一方、アムロはN・ロックからあらたな難題を押し付けられていた!
N・ロックはあらゆるチャンスを逃さない。
まったく関係のないシミュレーションイベントを彼は嬉々として「アクシズ帰還記念」と呼称した。
アクシズが地球圏に帰還し、ジオン公国は喜びに湧いている。
大戦勝利のあとも、ギレンとキシリアの政争に明け暮れた日々が終わりを告げる。
ジオン国民は悟りつつあった。
少なくとも、アルテイシア・ソム・ダイクンは争いを好む人物ではない。
実質的に叛乱軍であったデラーズ・フリートを時間をかけて、原隊復帰させたその手腕。
ペズンに立て篭もった連邦叛乱軍ニューディサイズを最小限の介入で解決したこと。
その介入によって、地球よりの月面都市からのジオン支持を取り付けたこと。
そのような一連の流れの完成として、ギレン・キシリアの政争から逃れた一部のジオン国民が地球圏に帰還する。
アクシズの帰還はそのように位置づけられた。
ハズレてはいないが当たってもいない。
ジオンとしては『戦争』はしていない。
だが、いずれの戦場にも、謎のクランバトルパイロット、“ソム・エドワウ”が参加していたことは事実である。
まだ知られていないだけで、いつかは人々の知るところになるだろう。
さらに言えば、クランのオーナーである『クワトロ・バジーナ』が行方不明のジオンの英雄シャア・アズナブルその人だという噂もある。
いずれにせよこの時点では、すべてが『噂』レベルである。
特にアクシズから先遣隊としてやってきたかの猛将ドズル・ザビの長子ミネバをアルテイシア政権が厚く遇していることや、今回アクシズとともに到着したその母ゼナを、アルテイシア・ソム・ダイクン自身が病室まで見舞ったことで、ダイクン派とザビ派は今後とも争いはしないのだ、と。
そう世間に喧伝することになった。
もっとも割りをくったものがいるとしたら、ミーア・キャンベルである。
ズム・シティ。
病室は続きの間のある特別室で、検査が終わったゼナはベッドで休息中という。
ミーアは、傍づきのものをすべて遠ざけて、病室に入った。
入った瞬間に、そうしておいて良かった……と痛感した。
ゼナはベッドの上に身を起こして、ミネバがテキストに取り組んでいるのを、優しい眼差しで見つめている。
ゼナの傍についていたのは、3人の少女たち。
それれが、アクシズにいたときからずっと、ゼナ、ミネバの身の回りの事をしていた気心のしれたメンバーだと聞いている。
翠の髪の少女と栗色の髪をツインテにまとめた少女は、ミネバの宿題を手伝っていた。
ミーアが入っても顔もあげなかった。
少し年かさに見える黒く長い髪の少女だけが、ミーアを覗き込むように、視線を合わせてきた。
「まあ……同じ顔をされてるのね。」
ミーアは。
もちろん内心動揺したが、視線を逸らしたりはしなかった。
「わたしはジオンの元首アルテイシア・ソム・ダイクンとしてここに来ています。」
「それはとっても素敵ですわね。
なら、わたしたちもそのようにお呼びいたしましょう。」
おそらくは三名ともに強力なニュータイプ。
ミーアは情報部からそう聞かされていた。
そして、ニュータイプという奴らがいかに、変人揃いで自分勝手で、どうしょうもない連中であるか、ということを主に彼女の主から学んでいた。
そのミーアの態度に満足したように、黒髪の少女は微笑んだ。
「自己紹介したいのですが、わたしには名前がないのです。便宜上、ヨルとお呼びください。」
ツインテの幼げな少女が顔を上げた。
「わたしはセルマ・イレルゼ。」
翠の髪の少女が顔を上げた。
「わたしはライラックとお呼びください。」
「アルテイシア様! お見舞いありがとうございます!」
ミネバが立ち上がった。
その様子を見て、でゼナは、どこかほっとしたようにベッドの上で微笑んだ。
「アルテイシア公王陛下……」
「いいえ、ゼナ様。」
ミーアは優しく微笑んだ。アルテイシアならそうするであろう表情で。
「わたしは公王制度については、いずれ廃止するつもりでいます。ひとりにあまりに権力を集中しすぎる事は、その当人も含めてよい結果をもたらしません。」
ゼナは、深くため息をついた。
「……申し訳なく思います。コロニー落としや中立サイドへの攻撃には、夫ドズルは消極的だと聞いてはおりました。」
