二次創作なんで、ここをハッピーエンドにしてもいいはずですがぜんぜんそうならないふたりです。
「今回の試合会場となるコロニーはすでに、廃棄されているものだ。」
モニターに表示された画面には、コロニーの立体図が線画で描写されている。
「具体的には、かつてデラーズが地球への投下を目論んで移動させていた代物だ。
マスコミ発表は、デラーズ・フリートが演習中に偶然、核パルスエンジンの誤点火によって落下軌道に突入しかけたコロニーを発見、これを阻止したことになっているが、ここにいるメンバーなら、話しても問題はないだろう。」
ブライトは、周りを見回した。
ヘンケン艦長、エマ・シーン、ほかの連中も「あのとき」に居合わせた連中ばかりだ。
唯一の例外は、ココ・シャロンだったが、表情からすると特に驚いた様子もない。
クランバトルのランカーとしては、その程度の裏の情報などとっくに把握している、といことか。
「今回、スポンサーからは、ビーム兵器を使用した実戦式のテストを特に希望されたので、他への被害を留めるために、会場をコロニー内部とする。現在内部は気密性も保たれていない。
自転も停止しているため、擬似重力も発生していない。
今回のテストの『ウォルンタース・デイ』ユニットは宇宙空間での運用を主眼に開発された装備だ。充分、条件は満たしていると思う。」
ハマーンが手を挙げた。
「百式を相手に選んだのは?」
「いい質問だな。
百式は現在、各社がしのぎを削っている次世代モビルスーツの完成形と言える傑作機だ。装甲、機動性、攻撃力、拡張性……あらゆる部分で平均値に近い。
もし百式を圧倒できれば、それは『ウォルンタース・デイ』ユニットが次世代機を上回る性能をもつと明確に宣言できた、ということになる。」
「相手がシャ……クワトロ・バジーナ大尉だという点については?」
「百式は実質、彼のためのワンオフ機だ。ほかのパイロットを連れてきても、それは、『機体に不慣れなパイロットにつけ込んだ』というだけで充分なテストにはならないだろう。」
ブライトはハマーンを見つめた。
彼女がジオンの名家の出身であり、ジオン公王府がクワトロ・バジーナに対し、必ずしも好意をもっていはいないことは把握していた。
「……わたしを参加させた理由は?」
「……ジオンからエネルギーキャップ式のビットの性能テストをして欲しいという依頼はかなりまえから来ていた。
ただ対象の機体は一機しかなく、パイロットもハマーン、あなたしかいない。
一方でクワトロ・バジーナ氏……彼を相手にココ・シャロンの『ウォルンタース・デイ』だけで戦うにはあまりにもキツ過ぎると感じた。
性能の評価をみる間もなく、落とされてしまうのではないか……と。」
「ああ、なるほど。
ヘルムコングロマリットからの『ウォルンタース・デイ』ユニットのテストと公王府からのファンネルビットのテスト。両方をいっぺんにやってしまおうと」
ハマーンの顔が不快そうに歪んだ。
「―――だが、逆もある。わたしとココ・シャロンなら百式などあっという間に落としてしまい、結局性能評価などには繋がらん、ということも。」
「百式を圧倒できた、という実績がイコール性能評価になる。」
ヘンケンが口を挟んだ。
「存分にやってもらってかまわんよ。」
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出撃直前になって一悶着あった。
ハマーンのパイロットスーツ。
彼女が着用していたボディスーツは伸縮のきく生地で、肌にぴったりしていて、まるでパイロットスーツではなく、ユニタードのように見えていたのだが、それがパイロットスーツでもなんでもなく本当にユニタードだということが、発覚したのである。
ボディラインの一部は、首から胸にかけてのドレープが隠していたが、万が一、コクピットか破損して宇宙空間に放り出されたときには何の役にもたたない。
ただの布の生地だ。
アクシズではずっとこれだった。
と、ハマーンは主張する。
はあ。
と、ララァは心の中でため息をついた。
このひとは、あのひとによく似ている。
わたしもパイロットスーツをつけて出撃してくれとお願いしたのに、あの阿呆は。
いやいやそれは夢の記憶だった。
ブライトたちは地上に残ったキャラやマシュマーに連絡をとっている。
だが、「好きにさせるしかない」という結論に達したようだった。
「よし! 行くぞ!
我が君に目にもの見せてやるっ!」
ハマーンは意気軒昂である。
「ハマーン・カーン、キュベレイ出る!」
ララァもそっとウォルンタース・デイのコンソールに手を触れた。
「ウォルンタース・デイ、ココ・シャロン、発進します。」
カタパルトは加速をつけて、ウォルンタース・デイの巨体を宇宙空間に放り出した。
オートパイロットにまかせてもいいのだが、ララァは自分でウォルンタース・デイの姿勢を制御した。
軽い!
