今回もあんまりお話は進みません。
前回のお話しでヤザンとジェリドがティターンズ入りすることになりましたけど、それだと正史そのままなんで今後の展開は少し変えてます。
まあ、それはもう少し先の物語になる予定。
まずは、アムロ君の歓迎会をしよう。
と、クワトロは言っていたが、食事にありつくまでまだしばらく時間がかかった。
クワトロが、ララァの買ったコートを見て「安物すぎる」と文句を言い出したのだ。
その足で彼は中世からある名門ブランドのブティックのホンコン本店に、ララァを連れていった。
当然、アムロやマチュ、ニャアンやシャリア・ブルも付き合わされたのだが。
「なんでここの店なのです? 大佐。」
ララァ自身は、あまりそれが気に入らなかった様子なのだ。
ここまでのハイブランドになると入口で客はチェックされる。
マチュたちは、すこし子どもすぎるし、アムロはシャトルから脱出したときの着の身着のままだ。
一番相応しい風格、年代なのはシャリア・ブルだろうが、変な仮面が全てを台無しにしている。
それでもすんなり入れたのは、クワトロがもつ品のようなものだろう。
何着か試着したコートはたしかにララァによく似合ってはいたが。
ここはもともと馬具をつくっていた歴史あるブランドだったが、近代以降、洋服はもちろん、貴金属や香水までも幅広く製造、販売まで行っている。
最近ではモビルスーツやモビルアーマーまで手を出す勢いだ。
もちろん、ガワのデザインだけで中身はジオニックとなるのだが。
「ララァにはここが似合うと思ったのだが。
どう思う、アムロ?」
「いえ、とっても似合うと思います、けどなんか不吉な気がして。」
妙な言い方をしてしまったのは、急に話を振られて焦ったためだ。
それ以外にない。ありえない。
「まあ。あなたもなのね? わたしもどうしても防護の面が気になって。」
と、ララァはやや浮かない顔で言った。
「防御力!? コートに防御力を求めるのもわからんが。冷たい風くらいだろう。コートが守ってくれるのは。」
「いえ、その……ビームサーベル……」
「そうなのです、大佐。ここの製品ではビームサーベルの直撃を受けたら容易にコクピットまで貫かれてしまいます。」
「なんでコートを着て食事に行くのに、ビームサーベルをもった暴漢に襲われることを心配しないといかんのだ!?」
町工場のせがれで、クラバ選手のアムロから見ると目の飛び出でるような金額を払って、クワトロは結局そのコートをララァに買った。
似合う、とマチュやシャリアにも褒められたので、ララァも結局のところ満更でもなさそうだった。
一行は、予約したレストランにはいった。
宇宙世紀とともに国家の垣根は、ほぼ一掃されている。
(だが、反面、地球に残った人々と、コロニーに移住した人々との争いは、ご存知の通りである。)
ここは、「チャイニーズを中心にエスニックを取り入れた創作料理」ということになっている。
アムロにしてみれば、味よりもクワトロ“大佐”が気になる。
以前に、ポメラニアンズのアンキーとの連絡のときにモニタを覗いた印象よりも若々しくみえる。
アムロから見ても、モデルにしたいような二枚目である。
この人物が、本当に“赤い彗星”シャア・アズナブルなのだろうか。
聞きたいが、アムロはすでにクワトロを怒鳴りつけてしまっている。
“下がってろ! シャア!”
と。
港での戦いのさなか、なぜそんなことを口走ってしまったのか分からない。
確かに自分のカスタマイズ機を赤く塗りたがるのは“赤い彗星”の特徴ではあるが、あんな水陸両用のモビルスーツはレパートリーになかったはずなのだ。
喋りたいことは山ほどあったが、とにかく切り出しにくい話題が多い。
「うわおっ!」
「おっおおお……お…」
だがしばらくは食べる方に集中せざるを得なかった。
なにしろ食べ盛りの(?)の女子高生(?)がふたりもいるのだ。
髪の長い方、ニャアンは完全にマイペースだ。コース料理の途中に美味しかったものをオカワリする。
マチュは、ナイフとフォークの使い方がうまい。意外に育ちはいいのかもしれないが、食べかたがアグレシッブなのだ。
「美味しいですか?」
マチュとは顔見知りらしい。
ダンディな口ひげを仮面で台無しにしたシャリア・ブル中佐がそう訪ねると、マチュは大きく頷いた。
「食べられる時に食べとけと。
ガンダムが言っている。」
やっばりこの子はおかしい。
おかしいと言えばララァさんもそうだった。
見るからにクワトロの恋人らしい。
姓が違うのでまだ籍はいれていないだろう。
それがアムロが気に入ったのか、さかんに話しかけてくれるのだ。
「あの白いモビルスーツに乗ってきたのね? やはり大佐を殺しにきたの?」
「ち、違います。ぼくはクラバの選手なんです。地球へはモビルスーツの研究ができる工科大学へ進学するためです。」
「今度はわたしを貫くの?
