エゥーゴ。ジオン。あったかもしれない世界。その記憶は誰のもの?
混迷のクランバトル決着。
ううん。
やっぱり違和感ある。
ララァは鼻の頭に皺を寄せた。
フロドの作品。
「ZETAの少年」で描かれたシーンを再現してみているつもりなのだが。
ここは廃棄コロニーだが、コロニーレーザー仕様に改修されてはいない。
キュベレイと百式はいるが、ウォルンタース・デイはカンチャナの作品に出てきたジ・Oではない。(性能、外観ともに結構似てはいたが)
そして、なによりララァは『あの男』ではないのだ。
まあ。
唇に笑みが刷かれた。
まあ、やれる所まではなぞってみましょう。
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片脚の喪失!!
重力下ならば、それだけで行動不能。致命的になる損傷だが、ほぼ無重力の廃棄コロニー内ではそうではない。
クワトロはビームライフルでさらに2基のファンネルを撃墜した。
ハマーンはよく鍛錬している。
ファンネルの操作は正確だ。
だが―――
流石に実戦経験は不足している。
攻撃が正確な分読みやすいのだ。
「五つっ!」
振り向きざまに放ったビームが、また一基のファンネルを破壊した。
『シャアっ!!』
ハマーンの思念が叫ぶ。
港湾部の建造物の影から、奇怪な昆虫を思わせるキュベレイの姿が現れた。
『ハマーン! ダメです! 今出てきては……』
ララァの思考だ。
“やっかいだな……”
クワトロは苦笑する。
“互いが互いの意思を感じ取り、その思いを共有しながらも戦うことか出来るのだろうか。”
そうなれば。
人類がそのように進化すれば、この世から戦争などもなくなり、手を取りあって前進できる世界がやってくる―――
甘い!
甘いのだよ、父上。
心を通わせながらも。ひとは戦い続けることができる。
ララァの巨大モビルスーツのビーム砲が発射される。
この新型は―――いや。これもまたヘルムコングロマリットの『ユニット』なのだろうか。
こいつは恐ろしく疾い。
ずんぐりした外見に騙されてはならない。
単なる直線での加速だけではなく、小回りも効く。分厚い装甲も伊達ではない。
実際に百式のビームライフルの一撃が弾かれている。
なるほど。
武装や装甲の追加による機動力の低下。
バーニヤ強化。
プロペラントタンク増設。
重量増加による機動力の低下。
スラスター増設。
……
限りなく続く連鎖にいったん完成系を作ったわけか。
ミサイルや複数のビーム砲。機銃群。
そういったものは一切積んでいない。
武装はただ一つ。
ビームライフルのみ。
だが、その威力は尋常ではなかった。
恐らくは戦艦の主砲を上回る。
百式のビームコーティングなどものともせずに片脚をもぎ取っていった。
だが、それで充分だ。
むしろ様々な武器を搭載してしまうことで、攻撃系の操作を煩雑にしてしまうことを避けている。
―――ララァにはむいているかもしれない。
ファンネルによる多方面からの攻撃。
巨大モビルスーツの一撃必殺のビーム。
クワトロはかわし続ける。
隠れていたキュベレイが、姿を見せたのはわかる。
百式を目視したほうが攻撃の精度があがる、と判断したのだ。
だが、それは逆にこちらからの攻撃に対して的を晒したことになる。
キュベレイの頭部を正確に撃ち抜く射撃。
だがその間に、巨大モビルスーツが滑り込む。
百式のビームライフルが直撃。
外装の一部が破壊されるが、致命傷には程遠い。
このモビルスーツは、攻撃力と機動力だけではない。装甲もとんでもないものだったのだ。
ならば。
クワトロは百式を最大加速。
同時にビームサーベルを抜きはなった。
いくら強力なビームライフルを装備していても接近戦なら!