以前彼女の機体に取り付けられていたユニット“ロゼ・スパークル”はいわば特殊攻撃用にユニットだった。
このウォルンタース・デイはまったく違う。
着ぐるみのように全身に着込むタイプのユニットだ。
防御力を上げる。
あるいは攻撃力を上げる。
新たな装甲や武器の追加は。モビルスーツの総重量をアップさせ、機動力を低下させる。
それを補助するために、バーニヤ、スラスターを追加する。新たなバーニヤのためにプロペラントタンクを増設する。
プロペラントタンクの増設は、また重量をアップさせ、それによる機動力の低下を補うために―――
永遠に続くこの堂々巡りにひとつの解答を出したのがウォルンタース・デイだった。
ララァは機体を加速させる。
たっぷり加速したところで、ジグザグの機動を行う。軽々と機体は、ララァの操作に追従した。
巨体とは思えない敏捷性だった。
「ハマーン代表! ココ!
すでに百式はコロニー内に待機している。」
ブライトの声が入った。
「エアロックは作動していない。すきなところから侵入しろ。きみたちがコロニーに侵入すると同時にクランバトルスタートだっ!」
キュベレイの張り出した肩のバインダーが、奇怪な昆虫の羽のように蠢いた。
ふわっと、身体をよせてくる。
「ココ。わたしが先行するわ。」
「……」
「まかせて。そう簡単に落とされやしないし、わたしたちのだいじなひとを殺したりもしないから。」
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どこから来る―――?
クワトロは、廃墟となったビルの影に百式を潜ませている。
ミノフスキー粒子は戦闘濃度に散布済みだ。
ララァはともかく、ハマーンには自分と似たような性質を感じている。
モビルスーツでの戦闘そのものを楽しむタイプだ。
だから、大人しく宙港から入ってくるとは思えない。モビルスーツ用のハッチのどこか、か。
あるいは、外壁を撃ち抜くか。
「高熱源体……か。」
予想に反して、2人の機体と思われる影は、コロニーの宙港部分に現れた。
真っ当と言えば真っ当ではある。
だが、むこうはクワトロの位置を把握していないはずだ。
のこのこと正面から現れるなら、最初の一撃はクワトロのものになる。
百式のビームライフルは、最新型ではあったが、通常のモビルスーツと汎用性のある武器だ。
構造体越しに、モビルスーツを撃ち抜くほどの威力はない。また万が一にとコクピットやジェネレーターを直撃して、ララァやハマーンを殺してしまうことは避けたかった。
きちんと狙って。
一撃で頭部を破壊する。
百式は静かにライフルの銃口を持ち上げる。
さあ―――
出てこい。その瞬間に試合は終わる―――
『甘いな! シャア!!』
脳内に聞こえた声は、回線を経由したものではない。ニュータイプの“共振”によるものだった。
狙われている!
クワトロは反射的に、ビルの影から百式を飛び出させた。
ビームがその脚を掠め。
百式に塗布されたビームコーティング剤が辛うじて脚部の破壊を防いだ。
“チイ……ファンネル……かっ!”
港の施設の中にキュベレイを隠したまま、ハマーンはファンネルによるこちらの索敵と攻撃を行ったのだ。
小型化したため、かつて彼が使ったビットのようなアウトレンジ攻撃には向かないが、全長30キロ、直径6キロの円筒状のこのリングの中なら、充分だ。
四方八方からファンネルが襲いかかる。
回転による擬似重力もない。
この戦場はまさにキュベレイの独壇場だ。
『やるなっ!』
『当たり前だろう、我が君!』
ハマーンは哄笑した。
『わたしは、おまえに守られるだけの女では無い! おまえの傍らに立ち、ともに歩みたいのだよ!』
これが嫌なのだ!!
クワトロは、懸命に自分の心の内をハマーンから隠した。
愛を告白しながら、相手をファンネル攻撃できる相手と付き合えるものかっ!!
ファンネルから発射されたビームが、肩のバインダーを破壊した。
腕を。頭部を掠めたビームはなんとかビームコーティングが散らしてくれた。
頭部のバルカンがファンネルの一基をとらえて、爆散させる。続いてもう一基。
ええい、あと何基あるのだ、キュベレイの ファンネルは!
そのとき。
コロニーの宙港部分から、一機のモビルスーツが現れた。
識別機種……該当なし?
光学的な拡大で十分捉えられる距離だ。
それは、キュベレイではなく。
クワトロが覚えているララァの機体……とんがり帽子状の頭部をもったロゼスパークルでもなかった。
大きい!
高性能化にともなって、モビルスーツも20メートルを越える大型のものが珍しくなくなっているがこの機体はそんなものでは無かった。
25、いや30メートル近い。
ずんぐりとしたフォルムに長大なビームライフルを抱えていた。
“な、なんだ、このプレッシャーは!”
クワトロの背を冷たい汗が流れる。
彼のかつての盟友シャリア・ブルは、『向こう側』のガンダムを見た時に言いしれない恐怖とプレッシャーを感じたという。
クワトロが、このモビルスーツに。
そしてキュベレイにも感じる感覚だ。
クワトロは、ビームライフルを放った。
だが、その瞬間、スコープから異形のモビルスーツの姿は掻き消えた。
『な、なに、はやいっ!!』
次の瞬間。
百式の左足が膝から吹き飛んでいた。
『落ちろっ! カトンボ!』
『ラ、ララァかっ!?』
次回の予想セリフ
「まだだ……まだ終わらんよ!」
「これで終わりにするか? 続けるか」
「そんな決定権がおまえにあるのか」
など