ごめんなさい。
作者は「こいつらよくしゃべるなあ」と呆れるばかり。
二次創作ゆえ、自分の作ったキャラクターではないので、他人事のように困っております。
ジオンからの参列者は、ミーア・キャンベルと名乗った。
まさか、元首本人やランバ・ラル、マハラジャ・カーンといった重鎮が来てくれるとは思わなかったが、フリードルフはいささか拍子抜けした。
若い。そして美しい。
まだ二十歳を過ぎたばかりだろう。
ミーア・キャンベルという名も聞いたことはなかった。
たが、それでいい。
今回の式典に、ジオン本国の者が参列してくれるとは思ってはいなかった。
せいぜい、駐屯軍の司令官が来てくれれば上等であった。
それがジオン本国から、ひとを寄越してくれるとは……。
外交的な挨拶をすませたあと、フリードルフは、椅子をすすめた。
アンネローゼは所在なく、お茶を入れ始める。
まだ、会場へ向かうのは30分ばかりある。これも礼儀のうちであった。
美しさにもいろいろあるが、このミーアという女性の美しさは芯がある。
周りからの衆目を集める。誰かを悦ばせる。
そんなものとは関係なく、そこにそうあることが正しい。
そんな凛々しさをもった美しさ、だ。
「ジオン公国府特別補佐官……ミーア・キャンベル殿……」
渡された名刺は、ジオン公国の綺章に公王府のマークが透かし彫りにされている。
偽造は極めて困難。
「はい。最近、特別補佐官を任命されました。」
「そうか。このような席への出席は……失礼ながら。」
「わたしは、アルテイシア閣下の傍付きをしておりまた。その関係で外交上のパーティにはなんどか。」
かなり不躾な質問であったが、ミーア・キャンベルはすらすらと答えた。
想定の範囲内の質問―――ということもあったのだろうが、頭の回転も早い。
「わたしとアンネローゼの結婚10周年を祝うパーティだ。できれば、ミーア殿にも楽しんでいただきたかったのだか……」
彼女は、カッチリとしたスーツ姿だ。
礼を失するものではなく、凛々しく彼女にはとても似合ってはいたが、そのドレス姿を見たいと、男性なら誰もが思うだろう。
その意図がわかったのか、彼女は薄く、笑った。
「急に参列が決まりましたので、適当なドレスがございませんでした。」
「それは残念だ。もし今からでも手配してよければぜひ……」
アンネローゼが、紅茶のカップをミーアの前に置きながら言った。
「あなた。あまり若いお嬢様を困らせるものではないですわ。
今回のパーティには連邦軍の偉い方たちもたくさん出席くださいます。
ミーアさんにとっては、大事なお仕事も兼ねているのかもしれません。」
それはそうだ。
上流階級のパーティというのは、そういうものなのだ。
それに。
今回、ジオン本国から列席者がやって来たのは、ガルマ・エッシェンバッハが、ニューヤークの警備に、キャリフォルニアベースのジオン軍の協力を要請してしまった結果だ、とエッシェンバッハ市長からは聞いている。
モビルスーツまで動員したテロ。
たしかにそれを封じるには、ジオン正規軍に出てもらうのが一番、手っ取り早い。
だが、それは反面、「ガルマ・エッシェンバッハ」が「ジオン地球駐屯基地」を動かしてしまったというジオンにとって甚だしく、面白くない事態が起きたことでもある。
なんの権限もないはず市会議員が、ジオン駐屯軍に命令し、その指示に従った。
そして、その人物は、ザビ家の血筋である。
その事実を覆い隠すため、ジオン公王府は、フリードルフ家とダイクン家の永年の友誼に免じて「対テロ対策の人道上の支援」のためモビルスーツを貸し出したことにした。
そうなれば、式のそのものに参列者がいないのもおかしな話なので、急遽、このミーア・キャンベルなる若い外交官が派遣された、というわけだ。
たしかに急な出張だったのだろう。
外交官として、大きな式にひとりで参列するのは初めてかもしれない。
だが、落ち着いている。
ひとつひとつの所在が上品だ。
訓練された仕草ではなく、その挙動のすべてが優美なのだ。
はじめて、アンネローゼを見た時に感じたような。
「……ところで。」
フリードルフが、紅茶をひと口飲んで
「アルテイシア陛下からのメッセージをお持ちいただいている、とか。」
その問いを発したとき、はじめて彼女は微かに狼狽した……ように見えた。
「あ……そうです。
ジオン公王府は、閣下とアンネローゼ様の末永くのご健勝とご多幸を祈願する、とのことでした。」
なんだか、すごくどうでもいい内容だった。
ウソをつくなら、前もってそれらしい内容を考えておくだろう。
つまり、この女性は、実際にはアルテイシア・ソム・ダイクンからのメッセージは預かっておらず、それは比較的どうでもいい事だと考えていたのだ。
一介の外交官が。それも経験の少ない若い外交官が出来ることではない。