そして接近してしまえば、うるさいファンネル攻撃もできなくなる。
ララァの機体の反応は、一瞬遅れた。
いくら高性能の機体でもパイロットが、ララァでは。これで例えばサイコミュのように、パイロットの意思そのものを動きに反映できるような装置を積んでいれば、また話は違ったのだろう。
だが、それは出来ない。
ヘルムコングロマリットは、VIP用のカスタムオーダーモビルスーツの強化パーツとしてこの機体を開発している。
顧客となる地球の、あるいはコロニーのお偉方に、ニュータイプなどはまずいない。
ハマーン流に言えば「俗物」どもである。
体勢を崩しながらも、かろうじて巨大モビルスーツは、己のビームサーベルを抜きはなった。
たが、勢いは百式が完全に有利。バランスを崩したところで、ビームライフルを持つ腕ごと切断する。
―――弾き飛ばされたのは、百式の方だった。
防御力。
攻撃力。
機動性。
それらを兼ね備えたこの機体は、また「パワー」も桁外れのものだったのである。
まだだ!
クワトロは、巨大モビルスーツの下方向に潜り込んだ。
一応は人間の範疇におさまる四肢はもっているが、要部は巨大なスカートに覆われている。脚はずんぐりと、それ自体がバーニヤとプロペラントタンクで形成されているようだった。
メインカメラからは死角となる。
しかもその腕が振り回すビームサーベルは、そこまでは届かない。
“両脚を破壊する。”
クワトロはこのとき半ば勝利を確信してた。
だが。
振りかぶった腕がビームサーベルごと切断された。
な……ん、だと?
スカートの下から突如出現した隠し腕だった。
切っ先がビームの刃を形成している。
隠し腕は一本だけではなかった。
次々に繰り出される斬撃から、逃れるためにクワトロは、巨大モビルスーツから距離をとる。
そこへ。
ファンネルのビームが襲う。
さらに2基のファンネルを撃墜したところで、ビームライフルのエネルギーが尽きた。
昆虫の翅のような肩のバインダーを広げ、キュベレイが目の前を浮遊する。
『どうだ? わたしを選ぶか?
それともララァを』
『そんな決定権がおまえにあるのか』
クワトロはバーニヤを全開にして突っ込んだ。
キュベレイは、ファンネルという画期的な兵器、肩のフレキシブルバインダーによって高度な機動力をもってはいるが、ジェネレーター、装甲ともに一世代前のものだった。
キュベレイの両腕のビームが火を吹いた。
百式の肩バインダーが吹き飛ぶ。
うち尽くしたビームライフルが破壊される。
それでも構わずに、クワトロは突っ込んだ。
そのまま、コロニーの人工の地面に、キュベレイを叩きつけた。
この至近距離なら、バルカンでキュベレイの頭部を潰せる。それで勝ちだ。そしてここまで接近してしまえば、ファンネルによる攻撃は―――
「甘いよ、シャアっ!」
ファンネルが、接近する。
組打ちの状態から、ファンネルをもって相手のモビルスーツだけを破壊する。
ハマーンにしかできない想像を絶するようなテクニックではあった。
だが
「どっちが?」
百式はキュベレイを抱き抱えたまま、くるりと反転した。
百式の腕と脚を吹き飛ばすはずのビームは、キュベレイのフレキシブルバインダーを爆散させ、腕を破壊していた。
さらに至近距離から放たれた百式の頭部バルカンがキュベレイの頭部に突き刺さり、穴だらけにしていく。
『大佐っ!!』
ララァの思念が響いた。
ガチッ
バルカンの発射レバーが乾いた音をたてる。
こちらも弾切れだ。
「大佐っ!!!」
ララァの巨大モビルスーツが迫る。
こちらはほぼ無傷。
百式は片手片脚を失い、武器はすべて尽きている。
ならば。
「だぁいさあぁぁぁッ!!!」
クワトロは百式を飛行形態に変形させる。
スラスターもかなりダメージを受けている。
ララァの巨大モビルスーツに対抗出来る加速を得るにはそれしかなかった。
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ララァは。
我を失っていたわけではない。
たが、彼女にとって、シャア・アズナブルに勝つということはそれだけで、彼女に凄まじいプレッシャーを与えていた。
百式に武器はもうないはず。
なぜ?