それとも彼を?」
「しませんよ! コクピット周りへの攻撃は反則ですから!」
「最初に会ったとき、わたしたち一緒に鳥が死ぬのを見てたよね?」
「え、会ったのはさっきじゃないですか。」
「あのときは雨が降ってたわ……」
「ララァはなんというか、夢のなかで起こりうる未来を見ることが出来るのだ。」
困りきったアムロを助けるように、クワトロが言った。
「正確には、なにかが違うことで生まれた新しい世界の可能性をだ。」
「難しいですね。」
とりあえず、怪しい会話についていけず、アムロはやっとそれだけ言った。
米粉で作られた半透明の皮の春巻きを口に運ぶ。
「たとえばだが、わたしがきみのいたサイド7を襲撃したとき、たまたま流れ弾がきみのいたシェルターを直撃してしまった。親しいものたちが傷ついたきみは、ちょうど稼働準備の出来たガンダムを見つけて、乗り込んでしまう。」
「あなたの代わりに、という事ですか?」
「そうだ。あの当時のガンダムの性能はザクを大きく上回っていた。わたしとデニムが撃退された可能性は高い。」
「ぼくはモビルスーツの操縦なんてしたことないですよ!」
「デビュー以来無敗らしいが、どこでモビルスーツの操縦を習ったのかね?」
「そ、それは……親父の研究を手伝っていたんでいまは操縦法くらいは。」
「同じことが6年ばかりまえに起こっていたらどうなっていただろうな。」
それは考えたくもないな、とアムロは思った。
たぶん。もし彼にモビルスーツ操縦のスキルがあれば彼はそのまま、連邦軍に動員されていただろう。
そしてどこかの時点で、撃墜され、二階級特進になるのだ。たぶん伍長くらいに。
そう考えると、目の前のクワトロがガンダムを奪ってくれて幸いだったのか。
「そんなことはないわ。あなたは勝ち続けるの。
勝ち続けてかならず大佐のまえに立ち塞がる。」
「で、かならず大佐が負けるんだってさ。」
マチュが、カオマンガイを口にほおばりながら言った。
「実にいいですね!」
シャリア・ブルが嬉しそうに言った。
「ではさっそく、クワトロ大尉とアムロくんのカードを組んでください。
ビーム兵器ありの特別ルールで。」
「いやです!」
アムロは即座に言った。
「というのは、ララァの夢の話だよ。」
とりなすようにクワトロは言った。
「そう。」
アムロをじっと見つめながら、美姫は笑う。
「わたしの夢の話。」
「……ララァさんはニュータイプなんですか?」
「あったりまえだよ! 天パ!
たぶんララァさんはすっごいニュータイプなんだよ。」
「でもきみだってニュータイプなんだろう、マチュ。きみのジークアクスはサイコミュでコントロールされてる。
たぶんそっちの友だちも」
「ニャアン。」
「ニャアンも。それにシャリア・ブルさんだって。それに」
アムロは恐ろしいことに気がついた。
クワトロがシャアならば彼もまたニュータイプだ。
つまり……アムロはニュータイプの集団と一緒に食事をしていたのだ!!
「それをいま気が付かれても。」
シャリアが呆れたように言った。
「い、いえ。
ニュータイプって存在そのものを未だに疑問視するひともいるくらいの存在ですよ。
ジオンはたしかフラナガンスクールっていう専用機関までつくって、育成をしてるはずですけど。」
「先日、きみの部屋に押しかけたエグザべ中尉は、そこの出身ですよ。」
シャリア・ブルは、まだアムロに若干の疑惑をいだいているようだった。
大気圏への単独突入、さらには対戦したモビルスーツの両手足をきっちり破壊するという、余裕たっぷりでないとできない戦闘を楽々とこなす。
それらが自分の能力を誇示するためにやったのだという疑いがどうしても晴れないのだ。
ソドン経由で、大気圏突入寸前にティターンズからテロリストと間違えられて攻撃を受けたらしい、という情報は、シャリアの耳にも入っている。だが、その戦いぶりは!
相手をしたのは、最新鋭のハイザックだったという。
それを一分とたたずに、撃破! いや撃破ではない。相手の武装のみを破壊する精密攻撃で行動不能に陥らせた。
「士官学校出身のバリバリの軍人かと思ってました。」
「実質的にパイロットの養成所ですかね、フラナガンスクールは。
いまは公王府の直轄の運営になってきます。」
「やっぱり重要な機関なんですね……」
「運営においてはキシリア様の派閥でしたからね。監視の意味もあります。」
アムロはプレッシャーには弱い方だった。
独立戦争の英雄やニュータイプと同席しているだけで、胸が苦しくなってくる。
「……そんなすごい人たちと食事してるだなんて!」
「いや、アムロくん。」
クワトロが呆れたように言った。
「きみも間違いなくニュータイプなのだが。」
勘弁してほしいな!
と、アムロは思った。自分はただのクランバトルの選手で、父親と作り上げたモビルスーツの性能のおかげで勝ってるだけなのに。
「……まず、シャトルで離れ離れになってしまったクリスチーナ・マッケンジーさんたちと連絡をとりたいのですが。
心配もしてくれていると思うし、ぼくの進学先についても考えてくれてるはずなんです。」
「それはもちろん、協力はするが」
クワトロは言った。
「名前だけではな。地球は広いし。どこの所属かな?」
「それが、教えて貰ってないんです。
着いてからいろいろ話をするという約束でしたので。
どこかの研究開発チームのテストパイロットをしているということでした。」
「それだけではな……」
とクワトロは唸ったが、マチュが口を挟んだ。
「ダイジョブだよ、天パ!」
「……どこらへんが大丈夫なんだい?」
「これからわたしたちの試合はバンバン、メディアで配信されるんだから。
黙ってても向こうから気がついて、連絡くれるよ。」
みんなの注目を集めたせいか、マチュはちょっと気恥しそうに視線を落とした。
「……ってガンダムが言っている。」
“それはウソだな!”
と、全員が思った。
一応、「このシナリオでアニメになったら」を妄想して書いておりますので、ここまで16話は場面を変えての会話劇ばっかり。そろそろ放映一回にはバトルを少しいれたいので、次回はネオホンコンバトルのアムロデビュー戦。対戦相手とアムロのマブは誰になるのか!?
……まだ考え中です。