトルがはじまってスグね。

みんなモニターに夢中で気がついなかたネ。」

 

「それより、あれはどんなトリックなんだ?」

ラインハルトは問う。

「クワトロはクローは外したはずだ。

アーム部分が当たっただけであれ程の威力がだせるのか?」

 

「破軍道は、もともとは腕全体を鍛え上げて、その腕を『鉄の鞭』のようにしならせて打撃を繰り出す流派なのダ。」

 

「モビルスーツの打撃戦については、クワトロと話す機会があった。」

ラインハルトは言った。

「部位鍛錬のできる人間とは違って、モビルスーツの装甲材は、叩く方も叩かれる方もほぼおなじ素材となる。

蹴れば脚が損傷する。殴れば指が破損する。

そうなれば、移動や武器の取り扱いが出来なくなる。」

 

「外側の硬さ、の問題とチガうネ!」

イェはバカにしたように言った。

「生きてる人間は、なかの臓器のほうが大切ネ。いくら外身を鍛えても、身体の中に衝撃を伝える打ち方。

東洋の古流武術には存在するネ。」

 

ウォンが呆然と、イェを見返した。

 

「あのアッガイは、それをモビルスーツ戦に使用している、というのか?」

 

「理解が、早いネ。さすがは『八極門』の高弟ウォン・リー。」

 

「わたしを知って……」

 

「『伝承者』の『爪』。いまはイェ・チャージー。ヨロシクね!」

 

 

-----------

 

 

「真に問われるのは、最後にたっていた者の器だけだ。」

 

アッガイのクローアームが、ゆるゆると揺れる。ズゴックのそれと同じ、水陸両用機の特徴的な鉤爪。だが、その動きにはどこか儀式めいた静けさがあった。

 

「砕くべきものは、ひとつで足りる。」

 

バルゴは告げた。

 

「それ以外を壊すのは、力を持て余した者の戯れにすぎぬ。おまえほどの者なら、その違いは分かるはずだ。」

 

クワトロは沈黙していた。

 

まだズゴックは、片膝をついた姿勢だ。

うかつに立ち上がれば、またあの打撃を食らう。

 

かわせるか。

 

いや、確かに鞭の軌道を描く打撃は、読みにくい。

だが、それは人間の繰り出す「パンチ」だという先入観があるからだ。最初から、打撃ではなく、そう、たとえばビットによるオールレンジ攻撃をさけるつもりでいれば……

 

鋼鉄の―――正確には、とセラミックと超鋼鉄スチールの鞭が振るわれる。

 

クワトロは、そのままズゴックを横飛びさせた。

鞭は途中で軌道を変え、ズゴックを追う。

 

地にクローアームを突き立て、急速方向転換。

かろうじて、鞭をかわせた。

 

「見えるぞ。貴様の攻撃が。」

 

鞭。いやまるで生きている毒蛇の如く、アッガイの攻撃がおそいかかる。

クワトロは、冷静にその軌道を見極める。

 

マグネットコーティングを施した百式や、サイコミュを搭載していた赤いガンダムとは異なり、彼のズゴックは機銃の増設や多少動きがよくなるように、いじっただけだ。

 

―――機体の反応が、遅いっ!

 

かつて、アムロも感じたストレスを、クワトロも痛感した。

 

鞭が掠める。

ザザッ。

ズゴックの装甲が削れていく。

 

「この威力は!」

バーニヤを吹かし、なんとか距離をとろうとする。

 

アッガイが追う。

「わたしの攻撃はかすめただけでも、皮を剥ぎ、肉を削ぐ。」

声は陰々と響いた。

「モビルスーツに痛覚がなくて幸いだっな、赤い彗星。それでもダメージは蓄積されて行く。いつまで、立っていられるか……」

 

チィィッ!

 

僅かな焦りが、動きを鈍らせたのか。

 

一度通り過ぎたはずの鞭が、反転し、ズゴックを襲った。

クローアームを上げて、胴体への直撃は避けた。

 

だか。

 

異様な衝撃が、その巨大を揺らす。

 

“なん……だと?”

 

外部の装甲ではなく、内部機構に衝撃を与える技だということは、理解していた。

 

“センサーが!!”

 

「我が打撃は、相手のセンサーを内部から破壊し、その能力を奪う。」

相手は淡々と告げた。

「わたしの前に、立ちはだかるものは、周りを知覚することも出来ずに、無間地獄を彷徨うのだ。

終わりだ。赤い彗星!」

 

「ひとつ言っておく。」

 

「なにかね?」

 

ズゴックのセンターが「死んで」いる。

相手の位置も。いや自分の乗っているズゴックの状態すらもわからない。

 

「いまのわたしはクワトロ・バジーナだ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

「……なぜ、そこに固執するかはわからぬが、こちも名乗っておこう。

我々は、傭兵部隊『黄金の第八小隊』。

わたしは、『ニュータイプに最も近い男』バルゴだ。」

 

 

 

 




けっこうノリノリデカいてしまいましたが、次回でちゃんと結着します。
ちなみに「破軍」は「一勝千金」という格闘マンガからです。
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