なぜ、彼は変形してまで、突っ込んで来るのだろうか。
わからない。
体当たり?
いえ、射撃が間に合う。ウォルンタース・デイのビームライフルなら、一撃で百式を。
ララァは、しかし動けなかった。
武器が強力すぎる。
ウォルンタース・デイのビームライフルはどこに当てても百式を、爆散させてしまう。
ララァが、もっと経験を積んでいれば。
咄嗟に、百式の翼を掠めるようにして、ビームを放つこともできただろう。
だが、ララァは。
う、動けない! 動けっ!動いて、ウォルンタース・デイ!!
真っ直ぐに突っ込んだ飛行形態の百式は、ウォルンタース・デイの頭部目掛けて体当たりし、そこだけを正確に貫くように破壊した。
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「なにをやっている!」
ヘンケンは珍しく、ブライトに怒鳴った。
すぐに頭に血が上るほうでもないし、ブライトも叱責されるようなことはしない。
「アーガマの前進をシャトルが拒んでおります、艦長。」
怒鳴りつけられて面白いはずもなかろうが、ブライトは冷静に返した。
「シャトル……だと?」
「ネオ香港のクラン所属のシャトルです。
通信……繋ぎます。」
オペレーター席のエマ・シーンが静かに言った。
「ああ、そうしてくれ……」
ブリッジのメインスクリーンに、ガッチリとした男の顔が大写しになる。
醜男の類だ。貧相な頬髭は意図してやっているのか無精髭なのか判断に困るところである。
「やってくれたな、アーガマっ!」
声量と怒号は、彼がおそらく軍隊、しかも下士官上がりであることを現している。
「なにを言っているのか、わからん。
今回のクランバトルがビーム兵器を解禁した実戦形式のものであることは互いに了承済みのはずだ。」
いやわかってはいるのだが、ヘンケンの立場上、一度はそう言うしかない。
「ものには限度ってもんがあるよなあ?」
男は凄んだ。
「戦艦の主砲クラスのビームライフルに、ファンネルのオールレンジ攻撃だと!?
“大佐”を殺す気か?」
「危険なのはお互いさまだろう。」
ヘンケンは言い返した。モニターの男には見覚えがある。たしかクワトロ・バジーナの元でネオ香港のクランを仕切っているデニムという男だ。
たしか大戦時はモビルスーツ乗りで、シャアの指揮下でも活躍していたはずだ。
あまり喧嘩をしてもいい相手ではない。
「……それに結局のところ、クワトロ・バジーナはその2機を相手に勝利をおさめているのだからな。
我々アーガマとしては、一刻も早くパイロットを救助したい。コロニー内部へのアーガマの進入を許可してほしいのだ。」
「ダメだ。おまえらは信用できない!」
「い、いや、そう言われても、だな。
クワトロ大尉はともかく、ハマーンは形式上は我がエゥーゴの代表で、ココ・シャロンもヘルムコングロマリットが手配したパイロットであってだ……な。」
「ハマーン様は、マハラジャ・カーン様の愛娘だ。ラ……ココ・シャロンもうちのクランに所属している。」
デニムの舌鋒は厳しく、まだまだ時間がかかりそうだったが、ここで割り込み通信が入った。
「アーガマへ。こちらはアレキサンドリア第四小隊サウス・バニングだ。コロニー内でパイロット三名、ともに生存確認した。」
ほぉぉ。
全員が大きくため息をついた。
「助かった……バニング中尉。全員無事か?」
「全員意識はある。だがモビルスーツのほうは3機とも自力では行動不能だ。
アーガマに収納したい。早くこっちに来てくれ。」
「わかった。ご苦労だった、バニング中尉。」
「パイロットスーツを着ずに搭乗した阿呆がいるんで、いったんモビルスーツごと気密区域に移動しないと、ハッチも開けられない。急いでくれ。」
ユニタードにマント羽織って試合に出たのはあいつです。