もし、これが公王府でも重鎮と言われるような大物たちなら、メッセージなどその場で考えればいい、とタカをくくって会談に臨むかもしない。
「……はて?」
フリードルフは首を傾げた。
「ミーア殿はダイクン家の血筋を引かれる方か?」
「い、いえ」
今度ははっきりとわかる動揺があった。
「なぜそのような」
「いや、わたしは生前のジオン・ズム・ダイクン殿には何度かお目にかかる機会があったのだよ。
あなたの所在になんとなく、彼を思い出させるものがあったので、ね。」
ミーアは微笑んだが、その笑みは僅かに固かった。
「……わたしは、アルテイシア・ソム・ダイクンの『影』としてお傍に仕えておりました。
もしわたしの仕草や口調にダイクン家の血筋を感じさせるものがあるとすれば、そのためでしょう。」
フリードルフの心にある疑惑が浮かんだが、あまりにも非常識な思いだったので、かれはそれを打ち消した。
「では、わたしからも。
アルテイシア陛下にメッセージを託したい。今回のテロ防止についての感謝で―――」
「それは重々承知しております。
あらたまった謝意は不要ですわ。」
「モビルスーツ部隊の派遣のことだけでは無い。
わたしとアンネローゼ。そしてニューヤーク市民を二度までもモビルスーツ襲撃から救ってくれた人物がいる。
クワトロ・バジーナと名乗っている。ネオ香港の実業家だ。」
「……」
「彼については、いろいろと噂をきいている。あくまでも噂ではあるが、もしその噂が本当なら、彼自身とともにその出身であるジオン公国とその妹御にも感謝を伝えたいのだ。」
ミーアは頭を下げた。
「間違いなく。アルテイシア様にはそのようにお伝えいたしましょう。」
ミーア=アルテイシアは心のなかで自分を罵った。
“若い女にうつつを抜かすただの老人と、きいていたのになかなかの傑物じゃない!”
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それはあくまでマススパーとして始められた。
本当には当てない。
当てても、本当にダメージになるような当て方はしない。
そのはずだが。
リッテンの用心棒の男は、顔を腫らし、唇から血がしたたっていた。
対するチェン・シャオロンは、ゆったりと佇んでいる。
いつも通り―――いやいつもよりも悪い。
普段は一応、拳法着に似たゆったりとした服を身につけているのだが、今日はジャージ姿である。
まるで、そこいらのコンビニにビールでも買いに外出したかのようだった。
「いや……懐かしいな。」
飄々としたその顔に笑みが浮かぶ。
「この技を使うものは絶えていなかったはずなんだが。」
「じゃあ、なんで『懐かしい』って感想になるんだよ。」
多少、血は流れているものの用心棒は、深刻なダメージを負っているわけではない。
ただ―――己の技が、通じていないことに、困惑をかくせないようだった。
「すこし長生きなんだよ、わたしは」
「……シゥ・クイシェの拳術が通じない……っ!」
リッテンは逃げ出したそうだったが、出口方向は、さりげなく、カイ・シデンが抑えていた。
「あくまでスパーだよ、これ」
白衣のポッケに手を入れたまま、ゼロ・ムラサメが笑う。
「世の中、広いネ。」
イェ・チャージーはチャイナドレス姿である。
「まあ……失伝しちゃってもおかしくはない流派ネ。習いたいひともいないし、習う相手も選ぶからネ。」
「まあ、ここまでよく磨き上げた。
たいしたもんだ。」
チェンはするっと、半歩、用心棒の男―――シゥ・クイシェに近づいた。
「そう……ここ。ここに打点がくるように『黒槌』を打ってみろ。」
言われた通り。
シゥ・クイシェは打撃を放つ。
チェンは。
受けずにそれをかわした。
ビキッ。
チェンの後ろの壁。
そこをハンマーででも叩いたような放射状のヒビが広がる。
「ちょっと!!」
ゼロが二人の間に割って入った。
「スパーは中止だ! 計器類を傷つけたりしたら元も子もない。」
そこは、ニューヤーク。
繁華街にまで徒歩圏内にある古い倉庫の地下である。
むろん、一等地だが、さまざま利権が絡まりあった結果、再開発が遅れる場合もある。
ここもそんな建物だった。
地下室はかなり広い。
置かれているのは冷凍カプセル。
中身は―――生身の人らしい。
単に『解凍』ではない。蘇生させるためのさまざまな医療機器も運び込まれているからだ。
「これは悪かった、ゼロ先生。」
チェンは素直に頭を下げた。
「まず、ここからは式の進行しだいだ。」
リッテンが唸るように言った。
「あくまで強硬手段に出るのは、フリードルフのじいさんが、ここで後継者を発表するような暴挙に出た場合だけだ。
その場合でも別働隊がまず襲撃する。それが失敗した場合にのみ、『マイナスワン』は稼働させることになっている。」
「滞りなく、式典が終わった場合でも、ロストナンバーを一度冬眠状態から解除。