「いえ、ドズル閣下を責めるつもりはありません。それらについては“ギレン・ザビ”の独裁のもとで起きた権力の暴走だというのが、ジオン公国の公式見解です。」
ミーアはそっとベッドに近寄り、片手をゼナの背に。もう片方の手をミネバの頭においた。
黒髪の少女。ヨルの口元に浮かんだ微笑みは『冷笑』といえるものだった。
「よい絵です。」
彼女は言った。
「カメラマンは連れてきていないのでしょうか? 今日のニュース配信を飾るにはなかなかよい題材になるかと思いますわ。」
「ゼナ様にご無理をさせるつもりはありません。」
ミーアは穏やかに答えた。
「ベッドの上の療養生活が長かったと聞いてます。しばらくはリハビリも含め、体調を第一にお考えください。」
「そーなんだー」
栗色の髪のツインテが叫んだ。
「で、いまアルテイシア・ソム・ダイクンはなにをしているの?」
「わたしはここにいますよ……ええとセルマ?」
「ごっこ遊びも度が過ぎると不愉快になりますわ。」
ライラックと名乗った翠の髪の少女が言った。
「ゼナ様に面会する以上に大事な用事があるのなら、これ以上この話に触れるつもりはありませんが……」
ミネバとゼナは会話の意味が分からず、キョトンとしている。
ミーアは慎重に言葉を選んだ。
「アルテイシア・ソム・ダイクンは国家元首として、成すべきことを忠実に遂行します。でも―――そうですね。誰かに任務を押し付けてもしやりたいことを自由に出来る立場になれるとしたら、いま一番行ってみたいのは、ネオ香港での仮想戦のシミュレートイベントですわね。」
「地球?」
「ネオ香港?」
「薔薇のお姫様?」
三人がそれぞれ微妙に意味の異なる笑みを浮かべた。意味は異なりながらも…なにか不吉なものを感じる笑みだった。
「そうです。シナリオに基づいて、戦術級のシミュレートとモビルスーツの操縦シミュレーターを合わせて運用するものです。」
ヨルはすこし嬉しそうになった。
「なら、わたくしたちもぜひ、行ってみたいです。ハマーン様もネオ香港にいるのでしょう……?」
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先にあらすじの草案だけでも貰えないか。
作家が、きいたら激怒しそうな注文は、フロドからあっさりOKが出た。N・ロックは喜びよりも不気味さを感じた。
いや、彼が希望したことだから、そんな気がするのも失礼なのだが。
“まるでストーリーはぜんぶもう決まっていて、それを文に起こしてるだけじゃないんだろうか”
まあ―――構想をしっかり立てて、物語を書く作家ならそういうことも可能なのだろうが。
「なるほど。加藤大佐の宇宙への脱出は阻止出来ず。浦木豪は未調整のゼフィランサスで宇宙空間で出撃。シーマ艦隊に大破させられてしまう……と。」
「シーマさんたちまで呼ぶのは無理ですからね!」
あらすじの草稿を届けに来たアムロは先回りして念を押した。
本当に出来ないと思ったわけではない。
むしろ、あの女傑なら嬉々として、ネオ香港に、すっ飛んできそうだった。
たしか、クランバトルのパイロットとして登録もしてあるはずだ。
だが、そうなったときに、ジオン公王府の皆さんの顔が怖い。
もともと父のテム・レイは軍属ではあったが、アムロにはジオンに恨みはないのだ。
「そして、失意の浦木豪が月面で知り合うのが、元ジオンの軍人ケリィ・レイズナー。
隻腕ながら、モビルアーマー、ヴァル・ヴァロをかってその前に立ち塞がる。」
そこで、N・ロックは言葉をきった。
アムロはいやいや答えた。
「フォン・ブラウンとグラナダで活躍してるクランオーナーにケリィ・レズナー氏がいますよ。
傷痍軍人です。」
N・ロックはじっとアムロを見つめた。
「ああっ……最近は、特別な義手を装着していて、積極的にクランバトルにも出場しています。おそらくシミュレーターも可能です。」
N・ロックはまだ無言だ。
「アナベル・ガトーさんは……ケリィ・レズナーのクランのオーナーで、ジオン軍時代からの親友です。
ガトーさんからの頼みならたいていのことは聞いてくれると思います。」
N・ロックはそこまで言わせて、はじめてにっこりと笑った。
「素晴らしいね! アムロ・レイ。
完璧なアドバイザーだよ!!」
アクシズは独自にモビルスーツ開発やってたから、触手がうねうねしてるのとか、逆さまになってくるくる回るモビルアーマーもっててもありかなあ……