第13話 鼓動   作:ATARU 2025

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モビルスーツは人が宇宙に適応するための衣服だとテム・レイは看破した。
ならば兵器として際限なく進化を続けていくモビルスーツとはいったいなにか。
憎しみがもたらす呪いか、ひとの業か。
宇宙の片隅に新しい火種がくすぶり続ける。

次回機動戦士Gundam GQuuuuuuX「黒いガンダム」。
きみは生き残ることができるか。





第17話 黒いガンダム

「親衛隊の選抜、でございますか?」

そうアルテイシアに問いかけるランバ・ラルの顔色が曇っている。

ある意味、生命よりも大事なこの姫君がいったいなにを言い出したのか理解できなかったのだ。

 

「そう呼びたければそれでも結構です。わたくしは、わたくし直属の優秀なパイロットが必要なのです。

その選抜をいたします!」

 

ランバ・ラルは頭の中で必要な経費を弾き出した。

 

アルテイシアがどのくらいの規模を想定しているかは分からなかったが、モビルスーツを中心とするならば、2機1組のM.A.Vを小隊として、6組12機は必要だ。

となると移動には単艦としてはグワジン級になる。

 

アルテイシアがなんと言おうと国家元首の御座艦となる以上、居住空間も含めそれが必要だ。

だが、現在、ジオンにはグワジン級は一隻しかない。

 

他はイオマグヌッソ事件で、消失してしまったのだ。

そして、その唯一健在なグワジン級は、デラーズが持って行ってしまっていた。

 

新しく建造するための期間、建設費用。

それは膨大なものとなって国家財政を圧迫するだろう。

 

アルテイシアはこんな無茶は言い出さないと思っていたのだが。

 

「乗艦のことなら、新しく建造する必要はありません。」

先回りしたようにアルテイシアが言った。

「これはあくまでも希望ですが……現在特殊任務中のソドンで十分です。」

 

「ソドン級は頑丈な船ですが、もともとが連邦の設計によるものです。

ジオンの象徴であるアルテイシア様が乗られるにはあまり相応しくないかと存じます。」

 

「あくまでサイドからサイドに移動するための手段です。極端な話、輸送艦でも構いません。」

 

「そんな!」

ランバ・ラルは頭を抱えた。

「いくら護衛のモビルスーツ隊に精鋭を揃えたとしても輸送艦程度の防御力にアルテイシア様を委ねるわけにはいきません!」

 

「大丈夫です。」

 

「いえ、ダメです。いくら直衛のモビルスーツが優秀でも輸送艦では一撃で沈みます。」

 

「……それはあなたが分かってないわ。」

アルテイシアはため息をついた。

「移動中に誰かに襲われた、としましょう。可能性がゼロとは言わないわ。

そして迎撃のモビルスーツが出撃する。」

 

「そうです。ですが、それを掻い潜って敵のミサイルでもビームでも輸送艦を直撃すれば」

 

「あら、わたしはそのとき、モビルスーツで迎撃に出てるから艦にはいないのよ。」

 

どこの世界に襲われた国家元首が自ら迎撃に出る国があるのだ。

ランバ・ラルは頭を抱えたが、それはアルテイシアも一緒だった。

 

「……ごめんなさい。沈められる輸送艦のクルーのことを考えてなかったわ。やっぱりもう少し耐久性のある船の方がよろしいわ。

ソドンか、ソドンの同型艦を手配してもらえます?」

 

「姫さま!!」

ぞわっ。

ランバ・ラルは仁王立ち。

「ご自分用に新型モビルスーツを開発させている、という噂は本当なのですね?」

 

「隠してもしかたないわ。その通りです。発案はマハラジャ・カーンの次女ハマーンさんです。サイコミュ誘導兵器を搭載した初めてのモビルスーツとなります。

開発費も含めると費用はかなりの物になってしまうけど、量産したりはいたしません。あなたがおっしゃった通り、私のためのワンオフ機になる予定です。」

 

ランバ・ラルは、なにか言おうとしたが、黙り込んだ。

元首が。

うら若き乙女が。

そんな理屈でこのお姫様が納得するわけがないことは彼にもわかっていたのだ。

 

「……設計図は私も見ました。」

ゆっくりとランバ・ラルは言った。

「そのうえで申し上げます。アルテイシア様が作ろうとしているモビルスーツは時代遅れですな。」

 

ビクリと、アルテイシアの形のよい眉が上がった。

反対はされる、と思ってはいたのだが、その方向は想定外だったのだ。

 

「理由をもう少し詳しく。」

 

「搭載兵器の新型のビット……ファンネルとかいう代物の有効性はいったん目をつぶりましょう。

それ以外の部分については、全ての設計が古いのですよ。」

 

「古い……」

アルテイシアは顔をしかめた。

「たしかに基本設計は、従来のモビルスーツ、ジオンにとってはおなじみのザクを基準に構築されているわ。

でもファンネルはもちろん、ビームガン用にジェネレーターは、ゲルググタイプに。装甲も追加してビームコーティングされるし、肩の部分のフレキシブル・バインダーのスラスターはキュベレイにこれまでにない運動性を与えてくれるはず。」

 

「このところのモビルスーツの開発競争を姫さまはご存知ない。」

 

アルテイシアは「姫」と呼ばれるのを好まなかったが、ラルの話の腰を折ることはしなかった。

 

「ゲルググや軽キャノンは、かなり完成度の高いモビルスーツのはずです。」

アルテイシアは言った。

「追加装甲やバーニヤ、プロペラントタンクの増設で、生産性まで考えると今後10年は、大きな変化は起こらないだろうと。サイコミュについてはニュータイプ以外には使いこなせないもの。いくら単独の兵が強くても戦いそのものの趨勢を変えることはできない、と。

わたしはそう理解していますが。」

 

「トリントンのチームが開発中の試作ガンダムは、単純な性能ならばゲルググを超えます。」

ランバ・ラルは言った。

「そしてフランクリン・ビダンの『ムーバブルフレーム』を用いた新たなガンダム。ムラサメ研究所のサイコガンダム。オーガスタ研のハンブラビ。

あるものは未だ完成はせず、また十分な性能を発揮できないまま敗れたものもありますが、基本設計は一世代進化したものになるでしょう。

そして……」

 

これを言うべきかどうか。ランバ・ラルはわずかに迷った。

 

「クランバトルで連戦連勝を続けるあのテム・レイ博士の作った『ガンダム』。

いずれも基本設計やジェネレーター、搭載できる武装で、姫さまのキュベレイを凌ぐものになるはずです。」

 

アルテイシアは無表情を貫いた。

もちろん、彼女はテム・レイの『ガンダム』もそのパイロットも知っていた。

そのパイロットにクランバトルを主催するクワトロ・バジーナなる男の正体を探り、もしそれが鬼子の兄ならば抹殺するように依頼したことも覚えている。

だがそれをランバ・ラルに悟らせるわけにはいかなかった。

 

「わかりました……わたし専属のパイロットの選抜は延期いたします。」

 

「おおっ! ご理解いただけましたか。」

 

ランバ・ラルはほっと胸を撫で下ろしたのだが、アルテイシアはまったく別のことを考えていた。

 

“なら、わたしのキュベレイのためにも、その新型とやらをもっとよく知る必要があるわね。”

 

 

 




ちょっと短い?
いえ長すぎたので分割で投稿させていただきます。
たぶんお夕食が終わって頃にまたおあいいたしましょう。
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