わたしが必要な処置をとるためだ。いいなリッテン。」
「わかった。」
しぶしぶ、リッテンは答えた。
「それにしてもしぶといんだねえ、フリードルフ家の暗部は。」
カイ・シデンが揶揄うように言った。
「薔薇騎士団とニューヤーク市警の活躍でほとんど、拠点はつぶされ、構成員は、逮捕されてると思ってたんだが、まだ工作員を送り込む余力があったのかね?」
「……我々以外にも汚れ仕事を請け負う者はいる。」
いまいましそうにリッテンは答えた。
「具体的には、知らないが公爵がそう言っていた。」
ゼロはなにも言わずに笑っていたが、彼女とシェーンコップとの通信回線はONのままだった。
いまの情報も、シェーンコップに伝わっていた。
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よい組織というものは、悪い情報ほど伝達が早い。
リッテンの発言は、シェーンコップへ。
そして、シェーンコッブはその情報を独り占めするような浅はかな男ではなかった。
控え室のクワトロたちにもそれは速やかに共有されることとなった。
「……まだ別働隊がいることは確実になったか。」
ラインハルトは唸った。
「指示を出している親戚筋どもを一網打尽に出来ればな……」
「それは、難しいですよ、ラインハルト様」
キルヒアイスが宥めるように言った。
「疑いだけで、拘束するには十重二十重に、権力と財力で守られた相手です。」
これで終わりではないだろう。
そこまでは、彼らの予想通りだ。
だが、本当に別働隊が動いていることを知らされるのはまた違ったものがある。
一方でよい情報もある。
潜入した者たちが、行動に移るのは、フリードルフ卿が、今回のパーティでフリードルフ家の後継者を指名した場合のみだ。
それ以外では、今回は親戚筋は暗殺にまでは動かない。
そして、ラインハルトとキルヒアイスは、つい先日、「後継者を決めるつもりはない」
という言質を本人から聞いている。
とは言っても全ては流動的だ。
フリードルフ卿が気を変えるかもしれない。
親戚筋が計画を変更するかもしれない。
「……わたしは百式のコクピットで待機しよう。」
クワトロ・バジーナが腰をあげた。
「捕縛用のトリモチ弾を仕込んである。小隊程度なら鎮圧できるはずだ。」
ガルマ・エッシェンバッハの眉がピクリと動いた。
ミーア・キャンベルと名乗った外交官。
それが、アルテイシア・ソム・ダイクン本人であったことは、もう伝えてある。
“顔をあわせたくないんで逃げたな……”
そう思ったが言葉には出さず、胸の中に飲み込んだ。
「やっかいです……」
ヤンも苦しそうな表情だ。
「招待客か、スタッフか。なにに化けるにせよ、正規の招待状をもって来場することは間違いありません。いくら薔薇騎士団や市警察がチェックを厳重にしても効果が薄い。」
「それはそうだな。」
部屋を出ようとしたクワトロ・バジーナは足を止めた。
「わたしも心当たりに連絡してみよう。」
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『……という訳だ。ハイネ家以外の別働隊は正規のIDをもって侵入する可能性が高い。きみの幸運に期待する。クワトロ・バジーナ。』
マクレーン警部補は、一読してから、メッセージを消去した。
彼は暇だった。
そして、パーティ会場の警備に配置された警官が暇なのは実によいことだった。
それもこれも彼や薔薇騎士団が、ハイネ家の拠点やその構成員を徹底的に検挙したからだ。
それでもまだ殺し屋は湧いてでる。
彼が配備された場所は、会場のホールにほど近い。
ステージに繋がる通路の一角だった。
そこまでくるのに幾重にも警備網がひかれている。
つまり、マクレーンにはなにもすることがない。
何事もなければ、金持ちのじい様が若い嫁とラブラブなのを世間に公表するだけのクソイベントで終わるんだがな……
無意識のうちに手がタバコを取り出していた。
口に咥えてから、ここが禁煙であること思い出した。
さっきから、なんどもスタッフに注意されている。
彼が「おまわり」であっても、禁煙場所での喫煙を見逃すようなけしからんものはひとりもいない。実に結構なことだ。
ちょうど10数名。スタッフが角を曲がってきた。
きちんと制服を着ている。持ち場ごとの腕章もつけている。
ジロリ。
冷たい視線が咥えたタバコをとらえて、マクレーンはあわてて、タバコをケースに戻した。
スタッフたちはそのまま。
『なにも言わずに』
マクレーンのまえを通り過ぎて言った。
マクレーンは憮然とした。
どうやらまた当たりを引いてしまったらしい。
彼は、そのままその一団のあとを追った。
ちなみに『マイナスワン』の眠る倉庫の一階には、古い大型空調機がカバーをかけた置かれたままです。